異世界を楽しみたい転生者

Gai

少年期[317]進化していたので

盗賊達がため込んでいたお宝の中には予想通りゼルートが望むような物は無かった。
しかしそれでも日用品や変えのきく武器が多数に金貨や銀貨もそこそこな量。

(正直金はオークションで儲けた分を除いてもかなりの額が手元にある。何か金でしか解決出来ない状況の時には役立つ。ただ、それ以外にも使える道があれば良いんだが・・・・・・またオークションに参加してみるのもありか?)

珍しいマジックアイテムの道具や武器は勿論欲しいと思っているが、それ以外の出店品にも興味はある。

「何を考えているのゼルート?」

「金があり過ぎてどうしようかって話だ」

「・・・・・・それ絶対に私達以外の冒険者がいる前で言わない方が良いわよ」

「それぐらい解ってるよ」

目の前で悪気が無かったとしてもそんな発言をされればゼルートだってイラッとはする。
自分が金を持っていない立場であるなら殺意すら沸くと。

「ゼルート様は何かやってみたい事はないんですか?」

「やってみたい事なぁ・・・・・・無い訳では無い。けど、それを始めるにはまだ経験が全然足りないし、歳も若すぎる」

老後にやってみたい事があり、それを行う為に金がかかる事も知っている。
ただし老後な為、今始める事では無い。

「ゼルートって、人に何かを教えるのが好きだったりする?」

「どうだろうな。自分がしっかりと理解している事を教えるのは確かに好きかもしれない。教えて相手が理解してくれたらより嬉しい」

前世では数学が得意だったゼルートはよく友達に解き方を教える事があった。
その時に感じは未だに覚えている。

(俺が老後にやりたい事と見事に重なってるな)

「というか、良く分ったな」

「ただの勘よ。ゼルートは気が知れた相手なら色々と教えそうな感じがするのよ」

「・・・・・・まぁそうかもしれないな。でも色々つっても、少し考えれば考えつきそうな事しか教えないと思うぞ」

「その少し考える事が普通の冒険者達には無理なんじゃないかな? ほら、ゼルート様は一応貴族な訳だし他の冒険者と比べてきっと頭が柔軟なんだよ」

一応貴族なゼルートだが、発想だけなら貴族よりもぶっ飛んだ物が出るかもしれない。

(色んな考えは思い付くかもしれないが、機転が利かないというか・・・・・・とりあえずそこまで柔軟では無い気がするな)

「あっ、サーロングタイガーの方は既に解体が終わってるみたいだね」

アジトを出ると解体を終えたゲイル達が待っていた。
お互いに労い合うと、ゲイルはサーロングタイガーの肉と牙や爪を渡し終えると、おそるおそるといった表情で焦げている面が多々ある皮の部分を渡した。

「申し訳ありません、皮も使える事が多いというのに相手の戦い方に感化されてつい、素材の事を忘れていました」

「いやいや、そんな気にする必要ないから頭を上げろ。それに全部が駄目になってる訳じゃないんだし。寧ろ上出来だって。だからそんな落ち込むな」

ゲイルの感化されたという言葉からゼルートは皮の焦げ跡がどういった攻撃でこうなってしまったのか大体を理解した。

(火・・・・・・まてよ、雷の方かもしれないな。サーロングタイガーが足に雷を纏って攻撃して来たからゲイルも感化されて雷を腕や足に纏って攻撃したってところか)

正直今のゼルートにはそこまで皮の需要がある訳では無いので全くがっかりしていない。
それより牙や爪が無傷で残っていた事が嬉しいと感じている。

「にしても結構短時間で終わってたよな。サーベルタイガーの上位種だからランクはBだったんだが、そんなに直なかったのか?」

「おそらくまだ進化したてだったのと、今まで自分よりも強い相手と殆ど戦ってこなかったと思われます」

「・・・・・・その予想が当たっていればあまりサーの名前はふさわしくない様に思えるな」

とても貴族とは呼べないのではとゼルートは思ったが、よくよく考えればそうでも無かった。

(貴族の悪い部分を考えればそういうところがあっても可笑しくは無いか。それにゲイル相手に一歩も引かずに戦ったみたいだから、ちゃんとした誇りはあったんだろう)

矛盾したような考えに思えなくも無いが、ひとまずあっさりと勝負がついた理由は判明した。

「ところでゼルート、倒した魔物はサーロングタイガーだから依頼の対象にはならないんじゃないか」

「・・・・・・・・・・・・やっべ、完全に依頼を達成した気でいたわ」

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