職業執行者の俺、 天使と悪魔と契約して異世界を生き抜く!!(旧題: 漆黒の執行者)

サクえもん

第四十七話 火山エリア

 時は移り俺が、 リヴァイアサンを倒してから五日たっている。
 あの後俺が動けるようになってから、 すぐにルーたちと合流したのだが、 ルーたちと会ったときエレンが、 俺から離れようとしなかった。
 その状況を見た、 三人からは、 色々言われた。
 マチルダは、 特にひどいことは言わなかったが、 ミスティとルーには、 女たらしだのさんざん言われた挙句、 全身を二人によって痛めつけられた。
 そん時エレンは、 マチルダの対し、 俺が一体どんな人間で、 どんなに魅力的かを話していた。
 正直恥ずかしいので、 その話を何とか止めようとしたのだが、 二人からのお仕置きがすさまじく、 止めることは、 叶わなかった。
 そこからは、 パーティーの空気は、 最悪だった。
 マチルダに対しては、 特になかったのだが、 エレンとルーとミスティは、 互いがモンスターと戦闘しているときに互いに邪魔をしあい、 時には命にかかわるようなこともあった。
 その時俺は、 三人にそれをやめ、 協力するよう言ったのだが、 三人とも全くきく耳を持たず、 俺のせいだと言ってきた。
 その時俺は、 珍しく少しへこんだ。
 マチルダは、 そんな俺の状況に同情し、 慰めてくれた。
 だが、 その行為は、 さらに三人を怒らせ、 俺は、 一晩中お仕置きされた。
 また、 エレンの性格の変わり方が凄まじかった。
 はじめあったころは、 皆仲良くしようという空気をだしていたにも関わらず、 今では反対で俺が、 他のパーティーメンバーと仲良くするのもいやらしい。
 まさか、 恋した乙女がここまで変わるとは、 思わなかった。
 そんなバラバラの状態では、 あったが俺たちは、 八十層まで何とかたどり着いた。
 81層は、 火山のエリアのようだ。
 ちなみに41~60は、 森。 61~80層までは氷河だった。


 「81層は、 火山なのか! これはついてるぜ!」
 「なんでだ?」
 「俺は、 昔から熱いところに住んでたから、 こういった地形の場所は、 得意なんだぜ!」
 「そうなのか。 それは、 心強い」
 「ちょ、 なんでこんな暑い中あんたは、 そんなに元気なのよ……」


 そう言ったのは、 耐火服を身に着けたミスティだ。


 「熱いのには、 同意します。 それとミスティさん。 熱いのなら帰ってもいいんですよ?」
 「ねぇ。 優。 早くここから上に行きましょう? 私も熱いのは、 さすがにつらいわ」
 「そ、 そうだな」


 そこから俺たちは、 なるべく体力を消費しないよう歩き続けた。
 火山のエリアでは、 基本マグマを吐いて攻撃してくるモンスターが、 多かった。
 また、 火山のエリアは、 夜でも明るいので徹夜で進むことになった。
 そして、 俺たちがは、 今99階層までやってきた。
 

 「やっとね……」
 「ええ、 あと一階でこのダンジョンの主がいる部屋です……」
 「どんな奴なのか楽しみだぜ!」
 「そう言えば、 エレンとマチルダは、 なぜこのダンジョンの調査メンバーに参加したんだ?」
 「私は、 ここで得た宝を売って、 そのお金を故郷に寄付するつもりできました」
 「俺は、 ただ単に強い奴と戦いたいからだぜ!」
 「そ、 そうなのか」
 「そう言う優さんは、 どうなんですか?」
 「それは、 俺も気になるぜ」
 「俺がこのダンジョンに来た理由は……」
 「天使と契約して更なる力をつけるためでしょ?」
 「なんでミスティさんが知ってるんですか?」
 「それは、 前に優本人から直接聞いたからよ」
 

 そう言ってミスティは、 エレンに向かって勝ち誇ったような顔をした。
 それに対しエレンは、 よほど悔しかったのか、 ほっぺを大きく膨らませている。
 そのエレンの様子は、 まるでハリセンボンのようで少し笑ってしまった。


 「なんで笑うんですか!」
 「悪い悪い。 エレンの怒り方が、 少し可愛かったから、 ついな」
 「そ、 そうですか! えへへへ」
 

 エレンは、 ふくれっ面をやめ今度は、 笑顔になった。
 それとは、 対照的にミスティが不機嫌になり、 俺の足を何度も踏んづけてきた。


 「どうやら大きなモンスターが、 来そうだな」
 「そうみたいなんだぜ」


 俺とマチルダが、 戦闘態勢に入った瞬間、 異変は起きた。
 火山が噴火し、 そして中から一匹の大きな竜が出てきた。


 「あれは、 なんだ?」
 「あ、 あのモンスターの名前は、 ファフニールだぜ。 ちなみに奴も優が倒したリヴァイアサンと同じで測定不能の魔物なんだぜ」


 ファフニールとは、 かなり距離があったためそれほど大きいように見えなかったが、 奴がこちらに近づいてくるにつれて俺の認識が間違いだったことに気づいた。


 「興奮してきたんだぜ! 最初の攻撃は、 俺から行くんだぜ!」


 そう言いなが、マチルダは、 大きく飛び上がり、 ファフニールの顔に向けて拳を振るった。
 マチルダの職業は、 拳闘士だ。
 拳闘士は、 名前の通り己の拳を武器とする職業で、 マチルダの場合手に手甲をつけている。


 「固すぎなんだぜ!」


 どうやらマチルダの攻撃は、 奴に効果はなかったようで、 マチルダは、 そう言っ後奴の大きな尻尾の攻撃をくらい吹っ飛ばされた。


 「マチルダァァァ!」


 クッソ! またはぐれた! 今までは、 半分で分かれてたからいいが、 今回は、 マチルダ一人だ。
 しかもマチルダは、 奴の攻撃をなんの防御もせず受けた。
 このままいくとかなりマズイ。


 「エレン、 ミスティ、 ルー! ここは、 頼む! 俺は、 マチルダを探しに行ってくる!」
 「え、 ちょっと優!」
 「優さん! 行かないで!」
 「優! 」


 俺は、 三人の声を無視し、 マチルダが吹っ飛ばされた方向へと向かった。
 なぜ俺が、 三人に後の状況を任せたかと言うと、 俺があの中で一番早いのもあるが、 単独戦闘能力では、 俺が一番高いのもある。
 俺は、 マチルダの名前を叫びながら、 ダンジョン内を走り回った。
 途中モンスターにも遭遇したが、 俺はそいつらの攻撃を無視して探し続けた。
 そして、 マチルダは、 火山の壁にめり込んでいて、 気絶をしているようだ。
 俺の見た限り、 マチルダの内臓は、 確実に破裂している。
 そして、 全身の骨も折れており、 このままだと確実に死ぬ。


 「おい! マチルダ無事か!」
 「グフッ……。 すまないな優。 少し失敗しちまったみたいだぜ」
 

 そう言った後マチルダは、 口から何度も血を吐いた。
 俺の見立て手では、 このままだとマチルダは、 五分と持たない。
 俺もリヴァイアサンを倒したせいで少しおごっていたようだ。
 まさか測定不能のモンスターが、 ここまで強いとわな。
 この分だとルー以外の二人も無事なのか心配になってきた。


 「優。 俺は、 置いていくんだぜ……。 多分俺は、 ここで死ぬ。 だからもうほっておいてくれなんだぜ……」
 「どうしたんだよマチルダ。 お前がそんな弱音らしくないぞ?」
 「俺は、 優みたいにとんでも再生能力があるわけじゃないんだぜ? そんな俺の体の状態は、 俺が一番理解してるんだぜ……」
 「いや、 お前は一つだけ助かる方法がある」
 「嘘は、 やめて欲しいんだぜ……」


 そう言った後、 マチルダは、 さらに吐血をし、 目がだんだん虚ろになり始めた。


 「マチルダ。 今から俺がお前にすること恨んでもいいからな」
 「何を言って……」


 俺は、 意を決しマチルダにキスをした。
 そして口に含んだ、 エリクシルを流し込んだ。
 俺が、 今マチルダに口移しで飲ませたものは、 伝説の秘薬と言われるエリクシル。
 俺は、 これをダンジョンの宝の中から手に入れていた。
 そして、 本来ダンジョンの宝は、 城に献上したものの内から、 いらないと判断されたものしか使っては、 ならない約束だった。
 だが、 俺は、その約束を無視した。
 そして、 俺は、 マチルダがエリクシルを完全に呑み込むまでキスを続けた。
 エリクシルの効果は、 すさまじくマチルダの体は、 瞬時に回復した。


 「悪かったなマチルダ。 お前今までキスしたことなかったんだろ? それなのにお前の貴重なファーストキスを奪っちまって……」
 

 俺が、 そう言って謝ろうとした瞬間マチルダは、 俺に抱き着いてきた。


 「何言ってるんだぜ! そんなの優が気にしなくてもいいんだぜ! そんなことより俺の命を救ってくれてありがとうなんだぜ! 本当は、 俺は、 もっと行きたかったんだぜ。 でも諦めるしかなかった。 そんな状況を優は、救ってくれたんだぜ! エレンの言うとおり、 優は最高の男なんだぜ!」
 「わ、 わかったから離れろ!」
 「それで優は、 俺に何か飲ましたみたいだが、 一体何を飲ませたんだ?」
 「エリクシルだよ」
 「え?」
 「エリクシルをお前に飲ませたんだよ」
 「優! それは……」
 「ああ、 わかってる。 俺は、 約束を破った。 だがこれは、 俺の独断でお前には、 何の罪はない。 だから罰せられるとしたら俺だけだから安心し……」


 俺は、最後まで言い切ることができなかった。
 なぜ言い切ることが、 できなかったかというとマチルダから強烈なビンタをされたからだ。


 「優のアホ! なんでそこまでして俺の事を助けたんだ! 優は、 知らないのか! 今の女王は、 残虐で罰を与えられたものの中で今まで生きて帰ったものはいないのに! それなのに!」
 「ははは、 大丈夫だよ。 お前も俺の体は、 知ってるだろ?  だから俺は、 たとえどんな拷問をされようが死なないよ」
 「だ、 だけど……」
 「いいから。今は気にするな。 そんなことより、 早くルーたちと合流しようぜ」
 「……」


 マチルダからは、 何の返事も帰ってこなかった。



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