異世界を楽しみたい転生者

Gai

少年期[289]気が引ける方法

「おま、嘘だろ・・・・・・てことはゼルート、お前らあの依頼を受けたのか?」

「・・・・・・おそらくガンツが言うあの依頼で合ってると思うぞ」

ガンツも冒険者としての生活が長いため、有名どころの貴族の家名は覚えている。
その中でもアゼレード家が冒険者に依頼する内容の中で、ある程度冒険者として活動していれば自然と耳に入る依頼内容がある。

「まさかあの内容をDランクの冒険者に頼むか・・・・・・いや、ゼルートは完全にその枠から外れているし仲間と従魔の力も平均より遥か上。それでもなぁ・・・・・・ゼルート、お前過去にダンジョンに潜った経験はあるのか?」

「いいや、少し前に初めて潜ったよ」

「だったら尚更謎だな。依頼内容は十分に達成できるかもしれないが、その経験が無いってなると指名する理由に欠けると思うんだがな・・・・・・」

ガンツが言いたい事はゼルートも分かる。セフィーレ達に十分なサポートをする事が出来たと思ってはいるが、何度もダンジョン探索を経験した冒険者のセフィーレ達を速く最下層まで案内出来たかもしれないない。
ただ、ゼルートがセフィーレの護衛としてが選ばれた理由は明確にあった。

「まぁ・・・・・・あれだ、色々あったんだよ。その依頼を受ける前にな」

「そうね、色々あったわね」

アレナがゼルートへ意味有り気な視線を向けるが、決してからかうものではなく、感謝の気持ちが籠った目線。
それに対し、ゼルートは顔を逸らす事無く受け止める。

「ってこなんだよ。別に問題を起こした訳じゃ無いぞ」

「そりゃあ、お前がこうして五体満足になってるんだから何か問題を起こしていないてのは分かるけどなぁ。まっ、お前さんの場合は問題を起こしても力尽くで揉み消しそうだけどな」

「ガンツ・・・・・・お前俺に対してどんなイメージを持ってるんだよ。てか、お前らもウンウンって頷くなよ」

ガンツの言葉に即座に頷いた二人を見てゼルートは溜息を吐く。
仮にそうなった時、ガンツの言う様に力尽くで揉み消す可能性が高いが、出来ればそれ以外の方法で片付けたいというのがゼルートの本音。

(結局のところ力尽くで解決する事に変わりはないかもしれないけど、出来れば敵対した権力者とかは暗殺って形で始末したいんだよな)

暗殺という形ならば敵対した権力者の死は広まれど、上手くいけば誰が暗殺したかまでは分からない。
しかしゼルート自身はそういった技能を身に付けてはいない。

(一番手っ取り早いのはそうい活動を主に行う錬金獣を造る事だよな。そうすれば俺に被害が及ぶ事は無い・・・・・・いや、もし錬金獣の存在が公に広まれば怪しまれるのは真っ先に俺か。ただそういった目的の為だけに奴隷を買うってのも気が引けるんだよな)

錬金獣は既に父親に一式を預けているため存在が既にばれている可能性が大きくある。
ならやっぱり暗殺に向いた奴隷を買う・・・・・・という即決には至れないゼルート。

(俺自身が暗殺しに行くのもなぁ・・・・・・絶対に正体がばれる気がする。いや、普段使わない属性の魔法を使っていればばれる事は無いのか?)

色々と考えは浮かんでくるが、取りあえず暗殺についての考えは放棄した。

「俺だってなるべく家族に迷惑掛けたくないんだから権力者と問題は起こしたくねぇよ。でも相手がゴミ屑みたいな奴だったら潰すしかないだろ」

「そのゴミ屑の度合いにもよるが、そう思うのは確かだと思う。ただそれを実行に移すかどうかはまた別だ。大概は報復を恐れて下手な真似はしないんだよ。権力者は手段を択ばないからな」

「それはそうかもな。ただ、貴族や豪商がいくら権力を持っていたところで、一対一で対峙すれば話は全く別だ。どれだけ強大な権力を持っていようが、殺してしまえばそいつにとって全てがパーになるだろ。それを教えてやれば良いだけだ」

ゼルートの持論、どれだけ強大な権力を持っていようとも、死ねば全てが無になる。結果、最後に物を言うのは権力の大きさでは無く個人の力。

「お前のその話だけ聞くと早死にしそうに感じるが、お前の場合は最後まで生き残りそうだな」

「色々冒険しまくって最後に老衰で死ぬのがベストだな」

口には出さなかったが、老衰の前に送り込まれた暗殺者に殺されそうだなとガンツは思った。

ちなみにこれらの会話はゼルートの風魔法により周囲の客や従業員には一切聞こえていない。

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