職業執行者の俺、 天使と悪魔と契約して異世界を生き抜く!!(旧題: 漆黒の執行者)

サクえもん

第六話 この世界のことについて

 優が図書館に入るころにはすでにクラスメイトのほとんどが集まっていた。
 ただクラスの男子は優がシアと仲よさそうに話している様子を見て、 嫉妬や怨嗟の視線を浴びせていたのだが優はたいして気にした様子も見せず、 雪達の事を探していた。


 「優君!」
 

 雪は優の体の事が余程心配だったのか抱き着いてきた。
 優は雪のこの行動に少々面食らった。
 雪はかなり恥ずかしがり屋の少女である。
 そのため普段人前でこのようなことはしてこない為、 なぜ雪がこのような事をしてくるのかよく理解できなかった。


 「なあ雪急にどうしたんだ? いつものお前らしくないぞ?」
 「そ、 そうかな。  ははは……」
 「そうだよ。 もしかして体の具合が悪いのか? それなら……」
 「わ、 私は全然健康だから! 気にしなくていいから!」
 「雪がそこまで言うなら......」
  「ねぇねぇ。 そんなことよりも優君の体は大丈夫だったの? 武器庫に入ったら急に気絶しちゃったから私ずっと心配していたんだよ?」
 「あー、 とりあえず大丈夫だよ。 俺が気絶した原因についても後で三人にはしっかり話すから今は我慢してくれ」
 「わかった。 なら今は我慢するよ」
 「あのそんなことより雪様はいつまで優さんに抱き着いているんですか?」


 今のシアの顔は笑顔ではあったのだが、 目元だけは全く笑ってはいなかった。
 雪はシアのそんな様子に、 笑みを浮かべながら今よりさらに優に密着した。


 「別に王女様には、 関係ないでしょ? 今は私と優君が話をしてるんだから邪魔しないでくれませんか?」


 雪はシアに対しかなり対抗意識を持っており、 シアの事を挑発し始めた。
 挑発されたシアはというと心の奥底で我慢していた感情をつい吐き出しそうになったがそのことに気づいた優が雪から急いで離れたことによりなんとか踏みとどまった。
 ただそんな優の様子に雪は、 優が自分から離れた理由がシアの為だと気づきシアの事を強く睨みつけた。
 シアもそれに負けじと睨み返したのだがその光景を周りで見ていたクラスメイト男子達の半分以上は、  「シア様たちが見ていない間に確実に奴を殺す」
 「楽には殺さん貴様に生きてきたことを後悔させてやる」
 などとにかく物騒なことを言っており、 そんな光景に優はため息しか出なかった。


 「 そう言えばさっきから姉さん達を見かけないけど何処に行ったんだ?」
 「お姉さん達ならあそこで本を読んでいるみたいだよ」


  流石は天才とも言うべきか詩織と胡桃の知識への欲望はすさまじく、 今は優よりもこの世界の知識の方が優先順位が高いようで、 無我夢中で本を読んでいた。
 その様子に優は少し二人の事を見直した。


 「そういえば今俺たちは何をする時間なんだ?」
 「ええとね。 今はここにある本を自由に読んで、 この世界のことについて知識をつける時間らしいよ」
 「そうなのか。それならシア。 一つ質問があるんだけどいいか?」
 「ええ。 別に構いませんよ」
 「この世界の言語って俺たちの世界の物と同じなのか?」
 「いいえ。 違いますね。 でも皆様の場合は異世界召喚をされた際に自動でこの世界の言語について習得されています。 そのため読み書きすべてすることが可能です」


 読み書きができるということは人が生きていくことでとても重要なことである。
 そのため優は城から抜け出す際このことについてかなり不安に思っていたのだが、 ただの杞憂であったようだ。


 「なるほどな。 それとほかの連中は自分の奴隷を連れていないようだがなぜお前はここにいるんだ?」
 「それはですね。 私が優さんから離れたくないからです。 ですのでこの世界のことについて知りたいときは、 私に聞いてもいいのですよ?」
 「そ、 そうか。 それとこの世界のことについては、 自分で調べるから大丈夫だ。 それと雪。 今の時間は、 魔法の種類やスキルなどについて調べてもいいのか?」
 「うん。 調べてもいいみたいだよ」
 「了解。 なら俺は、 魔法の種類やこの世界のことについて調べてみるわ」
 「じゃあ私はスキルについて調べようかな。 後で優君が調べた内容教えてね。 私も教えるから。 そうゆうことだから、 王女様は周りの困ってる人でも助けててね。 じゃあ行こうか優君!」
 

 そう言うと雪は優の腕を引っ張り、 奥へ行こうと促した。
 そんな様子にシアは嫉妬にかられ、 周りの物に当たりそうになったがそんなことをして意味がないと理解している為、 必死に堪えていた。
 優はそんな二人の様子になぜここまで雪とシアの中が悪いのか理解できず、 困惑していた。 
 ーシアが雪の事を嫌う理由はまだ理解できる。
 ーだが雪がシアに対しあそこまで敵対心を剥き出しにするとは思ってもみなかった。
 優はそんな事を思っているのだが端から見たら理由など明確であると言わざる得ないのだが優がそのことに気づくことはなかった。
 だがいつまでもそんなことを考えているわけにはいかないと判断した優は先ほど雪と打ち合わせしたとおりに各自魔法やスキルの事についてひたすら調べ続けた。
 その結果様々な事実が判明した。
 まず魔法についてだが自身のレベルに関係しれ覚えられるらしく、 下級魔法は、 レベル1でも覚えられるのだが中級魔法ではレベル30は必要であり、 一番上の上級魔法にもなるとレベルが75必要のようだった。
 また魔法はレベルだけでは最低条件を満たしたにすぎず、 そこから自身の覚えたい魔法を使うことによって発生する現象をイメージしなければならなければならない。
 ただ初級魔法に関しては発動したい魔法の名前だけ言えばその魔法は発動するようだった。
 だが中級魔法以上になると魔法を発動する際詠唱と呼ばれる物が必要になる。
 スキルの習得方法については、 レベルが上がると自動的に覚えるスキルもあれば、 特別な条件を満たさなければ覚えられないスキルがあり、 武器スキルは後者に当たる。
 また適性のある武器はその者が今までどんなにその武器を使用したことがなくとも最初からそこそこ使えるのだが、 それとは対照的に適性のない武器はいくら訓練しようが全く扱えるようにはならないようだ。
 そしてここがかなり重要なことなのだがこの世界にはゲームなどではよくある武器の熟練度なるものは存在しておらず、 ステータスカードにも使用回数なども表示されない。
 そのためその人がどれだけその武器を使用しているかは、 ステータスカードを見ただけでは判断できないのである。
 その為見た目はかなり貧弱であり、 いかにも弱そうな人が実は剣の達人だったという場合もあり得るのである。
 ここまでの時点で優は当初の目的を達してはいたのだが時間が余っていたためついでに自分たちのいる世界の事についても調べ終えていた。
 その結果この世界には優たちが所属するヒューマンを除いて、 五つの種族がいることが判明した。
 5つの種族のうち、 一つ目は異世界と言ったら当たり前にいると言っても過言ではないエルフと呼ばれる種族である。
 彼らの特徴としては緑色の髪に、 青色の瞳をしており、 耳が人間に比べて長いことである。
 寿命は人間とあまり差はないらしく、 主に弓や魔法の扱いにたけているらしい。
 二つ目は魚人と呼ばれる種族だ。
 彼らは青色の髪に紫色の瞳をしており、 人間とは違い体の一部に鱗が生えており、 人間の耳がある部分にはエラが生えており、 水中での呼吸が可能なようだった。
 寿命は人間の約半分であり、 主に槍の扱いにたけているようだった。
 三つ目の種族は、 竜人と呼ばれる種族だ。
 彼らの特徴としては、 頭からは角。 お尻からは尻尾が生えており、 成長すると自身を竜の姿に変身できるようと言ったことが最大の特徴と言える。
 そのためか他の種族とは違い、 自身の髪の色や瞳の色は多岐にわたる。
 寿命に関ては他の種族に比べ、 圧倒的に長命であり、 1000年生きている個体も確認されていた。
 そんな彼らは元々力が強いため得物は基本使用せず、 己の肉体を武器としており、 竜に変身した際は口からブレスと呼ばれる物を使用するようであった。
 四つ目はエルフと同じくらいメジャーな種族と言っても過言ではない獣人と呼ばれる種族である。 
 獣人とは名前の通り様々な動物の能力を持っ存在であり、 その動物の特徴によって見た目は様々であり、 戦闘スタイルもそれぞれ異なっている。
 また寿命は人間とあまり変わらない。
 最後の種族は魔族である。
 魔族に関しては情報が極端に少なく容姿などの情報も一切ないようだ
 ただ一つわかっていることと言えば魔族の国では力こそが正義であり、 魔王はこの種族のトップの存在であり、 魔族の国から別の国に向けて攻撃をしているようだ。
 またこの世界には、 当然モンスターいわゆる魔物と呼ばれる物も存在している。
 モンスターはダンジョンの中や森の中、 海の中などとありとあらゆる場所に生息している。
 ダンジョン主である天使や悪魔についてだが、 彼らの目的は一般的には不明である。
 ただし一説では彼らは人間を試しており、 仮に彼らを認めさせることができた場合はその悪魔や天使と契約よ言ったものが可能になると記されていた。
 そして仮に悪魔や天使との契約が成立した場合、 その時に得られる効果は絶大であり、 ステータスの大幅なアップと不死の存在へと生まれ変わるらしい。
 それ以外にもメリットは沢山さんあるのだが、 それは契約した天使や悪魔でそれぞれ異なるらしく、  正確に理解することはできなかった。
 また天使や悪魔の特徴としては背中に翼が生えており、 それにより強さが別れており、 左右に一枚ずつ生えている個体が一般的であるのだが、 最高レベルのクラスにの場合は左右で三枚ずつ翼が生えており、 その個体は、 通称“六枚羽”と呼ばれている。
 六枚羽の存在が唯一確認されたのは適正レベルが100のダンジョンのみである。
 

 「ふぅ。 もうそろそろ時間だな」


 優はひと息吐くと雪とシアを呼び自室に戻ろうとした。
 だがシアの周りには人だかりができており、 とても話しかけられる状況ではなかった。
 そのため優はシアに話しかけるのを後回しにし、 先ほどから無我夢中で調べものをしていた詩織たちに話を聞くことにした。


 「二人ともちょっといいかな?」


 すると二人の本は勢いよく閉じられ、 二人同時に優の方向に振り向き、 驚愕の表情を露わにした。
 それもそのはず二人は優に話しかけられたことにより優が戻ってきていることに初めて気が付いたのだ。


 「「優ちゃん(お兄ちゃん)! 気絶したって聞いたけど大丈夫なの!」」
 

 そのまま二人は勢いよく優に向かって思い切り抱き着いてきたのだが優は支え切ることは出来ず地面に倒れてしまった。
 

 「いたたたた……全く二人は流石に無理だって。 それと俺は大丈夫だから離れてくれないか?」
 「「嫌!絶対に離れない!」」
 

 2人は頑なに離れようとしなかった。
 その様子を陰ながら見ていた雪は怒った様子で勢いよく二人に近づき、引き離した。
 これに対し優は雪にお礼の言葉を言うと本題を話し始めた。
 

 「今日は三人に心配かけて悪かったな。 それでなんだが俺が気絶した理由について後で話そうと思うから後で俺の部屋に三人とも来てくれ」
 

 俺のその言葉に三人は満足げに頷いた。


 「そう言えば三人ともこれからどうするんだ? 俺はもう部屋に戻るつもりだけど?」
 

 すると三人ともどうやら自分の部屋に戻るつもりだったらしく、 途中まで一緒に行くことになったのだがその時シアがこちらに向かって走ってきた。
 どうやらシアは周りの人が手に負えなくなり逃げてきたようだったのだが、 どうやらそれだけの理由で逃げてわけではないようだった。


 「優さんはこれから私と二人だけで武器庫に言って武器を選んでもらいます。 そこで武器と防具を選んでもらおうと思います。 お三方は、 もうすでに武器と防具を選らんでいらっしゃるようなので、 お部屋に帰ってもらっても構いませんよ?」
 「「「私も一緒に行く!」」」
 「いえ、 用がない方は武器庫に近づくことは禁止されているので、 諦めてください」
 

シアがそう言っても三人とも譲らなかったのでこのままでは埒があかないと思った。


 「なあ三人とも。 ここはお願いだから我慢してくれないか? 後で三人の願いを何でも一人一つ聞くから」
 「「「わかった」」」


 その言葉に三人はあっさり納得した。
 だが優にとってこの方法は奥の手であり、 三人に今までこの方法を使って碌なことになった試しはなかった為、 優はできる限りこの方法を使いたくはなかった。
 だが今回の場合この方法を用いなければいつまで経っても話は進みそうになかったため、 優は断腸の思いでこれを使ったのである。
 結果としては三人は笑顔で優を見送っていたのだがその笑顔の裏には欲望が滲み出ており、 優は武器を選び終えてもあまり部屋に帰りたくない心境であった。

コメント

  • サクえもん

    ご指摘ありがとうございます。ご指摘して頂いた通りマイナーという言葉が本文で間違った意味で使われていました。恐らくはメジャーと書いたつもりがマイナーになっていた事にこの頃の私は気づかなかったのだと思います。今現在は既に修正致しましたので今後もこの様な事がありましたらご指摘して頂けると幸いです。

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  • ノベルバユーザー252041

    マイナーの意味間違えてない?

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