漆黒王の英雄譚
第13話 判決
アルベルト失踪事件から1ヶ月が経った。
事件から1ヶ月は色々あったが特に何も無かった。
アルベルトが新しいスキルを造ったり、警備騎士の訓練で全員抜きしたり、エルヴィンに覡神鳴流槍術を教えたり主にアルベルトが5歳になってから出来る事をやっていただけだった。
今日は何をしようかなぁと考えていると、アルトはある事を思い出す。
そしてそれを実行するためにアルトはエルヴィンの所に訪れた。
「親父、ちょっといい?」
「アルトか?入っててくれ少ししたら一息つくから。」
アルトが執務室に来るとエルヴィンはまだ仕事中だったようで、先に入って待てと言った。
部屋に入るとゼーダが紅茶を入れてくれて執務机の前にあるソファに座った。
しばらく無言の時が流れると、突然エルヴィンがふぅと力を抜いた。
「ゼーダ。紅茶をもうひとつ。」
「かしこまりました」
エルヴィンは椅子から立つとアルトの正面に座った。
その前にゼーダが紅茶を置く。
エルヴィンは紅茶を1口飲むとアルトに向き直った。
「待たせたな。」
「いや、別にそんなに大変な事じゃないし、この時間を作ってもらったのもありがたいよ」
「それでどうしたんだ?アルトから来るなんて珍しいな」
「いや、そろそろ街を回ってみたいと思って、その許可を貰いに来た」
「なるほどなぁ。確かにアルトが街を見たのは授与の儀以降無いからな。」
「いや、一応そのすぐあとに出たけどもう暗くて何もやってなかったから、活気のある街を見たいんだ。」
「うーむ。・・・わかった。その代わりアルトがいくら強いと言っても5歳に変わりないからな。リリスと一緒に行けよ?」
「ほんと?!よっしゃ!ありがとう!」
「まあ、アルトも街を見る良い機会だ。けど、今日はやめておけよ。これから日が隠れるんだからな」
「わかった。じゃあ明日行ってくるよ」
「ちゃんとリリスには話しておけよ?」
「うん。じゃあまた後で」
アルトは部屋を出てリリスの元へ向かって明日街に行くことを伝えた。
リリスは快諾し翌日街に行くことになった。
そして翌日ーー・・・
「じゃあリリス行こうか」
「はい。どこか行く予定はあるのですか?」
「まあ、まずは教会に行こうか」
「教会・・・ですか?」
「うん。ちょっと用事があってね。この前は馬車で行ったから今回は歩いていこうと思うんだけど、場所わかる?」
「はい。もちろんです。」
「じゃあ案内してもらってもいい?もちろん街のこともね」
「はい!ではこっちです!」
その後リリスに街を案内してもらいながら教会に着いた。
教会の扉を開けて入るとロゼッタさんがでてきた。
「これはアルト君。よく来てくれました。今日はどうしたのですか?」
「こんにちはロゼッタさん。今日は神様達にお祈りしようと思って来ました。」
「これはいい事です。では御布施を頂けますかな?」
「それは私が出します。はい、これでいいですか?」
「はい。ありがとうございます。ごゆっくりとどうぞ」
そう言うとロゼッタさんは途中でやめた仕事に戻って行った。
「じゃあリリス。俺はやってくるよ」
「はい。私はここで待っています」
リリスを待たせアルトは十二神の石像の前に立ち祈りを始める。
気がつくとそこはいつも来る椅子の場所ではなく案内される円卓と神々の間だった。
周りには既に12人の神々が座っている。
最初に喋り始めたのは破壊神シャルルだった。
「久しぶりね。どうするかは決まったの?」
どうするか・・・それは前回、つまり授与の儀の時最後に言われたこと。
創造神タクロスを殺すか。
「はい。決まりました。タクロス様は
殺しません。」
ずっと俯いていたタクロス様が顔を上げる。
「それでいいの?」
「正直意味が分からねえぜ。このジジイのせいでお前は深く傷着いたはずだ。何故許せる?」
「いえ、許せてはいません。正直怒っています。けど、感謝もしているんです。」
神々の何人かは分かったようだが、ほかの神々は首を傾げる。
「確かにタクロス様は神であるのに神獣への対処に遅れ前世の俺は死に、転生間際のミスでこの世に新たに作られた人として生まれてしまいました。それは1個人として到底許せるものではありません。」
何人かの神々はうんうんと頷いている。
「けど、タクロス様が失敗しなければ俺は今の家族に会うことは出来なかった。親父に、アイリス母さんに、アル兄さん、シルク母さん、レオ兄さん、フィー姉さん、リリス、ゼーダ・・・タクロス様が失敗したおかげで会えた人達です。そしてその家族達が俺の事をしっかりと愛してくれているとこの前の事で良く実感しました。だから、タクロス様。失敗してくれてありがとうございます」
俺はタクロス様に頭を下げる。
タクロス様は僅かに目を見開いたあと問いかけてきた。
「・・・本当にいいのか?」
「ええ、もちろんです。さぁ、もうこの話はやめましょう。じゃあ用も済んだのでそろそろ帰りますね」
パンっ!と手を叩き雰囲気を仕切り直す。
「そうね。あなたがそれでいいのなら終わりにしましょう。それとまだ返す訳には行かないわ」
「?何故でしょう」
「何故って・・・あなた自殺しようとしたわよね?」
「あ・・・」
アルトは1か月前のことを思い出し、笑顔で見つめるシャルルに苦笑いを返す。
「お前は俺たちにどれだけ心配かけさせるつもりだ?ったく、お前の親達が早く来てなかったら本当に死んでたところだぞ?」
「す、すみません」
それから体感時間で1時間ほど十二神からチクチクと言われ続けやっと解放された。
「さて、そろそろ返した方が良さそうね。下界じゃあ2分くらい経ってるだろうし」
「1時間以上いたのに2分くらいしか経ってないのは神界の特徴ですか?」
「まあ、今回は時間をずらしたからね。それとステータスを見た時に反映無しって書かれていたのは覚えている?」
「はい。あれはどういう意味なんですか?」
「実を言うとまだ解放できないのよ。徐々に解放していくけど、一気に解放すると能力に肉体がついていけなくて崩壊してしまうの。」
「ほ、崩壊ですか・・・」
「しかもスキルというのは魂に刻み込まれているものなの。だから、魂も悲鳴をあげて最悪魂ごと消滅してしまうの。」
「絶対いやです!」
「ええ、だから、成長に合わせてこっちで解放するから我慢してね。」
「分かりました。調整の方お願いします」
「もちろんよ。あ、けどもう、十二神の方は1部解放できるからしておいたわ。戻ったら見てみてね。」
「分かりました。ありがとうございます」
「アルト君、今回は本当にありがとうな。そしてすまなかった」
「大丈夫です。また来ますね」
「じゃあそろそろ帰すわ」
シャルル様はパチン!と指を鳴らすとアルトは光に包まれてその場から消えた。
目を開けると祈ったままの状態だった。
「はぁ、疲れた」
「お疲れ様です。随分疲れたような顔をしていますが大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫。じゃあそろそろ街を回ろうか」
「はい!アルト様は行きたい場所はありますか?」
「武器屋・・・かな?」
「武器屋ですか・・・?」
「うん。ちょっとどんなものがあるのか見て起きたくてね。分かる?」
「はい。冒険者をしていたこともあったので分かりますよ」
「へぇ、冒険者してたんだ。」
「はい。今でもたまに休みの日にクエストを受けに行ったりしてますよ」
「え?そうなの?」
「はい。」
と、アルト達は教会をでて街に繰り出して行った。アルトのその時の顔は疲れたような顔をしながらも何かスッキリとした顔だった。
事件から1ヶ月は色々あったが特に何も無かった。
アルベルトが新しいスキルを造ったり、警備騎士の訓練で全員抜きしたり、エルヴィンに覡神鳴流槍術を教えたり主にアルベルトが5歳になってから出来る事をやっていただけだった。
今日は何をしようかなぁと考えていると、アルトはある事を思い出す。
そしてそれを実行するためにアルトはエルヴィンの所に訪れた。
「親父、ちょっといい?」
「アルトか?入っててくれ少ししたら一息つくから。」
アルトが執務室に来るとエルヴィンはまだ仕事中だったようで、先に入って待てと言った。
部屋に入るとゼーダが紅茶を入れてくれて執務机の前にあるソファに座った。
しばらく無言の時が流れると、突然エルヴィンがふぅと力を抜いた。
「ゼーダ。紅茶をもうひとつ。」
「かしこまりました」
エルヴィンは椅子から立つとアルトの正面に座った。
その前にゼーダが紅茶を置く。
エルヴィンは紅茶を1口飲むとアルトに向き直った。
「待たせたな。」
「いや、別にそんなに大変な事じゃないし、この時間を作ってもらったのもありがたいよ」
「それでどうしたんだ?アルトから来るなんて珍しいな」
「いや、そろそろ街を回ってみたいと思って、その許可を貰いに来た」
「なるほどなぁ。確かにアルトが街を見たのは授与の儀以降無いからな。」
「いや、一応そのすぐあとに出たけどもう暗くて何もやってなかったから、活気のある街を見たいんだ。」
「うーむ。・・・わかった。その代わりアルトがいくら強いと言っても5歳に変わりないからな。リリスと一緒に行けよ?」
「ほんと?!よっしゃ!ありがとう!」
「まあ、アルトも街を見る良い機会だ。けど、今日はやめておけよ。これから日が隠れるんだからな」
「わかった。じゃあ明日行ってくるよ」
「ちゃんとリリスには話しておけよ?」
「うん。じゃあまた後で」
アルトは部屋を出てリリスの元へ向かって明日街に行くことを伝えた。
リリスは快諾し翌日街に行くことになった。
そして翌日ーー・・・
「じゃあリリス行こうか」
「はい。どこか行く予定はあるのですか?」
「まあ、まずは教会に行こうか」
「教会・・・ですか?」
「うん。ちょっと用事があってね。この前は馬車で行ったから今回は歩いていこうと思うんだけど、場所わかる?」
「はい。もちろんです。」
「じゃあ案内してもらってもいい?もちろん街のこともね」
「はい!ではこっちです!」
その後リリスに街を案内してもらいながら教会に着いた。
教会の扉を開けて入るとロゼッタさんがでてきた。
「これはアルト君。よく来てくれました。今日はどうしたのですか?」
「こんにちはロゼッタさん。今日は神様達にお祈りしようと思って来ました。」
「これはいい事です。では御布施を頂けますかな?」
「それは私が出します。はい、これでいいですか?」
「はい。ありがとうございます。ごゆっくりとどうぞ」
そう言うとロゼッタさんは途中でやめた仕事に戻って行った。
「じゃあリリス。俺はやってくるよ」
「はい。私はここで待っています」
リリスを待たせアルトは十二神の石像の前に立ち祈りを始める。
気がつくとそこはいつも来る椅子の場所ではなく案内される円卓と神々の間だった。
周りには既に12人の神々が座っている。
最初に喋り始めたのは破壊神シャルルだった。
「久しぶりね。どうするかは決まったの?」
どうするか・・・それは前回、つまり授与の儀の時最後に言われたこと。
創造神タクロスを殺すか。
「はい。決まりました。タクロス様は
殺しません。」
ずっと俯いていたタクロス様が顔を上げる。
「それでいいの?」
「正直意味が分からねえぜ。このジジイのせいでお前は深く傷着いたはずだ。何故許せる?」
「いえ、許せてはいません。正直怒っています。けど、感謝もしているんです。」
神々の何人かは分かったようだが、ほかの神々は首を傾げる。
「確かにタクロス様は神であるのに神獣への対処に遅れ前世の俺は死に、転生間際のミスでこの世に新たに作られた人として生まれてしまいました。それは1個人として到底許せるものではありません。」
何人かの神々はうんうんと頷いている。
「けど、タクロス様が失敗しなければ俺は今の家族に会うことは出来なかった。親父に、アイリス母さんに、アル兄さん、シルク母さん、レオ兄さん、フィー姉さん、リリス、ゼーダ・・・タクロス様が失敗したおかげで会えた人達です。そしてその家族達が俺の事をしっかりと愛してくれているとこの前の事で良く実感しました。だから、タクロス様。失敗してくれてありがとうございます」
俺はタクロス様に頭を下げる。
タクロス様は僅かに目を見開いたあと問いかけてきた。
「・・・本当にいいのか?」
「ええ、もちろんです。さぁ、もうこの話はやめましょう。じゃあ用も済んだのでそろそろ帰りますね」
パンっ!と手を叩き雰囲気を仕切り直す。
「そうね。あなたがそれでいいのなら終わりにしましょう。それとまだ返す訳には行かないわ」
「?何故でしょう」
「何故って・・・あなた自殺しようとしたわよね?」
「あ・・・」
アルトは1か月前のことを思い出し、笑顔で見つめるシャルルに苦笑いを返す。
「お前は俺たちにどれだけ心配かけさせるつもりだ?ったく、お前の親達が早く来てなかったら本当に死んでたところだぞ?」
「す、すみません」
それから体感時間で1時間ほど十二神からチクチクと言われ続けやっと解放された。
「さて、そろそろ返した方が良さそうね。下界じゃあ2分くらい経ってるだろうし」
「1時間以上いたのに2分くらいしか経ってないのは神界の特徴ですか?」
「まあ、今回は時間をずらしたからね。それとステータスを見た時に反映無しって書かれていたのは覚えている?」
「はい。あれはどういう意味なんですか?」
「実を言うとまだ解放できないのよ。徐々に解放していくけど、一気に解放すると能力に肉体がついていけなくて崩壊してしまうの。」
「ほ、崩壊ですか・・・」
「しかもスキルというのは魂に刻み込まれているものなの。だから、魂も悲鳴をあげて最悪魂ごと消滅してしまうの。」
「絶対いやです!」
「ええ、だから、成長に合わせてこっちで解放するから我慢してね。」
「分かりました。調整の方お願いします」
「もちろんよ。あ、けどもう、十二神の方は1部解放できるからしておいたわ。戻ったら見てみてね。」
「分かりました。ありがとうございます」
「アルト君、今回は本当にありがとうな。そしてすまなかった」
「大丈夫です。また来ますね」
「じゃあそろそろ帰すわ」
シャルル様はパチン!と指を鳴らすとアルトは光に包まれてその場から消えた。
目を開けると祈ったままの状態だった。
「はぁ、疲れた」
「お疲れ様です。随分疲れたような顔をしていますが大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫。じゃあそろそろ街を回ろうか」
「はい!アルト様は行きたい場所はありますか?」
「武器屋・・・かな?」
「武器屋ですか・・・?」
「うん。ちょっとどんなものがあるのか見て起きたくてね。分かる?」
「はい。冒険者をしていたこともあったので分かりますよ」
「へぇ、冒険者してたんだ。」
「はい。今でもたまに休みの日にクエストを受けに行ったりしてますよ」
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