異世界を楽しみたい転生者

Gai

少年期[313]足掻くなよ

「敵はガキが二人に女が一人、ビビる必要はねぇ!!! ぶち殺せええええええ!!!!!」

「「「「「「おおおおおお!!!!!」」」」」」

リーダー格の男が仲間を鼓舞して士気を高める。
しかし盗賊と対峙する三人の眼は冷ややかな物だった。

「目の前の仲間の屍を見てよくそんなに前向きでいられるな」

「量で押し潰せば質を上回れると思われるのは少し不満ね」

「なんでそこまで頑張ろうとするかな? どう足掻いても勝つ事は無理なんだから諦めて僕達に殺されれば良いのに」

斬撃を繰り出して胴体を真っ二つに、刺突を放ち脇腹に大きな風穴を、伸びた十̪本の指が重要な期間を刺し潰す。
後方から迫り来る盗賊達の目の前に為す術も無く殺たれた仲間の屍が既に数十とある。

それでも盗賊達は逃げようとしない。特段盗賊としての誇りなどがある訳では無い。
単純に逃げ道が無い。

出入口は一つしかない為、このままゼルート達を中に入れてしまえば全滅は免れない。

「諦めが悪いねぇ君たち。どう足掻いても僕とゼルート様とアレナさんには勝てないのに」

「黙れクソガキが!!! 砕け散れええええ!!!!」

「それは無理な相談って奴だね」

ラームは盗賊が頭部目掛けて振り下ろしてきた大斧を左手で軽々と受け止める。

「なぁっ!!?? お、俺の斧が・・・・・・」

「ちょっと借りるね」

盗賊の手から大斧を引っこ抜いたラームは盗賊を蹴り飛ばし、大斧を回転させながら集団に投げつける。
腕力に関してはゼルートよりも見た目によらないラームの投擲は見事に盗賊達を斬り裂き、吹き飛ばしていく。

「あっ、これじゃ死んでるかどうか確認するの面倒だなぁ・・・・・・でもよく見れば体の一部が欠損してるから出血多量で死んじゃうか」

運良く外へ出られたとしても、ゲイルにラルとルウナがいるためラームは安心して次の盗賊を狩る。


「殺るのは簡単だけど、こうも多いと面倒っ、ね!!!」

長剣を縦に横に斜めに振り、あらゆる急所目掛けて剣先を飛ばす。
時には蹴りを使い、胸骨や肋骨を折れば内臓に突き刺さり重傷を負わせる。

「サーロングタイガーをテイムしていた事で商人を襲う確率が上がって、自然と他所から集まるようになったのかしら」

時に火や雷の槍を放ち炎傷、雷傷を負わせて行動不能にさせる。

「調子に乗ってんじゃねぇぞクソアマがああああ!!!!!」

「別に調子に乗っていないのだけど。あなたこそ、もう少し自分の実力を過信せず訓練したらどうかしら」

もう遅いけどと思いながら、アレナは盗賊の攻撃を避けて両足を切断する。
アレナはまだ掠り傷一つ負っておらず、顔に付いている血は全て返り血。

そんな上等な結果を出し続けながらもアレナは足りないと感じていた。

(まだまだ足りない。ゼルート達の横に立ち続けるには足りない)

さらなる力を欲するアレナに一つの戦いが頭の中に浮かんだ。

(・・・・・・試してみましょうか)

肩に力を入れ、一気に脱力させる。
体の力が抜け切ったのを感じたアレナはゼロからマックスへ加速する。

斬る斬る斬る蹴る殴る蹴る避ける斬る避ける蹴る殴る。
全ての動きを連動させて一度も動きを止めず、流れを途切れさせない。

すると徐々に、徐々にだがアレナの最高速度が上がっていく。

上がり続けるアレナの速度に盗賊達の殆どは目で追う事が出来ずに死を迎えていった。



ゼルートは淡々と盗賊達を殺していく。

長剣で切り殺し、足で蹴り殺し、拳で殴り殺す。
冷たい目をしながら襲い掛かって来る盗賊を殺し続ける。

(・・・・・・あっ、あの短剣は少し上等か? あっちの槍は普通だな)

自身に向かって来る武器を鑑定眼のスキルを使わず目利きし、使えるなと思えば武器には触れず殺し、使えないと思えば躊躇わず武器ごと盗賊をぶち壊す。

(アレナとラームもそこそこ殺したし、もうそんなに残ってないだろう)

前方を確認しながらゼルートは三人の盗賊を纏めて斬り裂き奥へと進む。

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