漆黒王の英雄譚
第34話 いざポルキール湖へ
休日二日目。
天空城から王都の屋敷に戻って来たアルトは珍しく馬車に乗って移動していた。
「うーむ··········」
広い馬車の中でアルトは唸る。
アルトが考えているのは馬車の座り心地である。この世界の馬車は色々と種類はあるが、庶民用から貴族・王族用の馬車に共通して言えるのは"乗り心地が悪い"ということである。
庶民用の馬車の座席はふかふかクッションではなく木の板、車輪はゴム製のタイヤではなく木でできた車輪だ。車輪に関しては王族用の馬車でも変わりはない。
貴族・王族用の馬車の座席は一応布などを被せてはいるがあまり効果はない。主に馬車で移動する貴族は痔になってしまうだとか、背中や首が痛いだとか不満は意外と多い。
そのため馬車の改造はこの世界でかなり需要が高かったのだが、つい最近までガムストロ帝国との戦争だったり、小規模の反乱、戦争などがあったためそういったことができていなかった。
アルトもまた五年間の旅やその最中の商売、魔力の復活からは古代文明の使用により考える機会があまりなかったが、これからはそうはいかなくなった。
天空城に行ったいる間に王宮から届いた手紙でアルトが正式に貴族になることが決まったのだ。
ちなみに新たな貴族の誕生は約三十年ぶりらしく、戦争を終わらせた英雄ということで大々的に戦勝パーティをかねて大々的に行いたいらしい。
そうなると馬車での行動は圧倒的に増えるし、むやみに古代文明の遺産を使うわけには行かなくなるため緊急的な馬車の改造が必要となる。全国的にとはいかないまでもせめて自分の使う馬車ぐらいはふかふかのクッションにしたい。
アルトはやりたいことをやるのだ。
「それでなんでポルキール湖に行きたいの?馬車の道具に使いたいものがあるって聞いたけど」
隣に座っているアシュレイが訪ねてくる。
ポルキール湖というのは王家直轄地にある湖で王族の避暑地としてもつかわれる場所だ。
ちなみにこの馬車にはアシュレイしかいない。エミリアは馴れない飲酒のせいで二日酔いを起こし屋敷で療養中である。
後ろの馬車には使用人が二人ほど乗っており、護衛は【絶剣】が人知れず行っている。
「ポルキール湖は湖にしては大きいし、魔力も豊富にあるから天然資源がたくさんあるんだ。その資源の一つに『ポルキールの宝砂』っていう砂があるんだ。」
『ポルキールの宝砂』はポルキール湖の湖底にあり、かなり深いため偶然浜に流れてきた一部しか摂れない超貴重品なのだ。その砂は砂とは思えないほど軽く、肌触りがとても良い。そう、まるでビーズクッションのビーズのように。
「それ知ってるわ。確か宝物庫にもあった気がする。もしかしてそれを馬車に使うの?」
「そ。それを使えば馬車の座席事情がかなあり改善されるからね。」
「うーん……」
説明を受けたアシュレイは何か考えるように首を傾げる。
「どうしたの?」
「とってもいい案だと思うけどそんなに『ポルキールの宝砂』とれるかな?だってこれまでにほとんど取れてない貴重品なのよ?王国に出回ってる砂もほとんどないっていうし。」
「大丈夫だろ、何とかなるさ。」
アルトはぽふっとアシュレイの膝に頭をのせる。
アシュレイは優しくアルトの頭をなでながら聞く。
「湖底から直接いただくよ。そういえば湖に住む魚もおいしいらしいぞ。」
「それは知ってるわよ。毎年湖で取れた魚をシェフが料理してくれてるし」
そうこう話しているうちにアルトは段々と眠たくなっていく。
「そうか··········俺は少し寝るわ。」
「うん、おやすみ」
薄れていく意識の中、アシュレイの唇が頬に当たった感覚がうっすらと残っていた。
今回はめっちゃ短くてすみません。
しばらく活動がご無沙汰していましたが、少しづつでも続けていく所存です。
受験勉強もある中、息抜きとして書くことがメインになるので、その辺はご了承ください。
引き続き、本作をよろしくお願いします。
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コメント
sakuya
34話の誤字とちょっと変だなと思ったところです。
まず前者、「天空城に行ったいる間」になってます。
次に後者、そのすぐ下で「大々的に戦勝パーティーをかねて大々的に」となっていて1個目の「大々的に」は要らないかと
受験、頑張ってください!