転移したらダンジョンの下層だった

Gai

二百二十七話速っ!!

「あいっ、変わらず厄介な魔法だな!!」

自身に向かって飛んでくる木の槍を避けながら目標のトレントに近づく。
ソウスケ自身も魔法を使えば難なく攻撃を防いで突進する事が出来るが、あえてそれをせずにトレントへ迫る。

(自分を鍛える為とはいっても、これ結構怖いな)

放たれる気は全て先が尖っている。
地面に突き刺さった木は半分ほどまで埋まっている。

それを見れば貫通力がどれほどあるのか一目瞭然。
ソウスケも身体強化を使い、魔力を使って体を守らなければ無傷で済むとは思っていない。

だから全てを躱す。
なるべく紙一重で避けはせず、しっかりと木の槍との距離を空けて躱す。

ソウスケの射程距離に入り、木の槍では意味がないと悟ったトレントは即座に武器を木の鞭に変える。
これも中々馬鹿にならない威力を持っている。

そして微量にだが魔力を纏って強化されている。

何故それを木の槍の時に使わなかったのか?
トレントの魔力量を考えればそう難しい事ではないのかとソウスケは考えたが、一先ず考える事を止めて攻撃を開始する。

「おっ、らああ!!!」

魔力を纏った木の鞭による攻撃を認識した瞬間にソウスケは二つの斬撃を放つ。
飛び出した斬撃は魔力を纏った木の鞭を難無く斬り裂き、トレントが振りかぶった鞭は見事に空を切った。

その隙を突いてソウスケは一撃を決めようとしたが、斬り裂いた木に嫌な予感を感じ、直ぐにその場から上に跳躍する。

「・・・・・・そりゃそうか。あんだけ木の槍を放って体積が減ったようには感じないからな」

ソウスケによって斬られた木の鞭は直ぐに再生し、内側からソウスケに向かってもう一度放たれた。
しかしソウスケは既に上へ跳んでおり、またも空振りという結果になる。

「ウィンドサークル・・・・・・いや、チャクラムか?」

ソウスケが右手から放たれた
風のチャクラムはトレントの四方八方に伸びている枝を切断し、丁度体の半分ほどの一で止まる。

「縮め」

ソウスケが合図をした瞬間、ウィンドチャクラムは一気に縮んでトレントの体を真っ二つに斬り裂いた。

ほんの少しの間、トレントは自分の体がどうなったのか解らなかったが、自身の視界が傾いた事で状況を把握し、どうにかしようと考えたその直後に意識が途切れた。

「再生のスピードが異様に速かったから万が一と思って抜き取って正解だったな」

切断した木の鞭が高速で再生したのを見て、体が切断しても万が一離れた体同士が再生して接合するのではと考えたソウスケは地面に着地して直ぐに魔石がある位置を見抜いて無理やり抜き取った。

「確かにそのトレントの再生の速さを考えると魔石を抜き取って正解だったかもしれませんね。そういった類のモンスターがいない訳ではありませんから」

「へぇ~~~。ちなみにどんなモンスターなんだ?」

「代表的なのはスケルトン系ですね。先程の様に魔石を抜き取らなければ、骨がバラバラになった程度では直ぐにまた元に戻りますから」

「結果、魔石を倒すって形でしか倒せない場合が多いって事か」

バラバラになった骨が元に戻るまで多少のタイムラグがあっても、戦いの状況によって普通に危険な為、一般的な冒険者はスケルトン系のモンスターの魔石を諦めている。

それ故に魔石を必要とする錬金術師達からは需要が高くなっている。

「・・・・・・なぁザハーク。さっきから魔石を凝視してるけどどうしたんだ?」

「イヤ、ソノ・・・・・・マセキガウマソウニミエテ」

ザハークの言葉にソウスケとミレアナは顔を見合わせる。

ザハークが嘘をつくような・・・・・・そもそも冗談を言える程の知能がまだないので、その言葉が嘘ではないだろうと思ったが、魔石を食べるという行為に疑問しかなかった。

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