異世界をスキルブックと共に

気のまま

入街

俺は人生初の馬車の荷台に乗り揺られていた。
結構揺れる・・もう半日になるがお尻が悲鳴を上げている。


荷物は全てエレナの収納袋に入っているので馬車は俺たち以外何も乗っていない。
だが俺は今一歩も動くことが出来ない。
そう、今俺の足の上にはアンナちゃんが乗っているのだ。
5,6歳になる頃だろうかとてもおませさんなアンナちゃんは俺の足の上から一歩たりとも動こうとしない。
その間俺は地球の頃にあった桃から生まれた男の話や亀に乗って海の底に行った男の話、それにガラスの靴を履いたお姫様の話などをアンナちゃんに聞かせていた。
アンナちゃんは話の要所要所で面白いくらいリアクションを返してくれる、とても可愛い。
最近人の首を刎ね回っていて心が荒んでいたのでとても癒やされる。
ただ一つだけ問題がある、お尻?いやお尻など気にならない程の問題だ。
エレナが怖いのだ。
さっきからずっとこちらに微笑み掛けているのだが目が全然笑っていない、もの凄いプレッシャーだ。
いったい何があったのだろうか?教えて欲しいのだが語りかけても「ケンゴ様はお優しいですね」やら「決して羨ましい訳ではありません」などよくわからない返事をしてくる。
どうしろというのだろうか?


それにこう子供と遊んでいると生前の自分の息子が思い出される。
あいつは元気にしているだろうか・・・
既に神の幸運を信じていない俺には心配事しかない。
祈るしかできない自分が本当にもどかしい。
ほんと頼むぞ神様・・・
俺はそう呟きながら馬車に揺られていった。


日が暮れる前だろうかようやく遠目に街が見えてきた。
このまま街に入れるかと思ったがどうも日暮れには門を閉じてしまうらしく街を囲む外壁の周辺で一泊し朝一で街に入るらしい。
門の上の外壁の上には見張りまでいる。
街にいる住民を守る為とはいえかなり厳重に守りに徹しているようだ、森が近いからか?
でもまぁ取りあえずアンナちゃんといられる時間が増えたのは素直に喜ばしい。
俺はアンナちゃんが寝るまでずっとお喋りを続けた。


翌日俺とエレナは寝床として借りた馬車の上で目覚めた。
ザックさん達はこういうことを想定して用意していた自前のテントの中だ。
起きてきたザックさん達と朝食を取り俺たちは街に入るために門の前に並んだ。


前の方に並んだ人達を観察しているが皆守衛さんと軽い問答をしスムーズに中に入っている。
これは俺も問題なく入れるのではないか?淡い期待が浮き上がる。


「おい、お前ちょっと待て」


だが俺たちの番になり守衛の前に並んだとき俺の期待を裏切る声が聞こえた。隠密よこんな時こそ働いてくれ。


「黒髪黒目だと?お前何者だ?帝国で勇者が召喚されたらしいがその関係者か?」
「いえいえ、私はこの前召喚された勇者とは無関係ですよ。実は私勇者の冒険譚が昔から大好きでして生まれつき黒目だったこともあり髪を染めて憧れの勇者様のマネをしているんですよ。似合っているでしょう?」
「ッチ、紛らわしいマネしやがって、おい!身分を証明できる物は持っているのか?」
「いえ、田舎から出てきてこちらで冒険者になろうかと思って来たので今身分を証明できる物は持ってないんですよ」
「んー、日頃は仮手続きで入りその後冒険者ギルドで身分証を発行して貰ってから確認の為戻ってきて貰って本手続きをして街に入って貰っているのだがお前は怪しいからな、どうしたものか」


拙い、街に入ることすら怪しくなってきた。


「ちょっとよろしいですか?」
「なんだお前は?」
「私、ザック商会を営むザックというものです。身分証はこちらです。実は先日ここから東の街道で野盗に襲われましてその2人に助けて貰ったんです。しかもその後もここまで護衛を務めて頂いています。人柄も問題ないと思いますしそれでは信用に値しませんか?」
「野盗だと?証拠はあるのか?」
「ケンゴ殿、申し訳ないが馬車からちょっと持ってきてはもらえませんか?」


俺はザックさんの咄嗟の機転に感謝しながら馬車に向かい空間収納から野盗の首を幾つか出し、守衛の元に持って行った。


「これは・・・本物か、襲われたのは本当のようだな。これで全部か?」
「いえ、もう少しあります。」


俺は先ほど同様俺は馬車に戻り空間収納から残りの生首を出した。


「これほどの野盗をお前が撃退したのか?」
「いえ、ほとんどはそこのエレナという冒険者が撃退していて、私は少しお手伝いをしただけです」
「そうか、エレナと言ったか?お前が冒険者というのは本当か?」
「はい、ですが現在冒険者証を紛失していまして、この後ギルドで再発行して頂く予定です」
「ふむ、ではお前ら2人は冒険者ギルドで冒険者証を発行してもう一度守衛まで来い、3日以内に来ない場合は指名手配され捕まれば奴隷落ちだからな」
「はい」「わかりました」


俺はそのまま前を歩くザックさんに絶大なる感謝を送りながら門を潜っていった。



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コメント

  • ノベルバユーザー27545

    世相毎?

    1
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