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職業執行者の俺、 天使と悪魔と契約して異世界を生き抜く!!(旧題: 漆黒の執行者)

サクえもん

第六十七話 決闘前

 「それでお父さん二人を倒す作戦はあるの?」

 木刀の使用感を試しながらシルフィは、 優に唐突にそう尋ねた。
 
 「作戦? そんものないぞ?」

 その優のあっさりとした回答にシルフィは少し落胆の色を見せる。
 シルフィは、 一度優の作戦に負けている。
 それ以降シルフィは優の考えに非常に強い興味を持っており、 今回もどういった作戦を練っているのかかなり楽しみにしていたのだ。
 ただそれはあくまでシルフィの都合であり、 優からしたら堪ったものではない。
 そもそも作戦というものは戦況的にも実力的にも圧倒的に劣っているものが自身より強者と戦わざるを得ない場合に考える物でというのが優の考えである。
 そしてこれを今の状況に当てはめて言えばこの場の強者とは間違いなく優の事を指しており、 仮にルドルフの実力が相当な物であったとしても、 それはあくまで人間レベルの事であり、 人間を止めたレベルまさしく化け物級の実力を持つと呼ぶにふさわしい優には、 どう考えても及ぶわけがないのだ。
 さらに優の相方であるシルフィもまた弱体化はしている優とほぼ同列の力を持っており、 その様な物が相方の時点で例えルドルフの相方が彼よりはるかに強かったとしても戦況がひっくり変えるわけがないのだ。
 ただそうはいっても優が今のこの状況を決して軽んじているわけではない。
 そもそも優はこれまでの経験上自分が慢心した結果かなり悲惨な状況に陥ってきたことを身に染みて理解している。
 その為作戦は立ててはいない物相手がどのような作戦を立て、 どのような行動をしてくるかについてはおおよその予測は経てている等の必要最低限の事だけは、 ちゃっかり考えては至りするのだ。
 
 「まあそもそも俺は今回“糸”が使えないわけだし、 剣も真剣じゃないから床に突き刺して杖の代わりに使うこともできないわけだからな。 そうなると必然的に最初の位置から俺は動けないわけだ」
 「そう言えばそうだったね」
 「おいおいシルフィ。 まさか俺が動けない事忘れてたのかよ……」
 「えへへ……」

 本気で忘れていた様子のシルフィに少々彼女の将来が心配になり始める優。

 「そういえばルドルフの相方って何者なんだ?」
 「ええと……確かカンナ……カンナ・アインだったかな?」
 「カンナってことは女性なのか?」
 「そうだよ? もしかしてお父さん気づいてなかったの?」
 「いや。 だってあの恰好見れば誰だって男だと思うだろう……」

 優がルドルフの相方を男性だと思うのは無理もなかった。
 何せ彼女は全身を深緑色のフルプレートに身を包んでおり、 その容姿は全く想像することはできず、 それどころか声もフルプレートのせいでくぐもっており、 肉声を正確に確認することもできなかったのだ。 

 「もう。 お父さんは鈍いな。 歩き方を見れば女性だってすぐわかるじゃん」
 「いやいや!! 歩き方で性別を理解しろってそんな事できるわけないだろう!!」
 「そう? 私もお母さんもわかるんだけどなぁ……」
 「お前ら親子何気に凄い特技持ってんだな」
 「えへへ。 シルフィ凄い?」
 「ああ。 凄い凄い」
 「なら!! なら!!頭撫でて!!」

 シルフィは、 自身の頭を優の前に出すと早く撫でるよう優に促す。
 優もそこまでされて引くわけにはいかなかったので、 シルフィの頭を優しい手つきで撫でてやる。
 
「えへへ……」
「なんだ変な声出して?」
「だって私お父さんにこうやって今まで撫でられいってずっと思ってたから……」
「シルフィ……」

 シルフィのその言葉は、 優の心に予想以上につきささった。
 優とて親の愛を知らず育ってきた子供だ。
 だからこそ彼女が今まで一体どのような気持ちで生きてきたのかは、 他の人間に比べてわかるつもりでいた。
 そして何よりこんな碌でもない自分を“父親”と呼び、 慕ってくれる彼女の気持ちを裏切ることは自分にはできないと思ってしまったのだ。

 「お父さん?」
 「シルフィは……さ……この城から出たいと思ったことはあるか?」
 「お城から? う~ん……」

 シルフィは今までそのようなことを考えたことがなかったのか首を何度も捻り、 難しそうな顔をしていた。
 そんなシルフィの様子に優は、 いささかの可愛らしさを感じつつも、 彼女はやはりどこか歪に育ってしまったのだと知る。
 そもそも人間は、 自由を愛する生き物だ。
 それは彼女が例え優とは異なる種族であるエルフであったとしても変わらないと優自身は考えているし、 そもそも自分の好きなように生きていいと言われて迷うほうがおかしいのだ。
 にもかかわらずシルフィは、 そんな当たり前の事実にいかにも真剣な表情で悩んでいた。
 その事実は、 彼女が他の人達とは違うことを決定づけるのに他ならないことであった。
 そして彼女をそこまで歪ませてしまったのは、 紛れもなく優のせいである。
 正確には“前世”の優ではあるのだが、  “前世”が悪いから“今世”の自分は悪くないなどそんな言い訳じみた論理を優は、 認めるわけにはいかなかった。
 
 「そんな早急に答えを出さなくてもいい。 何。 まだ時間はあるさ。 でもさ。 もしシルフィがこの城から出て広い世界を見たいと思ったのならその時は俺がシルフィをここから……この城からつれ出してやるよ」
 
 優のその言葉は嘘偽りない紛れもない本心から出た言葉であった。
  そしてその優の言葉は、 シルフィに多大な動揺を与えた。
  何せ優は今目の前でいずれこの城から出ていくと言ったのだ。
 それは彼女の母親であるティアの願いとは、 真反対の物なのだ。

「それって……お父さんはいつからここからでて行っちゃうってこと?」
「ああ。 俺にはやることが……やらなくちゃいけないことがあるんだ」
「でも……ここを出るってことはお母さんはどうするの?」
「それは……」

 シルフィのその言葉にに優は言葉を詰まらせた。
 シルフィは沈痛な面持ちでさらに言葉を続ける。
 
「お母さんを置いていくなんって絶対ダメ!! だって最近のお母さんお父さんが来てから本当によく笑うようになったもん!!  お父さんは知ってる? お母さんお父さんが来る前まで夜ずっと一人で泣いてたんだよ? 私も一杯慰めたよ? でもダメだった……お母さんにはお父さんが必要なの。 だからお母さんを置いていくのだけはダメなの……」
 「シルフィ……」

 シルフィの今の表情は、 今まで彼女が優の前で見せていた者とは対極の物であり、 その悲痛で今にも泣き崩れて強いそうな彼女の必死の言葉に優の心は、 大きく締め付けられた。
 そもそも優彼女に言われるまでもなくティアが自身にかなり依存していることは、 気づいていた。
 そしてそんな彼女がどんな手を使おうと自分をここから出す気はないことは、 彼女と初めて会ったときに確信していた。
 それもこれもすべては“前世の自分”の失敗が根本的な原因であり、 仮に“前世”の自分を殴れるなら全力のフルスイングをお見舞いしてやりたい気分だった。
 だが優は今を生きるん人間。 過去を振り返ってもどうにもならないことは知っている。
 そもそもティアが何故自分にここまで依存するのか優は全く持って知らない。
 いや。 知ろうとしなかったのかもしれなかった。 何せ優には、 今まで彼女に自身の過去に尋ねる機械などいくらでもあったはずなのだ。 本来なら脱出経路を探る前に彼女との“過去”に決着をつけるべきだったのだ。
 それを今更ながら知り、 優は自身のこれまでの行いを恥じずにはいられなかった。
 
「分かったよシルフィ。 お前もティアの事も含めて後は、 俺が何とかする。 だからお前はいつも笑っていてくれ。 その太陽に眩しい笑顔を決して曇らせないでくれ」
 「お……父……さん?」
 「なんだ?」
 「なんで泣いてるの?」
 「え……」

  優の瞳からは、 大粒の涙が流れていた。
 何故涙が流れているのかそれは優自身でも分からなかった。
 だだ優は一つだけ確信できることがあった。
 それは今、 ここで、 自分が、 何をし、 何をなさなければならないのかについてであった。
 その確信が今までさんざんう打ちのめされ、 弱っていたた優の心に火をつける。

 「お父さん大丈夫?」
 「ああ。 大丈夫だ。 それよりも今はぱっぱとこの決闘を終わらせに行こうか。 準備はいいかシルフィ?」
 「うん!!」
 
 優の尋ねに自身ありげに答えるシルフィ。
 そんな2人の正面には、 既に準備を終えたのか凄まじい殺気を纏ったルドルフと彼の相方であるカンナ・アインの姿があった。

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