異世界を楽しみたい転生者

Gai

少年期[256]思考は変わらず

まずはオーガ四体がセフィーレ達へ走り出し、攻撃を仕掛ける。
全員が身体強化を使っており、拳や足には魔力を纏っている。もろに喰らえば確実に骨は折れる一撃。

だが、そんな攻撃をセフィーレ達に喰らわせるかと、三人と一体がオーガの攻撃を躱して一撃を加える。

放たれた攻撃に四体は後ろへ後退せざるをえず、標的を直ぐに自身へ攻撃を放った人物へ切り替え雄たけびを上げて突っ込む。

「・・・・・・随分とさっきまでの戦いで籠った熱が冷めていない様だな。まぁ、だからどうなんだという話ではあるが」

オーガと同じく身体強化を使ったゼルートは両手両足に炎を纏い、迫り来るオーガの拳を躱して蹴りを足にかます。
打撃プラス炎による痛みにオーガは顔を歪めるが、動きが止まる事は無く拳や蹴りを連続で繰り出す。

それに対してゼルートはそれらを全て躱し、もしくは捌いてカウンターを決める。
打撃だけでなく、時には手刀でオーガの皮膚を斬り裂いているため、オーガの体には所々血が垂れ流れている。
しかし、全てゼルートの思惑通りにいっている訳では無かった。

(俺の手刀で皮膚が斬れていない訳じゃない。しっかりと血は流れている。ただ・・・・・・あまりにも止血が速い。確か、交感神経が刺激されている時は血管が収縮されるって授業でやったな。だからそこまで出血しないのか?)

明確な理由は分からないが、仮説は出来た。
なのでゼルートは攻撃を全て打撃に切り替え、攻撃を中へと響かせる。

自身の魔力を操作し、攻撃を体内へ浸透させる事は出来るが、それだとほんの少しだけ時間が掛かる為ゼルートは体術スキルで得られる、発頸を全ての打撃に使用する。
効力は本来の使用からずれているので下がるが、手数が多いためオーガの骨にどんどん罅が入っていく。

オーガは体に響く痛みを誤魔化すように吠えながら攻撃の手を緩めずにラッシュを続けるが心に体が追いつかず、次第にスピードが落ちていく。

ゼルートはそれを見逃さず、横から迫るフックを左手で固定した右肘で受け止める。
その結果、ゼルートは吹き飛ばされることは無く、逆にオーガの左拳の骨は砕け、表情が大きく歪む。

そして初めてオーガのラッシュが止まり、その瞬間にゼルートはオーガの懐に飛び込んで右手に纏っている炎を、拳も回転させて腹を殴りつける。

「ガアアア、ア・・・・・・ァ・・・・・・」

腹に大きな穴を空けられたオーガは穴から大量の血を流し、その場に崩れ落ちた。

「炎を纏っていたからフレイムスクリューブロー? それともファイヤースクリューブローか? ・・・・・・いや、どっちともダサいから却下だな。にしても・・・・・・かなりしぶとかったな」

実際に戦いが終わるまでの時間は五十秒程であり、さほど長くは無いのだが三十秒程で終わらせるつもりだったゼルートとしては少し長く感じた。

「取りあえず終わったんだし、直ぐに助けに入れるように戻ろう」

アイテムリングの中へオーガの死体を収納し、ゼルートはオーガジェネラルと戦っているセフィーレ達の後方へ移動する。


「ふむ、こんなものか。これならロックパンサーの方が手強かったかもしれないな」

力は種族や体格差もあってオーガの方がロックパンサーと比べて高いが、動きの捉えずらさは圧倒的にロックパンサーの方が上であり、ルウナは直線的な攻撃しか繰り出してこないオーガの攻撃はとても読みやすいと感じた。

足の肉を抉ってから骨を折り、動けなくなったところで心臓に手刀を放った結果、皮膚硬化のスキルを持っているのにも関わらずオーガの皮膚はあっさりと斬り裂かれ、心臓から勢い良く血を吹き出して倒れ込む。

「無傷で勝てたは良いが、出来れば力勝負でも勝ちたいものだな」

攻撃方法は作戦的な部分があるのだが、思考は相変わらず脳筋のままセフィーレ達の後方へと向かう。

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