漆黒王の英雄譚

黒鉄やまと

第2章 少青年期編 第1話 5年後


アルベルトがベルマーレ王国から姿を消して5年が経った。
ベルマーレ王国は現在未曾有の危機に陥っている。2年前、南西の小国だったガムストロが突如勢力を拡大し、大帝国ガムストロ帝国となった。様々な国がこれに対応し、戦争が起きたがガムストロの勢力は落ちることは無く、ついにベルマーレ王国の西側の隣国ジャクサス王国の首都ジャクサスが陥落。ガムストロは次の狙いとしてついに一年ほど前ベルマーレ王国に宣戦布告をしてきた。


ガムストロ大帝国は既に大陸の25%を領土に治めており、軍隊の数は約40万。
それに対し、ベルマーレ王国王国騎士軍は約3万。ベルマーレ王国はほぼ敗北が確定していた。そこに手を差し伸べたのが東の隣国リュシュトベルト帝国。さらにその周りに位置する国々が軍隊や資金、支援を送ってくれたおかげで連合軍は約10万もの大群になった。

そして半年前西の国境付近で戦争が始まった。西の辺境伯アルステッド辺境伯爵は辺境伯に選ばれる実力と勇敢さを存分に発揮し敵を倒して行ったが、相手の数の暴力と敵将によって敗北、最終防衛線までの撤退を余儀なくされた。そして最終防衛線のトップにして、連合軍の総大将であるアルペリーニ・ハニアカルトはここで敵を迎え撃つことにした。



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私の名前はアシュレイ・ベルマーレ。王国第一騎士団第十三部隊部隊長だ。私は卒業した後騎士団に入団し、2年間という短期間でひとつの部隊長まで登り詰めた。
そして私はこの帝国戦争で、最終防衛線の1箇所を任されていた。
後ろには小さくだが見えるほど近くにベルマーレ王国の王都と城が見える。
既に王国の南と西は完全に帝国の侵略を受け占拠されている。

「隊長!敵軍が見えてきました!」

「そうですか。迎え撃つ準備をしなさい。それと他の部隊にも連絡を」

「はっ!」

部下は敬礼をして去っていった。

「どこまで持ちこたえられるでしょうか」

「分かりません。しかし、相手を撤退させなくては我々の負けです。そんなことは絶対にさせては行けません。」

「そうですね。」

側に仕えるクラウは心配そうに言った。

「彼が帰ってくるまで王国をなくしては行けない。帰ってく場所をなくしてはいけません!」

「そうだぜ、部隊長さん」

「!!」

部屋の中に入って来たのはエルヴィン・クロスフィード。他ならぬアルベルト・クロスフィードの父親である。

「お義父さま」

「はは、まさかその呼び方で呼ばれる日が来るとはな。けど今は副団長だぜ」

「そうでした。申し訳ございません、副団長」

「いいさ。・・・いいか。崩れると思ったら直ぐに撤退しろ。」

エルヴィンは真剣な顔つきで言う。

「そ、それは・・・!」

「アルトが帰ってきた時にアシュレイ様がいなかったら悲しむだろ?」

「けど・・・」

「安心しろ。これは全ての隊長格に言われていることだ。国王陛下が王都を砦として使っていいとの許可をだした」

「お父様が?!」

3年ほど前に前国王アレクドル・ベルマーレはハドルフ・ベルマーレに国王の座を譲った。それからはハドルフ国王として国を運営している。

「ああ、だから撤退する時は王都に逃げ込め。お師匠さんもその場にいるから負けることはねぇさ」

「師匠が!?」

「ああ、ようやく重たい腰を上げたよ。城に来た時の一言目は「まだまだ気合が足りないね」だったぜ」

「ふふふ、師匠っぽいですね」

その場が少し和んだ頃ついに敵はやってきた。

「副団長、部隊長、敵がもう少しで弓兵の射程圏内に入ります、」

「!!早いですね。」

「そうだな。よし!いくぞ!」

「はい!」

エルヴィン達は気合を漲らせて部屋を出ていった。


城壁の上は騒然としていた。

「な、なんで魔物が・・・・・・!」

「あ、あんなの無理だ・・・!」

敵の中には魔物も多く点在していた。しかもその奥に見えるのは・・・・・・


「ドラゴンゾンビだと!!」

ドラゴンゾンビは死んだドラゴンがアンデット化して復活したものだ。アンデット化しているのでものによっては生前よりも強い個体もいる。

「しかもあれは普通のドラゴンじゃねぇ!上級のレッドドラゴンだ!」

エルヴィンの驚きの声に兵士達は騒然とする。

「どうやら敵には死霊術士がいるのでしょうか?妙にアンデットの魔物が多いですね」

「そうですね。これは厄介です」

敵の魔物はアンデットが半分以上だった。


「こりゃ面倒くさくなったな。よし、アシュレイ様は直ぐに準備を始めてくれ。俺も始める」

「分かりました。全員持ち場に付け!ここが落ちたらもう国は滅びると思え!絶対に落とすな!少しでも敵を倒すんだ!」


『おおおぉぉ!!!!』

アシュレイの号令で兵士達は全員持ち場に着く。

その間エルヴィンは魔力を高めていた。
そして全身に雷の魔力を纏わせていく。


「魔纏武装術 雷公の黒鎧バアル・ブラックパンツァー!!」

エルヴィンは黒い雷を全身に纏って鎧とした。5年前は部分的にしか出来なかったのをこの5年で完璧に仕上げたのだ。

「アルトよぉ、この姿になるまでに4年かかったぜ。さっさと帰ってこい・・・!」

エルヴィンは黒い雷を纏ったままアシュレイに言う。

「後ろのやつは俺がやる。それ以外は頼んだぜ」

「大丈夫なんですか?」

「さあな?けど俺を舐めたら行けねぇぜ。じゃあ行ってくるわ」

エルヴィンは地面を蹴って飛び出して行った。



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コメント

  • 音街 麟

    アルト、早よ帰ってこい。
    そして、御都合主義が如く、皆を救うのだ!というか、救ってほしいです!

    1
  • まっち〜

    展開が面白い!アルトが国を建国するとかいう話があると面白そう!

    1
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