転生した先はダンジョンのラスボスだったけどとりあえず放棄する

ノベルバユーザー278774

これから

  まず、魔法使いに怖がられているので、人の姿に戻ることにした。この姿なら、そこまで怖がられることもないだろう。
  すると、魔法使いも少し緊張が解けたらしく、強ばった顔が少し緩んだ。というか、少し不思議そうにこちらを見ている、だが気にしない。
  そして、一旦声がしっかり出せるか確認して、少し遠くから魔法使いに話しかけた。
  「―――正直なところ、こちらとしてはあまり戦いたくないんだ。できればこの戦いをやめたいんだが.....お願いできないか?」
  できるだけ穏和に、かつ平和的に終わることを望んでそう声をかけた。すると魔法使いもこれ以上の被害は望まないということで、気絶していた剣士と格闘家をおこし、二人に話をすると、最初は騙し討ちのための策だと思われてしまったが、なんとか説得して帰ってくれることになった。
  青年は三人が部屋を出たのを見送って、見えなくなったのを確認すると、奥の玉座へ向かい、そこへ座ってひとつ考えなければならないことについて思索することにした。
(さて、これからどうするか。)
  これについてはまだラスボスとしてここに居座るという選択肢しかない。外に出たら人に見つかりやすくなり今以上に危険な目に会うことは想像に難しくない。
  では、そのラスボスとしての『在りかた』をどうするか。人に対して友好的であるべきか、敵対的であるべきか.....
  しかし、悩みに悩み、出た答えはかなりシンプルだった。それは―――――――――
  ラスボスとしてはあるが、できるだけ皆追い払う。というものだった。
  やはり普通の人間だった彼には元同族である人間に完全に敵対することはできなかった。
  それは甘さでもあったが、やはり人間の優しさというものなのだろう。
そうして、彼はダンジョンにてラスボスとして君臨し続けた。さまざまな冒険者達を相手にし、時に命がけで戦い、時折追い払おうとして仲良くなってしまった変わり者の人間と話をしたりしながら時間は流れ―――――――
  そうして、五十年の月日が経過した。

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