漆黒王の英雄譚
第22話 第2ラウンド
使用するだけで魔力回路が破壊される魔法【魔纏術】。アルトは5年前それで苦悩を味わっていた。しかしその五年後再び使用する。しかも今回は破壊されてしまうと分かっているのに躊躇わずに使った。
それでは何故5年前魔力回路を破壊してしまうことになったのか。まずアルトはそんなことになるとは思っていなかった。通常の魔法と同じように魔力回路に魔力を流し込んで使用すればそれだけで大丈夫だと思っていたのだ。
しかし考えてみればそんなことは有り得なかった。魔纏術は己の身を魔術自体に作り替える魔法だ。そんなことは今まで出来た人は居ないし、そんなことをしようと思う人はいなかった。
そもそも通常の人間では【魔纏術】は使用することが出来ない。出来るとしてもエルヴィンが完成させた【魔装術】までである。理由は2つ。ひとつは魔力量の問題。発動には大量の魔力が必要とされる。発動してしまえば魔力の消費は少ないが、通常の人ならば発動して10秒としないうちに魔力欠乏症を起こし酷い場合死に至る。
2つ目は肉体的問題である。この世界で医療というものはそこまで発展していない。理由は魔法があるから。医療が発展していないということは、人間の肉体を知らないということ。アルトの場合地球で発動に必要なある程度の知識は備わっていたからそれはクリアしている。問題は別にある。それは肉体が耐えられないという事だ。肉体の急激な変化。しかも魔法への変化だ。肉体に対してかなり無茶な負荷をかける。それはたとえ鍛えている人でも変わらない。
それではアルトができてしまった理由。それは単純にアルトに内包された膨大なる魔力と、神の使徒とスキルや加護による肉体の耐久力がとてつもなく上がっていたからだ。それを知らずにアルトは発動させた。理論的にできているからと言って。通常ではない異常な魔法を自らの肉体にかける場合いつも通り魔力回路に魔力を流したらどうなるか。肉体は問題ないが魔力回路に尋常ではない負荷が掛かり破壊される。
それが5年前アルトの魔力回路が壊れた理由だ。
では、安全に利用する場合どうすればいいのか、簡単だ。正しい魔力の流し方をすればいいだけだ。それだけで正しく発動できる。それをするための詠唱なのだ。
要するに今回のアルトの魔力回路は破壊されない!
「少し変わったか?」
「さあな。まずは一つギアをあげた。こっちから行くぞ」
アルトの姿が消える。エキューデは追おうとするが一切視認できない。
「どうした?見えないか?」
「くっ!」
アルトの声が耳元でするというのに捕まえられない。かすることも出来ない!
「一発目・・・」
アルトの囁きが聞こえると天から大きな落雷が落ちてくる。
「ぐぅ・・・」
「二発目・・・」
さらに同じような落雷が落ちてくる。
「三発目・・・四発目・・・」
アルトが数を数えていく度に落雷がエキューデに直撃する。五発目までは耐えられたエキューデも六発目、七発目からだんだんと傷が着くようになってきた。
「十五発目・・・!」
そして最後の落雷がエキューデに落ちるとエキューデの腕は火傷でボロボロになっていた。
「っぅぅ〜〜っ!」
「随分と痛ましくなったな。けどまだ終わらねぇぞ。」
アルトが指をパチンと鳴らすとエキューデを囲むように立体的にいくつもの魔方陣が現れる。
「【永轟雷電獄】」
「ぐっ!ぐぉぉぉぉぉぉ!!!!」
魔方陣によって囲まれたエキューデに雷が当たり続ける。しかもこの魔方陣は2つの能力を宿している。1つ目は永遠に雷を発生し続ける魔法。2つ目は魔法を【反発】させる魔法陣だ。それが全方位に展開されているということは、1つ目の効果で永遠と巨雷が打ち出され続け、2つ目の効果で減ることなくさらに加速させていく。出ることは出来ず俺が解くまで永遠と雷に打たれ続ける。
「これでしばらく動けねぇだろ。」
「ぐぅぅぅ!!」
エキューデはだんだんと威力の上がっていく雷に押され続けていた。
「アガガガガガガガガガガガガガッ!」
「自分でやっててかなり酷い気がする・・・けどこれくらいじゃないとな」
気が付くとアルトの周りを魔物が囲っていた。
「ちょうどいいか。」
アルトは上空に飛び出した。
麒麟刀を閉まって魔力を高める。そしてその魔力を使って魔法を作り出した。
「一気に倒させてもらう。【雷光滅王剣】!」
超特大の電気による剣を作り出し、攻撃する超広範囲殲滅魔法だ。それは雷の発する強烈な光と熱、そして雷特有の速さによって全てを滅する王の剣。そしてそれがエキューデを閉じ込めていた牢獄と周囲にいた魔物に直撃した。
強烈な光と爆発が晴れるとそこには魔物の死体すらも残っておらず地面も大きく抉れガラスになっている部分も多かった。
「さすがに跡形もなくなったか・・・」
アルトは地面へ降りたって見渡す。
そして改めて思い出す。
人間を殺すとはどういう事なのかを。
5年の間に何度も人を殺すことはあった。最初の方は気分が悪くなったり罪悪感に押しつぶされそうになった。多少はそういうことがなくなったと言ってもあることには変わりない。むしろそれを無くしたら人間を辞める気がした。
けど強くなってからは人を殺すことがなくなった。理由は殺さずに制圧できる力を手に入れたから。
「ふぅ〜〜・・・終わったな」
「まだ終わってはいませんよ?」
アルトの胸から血に濡れた腕が出てくる。
「がっっ!ま、まさか・・・」
後ろをゆっくりと振り返るとかなりボロボロになってはいるが左腕を失いながらしっかりとした目でアルトの後ろから腕を貫通させているエキューデがいた。
「一体・・・どうやって・・・」
「さすがにあの技を喰らえば私でも死んでいました。あの牢獄から抜け出すには苦労しましたよ。しかしあなたは最後の最後にミスを犯しました。最後の技によって結界が潰される瞬間の隙を私は見逃しませんでした。それでも避けきれずに左腕が持っていかれましたが・・・」
「そんな馬鹿な・・・あの一瞬で・・・抜け出した・・・だと・・・」
そうエキューデは0コンマ01秒以下の隙をついて牢獄から抜け出し片腕を犠牲にしながら生き抜いたのだ。
「ヒヤヒヤしましたよ。しかしこれであなたを仕留めることが出来ました。」
エキューデは腕を引くとズボッと音を出しながらアルトの胸から腕が抜け、引いた反動でアルトの身体は地面に倒れる。
「流石のあなたもその傷では死を待つだけでしょう。放っておいて大丈夫ですね。」
エキューデはトドメを刺すのをやめ振り返る。
「あなたの仲間を殺すのも構いませんが、少々ダメージを受けすぎました。それにあの者達もかなりの実力があるようです。さすがに連戦は厳しそうですね。」
そう言ってエキューデは歩き始める。
「今日のところはどこか寝床を決めて休むことにしましょう。それでは残りの生命を楽しむと良いでしょう。さようならです。神の使徒」
エキューデはその場から飛び去って行った。しかし気づかなかった。アルトがエキューデの話を全く聞かずにいた事を。そして死にそうになりながらも魔法を発動させようとしていることを。
それでは何故5年前魔力回路を破壊してしまうことになったのか。まずアルトはそんなことになるとは思っていなかった。通常の魔法と同じように魔力回路に魔力を流し込んで使用すればそれだけで大丈夫だと思っていたのだ。
しかし考えてみればそんなことは有り得なかった。魔纏術は己の身を魔術自体に作り替える魔法だ。そんなことは今まで出来た人は居ないし、そんなことをしようと思う人はいなかった。
そもそも通常の人間では【魔纏術】は使用することが出来ない。出来るとしてもエルヴィンが完成させた【魔装術】までである。理由は2つ。ひとつは魔力量の問題。発動には大量の魔力が必要とされる。発動してしまえば魔力の消費は少ないが、通常の人ならば発動して10秒としないうちに魔力欠乏症を起こし酷い場合死に至る。
2つ目は肉体的問題である。この世界で医療というものはそこまで発展していない。理由は魔法があるから。医療が発展していないということは、人間の肉体を知らないということ。アルトの場合地球で発動に必要なある程度の知識は備わっていたからそれはクリアしている。問題は別にある。それは肉体が耐えられないという事だ。肉体の急激な変化。しかも魔法への変化だ。肉体に対してかなり無茶な負荷をかける。それはたとえ鍛えている人でも変わらない。
それではアルトができてしまった理由。それは単純にアルトに内包された膨大なる魔力と、神の使徒とスキルや加護による肉体の耐久力がとてつもなく上がっていたからだ。それを知らずにアルトは発動させた。理論的にできているからと言って。通常ではない異常な魔法を自らの肉体にかける場合いつも通り魔力回路に魔力を流したらどうなるか。肉体は問題ないが魔力回路に尋常ではない負荷が掛かり破壊される。
それが5年前アルトの魔力回路が壊れた理由だ。
では、安全に利用する場合どうすればいいのか、簡単だ。正しい魔力の流し方をすればいいだけだ。それだけで正しく発動できる。それをするための詠唱なのだ。
要するに今回のアルトの魔力回路は破壊されない!
「少し変わったか?」
「さあな。まずは一つギアをあげた。こっちから行くぞ」
アルトの姿が消える。エキューデは追おうとするが一切視認できない。
「どうした?見えないか?」
「くっ!」
アルトの声が耳元でするというのに捕まえられない。かすることも出来ない!
「一発目・・・」
アルトの囁きが聞こえると天から大きな落雷が落ちてくる。
「ぐぅ・・・」
「二発目・・・」
さらに同じような落雷が落ちてくる。
「三発目・・・四発目・・・」
アルトが数を数えていく度に落雷がエキューデに直撃する。五発目までは耐えられたエキューデも六発目、七発目からだんだんと傷が着くようになってきた。
「十五発目・・・!」
そして最後の落雷がエキューデに落ちるとエキューデの腕は火傷でボロボロになっていた。
「っぅぅ〜〜っ!」
「随分と痛ましくなったな。けどまだ終わらねぇぞ。」
アルトが指をパチンと鳴らすとエキューデを囲むように立体的にいくつもの魔方陣が現れる。
「【永轟雷電獄】」
「ぐっ!ぐぉぉぉぉぉぉ!!!!」
魔方陣によって囲まれたエキューデに雷が当たり続ける。しかもこの魔方陣は2つの能力を宿している。1つ目は永遠に雷を発生し続ける魔法。2つ目は魔法を【反発】させる魔法陣だ。それが全方位に展開されているということは、1つ目の効果で永遠と巨雷が打ち出され続け、2つ目の効果で減ることなくさらに加速させていく。出ることは出来ず俺が解くまで永遠と雷に打たれ続ける。
「これでしばらく動けねぇだろ。」
「ぐぅぅぅ!!」
エキューデはだんだんと威力の上がっていく雷に押され続けていた。
「アガガガガガガガガガガガガガッ!」
「自分でやっててかなり酷い気がする・・・けどこれくらいじゃないとな」
気が付くとアルトの周りを魔物が囲っていた。
「ちょうどいいか。」
アルトは上空に飛び出した。
麒麟刀を閉まって魔力を高める。そしてその魔力を使って魔法を作り出した。
「一気に倒させてもらう。【雷光滅王剣】!」
超特大の電気による剣を作り出し、攻撃する超広範囲殲滅魔法だ。それは雷の発する強烈な光と熱、そして雷特有の速さによって全てを滅する王の剣。そしてそれがエキューデを閉じ込めていた牢獄と周囲にいた魔物に直撃した。
強烈な光と爆発が晴れるとそこには魔物の死体すらも残っておらず地面も大きく抉れガラスになっている部分も多かった。
「さすがに跡形もなくなったか・・・」
アルトは地面へ降りたって見渡す。
そして改めて思い出す。
人間を殺すとはどういう事なのかを。
5年の間に何度も人を殺すことはあった。最初の方は気分が悪くなったり罪悪感に押しつぶされそうになった。多少はそういうことがなくなったと言ってもあることには変わりない。むしろそれを無くしたら人間を辞める気がした。
けど強くなってからは人を殺すことがなくなった。理由は殺さずに制圧できる力を手に入れたから。
「ふぅ〜〜・・・終わったな」
「まだ終わってはいませんよ?」
アルトの胸から血に濡れた腕が出てくる。
「がっっ!ま、まさか・・・」
後ろをゆっくりと振り返るとかなりボロボロになってはいるが左腕を失いながらしっかりとした目でアルトの後ろから腕を貫通させているエキューデがいた。
「一体・・・どうやって・・・」
「さすがにあの技を喰らえば私でも死んでいました。あの牢獄から抜け出すには苦労しましたよ。しかしあなたは最後の最後にミスを犯しました。最後の技によって結界が潰される瞬間の隙を私は見逃しませんでした。それでも避けきれずに左腕が持っていかれましたが・・・」
「そんな馬鹿な・・・あの一瞬で・・・抜け出した・・・だと・・・」
そうエキューデは0コンマ01秒以下の隙をついて牢獄から抜け出し片腕を犠牲にしながら生き抜いたのだ。
「ヒヤヒヤしましたよ。しかしこれであなたを仕留めることが出来ました。」
エキューデは腕を引くとズボッと音を出しながらアルトの胸から腕が抜け、引いた反動でアルトの身体は地面に倒れる。
「流石のあなたもその傷では死を待つだけでしょう。放っておいて大丈夫ですね。」
エキューデはトドメを刺すのをやめ振り返る。
「あなたの仲間を殺すのも構いませんが、少々ダメージを受けすぎました。それにあの者達もかなりの実力があるようです。さすがに連戦は厳しそうですね。」
そう言ってエキューデは歩き始める。
「今日のところはどこか寝床を決めて休むことにしましょう。それでは残りの生命を楽しむと良いでしょう。さようならです。神の使徒」
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コメント
ノベルバユーザー523679
あー、焦らしていくパターンね
音街 麟
どっちも、甘すぎない?いつか甘さのつけを払うことになりそうなのに。