話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

漆黒王の英雄譚

夜叉神

第37話 アダムス遭難

「暇だなぁ………」

天空城の庭で空を見上げる一人の男、その名はアダムスという。
アルト達が天空城から帰った後、【絶剣】のメンバーは暇を持て余していた。
幸い天空城には様々な施設がそろっているため遊ぶものには困らないが、気分屋が多い【絶剣】のメンバーは既に飽きていた。

アダムスは酒を飲みながら庭を歩き回る。すると丘の上の一本の木の根元で一匹の巨大な竜が寝ているのを見つけた。

「んぉ?エルドラドじゃねぇか」

『む?なんの用じゃ?アダムス?』

黄金竜のエルドラドは竜の形態のまま話をする。

「お前も昼寝か?」

『まあの。今日は気持ちのいい天気じゃからの』

そういってエルドラドはあくびをする。

「なんか面白いことないもんかねぇ。旦那も嬢ちゃんたちと出かけっちまったし、フィゼルとカムイも下界に行ってるし、レンの坊主はずっと修行、アリアとアリスはこれまた下界に行ってるし、アドミレアはどっかに行っちまってるしな。暇で暇でしょうがねぇ。」

『そうか。我は寝るからな。』

そういうとまた寝てしまった。

「………はぁ。暇だなぁ。」

再びトボトボと歩き始める。
少し歩いた所でふと思い立った。

「俺も下界に行ってみるか」

そして天空城の転移装置を起動し、下界へ降り立った。

「どこだ?ここ」

アダムスが降り立ったのは薄暗い森の中。
足元には台座のようなものがあり、そこに書かれている魔法陣の上にアダムスは立っていた。

「転移魔法陣・・・には違いなさそうだな。けど、なんでこんなところに?」

考えてもここがどこの森なのかは分からないのでとりあえず歩いてみることにした。

「それにしても不気味な森だこと。」

一般人に悪影響を及ぼす程の濃密な魔力が漂い、空を見れば太陽に光などさす隙間もないほどの暗雲。
何故ここに天空城の転移魔法陣があるのかは分からないが、ここが危険な場所には違いない。

「早く出てぇことは出てぇんだが、ここがどこだかもわかんねぇしな」

天空城への転移用魔導具ならアルベルトから預かっているが、それを使用するには自分がどこにいるのかを把握しなければ使うことが出来ない。

「上から見てみるか」

そう思い飛翔魔法を発動させる。
一気に体が浮き上がり上空へと上がってきた。
そこでアダムスが見たものは・・・・・・


「おいおいおい!嘘だろ!」

どう頑張って見ても地平線まで森が続き、終わりが見えない。途中山があったり、崖があったりするが、ほぼ全てが木で包まれている。

「雲の上はどうなって・・・」

そう思いさらに上空、雲の上へと行こうとして、すぐに諦めた。

「なんつー巨大な積乱雲だよ。端が見えねぇ。天然の雷が絶え間なく落ち続けてるところに突っ込めるかっての」

そんなことが出来るのはアルトぐらいだろうと愚痴をこぼし、地面に着地する。

「困ったな。これじゃあ帰れねぇよ」

頭をポリポリと掻いていると何かが聞こえた。

「なんだ?」

発生源が遠いからか本当に一瞬何かが聞こえたのだが、それが何なのかは分からない。
じっと静かにして耳を済ませる。

そしてそれがなんなのかわかった瞬間、アダムスは走り出していた。

「ったく、なんでこんなところに・・・!」


アダムスの走る速度により周囲の木が多少吹き飛ぶが気にしない。
そんなアダムスが向かった先にあったのはーーーー

「どけ!この豚野郎がァー!」

「ブッ、ブビィぃぃぃぃ!!!」

真正面の豚面の魔物にドロップキックをかます。
アダムスは豚面の魔物、オークを着地のクッションにしたのだ。

「よっ、大丈夫か?」

オークに襲われそうになっていた女の子に声をかける。


「あ、あなたは・・・」

「その前にまずはこいつらを片付けないとな」

オークは1匹ではない。アダムスの出現に戸惑っていたオーク達は何とかまとまりを取り戻していた。

「お前達かなり高位のオークだな。ジェネラル・・・いや、キングレベルか・・・」

アダムスを囲むのはオークキングが10体ほど。先程クッションにしたオークキングももう回復している。

「随分な再生力だな。こりゃ面倒臭い事になりそうだ。少し気合い入れるか」

マジックポーチから壺を取り出すとその中にある液体をグビグビと飲み始める。
少女はそこから漂ってきた強烈な酒の匂いに鼻をつまむ。

「プハァァ!うぅぅぅヒックっ!おいテメェりゃ〜・・・覚悟するんだぜっ!」

ベロンベロンに酔ったアダムスは千鳥足でそう言った。
その様子が癪に触ったのかオークキング共は唸り声を上げてアダムスに襲いかかる。

真正面のオークキングがアダムスの頭を殴殺せんと棍棒を振り下ろした瞬間、そのオークキングは頭が吹き飛んでいた。

「ふぇ?」

オークキングの首がゴロンと地面を転がる。
真正面にいたアダムスはたった今首を引き千切られたオークキングの真後ろにいた。

「行くぜぇー!」

そう叫ぶとオークキング達の攻撃を千鳥足の要領で避け、その瞬間に攻撃をしていく。
お猪口を持つように手を作り、それで抉りとるようにオークキングを削っていく。


「はっ、俺の拳にかかればこんなもんよ」

酒をあおり、岩の上に座ってそういう。
そう、アダムスは酒を飲んで戦う酔拳の使い手。さらに高練度の魔力操作により圧倒的な破壊力を生み出している。
だが・・・・・・

「ぶひぃ」

「ぶぶぶぶぶ」

「がァァァ」

アダムスが抉って倒したはずのオークキング達は何事も無かったかのように立ち上がってきた。

「へぇ、もう再生してんのかい?ここのは随分と活きがいいねぇ」

オークはそもそも再生能力が他の魔物よりも高い。そしてオークキングともなればさらに圧倒的な再生力を持つことになる。だが、今目の前にいるオークキングはそれ以上の再生力を持っていた。

「仕方がないなぁ~少し本気をだすかねぇ~ヒックっ!」

アダムスは酒をマジックポーチに仕舞った。

「嬢ちゃん、少し下がっててくれや。アブねぇからよ」

「は、はい!」

アダムスの命令で少女は後ろに下がる。

「我が身に宿れ、ヴァレフォレウス!」

アダムスの右手につけている指輪が輝いた。
輝きが収まった時、アダムスの身体は男性用の中国服ーーパオに身を包まれていた。


「魔纏装 酔炎柔剛装ヴァレフォレウス。これを使うからには確実にけさせてもらうぜ!」


これはアルトやエルヴィンが用いる魔纏装と全く同じものであり、指輪はその効果を上昇させる物だ。
アダムスが使う魔纏装は彼の武術に合った鎧であり、効果は使用中はずっと飲酒状態にあり、身体強化や回復力上昇、魔力回復などなどがある。

「すぅぅ・・・」

目をつぶり、大きく深呼吸する。
そしてカッ!と目を開けた次の瞬間、オークキング達は再生も出来ないほどバラバラになっていた。
さらにそのオークキングの欠片達が燃え上がり、完全に消滅したのだった。





「漆黒王の英雄譚」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

  • ノベルバユーザー523679

    夜叉神さんの投稿楽しみに待ってます

    0
コメントを書く