漆黒王の英雄譚

黒鉄やまと

第25話 魔獣兵

「アシュレイ!」

「あれ?お父様?」

「親父?母さん?」

訓練場にやってきたのは焦った顔をしたハドルフ様や親父達、それに母さん達だった。
クラウディア様は直ぐに臣下の礼をとる。

「クラウディアか、来ていたのか。それで一体何があったんだ・・・」

「私たち急に膨れ上がったアルト君の魔力と爆発音が聞こえたから直ぐに来たの。大丈夫なの?」

心配そうな顔をしてアイリス母さんに体を触られる。

「大丈夫だよ。ちょっとあの人たちと決闘してただけだから」

「決闘って・・・また?!なんでそんなことに」

「あの、アイリスお義母様、アルト君を責めないでください。悪いのは私なんです」

そう言ってアシュレイ様は前に出て、アイリス母さんに話し始める。

「私達が部屋を出たあと、クラウと会って、3人で話していたらあの男達がやってきて私に決闘しろと迫ったんです。それで、もうする必要が無くなったことを話したら信じてくれずに私の手を掴んできたんです」

ん?あの時掴んでなかったんじゃないのか?というか意識が朦朧としていてあんまり覚えてないんだが・・・・・・

「なんだと!」

「そこをアルト君が助けてくれたんです。けれど、相手もひかずに結局決闘になっちゃって・・・・・・」

「そうだったのか。アルト君、ありがとう。私の娘を守ってくれて・・・」

へ?一応話に乗っかっておくか・・・

「いえ、私は当たり前のことをしたまでです。」

「そうか。兵よ!奴らを運べ!牢屋に入れて親には手紙で通達しておけ!」

「「は!」」

そう言って運ぼうとすると・・・・・・

「う、うわぁぁぁぁ!!!」

5人が急に立ち上がって兵士を吹き飛ばした。

「な、なんだあの姿は!」

周りには禍々しい魔力を纏っていてまるで獣のように暴れ回る。
近衛兵はすぐさまハドルフ様たちの前に立ち警護に回る。

「あ、あれは!」

見覚えがあるのか親父は急に焦った顔をした。

「知っているのか!」

「あ、ああ。あれは10年前の魔獣石を使った兵と全く同じだ!」

「な!魔獣石だと?!」

魔獣石?なんだそれ?

「お父様から聞いたことがあるわ。十年前の戦争の時、敵国の研究者が開発した禁忌の魔道具。使用した人間は理性を失い暴れるだけの化身となる。」

後ろにいるアシュレイ様がそう言った。

「なんで今頃そんなものが!」

「あれは全て処分したはず!まだ残っていたというのか!」

すると5人の魔獣兵が動き始めた。

狙いは・・・


「俺か!」

どうやら俺にやられたことを根に持っているようだ。理性を失っても恨みみたいなもんはあるってことか!

「親父!みんなを守れ!」

「お前は!」

「アイツらをぶっ飛ばす!」

俺は向かってくる5人に対し走り出した。

「待て!お前一人では!武器も持たずにどうする!」

「大丈夫だ!それよりも俺の攻撃に巻き込まれないようにしてくれ!はあああああ!!!!雷帝の聖鎧トール・アルマデュール!!」

即時に魔力を纏って魔法を発動させる。
そして無限収納から斬魔剣と麒麟刀をだす。そして魔力を全力で通した。
その瞬間落雷が起きる。

落雷は俺に向かって落ちていて、アイリス達が悲鳴をあげるが、これは俺の魔力に変換れるのでなんの問題もない。

「少しは強くなったんだろうな!」

そして俺一人対魔獣兵5人の戦闘が始まった。

俺は5人の攻撃を雷速で捌く。
そして捌くと同時に雷を相手に通すことで動きを鈍らせていた。

「おら!」

俺は1人を切り飛ばすと距離を取った。

「落ちろ!」

その声とともに空から落雷が落ちる。
何度もの落雷や膨大な魔力からそれに気づいた人達が何人か来たようだが、近づけずに観客席に居るだけだ。
王太子様達は親父の雷と母さんやアシュレイ達の魔力防御壁で俺の雷を逸らしているようだ。しかし随分と魔力を消費しているのか顔色が悪くなっている。

「ちっ!」
さすがにこれ以上やるとみんながキツそうだな・・・


俺は魔法を解いた。

「何をやってるんだ!アルト!まだ敵は!」

「いや、これで終わりだ!『星々に裁かれよ!』七星の罰裁!!!」

そう、俺は天体魔方陣を既に周りに張っていたのだ。
しかも5重もの魔法陣を張り、最小範囲で高出力の魔力を込めた。結界を張り、爆風などは全て上空へ飛ぶ。

俺は1度、みんなのところに戻った。

「終わったぞ」

「アルト君!」

「おわっ!」

抱きついてきたのはアシュレイ王女だった。

「ちょ!王女殿下!く!くるじぃ・・・」

「あ、ごめんね?けど無事でよかった。」

「よくやったぞアルト。」

「あははは、みんな心配し過ぎだよ。さすがにこれで終わらなかったら化け物だよ」

『化け物で悪かったな・・・』

その時おぞましい声が聞こえた。
その声にみんな顔が青ざめてしまっている。ここに俺以外の子供が来ていたらショック死しているかもしれない。
そう思えるほどの重圧を持った声だった。

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