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職業執行者の俺、 天使と悪魔と契約して異世界を生き抜く!!(旧題: 漆黒の執行者)

サクえもん

第七十三話 当たり前の事

ティアが彼の前を去ってから約十分。
 彼女は、 彼にバレぬよう抜け道を通りながら自身の家に帰宅していた。
 当時のティアの家は、 一人暮らしにしてはとても立派で、 広く、 強固なつくりをしていた。
 この家は、 彼女が数多の年月をかけ、 自分一人で作り上げたものである。
 彼女には元々家づくりの才があり、 その為彼女は自身の腕の身で家を作り上げることができたのだ。
 そんな彼女が家を大きく理由した理由は、 人を招くためである。
 そしてあわよくば自分の家で大勢の人間を呼んでパーティーでも開くことができればと思っていたのだ。
 ただ彼女のそんな願いもむなしく彼女の家には、 未だ彼女以外の人間が足を踏みいれたことはなかった。
 そしてその事がかえって彼女に孤独感を与えるのを強め、 彼女は昔は好きだった自分の家の事を彼女は、 いつしか嫌いになっていた。
 そんな最中等々彼女の家にの訪問者が現れる。

 「よう。 随分遅かったな」
 
 無論その人物は、 昔の優である。
 彼は、 自分のの家ではないにも関わらずまるで自分の家の様にくつろいでおり、 ティーカップに入ったお茶をすすりながら優雅なティータイムを一人楽しんでいた。

 「何故貴様がここにいる…… 」
 「何故も何も俺はさっきも言った通りお前に女王に……」
 「そういうことを聞いているのではない …… どうやって私の家に入ったか聞いているんだ…… 」
 
 ティアは、 家を出る前事前にカギをかけていた。
 しかもそのカギは、 魔法によって作られたカギであり、 魔法のカギは通常の物とは違いピッキングでは、 開けることはできないのである。
 にもかかわらず彼女の家には彼がいた。 
 それ即ち彼女の魔法の鍵が破られたということに他ならなかった。
 
 「ああ、 それは……」
 「私がやった」

 そこには六枚の美しい純白の羽、 綺麗な白髪に何処かやる気を感じさせないけだるげな眼。
 そんないくつもの要素を持つ誰の目から見ても美少女と評される存在が彼の片隅に従うようにして立っていた。

 「お前……天使……か?」
 「そうです。 ですが貴方少し失礼ではありませんか?」
 「え……」

 ティアには何故今自分が失礼と言われたのか理解できなかった。
 そんな彼女を無視して天使の少女は、 言葉を続ける。

 「たかがエルフ……まあ一応その中でも上位の存在であるハイエルフではありますがそれでも貴方程度の存在が私にそのような口を聞くのは、 相応しくない。 今すぐ謝罪を要求します」
 「ウッ…… 」

 突如として彼女の体に凄まじいプレッシャーがかけられる。
 その主は、 彼女の眼の前に立つ天使の少女であり、 彼女からは明らかにこちらを不快なものとしか見ていなかった。
 彼女は無論その事に反論したかった。
 自分は、 狭小な存在ではない。 少なくともお前よりはましだ。
 そう言ってやりたかった。 だがそのような事をすれば自分が目の前の存在にすぐさま殺されるといった未来を彼女の眼が訴えかけていた。

 「さあ今すぐ謝罪しなさい。 さあ」

 少女の無機質な声がティアに容赦なくかけられる。
 そして目の前の少女がティアの頭に触れようとした瞬間少女の放つプレッシャーすら軽く凌駕する威圧感がその場を支配した。

 「そこまでにしておけよ
 
 少女の正体は、 実のところを言えば昔のミカである。
 当時の優と契約していたのは、 ではなくだったのだ。
 ただ当時のミカは、 今の様な性格ではなく、 人間やエルフなどの種族を自分より下の存在だと見下していたのだ。 その影響もあって口調も今とは、 異なっていた。
 そしてそんなミカの事を優はあまり心地よく思っていなかった。
 そしてミカが周りの存在を見下した時彼は、 決まって怒りを露わにし、 体からつい無意識のうちに凄まじい殺気が漏れ出してしまっていた。 
 ただそのような事情を知らないティアからすれば堪ったものではない。
 ーな、 なんだコイツ……?
 彼の様子から明らかに彼が怒っていることが分かった。
 目つきは、 先程のどんな人でも親しみを感じさせるようなものではなく、 ひどく鋭くそんな彼の瞳を見ているだけでこちらが傷ついてしまうと感じさせるほど鋭く、 髪の毛は、 逆立っていた。

 「はぁ……わかりました」
 「それは何よりだ」

 ミカが素直に彼の言葉を聞いたことにより張り詰めていた空気がもとに戻る。
 その事に知らぬうちにティアは、 自身の胸をホッとなでおろす。
 
 「ですが……勘違いしないでください。 ここで私が矛を収めるのは別に貴方に言われたからではないことを……何せ私の中で所詮下等な人間であることは変わらないのですから」

 そう捨て台詞を吐き捨てるとミカは、 二人の前から姿を一瞬で消した。
 そしてこの時ティアは、 彼女の心情を見逃さなかった。
 ーもしかしてあの天使が私に怒ってたのは……嫉妬……なのか?
 その考えはまさに的を得ていた。
 実はミカは、 この時ティアに酷く嫉妬していたのだ。
 彼女が嫉妬した理由は勿論自身の契約者である彼が、 ティアに対してご執心であったからだ。
 その事が嫉妬深い彼女には、 我慢ならなかった。
 まるで自分の恋人が他人に寝取られるような感覚をこの時彼女は味わっていたのだ。
 だからこそ彼女は、 ティアにこのような仕打ちをしたのだ。
 ただ当時のミカは、 プライドもとても高かった。
 そして自分が人間……しかも一異性の事を愛しているなど絶対に口にすることはできなかった。
 実はルーの言った悪魔との契約条件……あれは嘘なのだ。 
 別に悪魔や天使が契約相手を選ぶ際その相手が結婚相手である必要など全くないのである。
 にも関わらず彼女がそう告げたのは、 優を自身から逃がさない為……そして別の異性と仲良くすることは悪と優自身に理解させるためであった。
 閑話休題。 そんなプライドの高い彼女の心情など当然彼は、 理解できているわけがない。
 そしてそんな彼女の胸中を知らない彼は、 ミカの事をあまり心地よく思っていない。
 それが彼女の最後の捨て台詞に繋がる。 
 彼女は、 最後彼の事を見下すような発言をしていたが実はあれは、 唯の照れ隠しであり、 彼女の中で彼の評価は、 当然他の物とは一線を画している。
 その度合いは、 凄まじく彼女は自身を作った存在よりも彼の事を深く愛していた。
 ただその事については、 一切本人に口にしない。 いわばこの時代のミカは、 凄まじいほどのツンデレだったのだ。

 「大丈夫だったか? 乱暴とかは……されてないよな」
 「あ、 ああ……」
 
 -この反応……コイツもしかしてあいつがなんで怒ってたのか理解してないのか?
 そう思うと彼女は、 何故かミカに同情してしまっていた。
 無論彼女が自分にした行いについては許してはいない。
 けれど彼女のあまりの報われなさ……そして彼の鈍さに同じ女として同情してしまったのだ。
 そしてこの時彼女は、 絶対にこいつに惚れることはないだろうと思っていたりしていた。

 「そうか。 それはよかった。 にしてもあいつまた見下して……」
 「またということは、 他にも私の様な被害にあった奴がいるのか?」
 「ん? ああ、 いるぞ。 俺の知る限り十人は超える」
 「十人……それって全員女性か?」
 「いや……男もいるが……それがどうかしたのか……?」

 ーふむ。 男もありだと考えると多分おそらくあいつが嫉妬するのは、 こいつと仲がいい存在であるのには間違いないな 
 ティアは、 脳内で冷静にそう結論づけていた。
 彼もティアが何か物思いにふけっていることは、 分かっていたがそれよりも彼女の変化が嬉しかった。
 何せ先ほどまでは、 自分とは断固として会話の意志を見せなかった彼女がいつの間にか自分と普通に会話してくれていたのだ。
 そしてそんな彼の眼は、 いつしかとても優しげな物となっていた。

 「なんだその見守る様な眼は……?」
 「別に。 ただ君と会話できたのがただ嬉しくてな」
 「ふん……  それがどうしたというんだ」
 「いや、 だってさっきまで君は俺と全く会話する気は、 なかっただろう? でも今はこうして普通に会話ができている……俺はただ……ただそれが嬉しいんだよ」
 
 -嘘では……ないようだな。 だがコイツその程度の事の何が嬉しいんだ? 会話をすることなど人間なら当たり前の……
 この時ティアは、 思い知った。 自分は今までそんなが出来ていなかったのだと……

 「……」
 「どうした? 腹でも痛いか?」
 「違う……  それよりも話はもう終わりだ  お前がいるとまたいつあいつに襲われるかわかったものじゃない  早く出ていけ…… 」
 「え、 あ、 お、 ちょ…… 」
 「出ていけ…… 」

 結局彼はティアに対して何の抵抗もせず、 彼女の手によって彼女の家から追い出されてしまった。
 ただ彼が出た後、 ティアの胸中ではわずかな変化が生じ始めていた。
 だがこの時の彼女はまだその変化に気づいていなかった。

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