漆黒王の英雄譚
第24話 救いと新たなる闇
「私を殺せ」
エキューデの言葉にアルトはピクリと反応する。
「心優しき善神の使徒よ。私を殺せ。」
「無理だ!」
「早くしろ・・・早くしないと・・・ッ!」
エキューデが急に脂汗を滲ませ始める。
何事かと思って見てみると胸のあたりが小さく光っているのがわかった。
「まさか、もう爆発するのか!」
「いや、まだだ。早くしろ!私を殺せば爆発は収まるはずだ!ぐっ!」
エキューデの力を持ってしてもかなり厳しいらしい。
「ほ、方法があるはずだ!」
「いいか、神の使徒よ・・・我ら邪神の使徒の力の源は邪神によって・・・埋め込まれた心臓にある邪神の欠片だ。それによって私達は力を・・・引き出すことが出来る。これが無くなれば爆発もしないはずだ。早くしろ!」
胸の光がだんだんと強くなっていく。もう時間が少ないようだ。
「け、けど!」
「お前は守ると言ったな!これが爆発すればお前も死ぬし、お前の守りたい者達も死ぬんだぞ!それでもいいのか!」
「お前が死んじまうだろ!」
「だからお前の頭はおめでたいと言っているんだ!・・・っ!まずい!早くしろ!いいか!成功には犠牲が必要だ!これは全てにおいてそうだ。過去の失敗があるから未来に成功する!お前の未来はどこにある!」
「く、くそぉぉ!」
アルトは麒麟刀を取り出し抜刀術の構えをとる。
「よく決めた・・・さあ、早くしろ。」
「済まない・・・覡神鳴流 慈愛の太刀 抜刀」
アルトは神速の速さで技を繰り出す。そしてエキューデの首を跳ねた。
「ありがとう・・・」
エキューデの首が地面に落ちるとだんだんと胸の光は輝きを失った。
アルトの胸の中は複雑な感情が混ざり合っていた。これで良かったのか、これが正しかったのか、他に方法があったんじゃないのか・・・様々な思考が生まれては蓄積していく。それを消化するには時間が必要だった。
「旦那・・・帰ろう」
「ああ・・・」
アルト達はその場から転移した。
こうして完勝とは行かないが、アルトの初めての邪神の使徒討伐は成功した。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
アルト達が転移して王都前に戻ってくるとそこにはエルヴィンやアルペリーニ達がいた。
「アルト!良かった、無事だったんだな・・・ってどうしたんだ?そんな顔して」
「え?」
アルトは自分の顔をぺたぺたと触って自分が暗い顔をしていることに気がついた。
「ああ、大丈夫。ちょっと考え事してただけだから。それよりもこっちはどうだった?」
「捕まえた帝国人の中に残りの将軍と皇帝、皇族が居てな。一応皇帝達皇族は拘束してある。将軍も宝具を外して拘束して牢屋の中だ。アルトのおかげで抵抗なく済んだ。」
「そっか、それは良かった。」
「それよりも全部終わったんだよな」
「ああ、使徒も倒したよ。かなり手強かった。けどもう大丈夫だ。他の使徒が復活する可能性はまだあるけどな」
「嫌なことを言うな。それよりも聞いたな!今すぐ国王陛下に報告をしろ!戦争は終わった!」
エルヴィンが後ろにいた部下に命令すると、兵士は直ぐに走っていった。
「それにしてもよくやってくれたね。君のおかげで助かったよ。」
「いえ、俺も王国貴族です。当たり前ですよ」
「そうか、ありがとう。」
「多分今度連合の王達で会議がある。そこでガムストロ帝国の処分と皇帝の処分が下ると思う。」
「ふーん、まあいいや。それよりも早く戻ろう。疲れた」
「そうだな。フィアンセに早く帰ってきた報告もしないとな」
「黙らっしゃい」
その後帰ってきたアルトにアシュレイが抱き着いて心配したり、先に帰還させていたフィゼルの無事を確認したりしてその日を終えた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
翌日早朝アルトは最後にエキューデと戦った場所に来ていた。
「・・・・・・」
その場所は前日のままで、エキューデの首から下が木に縛り付けられていて、ほとんど乾燥した首から上が地面に転がり落ちている。
アルトは身体の拘束を外して地面に下ろすと地面に穴をあけそこに死体を収めて、アンデット化しないようにする光魔法をかけて土を被せた。その上に少し大きめの石を置いてそれを墓石とした。
「成功には犠牲が必要・・・か。何かを犠牲に何かを得る。今回の犠牲はエキューデの命、得たものは皆の命。それでほんとに良かったのか?確かにひとつの命と多くの命だったら多くの命の方がいいとも思う。けど、1人の命も救えないのに多数の命が救えるのか?1人とはいえひとつの命が無くなったのに、俺達は呆然と生きていていいのか?分からない・・・エキューデ、お前は最後にどうしてありがとうなんて言ったんだよ・・・・・・ッ!」
アルトは残っている樹海樹を殴りつける。込めた力よりも樹海樹の耐久力の方が勝っていたのかアルトは拳にヒリヒリとした痛みを感じる。
「他にも方法があったはずだ。そうだ、それを考える時間がなかっただけで・・・くそっ!俺は何を考えてるんだ!」
自分の困惑した感情に苛立ってくる。
「どうして俺は・・・何も出来ないんだ・・・」
この時世界に新たなる闇が生まれた。いや、少しずつ復活してきた。それは未だ小さく淡い闇だがいずれこの世界に混沌をもたらす闇となる。
エキューデの言葉にアルトはピクリと反応する。
「心優しき善神の使徒よ。私を殺せ。」
「無理だ!」
「早くしろ・・・早くしないと・・・ッ!」
エキューデが急に脂汗を滲ませ始める。
何事かと思って見てみると胸のあたりが小さく光っているのがわかった。
「まさか、もう爆発するのか!」
「いや、まだだ。早くしろ!私を殺せば爆発は収まるはずだ!ぐっ!」
エキューデの力を持ってしてもかなり厳しいらしい。
「ほ、方法があるはずだ!」
「いいか、神の使徒よ・・・我ら邪神の使徒の力の源は邪神によって・・・埋め込まれた心臓にある邪神の欠片だ。それによって私達は力を・・・引き出すことが出来る。これが無くなれば爆発もしないはずだ。早くしろ!」
胸の光がだんだんと強くなっていく。もう時間が少ないようだ。
「け、けど!」
「お前は守ると言ったな!これが爆発すればお前も死ぬし、お前の守りたい者達も死ぬんだぞ!それでもいいのか!」
「お前が死んじまうだろ!」
「だからお前の頭はおめでたいと言っているんだ!・・・っ!まずい!早くしろ!いいか!成功には犠牲が必要だ!これは全てにおいてそうだ。過去の失敗があるから未来に成功する!お前の未来はどこにある!」
「く、くそぉぉ!」
アルトは麒麟刀を取り出し抜刀術の構えをとる。
「よく決めた・・・さあ、早くしろ。」
「済まない・・・覡神鳴流 慈愛の太刀 抜刀」
アルトは神速の速さで技を繰り出す。そしてエキューデの首を跳ねた。
「ありがとう・・・」
エキューデの首が地面に落ちるとだんだんと胸の光は輝きを失った。
アルトの胸の中は複雑な感情が混ざり合っていた。これで良かったのか、これが正しかったのか、他に方法があったんじゃないのか・・・様々な思考が生まれては蓄積していく。それを消化するには時間が必要だった。
「旦那・・・帰ろう」
「ああ・・・」
アルト達はその場から転移した。
こうして完勝とは行かないが、アルトの初めての邪神の使徒討伐は成功した。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
アルト達が転移して王都前に戻ってくるとそこにはエルヴィンやアルペリーニ達がいた。
「アルト!良かった、無事だったんだな・・・ってどうしたんだ?そんな顔して」
「え?」
アルトは自分の顔をぺたぺたと触って自分が暗い顔をしていることに気がついた。
「ああ、大丈夫。ちょっと考え事してただけだから。それよりもこっちはどうだった?」
「捕まえた帝国人の中に残りの将軍と皇帝、皇族が居てな。一応皇帝達皇族は拘束してある。将軍も宝具を外して拘束して牢屋の中だ。アルトのおかげで抵抗なく済んだ。」
「そっか、それは良かった。」
「それよりも全部終わったんだよな」
「ああ、使徒も倒したよ。かなり手強かった。けどもう大丈夫だ。他の使徒が復活する可能性はまだあるけどな」
「嫌なことを言うな。それよりも聞いたな!今すぐ国王陛下に報告をしろ!戦争は終わった!」
エルヴィンが後ろにいた部下に命令すると、兵士は直ぐに走っていった。
「それにしてもよくやってくれたね。君のおかげで助かったよ。」
「いえ、俺も王国貴族です。当たり前ですよ」
「そうか、ありがとう。」
「多分今度連合の王達で会議がある。そこでガムストロ帝国の処分と皇帝の処分が下ると思う。」
「ふーん、まあいいや。それよりも早く戻ろう。疲れた」
「そうだな。フィアンセに早く帰ってきた報告もしないとな」
「黙らっしゃい」
その後帰ってきたアルトにアシュレイが抱き着いて心配したり、先に帰還させていたフィゼルの無事を確認したりしてその日を終えた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
翌日早朝アルトは最後にエキューデと戦った場所に来ていた。
「・・・・・・」
その場所は前日のままで、エキューデの首から下が木に縛り付けられていて、ほとんど乾燥した首から上が地面に転がり落ちている。
アルトは身体の拘束を外して地面に下ろすと地面に穴をあけそこに死体を収めて、アンデット化しないようにする光魔法をかけて土を被せた。その上に少し大きめの石を置いてそれを墓石とした。
「成功には犠牲が必要・・・か。何かを犠牲に何かを得る。今回の犠牲はエキューデの命、得たものは皆の命。それでほんとに良かったのか?確かにひとつの命と多くの命だったら多くの命の方がいいとも思う。けど、1人の命も救えないのに多数の命が救えるのか?1人とはいえひとつの命が無くなったのに、俺達は呆然と生きていていいのか?分からない・・・エキューデ、お前は最後にどうしてありがとうなんて言ったんだよ・・・・・・ッ!」
アルトは残っている樹海樹を殴りつける。込めた力よりも樹海樹の耐久力の方が勝っていたのかアルトは拳にヒリヒリとした痛みを感じる。
「他にも方法があったはずだ。そうだ、それを考える時間がなかっただけで・・・くそっ!俺は何を考えてるんだ!」
自分の困惑した感情に苛立ってくる。
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