話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

漆黒王の英雄譚

夜叉神

第33話 天空の城

ハドルフさん達から1週間の休みを貰った俺達は自宅に戻ってきた。

「よくよく考えたらこの屋敷で過ごした時間ってめちゃめちゃ短いな」

5年前屋敷を貰ってから、直ぐに旅に出てしまったし、旅から戻ってもまたすぐ戦争に行ってたからこの屋敷で過ごした時間は1年間も無い。

「いやぁ、久々。のんびりするか」

「マスター。休もうとするところ申し訳ありませんが、マスターにはやって貰わなくてはならないことが数多くあります。そちらを済ませてからにしてください」

「アドミレア·····」

何故こんな時にそんなことを·····という感じでアルトは睨むが、そんなことは気にしないというように机の上に資料や手紙を置いていく。

「な、なんだ?この量は!」

あっという間に机は書類で埋め尽くされ、座っているアルトから向こう側が見えないほどだった。

「ほとんどは商会の仕事です。その他は教会や財務庁や軍務庁などの政府や要所からの書類ですね。ああ、忘れていました。3分の1ほどはマスターへのお見合い話です」

「おみあいだ?」

「はい。マスターは救国の英雄。さらに王女とも婚約しており、今後王国の中心人物になることは多くの貴族や商会の長は理解しています。マスターと繋がりを持つ手段で彼らにとって1番手っ取り早く簡単なのは結婚です。」

「めんどくせぇ·····全部捨てていいよ。お見合いなんてする気ないし」

「構わないのですか?上手く行けば強力な後ろ盾が手に入りますよ」

「強力な後ろ盾ならもう持っている。ふたつもな。」

アルトの言う強力な後ろ盾。それは王家と商会である。
アシュレイと婚約したバアルは王家の庇護下にあることは明白であり、この国において王権はどの貴族よりも強いものだ。
さらにアルト達が偽名で立ち上げた商会。名をバルバロッサ商会と言うが、これが5年間でかなりでかくなり、その足はかなり広範囲に広がっている。実力もかなりつけており、まさに商業界の新興勢力だった。その商会長はリヒトが変装し赤い髭を蓄えたバルバロッサという男だが、その仕事は俺とリヒトがやっていたので、自作自演のように自分たちを援護することができる。よって、王国内において王権と財力のバックアップがあるので後ろ盾は別に欲しくはない。

「しかし数は多くあった方がいいのでは?」

「あほ、そんなんただ、貴族のめんどくさいゴタゴタに巻き込まれるだけだろうが。少し予備があるくらいでいいんだよ。」

そう言って書類に目を通していく。
その間にアドミレアは見合いの手紙を焼却する。

そして4時間後ーーーーー

「やっと終わった·····というか支店多すぎるだろう。あらゆる国の首都から重要都市まで全部あるじゃんか。」

「マスターが仰ったんですよ?情報は武器になるから無いよりはある方がいい。金は沢山あるのだから重要なところに支店を置いて情報を集めようと。」

「確かに言ったが、だからって辺境の村まで置く必要あるか?最後のなんてもはや老人しかいないあと少しで無くなりそうなところだぞ?」

「それは慈善事業ですね。しかも支店を置くのではなく、定期的に村に売買を行いに行くだけですからそんなに期待してないです」

「ならいいけどよ。あああー休むぞー。残りはリヒトに頼むわ」

「わかりました。残りはお任せ下さい。マスターはアシュレイ様とエミリア様と共にイチャイチャをお楽しみください」

「別にイチャイチャしねぇえよ!」

アドミレアの茶番から逃げるため、足早に執務室を出て自室に戻る。
そして自室で寝ようかと思ったのだが··········

「なぜ·····ここにいる·····」

「あ、やっと戻ってきたわね。遅いわよ」

「そうですよ。アルト君。待ちくたびれました。」

そこにはアシュレイとエミリアがいた。

「どうしてここに?」

「やっとアルトくんとのんびりする時間ができたんだもの。」

「私もやっとアルト君と堂々と一緒にいることができるんです。」

「お前らなぁ·····」

手を顔に当て、困ったように眉間を触る。

「だって、最近ずっと戦争の後処理だったり、他の仕事ばっかりで、やっとアルトくん帰ってきたのに全然構ってくれないんだもん」

「確かに·····そうかもしれない·····」

「だいたい、まだ10歳のアルトくんにそんなに仕事が回ってくるのがおかしいんだよ。ちょっとお父様に文句行ってこようかな」

「だ、大丈夫だから!うーん、わかった!明日いいところに連れて行ってあげるから今日は勘弁してください!」

ビシッと頭を下げ、2人の反応を待つ。
しばらく無言だった2人は互いに顔を見合せ、再びアルトを見た。

「その場所が良くなかったら怒るからね」

「約束ですよ」

「うん。約束だ。2人なら絶対に満足してくれると思うよ」

その約束を交わしたあと、アルトは眠りに落ちた。


数時間後、目が覚め出かける準備をする。

「準備できたか?」

「うん!バッチリだよ!」

「私もです!といっても着替えて、多少の荷物を持つだけですけどね」

3人が集まっている場所は屋敷の庭。
アシュレイとエミリアはここに呼び出された訳だが、何故ここなのかはよくわかっていない。

「アドミレア達が先に行って準備をしてるから俺達も行こうか」

アルトがパチンと指を鳴らせば魔法陣が3人を包み込む。
眩い光が収まるとそこは植物に囲まれた庭園だった。

「ここは·····どこですか?」

「私も見たことないかな。どこかの庭?みたいだけど」

戸惑う2人を他所にアルトは道に沿って歩いていく。

「こっちこっち。説明はあとでするから。着いてこないと迷子になるよ?」

コツコツと整備された舗道を歩いて庭園を進んでいく。2人は俺に着いてきている。
少し歩くと鉄の扉にたどり着く。
俺はその扉の隣にある板に手を当てるとウィィーンと音を立てて扉が開いた。

「これってもしかして·····」

既に学院で色々と学んでいたアシュレイは何か気が付いたようだ。
俺はそのまま進み、最後の扉を開く。

扉が開くと共に段々と眩い光が外から入ってくる。そしてそこにあったのは··········

「こ、これって!?!?」

「どういうことですか?!」

一面を青い空と緑の草原に満たされる。
しかし驚いたのはその事ではなかった。


「どうして雲がこんなところにあるの?!」

「あれ見てください!山脈があんな所に!」

気持ちの良い風と共に2人の驚く姿を見ているアルトは良かったというように微笑んだ。

「それでは··········ようこそ、我が天空城へ!」

2人が振り向くと口をぽかんと開けたまま驚いている。
その視線の先にはベルマーレ王国の王城よりも巨大な城があったのだ。
先程出てきたのはこの城の城門。
この城は現在高度1万5000メートルのところに浮かんでいる。当たり前だが山脈なんてはるか下。
雲ができる限界は約1万メートル。雲も遥か下だ。

「説明するぞ。ここは古代文明の遺産、天空城だ。旅先で見つけたんだ。」

アルトはアシュレイとエミリアを巻き込んでどこかに転移する。

転移したのはモニター室。


「ここは制御室だ。ここで周りの様子とか地上の様子とかを確認するんだ。ほら、あそこに見えるのなんだと思う?」

アルトはモニターの1部を指さし尋ねる。
答えたのはアシュレイだった。


「·····あれってもしかして·····王都?」

「正解。」

「けど王都から城なんて見えなかったよ」

「そりゃもちろん。地上からは見えないほど高いところにあるし、隠蔽魔法がかかってるから。」

「し、知らないうちにこんなものを··········」



などなど言っていたのだが、1時間後··········



「ねえ、アルト君。他にもワインないの?」

「いい加減にしとけって。飲みすぎは良くないぞ」

「大丈夫よっ!べぅまーれ王国のでぇー1オージョなのよォ?私が飲みすぎるわけないじゃないっ!」

と、アシュレイは植木に向かって言う。
酔わないと言うならこっちを見て言って欲しいものだ。

「アルト君··········」

「おーエミリア。ご飯はどうだーーーーってお前まで酔っ払ってんのか!?」

アルトの背中を叩いてきたエミリアは顔を赤くしてまさに酔っ払っている。

「あなたはァ、便器と奴隷。どっちがいいぃ?」

「は?」

「だァかァらァ、〇便器と〇奴隷だったらァどっちが好きかってぇ聞いてんのよっ!」

「お前はアホかっ!?!女子がそんなこと言うんじゃありませんっ!」

「もぉーアルト君ったらぁーエッチなんだからァ」

「今の発言のどこにその要素がっ?!」

「んむぅぅぅ」

「あ、寝やがった。ったく、失敗したな。酒を飲ませたのは」

アシュレイが少しだけ飲みたいと言うから天空城の倉庫にあった珍しいワインを出したのだ。しかしこれが大失敗。想像以上に飲みやすいうえに度数が意外と高かったらしく、ちょっと目を離した隙にがぶがぶと飲んでしまったのだ。

ぐでっとしているアシュレイとエミリアを傍に仕えていたアドミレアに運ばせアルトは管制室に向かう。


ちなみに管制室は玉座と一緒になっており、アルトは王様のように玉座に座る。

「それにしてもこの天空城どうしたもんかね」

「確かに現在『絶剣』のメンバーでの会議でしか使用してませんからね。」

「勿体ないよな。広い庭、専用の森、広大な畑、古代文明の大量の遺産。売ったら国買えるんじゃね?」

「かもしれませんが、世界が大変なことになりますよ。」

「そりゃそうだ。売る相手を考えたとしても戦争が必ず起きるだろ。誰かに売るようなものじゃないな」

「その通りです。」

アドミレアの淹れたお茶を飲みながらモニターを見る。

「空は平和だなぁ」

「確かにそうですね。古代文明時代ならば飛行船が沢山飛んでいたかもしれませんが、現在その技術は失われていますからね。竜族はここまで高い所を飛んできませんからね。人っ子ひとりいませんよ」

「だなぁ」


その日は天空城で1泊するのであった。

「漆黒王の英雄譚」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く