他愛もない僕の今日

東堂タカノ

4時間目 放課後と家

 昇降口を出た僕とあおい君は帰る為正門に向かって歩いていた。講堂から正門までは少し距離がある。そもそも学校の敷地が広い為移動するだけでも一苦労だ。
 隣を歩く碧君はやはり男の子には見えない。男なのに女の子みたいな人は創作物の中だけだと思っていたけれど、現実に似たような人はいるものなんだな〜。僕も小さい頃は男の子に思われなかったけど、碧君ほどではないだろう。まじまじと碧君を見ていると、目が合ってしまった。
「?どうしたんだい?何かあった?」
「ごめんごめん、改めて見ると綺麗な顔だなって思って。あ、変な意味はないからね?」
「分かっているよ!変な事を言わないでくれ」
 碧君は照れたのか赤くなってしまった。そういう所もまた女の子っぽさを醸し出している。不覚にも可愛いと思ってしまった。
「あははは、ごめんごめん。そういえば碧君はバイトするって言っていたけど、部活は入らないよね?」
「そうだね。おじさんが忙しそうで、なるべく手伝おうと思っているからね。部活に入る余裕はないかな」
 結構忙しいみたいだ。あまり人が居ないのかな?そう思っていると、碧君が聞いてきた。
「そう聞いてくるはる君は部活どうするんだい?」
「僕は運動部に入ろうとは思っているよ。ただ色んな部活があるからね。悩んでいるんだ」
 この学校に部活が多いことは前にも言ったと思うが、全部で32の部活動がある。男女別々の部活もある為、一緒にして考えると27になる。うち運動部が20。サッカー部、野球部、バスケ部、バレー部、バトミントン部、テニス部、卓球部、陸上部、水泳部、柔道部、剣道部、弓道部、チア部、ダンス部、ソフトボール部があり、バスケ部、バレー部、バトミントン部、卓球部は男女それぞれある。チア部とソフトボール部は女子のみとなっている。文化部は12。吹奏楽部、軽音部、演劇部、美術部、写真部、書道部、華道・茶道部、囲碁・将棋部、文芸部、家庭部、オタク研究会、オカルト研究会となっている。僕は自分がスポーツに向いているかと言われると、向いてない方だと思っている。
「でも、バトミントン部や弓道部は面白そうかな」
「弓道ってあまり見ないよね。そう考えると確かに面白そうだね。一回見学に行ってみたら?」
「そうだね。明日やっていたら見に行こうかな」
 そんな話をしていると、正門についた。
「碧君の家はどっちの方なの?」
「駅と学校の中間あたりだよ」
「ならもう少し一緒だね」
 そのようなのでまた2人で歩き出す。


「僕はあまりこの辺りに来たことがないんだけど、いい所知ってる?」
 僕は碧くんに聞く。碧君は少し悩んでから答えた。
「えーと…駅とは学校を挟んで反対側なんだけど、雑貨屋さんがあるよ。小物とかが可愛くてね。しかも、手作りの商品も多くてこの辺りだと結構人気のお店なんだよ。僕も何回か行ったことがあるよ」
「そんなお店があるんだ。今度行ってみたいなぁ。他にはある?」
「よかったら今度一緒に行く?丁度新作が出ていないか気になっていたから」
「それはありがたいな。道も僕1人じゃ不安だからね」
「分かったよ。それと他のお店だけど、身内贔屓っぽいけど、知り合いのお店はオススメだよ。大きくはないけど落ち着いた雰囲気のカフェなんだ。特におじさんの入れるコーヒーが美味しいんだ。」
「もしかして碧君のバイト先?」
「あはは、実はそうなんだ」
 やっぱりバイト先だったらしい。と、碧くんが急に立ち止まる。
「僕この道を行った所だから。ここでお別れだね」
 どうやらここでお別れみたいだ。
「うん。それじゃあ、また明日」
「うんまた明日」
 僕は碧君に手を振って言う。碧君もまた僕に手を振る。そして僕たちはそこで別れた。碧くんはその道を、僕は駅までの道を歩き出した。


 駅に着いて時刻表を確認すると電車が来るまで少し時間がある。僕は腕時計を見て時間の確認をする。文字盤は『11時26分』を指している。お昼は丁度いい時間帯に食べられそうだ。電車が来るまでホームのベンチに座って待つことにする。それにしても、出会ったばかりであそこまで話す相手に今まで会ったことが無かった。碧君はどこか自分と似た雰囲気を、持っていたからかもしれない。絵翔かいととはずっと昔からいた為気付いた時にはよく話していた。周りを見てみると同じ制服の人がちらほら見られる。ただその中に知り合いは混じっていなさそうだ。
 ぼーっとして待っていると電車がやって来た。電車に乗り、席に座ると、発車し始める。僕は暖かい日差しに照らされながら、心地よく電車に揺らされた。


 日差しを受けながら呑気にしているといつのまにか梅ノうめの駅に着いていた。僕は電車を降りてそのまま駐輪場へ向かう。あったあった。こうして自転車を駅に置いて出掛ける事が少なかった為少し不安だった。ロックを外して自転車に乗り、漕ぎ出す。行きは急いでいた為スピードを出したが、今は急ぐことはない。ゆったりとしたペースでペダルを漕ぐ。20分程すると家に着いた。多分今家にいるのは母さんだけだろう。父さんは遅くともお昼には家を出て行ってしまう。実際に今は父さんの車がない。玄関を開けて僕は家に入る。靴を脱いでそのままリビングに向かう。扉を開けると母さんが居た。
「ただいま」
「お帰り。もう少しでご飯出来るから少し待っててね」
「分かったよ」
 1度部屋に行って着替えてきた僕はソファに座ってリモコンのスイッチを押す。今は平日のお昼時、ニュース番組や報道バラエティ番組などがやっている。僕は適当な番組にしジッと見ていた。少し時間が経つと母さんが声を掛けてきた。
「出来たわよ。今日は2人だから少し気合を入れて作ったの」
 テーブルへ向かうと出来たばかりの料理が並べられている。
「本当だ。何もここまで気合を入れなくても良かったと思うけど」
「まあ、いいじゃない。それよりも入学式はどうだった?」
 席に着くと母さんに聞かれる。
「そうだね〜、面白かったかな?学校長がなんだか凄い人だったよ。あと、碧君って子と結構仲良くなったかな」
「そうなのね。じゃあ頂きましょうか」
「頂きます」
 僕と母さんは雑談をしながら昼食をとった。


「ご馳走さま。母さん、ちょっと寝るからまた夜になったら起こして」
「分かったわ。今日はお姉ちゃんも早めに帰ってくるから、お姉ちゃんに起こさせるわ」
「分かったよ」
 リビングを出て僕は2階に上がり自室に入る。そのままベットへダイブ。あー疲れた〜。久し振りに学校へ行ったからか疲れてしまった。横になってスマホをいじっていると絵翔から連絡が入る。
『おつかれ』
『お疲れ様。用事の方はどうだった?』
『明日から始まるみたいなんだけど、その説明説明とかだったわ』
『そうなんだ。僕は明日部活の見学に行くつもり』
『お?そうか!何部に行くんだ?』
『弓道部』
『弓道?そんな部あったのな。ま、面白そーだからいいんじゃね?』
『楽しみだよ。絵翔も明日から頑張ってね』
『おお!』
『ごめん、今から寝そうと思っているんだ』
『そうか、悪いな。じゃあおやすみな!』
『いいよ。おやすみ』
 このまま寝てしまいそうだ。そういえば姉さんが起こしに来るって母さんは言っていたな。姉さんの起こし方は少し乱暴だからなぁ…。僕はそのまま意識を手放した。


 姉さんに起こされた僕は眠い目を擦りながらリビングへと向かう。そのまま夕食をとり、また部屋へと戻る。風呂に入らなければいけないと思い、重い体を動かして浴室へ向かう。誰か入っていないか確認しないと。そう思いリビングにいる母さんに聞く。
「母さん、今誰かお風呂入ってる?」
「お姉ちゃんはさっき自分の部屋へ向かったから今は誰も入っていないわ」
「そう、分かったよ。ありがと」
 浴室の扉を開けると、中は暗い。確かに誰も入っていないみたいだ。さっさと入ってしまおう。僕は服を脱いで扉を開けた。


 気持ちよかった。風呂から出ると僕はまた部屋へと向かう。なんだか、部屋とをずっと行き来している気がするが気にしない。部屋へ入り充電しているとスマホを見ると通知が来ている。名前を見ると碧君のようだ。改めてよろしくとのメッセージのようだ。僕はコネクトを開いてメッセージを送る。
『こちらこそよろしく』
 まだ入学式しかやっていない為やるような勉強もない。まだ、机の出番は先だ。少し弓道について調べてみようと思い、スマホを手に取る。取り敢えず『弓道』と検索する。へ〜こういったものなんだ。一通り開いたページを見終わった僕はスマホを使うのをやめる。そういえば読みかけの小説があったな。机の上に置いてある本を手にとって読み始める。
 気がつくと11時近くになっている。結構読んでいたな。おもむろにスマホに手を取ると通知が来ていた。しまった気がつかなかったな。送り主は碧君のようだ。メッセージを見るとステッカーが送られていただけだった。良かった。これで何か会話をされていたら申し訳なかったな。メッセージを確認するに留めた僕はスマホを充電して、電気を消す。今日はこのまま寝てしまおう。僕はベッドに横たわり、眠気に身を委ねた…。



「他愛もない僕の今日」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「現代ドラマ」の人気作品

コメント

コメントを書く