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職業執行者の俺、 天使と悪魔と契約して異世界を生き抜く!!(旧題: 漆黒の執行者)

サクえもん

第六十九話 決闘(第二ラウンド)

 「お、 お父さん……その……大丈夫なの……?」
 「ん……? 何がだ?」
 「何って……そんなのその怪我に決まってるよ‼」
 
 シルフィが心配するのも無理はなかった。
 何せ今の優の顔先ほどのカンナの拳のせいで顔の骨を完全に砕かれており、  殴られた箇所は真っ青に腫れており、 本来ならばそんな状態の彼が動けるわけがないのだ。
 にもかかわらず彼は、 怪我のことなど全く気にしていない様子で、 剰え自分に殴りかかっていたカンナの事をカウンターで確実に仕留めさえしていた。
 そんな彼の異様な光景にシルフィだけでなく、 周りのエルフたちの顔が皆一様に引きつる。 

 「それよりもシルフィの方は大丈夫なのか? ルドルフに結構手古摺っていたいたみたいだが?」
 「そ、 それはまだ木刀の使い方に慣れていないだけで……ってそうじゃなくてお父さんはこれ以上戦っちゃダメ‼」
 「なんでだ?」
 「何でって……そんなのお父さんが酷い怪我してるからに決まってるでしょう‼」
 「はっはは。 大丈夫。 こんなの唯の打撲だ。 気にするほどの事でもない」
 「絶対それ嘘だよね‼ だってあの時お父さんの骨ミシミシって言ってたもん‼ 絶対骨砕け散る音してたもん‼」
 「まあ……骨は砕けてるだろうな」

 シルフィの言い方を少し可愛いと思いつつも彼女が言っていることは何も間違ってはいなかったので素直に彼女の言い分を認める優。
 けれどそれがどうしたとでも言わんばかりの様子で優はシルフィの事を見ていた。
 そんな能天気な様子の優にシルフィは、 わずかばかりの苛立ちを覚える。

 「だったらお父さんは戦っちゃダメ‼」
 「そう言うなって……所詮は頭の骨の一部が砕けた程度だろう? 何。 それぐらい大して気にすることじゃない。 まあ少々喋りにくいのは難点だがな‼」

 豪胆にも笑って見せる優。
 だがそれは彼女にとっては完全に逆効果であり、 実際シルフィの顔はみるみる真っ赤に染まっていく。
 
 「お父さんの頑固者‼ このことは後でお母さんに“絶対”に報告させてもらうからね‼」
 「はいはい」

 優のその適当な姿勢に、 彼女は頬を膨らませ不満げにする。
 そんな二人のやり取りは、 端から見れば完全に親子喧嘩をしている様子にしか見えなかった。
 だがそれは決闘を行っている今行うべきことではないことは誰の目にも明らかであり、 実際ルドルフは、 激しい侮辱を感じていた。
 そしてついには耐え切れなくなったルドルフは、 先程の様に唐突に優の背後に現れると彼に向かって切りかかる。
 けれど彼が切りかかったころには既に優の背中はなく、 彼の剣がむなしく虚空をきった。

 「おっと……その行動は流石に読みやすかったぞルドルフ?」
 「お、 お父さん下ろして……‼ 恥ずかしい‼」
 
 いつの間にかルドルフの背後をとっていた優が今現在絶賛恥ずかしがっているシルフィを抱えながらルドルフにそう言葉をかける。
 優がルドルフの背後をこうもあっさりとれたのは何故か? その答えは単純である。
 優にはルドルフが次何をしてくるのか完全に読めていたのだ。
 そもそもルドルフが先ほど優の背後をなんの危うげなくとれたのは、 彼が闇の上級魔法の一種“ハイド”を使ったからである。
 ハイドの効果は至ってシンプルであり、 相手の背後を確実に取れるといったものである。
 これを聞くだけならば存外弱そうに思われるかもしれないが実際は違う。
 このシンプルさがかえってこの魔法の強みであり、 優の様に“直感”など第六感に頼るスキルを持っていない者は、 絶対にこのスキルに気付くことができないのだ。
  そしてこの魔法一番の強み。 
 それは普通上級魔法ならば必ずいるはずのである詠唱がこの魔法に限っては、 いらないという点にある。
 その為ルドルフこの魔法に対して今まで絶対的な自信を持っていたのだ。
 ただその絶対的な自信も今や完全に打ち砕かれ、 それどころか自分の得意とすることを自分の憎んでいる相手にやられるという彼にとっては、 何事よりも耐え難い屈辱を味わされていた。
 無論優は意図してこれをしたわけではない。
 そもそも優は、 ハイドを使えない。 ではどうやってとったのか?
 この答えもいたってシンプルである。
 優はルドルフが攻撃してくる数秒前に自身の体にアクセルを使い、 およそ生物には視認できない速度で動いたのだ。
 ただしその速度もシルフィと手錠で繋がれている今の状況上においては、 どうしても速度が制限されてしまい、 彼の全力に比べては、 はるかに劣るスピードではあった。

  「さてこれでチェックメイトだな」
  
 優はその言葉の共にルドルフ目掛け、 カンナを一撃で仕留めた凄まじい速度の拳が放たれる。
 その拳をルドルフが避けることは、 超至近距離同氏の今の状況下においてどう考えても不可能であった。
 だが彼にも騎士団長としての意地があった。

 「これで勝ったと思うなよ人間‼」

 彼は既に自身の敗北を悟っていた。
 けれどせめて優に一矢でも報いるべく、 彼自身が使える最大の武技“次元六連斬”を優に放った。
 次元六連切りとは、 その名の通り空間を切り裂く技であり、 刹那の間に六方向から斬撃がとんでくる超至近距離化においては、 回避不能のまさに必殺の一撃であった。
 ただしこの時のルドルフは完全に忘れていたた。
 今の優の傍らには彼の敬愛してやまないティアの娘であるシルフィがいることを。
 普段の彼ならば絶対にこのようなミスをすることはなかった。
 にもかかわらずそんな彼がここまで致命的なミスをしてしまったのは、 優のせいだ。
 優はルドルフの事を自身でも気づかぬうちに侮辱しすぎていたのだ。
 だが今はその様な事優にはどうでもよかった。
 優は、 次元六連斬を今まで見たことはなかったがそれでも直感スキルのおかげでそれがとてつもなく危険な技であることは、 一瞬のうちに理解していたのだ。
 そして優は拳を放つのを咄嗟に止めると自身のそばにいるシルフィを庇うべく、 自身の身を盾とした。

 『ボキッ‼』

 優の全身の骨が折れる音がその場に残酷にもなり響く。

 「だ……大丈夫か……? シルフィ……?」
 「え……? なんで……? え……?」
 
 シルフィには今の状況が理解できていなかった。
  何故ルドルフが未だ立っており、 彼に勝っていたはずの父がここまで死に体の状態なのか?
 その疑問が彼女の脳裏をずっと支配していた。
 だがそんな彼女を現実に引き戻したのは皮肉にもルドルフの狂気に満ちた笑い声であった。

 「ふっ……ははは……ふははははは‼ どうだ人間‼ これが私の力だ‼」
 
 ルドルフは優に致命傷を与えられたことが余程嬉しいのかただ狂ったように笑っていた。
 そのルドルフの様子は明らかに異常であり、 アレンはすかさず決闘を中止すべく、 ルドルフの前に現れた。
 
 「だ、 団長これ以上はいけません‼ これ以上やれば彼が死んでしまいます‼」
 「うるさい‼ あと少しなのだ‼ 後少しでこいつの息の根を止められるのだ‼」
 「団長‼」
 「うるさい‼」

 ルドルフは、 止めに入ったアレンを容赦なく突き飛ばし、 彼の腰から剣を奪うととそのまま優に止めを刺すべく、 一目散に走り出す。
 今の彼には優を殺す以外何もかもがどうでもよかった。
 仮にこの場に彼の敬愛してやまないティアがいたとしても彼には、 届くことはなかったであろう。
 それほどにまで彼は、 余裕をなくし、 狂っていた。
 そんな狂った様子のルドルフを見ても尚優には、 彼に対する怒りの気持ちは沸いてはこなかった。
 それどころかむしろそんな狂った状況になって初めていかに自分が今まで彼の事を追い詰めていたのか悟り、 彼の事を救ってやらなければならないと思っていた。
 
 「まだ……だ……まだ終われない……」
 「お父さん……?」
 「俺が悪……いんだ……あいつを……あそこまで……」
 「何を言ってるの?」
 「だから……俺が……救わない……と……」
 「何を言っているかわからないよ‼」

 シルフィの絶叫。
 それでも優は止まらない。 
 彼は満身創痍の体に鞭を打ち、 懸命に立ち上がろうとする。
 それでも全身の骨が砕けている以上どうしても上手く立ち上がれない。
 それでも彼は諦めない。
 例え何度無様に転ぼうが、 口から夥しい量の血を吐こうがそれでも優は、 立ち上がろうとするのを決して諦めなかった。

 「お願いだからこれ以上はもうやめて‼ これ以上動いたらお父さん本当に死んじゃうよ‼ 後は私がやるから‼ だからお父さんは……‼」
 「そう……いう……わけには……いかない……んだぁぁぁぁぁ‼」
 
 その叫びが効いたのかは、 誰にも分らないがついに優は立ち上がることに成功した。
 ただしその体はふらふらであり、 今にも倒れそうであった。
 けれど彼の目だけは未だ死んでおらず、 その瞳に込められた戦意は、 炎のように轟轟と燃え盛っていた。
 
 「さあ……ファイ……ナルラウ……ンドと行こ……うか……ルドルフ……‼」

 優がゆっくりとした動作で、 自身の正面に拳を構える。 
 こうしてルドルフと優の決闘の舞台の最後の幕が開かれた。

「職業執行者の俺、 天使と悪魔と契約して異世界を生き抜く!!(旧題: 漆黒の執行者)」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

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コメント

  • ネコネコ(ФωФ)

    かっこえぇなぁ

    0
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