閑話 とある少年の物語その2

「俺の･･･じいちゃん･･･？」

「そう、ソナタの祖父に当たるな。」

俺の･･･祖父だと？

そう思った俺の心は憤怒に染まる。


「ふざけんなよ！今頃来てなんの用だよ！父さん達が死んだのは1年も前だぞ？！それまで何してやがったんだ！今更来るんじゃねぇよ！」


俺の視界が真っ赤に染まる。

ーーーそうだ。憎め、怒れ、憤れ！お前は何も悪くない！目の前の奴も仕方が無くきたに過ぎない！全てを破壊しろ！蹂躙し、駆逐し、殲滅しろ！さぁ！感情のままに暴れろ！


1年前から聞こえてくる声に乗せられるように体の底から力が溢れてくる。

(ああ！これほどの力があればこのジジイだって･･･！)


そう思っている時には既に目の前の祖父に殴り掛かっていた。先程とは全くと言っていいほど違うスピードに祖父は驚く。

「がァァァァ！」

祖父は避けたが俺の拳は壁にめり込み大きく破壊させた。

「ふはははははは！！！」

そのまま俺は誰もいないところに殴り掛かる。その度に壁はえぐれ床は凹みガラスは割れる。

「はひゃひゃひゃひゃひゃっ･･････ひゃ？」


俺の拳はいつの間にか止まっていた。
拳を抑えているのは祖父である源重郎。


「いい加減にせい。現実を見ろ、思い出せ、お主の親が何を言っていたかを、そして考えろ、自分がどうするべきのかを」

そう言うと祖父は何かをして、俺の意識は沈んで行った。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


目を覚ますと俺は自宅の床に寝転がっていた。

「あれ？俺は･･･」

「目が覚めたか？」

隣を見ると老人があぐらをかいて座っている。

「何があったか覚えておるかの？」

「えっと･･･ｯ!!そうだ！俺はあんたに負けて･･･」

「ふむ、そこまでは覚えているかの？」

「あれ？でもなんで戦ってたんだっけ？どうして？何があったんだ？」

「･･･どうやら記憶が混濁しているようじゃな。とりあえず改めて自己紹介をしよう。わしの名は真壁源重郎。お主の父、悠次郎の父親じゃ。お主の祖父に当たる」

「じいちゃん･･･？」

「そうじゃ」

すると俺の祖父はゆっくりと俺の事を抱き締めた。

「今まで済まなかった。遅くなってしまってすまなかった。辛かったな。悲しかったな。誰にも言えなかったのだろう？ワシはかなり遅れてしもうた。祖父失格じゃ。息子達が死んでしまったというのにワシはすぐにでも駆けつけることが出来なかった。本当に済まなかった」

俺は抱き締められるとなぜか泣いてしまった。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜


落ち着いた後改めて家の中を見るととても驚いた。

「えっ？何これ」

物は荒れ、扉は壊れ、ガラスは割れ･･･と、とにかくボロボロだった。

「お主･･･覚えとらんのか？」

「え？何が？つい最近までのことは覚えてるんだけど、何かあったっけ？」

「･･････そうか。まあよい。ちょっと色々とあったんじゃよ。」

「そうなんだ」

不思議と思った。俺はこの祖父について行きたいと。


その後祖父に引き取られた俺は元々居た街から引越し、田舎方で暮らすことになった。学校は転校し、全く新しい環境での新しい生活を始めたのだ。

だから、じいちゃんが死んだ時はとても悲しかった。
じいちゃんは父さんと母さんが死んだ時、外国で秘密テロ組織の破壊を国連から依頼されて外国に行っていたらしい。父さんが家を飛び出したことで連絡は全く取っていたなかったので父さんが死んでしまったことを知らずにいたらしい。その話をしてくれた時のじいちゃんは申し訳なさそうに話していた。


だから、じいちゃんが死んでから俺が異世界に転生するなんて全く思っていたかったのだった。