漆黒王の英雄譚

黒鉄やまと

第33話 王国最強


俺は馬車を降りると目の前には学院の門がある。
学院は王都の端の方に作られていて敷地だけで学院以外の王都の4分の1程もある。

「ここが学院・・・」

「そうよ。アルト君も5年後にはここに通うのよ」

「そうですね。アルト君がこの学校に入学する時は私達は既に卒業しているんですね」

「うわーん、アルト君と一緒に学校通いたかったぁー」

「うっぷ!」

そう言って再び俺の事を抱きしめてくる。

ギブ!ギブ!!

俺はアシュレイの腕を叩く。

「ほらアシュレイ様、アルト君が苦しそうですよ」

そう言ってクラウディアさんは俺をアシュレイから助け出してくれた・・・ってあれ?

「あの、クラウディアさん?なぜ抱きしめられているんでしょう」

「何か問題でも?」

「いえ・・・」

うん。壁・・・・・・

「あ!クラウ!ずるいわよ!なんであなたが抱きしめるのよ!」

「いえ、別になんでもないです」

そう言って俺を降ろす。

「やっぱり何も反応してくれない・・・」

「何か言った?クラウ」

「いいえ」

そう言いながら少し悲しそうな顔で自分の胸を見ている。


「それよりもその人のところに案内してもらえないですかね?」

「あ、そういえばそうね。」

「すみません。目的を見失ってしまって」

2人を元に戻して学院の中に入って行く。

「ところでこれから会いにいく人ってどんな人なの?」

「んっとねぇ〜」

「まあ、簡単に言ってしまうと王国最強・・・ですね」

「王国最強?」

それってアルペリーニさんのことか?
けど学院にいるんだから違うのかな?

「そう。このベルマーレ王国で最強と言われ、『剣王』の異名を持つお方です。」

「ついでに私の師匠でもあるわ」

剣王か・・・どんな人なんだろ。てか、その人が師匠だからアシュレイは強いのか。

「どんな人なんだろ。気になるな・・・」

「実を言うとアルト君は1回あっているのよ?」

「そうなんですか?」

「アルト君が眠っている間にアルト君の所に来ているの。寝ているから知らないのも仕方が無いかもしれないけどね」

「そうだったんですか・・・」

お見舞いに来てくれたのならお礼をしなくちゃな・・・

そんな話をしていると1つの扉の前についた。どんな部屋なのか扉の上を見てみると・・・

「学院長室?」

「そう。私達が会う人はこの学院の学院長なの」

「そんな人が剣王なのか・・・」

「とりあえず入るわよ」

アシュレイは扉をノックした。

「アシュレイです。入ってよろしいですか?」

そう言うと中から「いいぞ」と声が聞こえた。

「失礼します」

「よく来たな。アシュレイ」

「こんにちは師匠。」

そこに居たのは透き通るような金色の髪をしたエルフの男性だった。

「ああ、クラウも久しぶりだ」

「お久しぶりです。学院長」

「それと君は確か・・・」

そう言って俺の方を見る。

「お会いできて光栄です。剣王様。俺はアルベルト・クロスフィードと言います。」

「そうだそうだ。エルの所のガキだったな。この前訓練場をぶっ飛ばした」

それには触れないで欲しい。
ニヤッと笑いながら手を差し出してくる。
これは握手だろうか・・・

俺は手を差し出すと直ぐに視界が逆さまになった。

「ん?」

どうやら体ごとその場で回されたようだ。俺は空中で体を捻り、空気を蹴ることでその場に着地した。

「ほぉ、空気を蹴るとは・・・どんな力してるんだよ。まあ、合格だ。私はウォートニア・クラネル。この学院の学院長をしている。あとそこのアシュレイの師匠もな。」

「よろしくお願いします。それと俺が寝ている時に来てくれたそうで・・・ありがとうございました」

「なに、ちょっとした用事があってね。まあ、いい。それで今日来たのはお礼を言いに来ただけなのかい?」

「いえ実は、聞きたいことがありまして」

「なんだい?答えられることなら答えてあげようじゃないか」

「剣王様は・・・」

「ウォートニアでいいよ。」

「ウォートニアさんは精霊との契約の仕方を知っていますか?」

「なんだ?精霊に興味があるのか?」

「まあ少し。俺の魔力回路がボロボロなのは知っていますよね?」

「ああ、どんな無茶な使い方をしたらそんなになるのか知りたいほどボロボロだったな」

「精霊魔法は契約者の魔力を渡せば魔法が発動出来ると聞きました」

「なるほど。自分自身で魔力を使うことは出来ないから精霊に魔力を吸わせて魔法を使おうって考えか?」

「流石です。俺が考えたのはその通りです。それなら身体の中で魔力を回さなくてもいいんじゃないかと思って」

「ふむ。いい考えじゃないか。それならば確かに魔法を使うことが出来ると思うよ」

「よし!」

俺の考えは当たっていたみたいだ。

「だから精霊との契約の方法を聞きたかったのかい」

「ええ、ウォートニアさんなら精霊について詳しいんじゃないかってアシュレイとクラウディアさんに言われたので」

「なるほどねぇ、」

ウォートニアさんはうーんと考えていたが何かを思い出したように目を開いた。

「多くの精霊魔法使いはエルフの国エスフィーナ王国にある精霊殿という場所で精霊を顕現させて契約する。だから、エルフの精霊使いが圧倒的に多い。しかし、極たまに生まれつき精霊眼という魔眼を持って生まれる人がいる。その魔眼は精霊を見ることが出来るというものだ」

「魔眼・・・ですか?」

「そうだ。その精霊眼を持っている人に手伝って貰えば精霊殿でなくとも精霊と契約できるかもしれない。」

「なるほど・・・」

精霊眼か・・・魔眼の一種・・・

「その精霊眼を持っている人はどこにいるのかしか?」

「昔あったことがあるけどもう300年近く前の人族だから死んでしまっているんだ。それからは会ってないよ」

「そんな・・・」

それはそうだろう。そもそも魔眼を持っている人が珍しいのだ。さらに魔眼は様々な種類がある。それはもう宝くじを1枚買って6億当てるようなもんだ。

「それじゃあエスフィーナ王国に行くしかないのか・・・」

「そう言えばアルト君、神の使徒じゃなかったかい?」

「え?ええ。」

「それなら神眼ってスキルを知らないかい?」

「え?どうして神眼のことを・・・?」

「今から500年くらい前に私は神の使徒にお世話になっていてね。その時の神の使徒が神眼っていうスキルを持っていたんだよ。」

「へえ、どんな力だったんですか?」

アシュレイは興味深そうに聞く。

「私はあれ以上のスキルを見たことがないよ。簡単に言うと全てができる。」

「全て・・・ですか?」

クラウディアさんもそれに反応する。

「そう。全てだ。神眼というスキルは全ての魔眼の能力を使うことが出来る」

「な!そんな強力な能力があるんですか!!」

「そうさ。その神の使徒も精霊と契約していたよ。もちろん神眼の能力の1つの精霊眼を使ってね」

そうだったのか・・・知らなかった。
ってことは・・・

「あの、俺神眼持ってるんですけどこれって精霊を見ることが出来るってことですか?」

「な!アルト君は神眼を持ってるのかい!」

「ええ、俺のスキルのひとつです。」

「そうか。それなら精霊を見ることも出来るはずだよ」

「そうなんですか・・・」

「良かったね!アルト君!これで精霊と契約できるね!」

「うん。それはいいんだけどね?」

「どうしたんだい?浮かない顔をして、何か問題でもあるのかい?」

「いや、その、まあ、 はい。実は神眼の使い方が分からないんです。」

「「「は?」」」

3人の声がハモった。

「なんでだ?神眼を使ったことがないのかい?」

「いえ、使ってますよ。鑑定をする時とかに・・・けど、それ以外の魔眼の使い方を知らなくて・・・」

「それじゃあ・・・」

「うん。精霊眼の使い方もわからない」

俺はあははと笑いながら答える。

「前の神の使徒は普通に切り替えて戦ってたけど・・・」

「普通に切り替える?それじゃあ普通に精霊眼になれって思ったらなるんですかね?」

「そうなんじゃないのかい?私はわからないよ。神眼を持ってないからね。」

「そうですか・・・分かりました。ウォートニアさん。ありがとうございました」

「いや、構わないよ。もう帰るのかい?」

「ええ、そのつもりです。」

「それじゃあエルの野郎に今度本部に行くかもしれないから首を洗って待っときなって伝えておいてくれ」

「は、はぁ」

何したんだよ親父・・・
命狙われてんの?

「それじゃあ師匠。ありがとうございました」

「ああ、また今度甘い物でも持ってきてくれ」

「わかりました」

どうやら甘い物が好きみたいだ。
顔がにやけてた・・・。

俺達は馬車に乗って王城へ戻った。


「漆黒王の英雄譚」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

  • そら

    サクサク読むことができました。
    面白いです。

    0
  • ノベルバユーザー288318

    クルーエルキャンセルとか
    なんとかで早く
    元どおりになんないかな…

    0
コメントを書く