漆黒王の英雄譚
第8話 家出
エルヴィンsideーー
「しかしなにがあったのか全くわからん。いつもの授与の儀と同じように十二神様方の石像が光り、ステータスと加護が与えられる。何一つ変なところは無かった。」
エルヴィンは執務室の椅子に座り腕を組んで考える。
「もしかして確認したステータスがそんなに良くなかったから落ち込んでいる?いや、確認する時なんてなかったはずだ。他に理由があるのか?」
考えも考えても答えが出ないエルヴィンは執事のゼーダに食事の準備が出来たと報告があったのでとりあえず食事をすることにして食堂へとやってきた。
食堂には既に第三夫人のアイリスとアルベルトの兄アルヴィン。まだ学園に行っていないレオナードとリンゼ、その母親で第二夫人のシルクが居た。
正直シルクとアイリスの2人は仲が悪いのではいかと思っていたが全くそんなことは無くとても仲がいい。アルベルトを引き取った時も笑顔で迎えてくれた。
エル「む?アルトはまだ来ていないのか?」
レオ「あ、父様。アルトはまだ来てません!お外から帰ってきた時元気無かったけど何かあったのですか?」
エル「わからん。」
シル「分からないんですの?」
エル「ああ。ゼーダ、リリスは呼びに行ってるんだろう?」
ゼー「はい。呼びに行っております。そろそろ来るかと思うのですが…………」
すると外からドタバタと走る音が聞こえる。
音は食堂の扉の前で止まったかと思うと次は扉が勢いよく開きリリスが血相を変えて入ってきた。
リリ「旦那様!」
エル「どうした?」
リリ「アルト様が!アルト様が!」
アイ「落ち着きなさい。アルトがどうかしたの?」
リリ「アルト様が…………いなくなりました!」
エル「なんだと!!誘拐か?!」
リリ「その……それが・・・部屋にこんな置き手紙が…………」
リリスはアルベルトが書いたであろう手紙をエルヴィンに渡す。
手紙を読んだエルヴィンはだんだんと顔を青くしていく。
「ゼーダ!今すぐに捜索隊を派遣しろ!街の隅から隅まで組まなく捜索させろ!」
「畏まりました!」
ゼーダはエルヴィンの指示に素早く行動に移すために部屋を飛び出して行った。
「リリス。お前はここにいてレオ達を任せていいな?」
「は、はい!」
「アイリス、シルクちょっと来てくれ」
3人は部屋の隅に集まって話し始める。
「何があったの?」
「誘拐ではないのですよね?」
「ああ、何故かは分からないがアルトが俺たちと血が繋がってないことを知った。」
「な!!」
「どうしてでしょう?アルト君の様子がおかしくなったのは授与の儀をしてからですよね?授与の儀にそんな効果はないはずですが?」
「分からない。だがそこまではこれから話すつもりだったからまだいい。しかしその後だ。『俺はこの家に必要のない子供です。今までありがとうございました。さようなら』」
「それって…………」
「ああ、アルトは・・・・・・
死のうとしている可能性が高い」
「そんな…………どうして…………」
「アルト君ならまだこの街から出るのは厳しいと思います。探すなら街の中ですが…………」
「ああ、あの子は5歳にしてはかなり頭がいい。もしかしたら抜け穴を知っているかもしれない。」
「そんな!そしたらアルトはもしかして!」
「・・・・・・血霧の大森林に行っている可能性がある」
「血霧の……」
血霧の大森林ーー
クロスフィード領と隣の辺境伯領の間にまたがる大森林。2つの領地だけでは収まらず半分以上を大森林を超えた先にあるジェネルド帝国に持つ超広大な森林である。大森林には弱い魔物から強力な魔物まで大量にいるとされている超危険な森である。
浅いところならば弱い魔物ばかりだが数が多く冒険者でもパーティを組んで浅いところで狩りをするぐらいである。その代わり開拓が進んでいないため未だ誰の目にも止まっていない資源がゴロゴロと眠っている。さらに最近侵略を繰り返しているジェネルド帝国の抑止力となりベルマーレ王国はそれを盾に友好条約を結んでいる。
子供の躾などでも血霧の大森林に置いていくぞというふうに使われることはよくある事だ。
その森に授与の儀を受けたばかりの5歳児が向かったとなると残された未来は死だけだ。
「早く行きましょう!じゃないとあの子が!!」
「ああ!シルク!俺とアイリスが不在の間屋敷を頼む!」
「はい」
「アイリス!準備をしてくれ!」
「もちろんです!」
「絶対にアルトを連れて帰る!」
エルヴィン達はアルトを連れて帰るために準備を始めた。
アルベルトsideーー
足が重い・・・
この森に入ってからしばらく経つ。
親父達は俺が居ないことに気が付いた頃だろうか?
「どこに……」
ーーどこに……
「…………どこに……」
ーーーどこなんだ……
「どこに………………どこに俺を殺せる魔物がいる・・・・・・ッ!」
アルトはこの森に入ってからゴブリンやオーク、スライム、蜘蛛様々な魔物に襲われてきた。おかげで全身血だらけである。
返り血で・・・・・・・・・
そう。殺せなかったのだ。アルトを殺すことの出来る魔物が。それほどまでにアルトは強すぎだ。いや、ステータスやスキル、魔法でという訳では無い。全てアルトが転生する前の、悠斗だった時の技なのだ。
覡神鳴流ーー真壁家が代々受け継いできた相手を殺すための技。
それを完璧に修得していた悠斗は魔物が襲ってきたのを反射的に倒してしまった。
アルトが歩いた道には魔物の血で道ができている。
だからアルトは自分を殺せるほどの魔物を探していた。
幸い魔物の血にまみれている事あって魔物は結構襲ってくる。
今棍棒で殴ってこようとしているゴブリンもその一体である。
アルトは棍棒を避けゴブリンの胸にパンチを食らわせる。それだけでゴブリンは吹っ飛びいき途絶える。
「ここじゃダメか・・・・・・ッッ!!」
突然感じる強い殺気。
その方を向くと口からヨダレを垂らしアルトの2倍近い体格を持ち、感じる圧倒的圧力。
「見つけた…………」
そこに居たのはスターワーウルフ。
危険度Aの狼型モンスターだった。
エル&アイリスsideーー
「ゼーダ。俺達は血霧の大森林に行く。2人だけではさすがに危険だ。お前達も来てくれ」
「血霧の大森林ですか?一体何故でしょう?」
「アルトは頭のいいやつだ。街を抜け出して森に行っている可能性がある。それにあの手紙から死のうとしているかもしれない。だったらあの場所はピッタリだろう」
「なるほど。確かにそうですな。」
「では行ってくる。」
「アイリスさん。エル様。必ず、必ず連れ帰ってください。あの子は私達クロスフィード家の子供なのですから!」
「もちろんよ。エル、行きましょう!」
「ああ、では行くぞ!」
エルヴィンはアイリス、ゼーダ、その他2人を連れて森の中に入っていった。
「頼むから無事でいてくれよ!!」
「しかしなにがあったのか全くわからん。いつもの授与の儀と同じように十二神様方の石像が光り、ステータスと加護が与えられる。何一つ変なところは無かった。」
エルヴィンは執務室の椅子に座り腕を組んで考える。
「もしかして確認したステータスがそんなに良くなかったから落ち込んでいる?いや、確認する時なんてなかったはずだ。他に理由があるのか?」
考えも考えても答えが出ないエルヴィンは執事のゼーダに食事の準備が出来たと報告があったのでとりあえず食事をすることにして食堂へとやってきた。
食堂には既に第三夫人のアイリスとアルベルトの兄アルヴィン。まだ学園に行っていないレオナードとリンゼ、その母親で第二夫人のシルクが居た。
正直シルクとアイリスの2人は仲が悪いのではいかと思っていたが全くそんなことは無くとても仲がいい。アルベルトを引き取った時も笑顔で迎えてくれた。
エル「む?アルトはまだ来ていないのか?」
レオ「あ、父様。アルトはまだ来てません!お外から帰ってきた時元気無かったけど何かあったのですか?」
エル「わからん。」
シル「分からないんですの?」
エル「ああ。ゼーダ、リリスは呼びに行ってるんだろう?」
ゼー「はい。呼びに行っております。そろそろ来るかと思うのですが…………」
すると外からドタバタと走る音が聞こえる。
音は食堂の扉の前で止まったかと思うと次は扉が勢いよく開きリリスが血相を変えて入ってきた。
リリ「旦那様!」
エル「どうした?」
リリ「アルト様が!アルト様が!」
アイ「落ち着きなさい。アルトがどうかしたの?」
リリ「アルト様が…………いなくなりました!」
エル「なんだと!!誘拐か?!」
リリ「その……それが・・・部屋にこんな置き手紙が…………」
リリスはアルベルトが書いたであろう手紙をエルヴィンに渡す。
手紙を読んだエルヴィンはだんだんと顔を青くしていく。
「ゼーダ!今すぐに捜索隊を派遣しろ!街の隅から隅まで組まなく捜索させろ!」
「畏まりました!」
ゼーダはエルヴィンの指示に素早く行動に移すために部屋を飛び出して行った。
「リリス。お前はここにいてレオ達を任せていいな?」
「は、はい!」
「アイリス、シルクちょっと来てくれ」
3人は部屋の隅に集まって話し始める。
「何があったの?」
「誘拐ではないのですよね?」
「ああ、何故かは分からないがアルトが俺たちと血が繋がってないことを知った。」
「な!!」
「どうしてでしょう?アルト君の様子がおかしくなったのは授与の儀をしてからですよね?授与の儀にそんな効果はないはずですが?」
「分からない。だがそこまではこれから話すつもりだったからまだいい。しかしその後だ。『俺はこの家に必要のない子供です。今までありがとうございました。さようなら』」
「それって…………」
「ああ、アルトは・・・・・・
死のうとしている可能性が高い」
「そんな…………どうして…………」
「アルト君ならまだこの街から出るのは厳しいと思います。探すなら街の中ですが…………」
「ああ、あの子は5歳にしてはかなり頭がいい。もしかしたら抜け穴を知っているかもしれない。」
「そんな!そしたらアルトはもしかして!」
「・・・・・・血霧の大森林に行っている可能性がある」
「血霧の……」
血霧の大森林ーー
クロスフィード領と隣の辺境伯領の間にまたがる大森林。2つの領地だけでは収まらず半分以上を大森林を超えた先にあるジェネルド帝国に持つ超広大な森林である。大森林には弱い魔物から強力な魔物まで大量にいるとされている超危険な森である。
浅いところならば弱い魔物ばかりだが数が多く冒険者でもパーティを組んで浅いところで狩りをするぐらいである。その代わり開拓が進んでいないため未だ誰の目にも止まっていない資源がゴロゴロと眠っている。さらに最近侵略を繰り返しているジェネルド帝国の抑止力となりベルマーレ王国はそれを盾に友好条約を結んでいる。
子供の躾などでも血霧の大森林に置いていくぞというふうに使われることはよくある事だ。
その森に授与の儀を受けたばかりの5歳児が向かったとなると残された未来は死だけだ。
「早く行きましょう!じゃないとあの子が!!」
「ああ!シルク!俺とアイリスが不在の間屋敷を頼む!」
「はい」
「アイリス!準備をしてくれ!」
「もちろんです!」
「絶対にアルトを連れて帰る!」
エルヴィン達はアルトを連れて帰るために準備を始めた。
アルベルトsideーー
足が重い・・・
この森に入ってからしばらく経つ。
親父達は俺が居ないことに気が付いた頃だろうか?
「どこに……」
ーーどこに……
「…………どこに……」
ーーーどこなんだ……
「どこに………………どこに俺を殺せる魔物がいる・・・・・・ッ!」
アルトはこの森に入ってからゴブリンやオーク、スライム、蜘蛛様々な魔物に襲われてきた。おかげで全身血だらけである。
返り血で・・・・・・・・・
そう。殺せなかったのだ。アルトを殺すことの出来る魔物が。それほどまでにアルトは強すぎだ。いや、ステータスやスキル、魔法でという訳では無い。全てアルトが転生する前の、悠斗だった時の技なのだ。
覡神鳴流ーー真壁家が代々受け継いできた相手を殺すための技。
それを完璧に修得していた悠斗は魔物が襲ってきたのを反射的に倒してしまった。
アルトが歩いた道には魔物の血で道ができている。
だからアルトは自分を殺せるほどの魔物を探していた。
幸い魔物の血にまみれている事あって魔物は結構襲ってくる。
今棍棒で殴ってこようとしているゴブリンもその一体である。
アルトは棍棒を避けゴブリンの胸にパンチを食らわせる。それだけでゴブリンは吹っ飛びいき途絶える。
「ここじゃダメか・・・・・・ッッ!!」
突然感じる強い殺気。
その方を向くと口からヨダレを垂らしアルトの2倍近い体格を持ち、感じる圧倒的圧力。
「見つけた…………」
そこに居たのはスターワーウルフ。
危険度Aの狼型モンスターだった。
エル&アイリスsideーー
「ゼーダ。俺達は血霧の大森林に行く。2人だけではさすがに危険だ。お前達も来てくれ」
「血霧の大森林ですか?一体何故でしょう?」
「アルトは頭のいいやつだ。街を抜け出して森に行っている可能性がある。それにあの手紙から死のうとしているかもしれない。だったらあの場所はピッタリだろう」
「なるほど。確かにそうですな。」
「では行ってくる。」
「アイリスさん。エル様。必ず、必ず連れ帰ってください。あの子は私達クロスフィード家の子供なのですから!」
「もちろんよ。エル、行きましょう!」
「ああ、では行くぞ!」
エルヴィンはアイリス、ゼーダ、その他2人を連れて森の中に入っていった。
「頼むから無事でいてくれよ!!」
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