漆黒王の英雄譚

黒鉄やまと

第42話 あれから1ヶ月

屋敷を貰って奴隷達を買ってから1ヶ月が過ぎた。

え?飛ばしすぎだって?
だって何も無かったんだもん。奴隷達もだいぶ俺が置いたルールに慣れてきたし、もちろんアシュレイ達も。
まあ、家具を買おうとした時はさすがに金が足りなくなって俺が溜め込んでいた魔石やら魔物の素材やらを王国騎士団に売ったら高値がついてその金で買ったりもした。

おかげで屋敷の家具はかなり高級な家具が多く、広さも十分。たまに親父や母さん達や兄妹なんかが遊びに来て訓練場で模擬戦したり、お茶会とかもした。

そしてやらなくてはいけないこともこの1ヶ月でやってきた。
それはハドラーとペルシアと仲良くなることだった。

そもそもだ。

その日は家族ぐるみのパーティがある日だった。

そこにまさかの俺とアシュレイの婚約決定。

さらに邪神の使徒との戦闘になって王城は半壊。

さらにさらに父親であるハドルフさんは大臣や信用出来る貴族に事の顛末の説明や知らなかったがハドルフさんの弟一派の鎮火。大好きだったアシュレイは俺の元にばっかりいる。

構ってくれるのは母親と兄のハドラーだけ。

俺に対しての印象は最悪だった。

最初にあった時の言葉は今でも覚えている。

「お姉ちゃんを取ったくせに今度は私にも手を出すの・・・?!」

5歳の考えることではない。
一瞬転生者かと疑ってしまったほどだ。
まあ、転生者ではなかったが。


逆にハドラーの方は好印象だった。
どうやら強い人に憧れる性質のようで俺の強さを目の前で見たハドラーは俺の事を結構いい目で見てくれていた。


それでも今は二人とも仲良く話してくれるようになった。ペルシアはツンデレのツンの部分しか出てきてないが・・・・・・

俺は今王城の庭で3人でいる。

「今日はファフリア子爵の令嬢が来るって言ってたっけ?たしか・・・」

「レイチェルさんよ。」

「そうそう」

ハドラーとペルシアが話している。

「あと1ヶ月でリュシュトベルト帝国の皇女様が来るのか」

「そう言えばそういってましたね。何か問題でも?」

「いや、どんな子なんだろうって思って。」

「僕はお父さんからは聞いてないよ。ペルシアは?」

「私もよ。あなたこそ聞いてないの?アルベルト?」

「聞いてない、」

「役立たずね」

「お前も似たようなもんだろ。」


そんなふうに会話をしていると、メイドの人が一人の少女を連れてやってきた。

「ペルシア様、ハドラー様、アルベルト様。レイチェル・ファルリア様が参りました」

メイドの後ろから一人の少女が出てきた。

「初めまして皆様。ファフリア子爵家次女レイチェル・ファフリアです。この度はよろしくお願いします」

レイチェルは綺麗なお辞儀をして挨拶する。

「よろしくね」

ペルシアが代表として返事をした。

その後緊張していたレイチェルも何とか打ち解け、1時間ほどが経った。

「それじゃあそろそろ行くわ」

「そう。それじゃあまたね」

「またお会いしましょう」

「ばいばい」

レイチェルは基本的にずっと丁寧な言葉遣いをする子だった。
ペルシアは気の強いお嬢様系。ハドラーは優しそうな言葉遣いをする。

俺は王城から屋敷に戻るとリリスが迎えてくれた。

「ただいま」

「お帰りなさいませ」

「2人はどう?」

「あまり変わりはありません。カストル君はアルト様とリヒトさんの魔法のおかげで楽な様子です。」

俺の魔力を使ってリヒトがカストルにかけた魔法とはよく呪いなどの進行を弱めたりする魔法だ。呪いではなく使徒の溢れ出る力と言ってもほとんど呪いと変わりないため、効果は出た。それでも一日に2回はかけないとずっと苦しんでいる。

「アルヘナちゃんはリハビリも大分順調です」

アルヘナにはあの後話をした。

何とか説得しリヒトに欠損部位を全て治してもらった。
今は弟のカストルのこともあり今まで肉体を満足に使えていなかったため、リハビリを刺せている。
ついでに二人とも既に8歳だ。

「話すのはまだ慣れていませんが少しずつ表情が動くようになってますし」


アルヘナは初めて会った時は全くの無表情でその目には力が灯ってはおらずただただ与えられた食事を摂取して呼吸をするという行為を繰り返すだけだった。
この屋敷に来てからこの屋敷に暮らしているみんなが話しかけたり遊びにいったりしてくれたおかげでどうやら少しずつでも立ち直ってきているようだった。
もちろん俺もよく2人の部屋に行って話しかけたりしている。

アルヘナにはカストルの事を既に伝えていて、必ず助けると伝えると無表情の顔でコクリと頷いた。

俺が自分の寝室に戻るとアルトはゆっくりと口を開けた。


「あの、アルト様」

「どうしたの?」

「治るんですか?」

「カストルのこと?大丈夫だよ、」

「カストル君のこともそうですが、アルト様のことです」

「・・・・・・」

俺のことと言ったらひとつしかない。

魔力回路の故障についてだ。
カストルを治すためには膨大な魔力が必要となる。それに最も近い魔力量を誇るのは俺だった。しかし、俺の魔力回路はぶっ壊れ状態で俺が魔力を動かそうとすると激痛が走りそのまま死ぬ。

どうにかして魔力回路を治す必要があった。

「【世界の瞳】で調べてみたんだけど、過去に壊れた魔力回路が治ったことはないそうだ。」

特殊スキル【世界の瞳】の検索能力は一見万能に見え、全てを知ることが出来るように思えるが、実際はそうではない。

【世界の瞳】は調べたい事を何でもかんでも構わずに調べられるのではなく、これまで世界で起こった事象から現在起こっている事象までを全てを調べることができるのだ。

要するに世界が見ていた・・・・・・・ことは全て調べられることになる。


しかしこれは言い換えればこれまで起こっていなかったら調べることは出来ないということになる。
実際魔力回路の修復方法を検索したが結果はダメだったのだ。

これは今まで魔力回路の修復がされた事がなかったということなのだ。

「正直手詰まりだな」

「そんな・・・」

「まあ、いずれ治してみせるさ。」

「そう・・・ですね」

「さて!そろそろ夕食の時間だ。食堂に行こう」

「はい」

その後いつも通りの生活スタイルをこなし一日を終えた。


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コメント

  • ノベルバユーザー438963

    神に聞いてみたらいいのに

    1
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