異世界をスキルブックと共に

気のまま

冒険者ギルド2

「ギルドマスター」


ギルドマスター?俺はいきなりギルドのトップが出てきたことに驚いた。
一見かなり若そうに見えるが幾つだろうか?


「はいはい、取りあえず皆落ち着いてね。抜剣している人も危ないからちゃんと納めて納めて。それにエレナちゃんだよね?久しぶり、でもこのままだとギルドが燃えちゃうからその魔法を消してもらえるかな?」


凄いな、口調は軽いが皆耳を傾け素直に指示にしたがっている。
しかも驚いたことにエレナも素直に剣を納めているではないか、
余程信用されている人物なのだろう。


「それで誰か何が起こったか説明してくれないかな?」
「では私が説明します」


エレナが手を上げながら立候補した。
さすがは我が拠点のNO1通訳さんだ、通訳さんなら説明もお手の物だろう。
これでもうこの場は解決したも同然だ。


「私とケンゴ様が冒険者証を発行しに訪れたところ、カスミを含め周囲の者達が急に抜剣までしケンゴ様を襲おうとしてきたので私が皆を制止しようとしたところにギルドマスターが来られました」


うん、悪意しか感じられない・・・
大体通訳さんは俺の前だとかなり過激な台詞が多いがいつもどうやってまとめているのだろうか?
それにどのような手段で我が拠点のNO1通訳さんの地位を確保したのかも気になる、賄賂か?


「ふむふむ、確認するよ?エレナちゃんとケンゴさんが冒険者証を発行しにギルドを訪れた時、今まで行方がわからなかったエレナちゃんを見つけたカスミちゃんが嬉しさのあまり興奮してエレナちゃんにアタックしたところ、近くに見えなかったケンゴさんがいることに気づきビックリして警戒したところ周囲にもそれが伝わり抜剣してしまい、それを注意するためにエレナちゃんが魔法を展開し始めた時に僕が来た、ということでいいのかな?」
「はい、大体あっています」


大体じゃないよ、全部あってるよ・・・
こいつ化け物か?
まさかあのエレナの説明でここまで理解できるとは・・・
いや待て、もしかして俺がおかしいのか?周囲を見ても皆頷いているし。
これは早急に共通言語スキルを上げる必要があるな・・・


「エレナちゃんの説明通りだとするとこれはギルドの不手際と言うことになるね?カスミちゃんも反論はないようだし今の証言は問題はないんだね?」
「はい、エレナちゃんの説明通りです」


やはり俺がおかしいようだ。


「じゃぁ僕と一緒にケンゴさん達に謝罪をして許しを乞おうか?」
「ですがマスター」
「僕は謝罪をすると言ったよ?」


やはりこの人はかなり凄い人みたいだな、あのミサイルのようなカスミちゃんを一言で黙らせるとは・・・
エレナも大人しかったし、いったいどうやるのだろうか?コツを教えて欲しい。


そんなことを考えているとギルドマスターなる人物が俺の前に歩いてきた。


「初めましてケンゴさん、僕はこのギルドでマスターをしているクリフォードと言います、自己紹介が謝罪と一緒で申し訳ありません。この度は我がギルドの従業員がケンゴさんとエレナさんに多大なる迷惑をお掛けしてしまい本当に申し訳ありませんでした。厚かましいお願いかと思いますがどうか許しては頂けないでしょうか?」


そういうとクリフォード深く頭を下げた、後ろでカスミちゃんも同じく頭を下げている。
周囲がざわつく。
そりゃそうだこの冒険者ギルドのトップがよくわからない男に頭を下げているのだ、ざわつかない訳がない。
クリフォードはまだ頭を下げたままだ、このままだとずっと視線を集めたままだろう。胃が痛い。


「クリフォードさん頭を上げてください、こちらは冒険者証を作りに来ただけですし、特に実害はなかったのでこれ以上問題にする気はありません。」
「ありがとうございます、そう言って貰えるとこちらとしてもとても助かります。ではこの件はこれで水に流して、ケンゴさんは冒険者証を作るんですよね?誰か空いている人はいないかな?あっリアナさんお願いしても良いかな?」
「はい、わかりました。それではケンゴ様、エレナ様あちらの奥にある個室で手続きを行いますのでお手数ですがご移動をお願い致します」
「リアナさんよろしくね。さぁさぁ皆も通常営業に戻って。あっあとカスミちゃんは後で僕の部屋に来てね」


俺たちはクリフォードさんに軽く会釈をしあとで怒られるであろうカスミちゃんの冥福を祈りながら促されるまま奥に移動していった。


個室に入ると応接室らしくソファーとテーブルがあった。
俺とエレナは共に座りリアナさんから説明を受ける。


「ではこれから冒険者証の発行手続きを行いますね。まず初めにケンゴ様の発行とエレナ様の再発行に手数料として銀貨4枚かかりますがよろしいですか?」
「はい、問題ありません」
「ではエレナ様はご存じかもしれませんがケンゴ様の為に冒険者について説明致します。冒険者とは依頼を受けそれを遂行し報酬を受け取る者、又ダンジョンに挑み宝物やそこで得た素材等を売買し金銭を得る者を総じて冒険者と呼んでいます。冒険者にはランクが設定されておりF~S級まであります。この等級は冒険者の強さ以外にも周囲から得る信用を元に設定しています。C級以上になると指名依頼や緊急依頼を行うことが出来るようになりますが緊急依頼は余程の理由がない限り強制依頼となります。さらにギルドは先ほど説明した売買や依頼の報酬から1割を手数料として頂いています、その手数料は指名依頼や緊急依頼等の報酬に使われます。これら規則をを守りギルドの不利益になることを行わない限りギルドは冒険者の自由と身分を保障し保護します。大まかな規則はこのようなものですが何か質問はありますか?」
「大まかなと言いましたが細かな規則もあるんですか?」
「はい、ありますが無罰規定なので主に心得を示したものになります。受付に冊子もありますので後で気になるようでしたらご覧ください」
「ではもう大丈夫です」
「ではカードの発行に移りますね、カードを用意しますのでこちらで少々お待ちください」


そういうとリアナさん部屋を出て行った。
少々とはどれくらいだろうか?
俺はこのあと行う予定の買い物についてエレナと相談しようとしたら・・・


「お待たせしました」


いや全然待っていない。
部屋を出て行って15秒ぐらいしか経ってないんじゃないか?走ったのかな?
俺は息一つ乱さないリアナさんを感心しながら見ていたら一枚のカードを差し出された。


「これは登録の際に血を一滴頂くことでその所有者の情報を読み取り登録しその人専用のカードになる特殊な魔道具です。早速ですが血を垂らしてみてください。」


俺たちはそれぞれ用意したナイフで指を切り血を垂らした。
するとカードが淡く発行し表面に文字が浮き出てくる。


「これでこのカードはあなた方専用の物になりました。冒険者ギルドがある街でならある程度の身分が保障されます。以上でカードの発行手続きは完了ですが何か質問はありますか?」
「いえ、ありません」
「では最後にギルドで無償で行っているステータスやスキルの確認がありますが受けて行かれますか?」


そう言いながらリアナさんは水晶玉のような物を取り出したが・・・


「いえ、結構です」


鑑定で自分のステータスを確認出来るから必要ない。


「そうですか・・・冒険者ギルド以外でステータスを確認出来る場所は限られていますが本当によろしいのですか」
「はい、結構です」


なんだろう?リアナさんはそんなに俺にステータスを見て欲しいのだろうか?あからさまにに気落ちしている。


「・・・そうですか。ではこれで手続きは全て終了です。ありがとうございました。またのご利用お待ちしております」
「はい、こちらこそありがとうございました」「ありがとうございました」


俺たちはリアナさんにお礼を言いながら部屋を出た。
部屋を出ると先ほど受付で揉めたせいか周囲の視線が痛い。
俺声かけただけで何もしてないのにな・・・
帰りがけに依頼の掲示板を見るが所々抜けて少なくなっている、これは朝来ないと良い依頼は取られちゃうのかな?
それにダンジョンの事も聞きたいがまた受付に並べる雰囲気ではない、明日改めて来てみよう。
俺たちはそのまま拠点に必要な買い出しをするためにギルドを出た。


=================




そこは机と椅子以外何もない簡素な部屋だった。
その椅子に1人の男が座っている。


「それでカスミちゃん、さっきの騒ぎはどういうことかな?」
「申し訳ありませんでしたマスター」
「謝罪をお願いしているんじゃないんだよ?僕の言っている意味はわかっているのかな?」
「はい、すみません。あの男の在りようがあまりにも異様だったものでつい身の危険を感じ我を忘れ警戒してしまいました」
「異様だった?どのように?」
「私が受付をしてエレナちゃんを見つけたときはエレナちゃんが1人でギルドに来たのかと思いました。その後話をしている時もあの男を紹介されたときも周囲にはあの男は確認出来ませんでした、しかし急にあの男は私の目の前に現れたんです。いえ違いますねエレナちゃんの話だとあの男は初めからずっとそこにいたんです、私が認識出来ていなかっただけで。しかし私が驚愕したのは目の前に現れた男が普通の男だったことです。
私が目の前で語りかけられるまで存在を認識できず、しかもエレナちゃんの話だと怪我をしたエレナちゃんを庇いながらグレーターベアを討伐できるほどの男が隣に並んでいる男よりも遙かに弱そうな一般人にしか見えなかったんです。それは余りに異様な光景で私は理解できませんでした。周囲もその時点であの男に気づいたようですが私は恐怖のあまりに声を荒げてしまいました」
「ふむ、それは異様だね。その話が本当でこれがもし戦場だったら僕らは何をされたかわからぬままケンゴさん一人に殺されるかもしれないね?」
「はい、あの男は危険です。何か手を打たないと大変なことになる気がします。それにエレナちゃんのあの力を見ましたか?」
「うん、まるで伝説に出てくる炎髪の炎纏う女神様のようだったね?」
「はい、私も見とれてしまいました。ですが一ヶ月前のエレナちゃんはそのような力の片鱗すらありませんでした、足にも怪しい紋様が在りましたしあの男が何か関わっているとみるべきです」
「けど現状は情報が少なすぎるね、彼はステータスの確認も頑なに拒否したみたいだからこっちが水晶越しにデータを収集しているのを知っていたのかな?一応暗部のほうに尾行して貰えるように頼んであるから新しい情報が出てくるまで手の出しようがないね」
「ですがエレナちゃんが心配です」
「動いたら駄目だよ?」
「はい・・・・」
「今度ギルドに来たらグレーターベアの件も含め色々聞いてみようと思うから我慢してね?」
「わかりました・・・」


そう言うと彼女は険しい顔のまま頭を下げ退室していった。

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