漆黒王の英雄譚

黒鉄やまと

第10話 調査結果

「それでどうなったんだ?」

エルヴィンが気になるのかそう聞いてきた。

「まあ、修行の旅の途中で何人かの人を助けながら気になることが出来たからガムストロ帝国の調査を始めた」

「ガムストロの調査?」

「だって不思議に思わないか?今まで小国だった国が急に大きな戦力を持ち始め他国を侵略しようとするなんて。何か裏があるに違いないと思って」

「確かにそうだな。2年前まで名前は聞いた事はあったが特に貿易も会談やらもした事の無い国だった。」

「そう。それなのにここまで攻められてしまう程に強くなった。ありえないでしょ?なにか特別な力を手に入れたとしか考えられないからね。」

そう言うと俺は【無限収納】から10個のアクセサリーを出す。

「これは?」

エルヴィンがひとつを手に取って光にあててみたりなどしてみる。

「それはガムストロの将軍に皇帝が与えた宝具と呼ばれるものだよ」

「な、なんだって!」

エルヴィンはすぐさま机の上にそれを戻した。

「それで調査してみてあの国が急に強くなれた理由が分かった。」

「これのせいじゃないの?私達これで負けそうになったわ」

「うーん、ちょっと違う。問題はもっと深刻なんだ。理由の大元は地形にあった。」

「地形?」

「貿易しやすいとか敵に攻め込まれずらいとかか?」

「けど全然聞いたこと無かったよ?貿易でも他の同盟でも」

「ある意味そういう類の物さ。元々あの帝国の領土には二つの遺跡があった。その遺跡の調査を何年もかけてした結果が今のガムストロの強さの由来になる」

「その遺跡はどういうものなんだ?」

「まず1つ目の遺跡は古代時代の遺跡だ」

「古代の?」

そう、見つかったのは古代時代の遺跡群。群ということはひとつではなく多数が集まっていた。

「古代時代のことはどれくらいまで知ってるの?」

アルトの問い掛けにオルガルが答える。

「古代時代のことは学院である程度習う。古代は別名神代時代とも呼ばれ、今から約1万年前に滅びた文明。さらに今よりも魔法が発達していて、これまで大陸の各地で数個の遺跡が発見されている。その遺跡からは聖遺物アーティファクトと呼ばれ現在の冒険者ギルドなどのギルドカード登録にも使われている。しかしその全貌が明らかになったことはない。学院で習うのはだいたいこれくらいだな。専門的に習えば他にもあるかもしれないが一般的に習うのはこれくらいだ」

「なるほどこれくらいなら大丈夫ですね。今回ガムストロで発見されたのは遺跡群です。それは帝国の極秘事項として密かに研究されていました。」

「けどその遺跡が今回ガムストロの領土で発見されてしまったってわけ?」

「そういう事だよ。これは大きな問題だよ。もしこれが世界中の国や悪い組織に知れ渡ったらどうなることか」

答えは簡単だ、古代世界と同じように戦争が置き世界が滅びるだろう。
それがみんな分かったのか青い顔をした。

「けどもっと最悪なことがあった」

「そ、それ以上に何かあるのかよ」

「次が2つ目の理由。まず5年前に俺が戦った邪神の使徒のことを覚えてる?」

「ああ、アルト君が当時の全力で戦って魔力回路を壊す切っ掛けになった戦いだね」

「それじゃあ邪神のことはどんなふうに知ってる?」

「確かに今から5000年ぐらい前に世界のほとんどが邪神に支配された恐怖の時代だったか?しかし伝説の勇者に倒されたと御伽噺ではあるが・・・」

「へぇ、そこまで綿密に残ってるんだ。そう、邪神支配されていたのは約5000年前。世界のほとんどが邪神とその部下の手に落ちて空には常に暗い雲がさしていたと言われる、いわゆる暗黒時代と言っても過言じゃない」

「それがどんな関係を・・・って!まさか!邪神が蘇ったとか!」

「違う。そんなことになってたらもう世界のほとんどが邪神の手に落ちてるよ。今回はその部下の方だ」

「それって結局は邪神の使徒って事かい?そ、そんな・・・アルト君があれほどの犠牲を払って倒したのが何人もいるなんて」

「そんなに何人もいないです。使徒は7人。俺が戦ったのは強欲のエキューデの精神の欠片です。けど使徒に酷似する者が封印された祠があったんです」

「使徒に酷似?それは邪神の使徒の仲間ということになるんだよな?」

「そう。それで俺はそこに行ってみた。」

「それでどうなってたの?」

「封印は壊れてた。しかも内側からと外側から両方からの破壊の後があった。」

「さしずめガムストロの連中が研究しようとした結果破損させてしまって封印が弱まったところを内側から破られたって所か?」

「たぶん。もしくは他に仲間がいたのか・・・・・・」

「それでその敵がどんな奴なのか分かってるのか?」

「遺跡には『邪に連なるものここにありけり。その邪、東に沈む蛇の如し。知に優れ、力を持つ邪なるもの。決して封印を解くべからず』って書いてあった。けど今の世界で使われている文字じゃなかったからガムストロの連中はわからなかったんだと思う」

「何だか面倒くさそうなやつだな。」

「ちょ、ちょっと待ってよ。その封印って解かれちゃったんだよね?それじゃあ中のヤツはどこに行っちゃったのよ!」

「そ、そう言えば!」

アシュレイと親父が慌てたようにそう言った。

「直接見たわけじゃないけど多分分かるよ」

「どこなの?」

「ガムストロ帝国帝都ガムスタシア、その皇城に居ると思う?」

「それじゃあガムストロが急に力をました理由の2つ目って・・・」

「うん。十中八九そいつのせいだろうね。」

俺がそう言うと全員が黙ってしまった。


「けど多分大丈夫だ。」

「どうしてだ?アルト。」

「理由①俺が既に将軍の持つ宝具をほとんど回収しているから。
理由②俺の他の仲間がガムスタシアに潜んでいるから。
理由③ここに来る前からガムストロの食べ物や武器などの鉄を潰してあるから。
理由④発見した遺跡は既に別の場所に移動させたから。
理由⑤その封印されてたやつよりも俺の方が強いから。」

「はぁぁ」

エルヴィンが深くため息をついた。

「既にそこまで仕込んであったなんてな。それじゃあ敵の戦力はほとんど削れていて食べる物もほとんどない。武器の素材となるものも少なく、頼りの遺跡もない。仕方が無く敵の黒幕が出てきてもアルトの方が強く負けることは無い。もっと言えばいつでもガムストロの内側から潰せる・・・と?なんちゅう無茶苦茶な。」

「けどそれだけ準備が整っていればあとは耐えるだけで済みそうだね」

「ああ、それだけで敵の勢力はどんどん削れて言っていつの間にかこっちが勝ってるだろうよ。」

「まあ、それだけで終わらせないけどな。今回はほとんど元に戻す。フィゼル、あの人達を出してくれ」

「了解」

フィゼルが準備をしている間に俺は話し始める。

「俺が旅をしている間に助けた人達かいる。」

「リーダー、準備が出来たぜ」

「いいぞ」

フィゼルが空間魔法を発動させると異空間の穴が開いてそこから何人もの人がでてきた。

「俺が旅の途中で助けた人達だ。」

「ま、まさか!」

「久しぶりであるな、ハドルフ王よ」

「お久しぶりです、皆様」

他にも何人もの人が異空間から出てくる。

「分かったか?この人達はガムストロ帝国に滅ぼされた国の王族、皇族、貴族達だ。」

全員がポカンとしている。


「お久しぶりです、皆さん。あのような場所に閉じ込めていて申し訳ございません。非礼をお許しください」

「なに、アルト君には感謝しかないよ。」

「ニクス王の言う通りだ。君のおかげで国を再建出来るかもしれないのだ。」

他にも何人もの国王や王族が挨拶をしてくる。

「驚いた。皆さん無事でいらしたのですか。」

「うむ、アルベルト君のおかげでな。彼は我らが窮地に陥った時助けてくれたのだよ。」

「いえ、助けられなかった人もいました。王妃様のこと本当に申し訳ございません」

「それのことはアルト君のせいではない。謝ることは無いよ。」

ガムストロに侵略されたリディス王国の国王がそう言う。

「あ、アルト。これは一体・・・?」

「俺が目覚めてからの1年半ほど修行をしながら主にガムストロ帝国の周りを回ってたんだ。それでガムストロに滅ぼされそうになった国の王族や貴族を助けて回ってたんだ。けどここにいるのは俺の完全な偏見と独断で助けることにした人達しかいない。いなくなった方がいいと思った国の奴らは無視したりしたけどね」

「ッ!」

「それでもこれだけの人達が集まってくれた。ハドルフさん、皆さんを城にしばらく泊めてもいいですか?」

「もちろんだよ。セバス、早急に準備を頼む。」

「かしこまりました」

セバスさんは部屋を出ていった。

「さて、色々と他にも聞きたいことがあるが・・・今日はここまでにしよう。みんなも疲れているだろうし、アルト君も会いたい人がいることだろう。久しぶりに屋敷に帰るといい。王族の皆様はぜひ城に泊まってください。」

「ありがとうございます。」

その言葉の通り今日はそのままお開きになった。



コメント

  • ノベルバユーザー19196

    前の作品も読ませていただきましたがだいぶ話変わっててビックリしました!

    0
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