他愛もない僕の今日

東堂タカノ

2時限目 入学式

「おっす!今日も小さいな!」
「うわぁ‼︎って小さい言うな!」
「う〜ん、どこからか声が聞こえる〜」
「なんだとー‼︎」
 絵翔かいとは後ろから静かにゆっくりと近づいて中野なかのさんを驚かせた。絵翔の身長は176cm、中野さんは151cmとだいぶ差がある。そのため絵翔はよく中野さんの背の低さをいじっている。女の子の中でも小さい方なので、余計いじられる。彼女の場合は童顔なことも相まってさらに小さい子に見えてしまう。僕も時々同い年ということを忘れてしまうほどだ。ちなみに僕は164cmと2人の間ぐらいだ。もう少し欲しいと思っている。高校の間でどの程度成長するか期待していよう。
 そんな2人の脇で中野さんの友達が2人の展開にどうすればいいのか戸惑っている様子が目に入った。彼女は確か…
「おはよう、穂榀ほしなさん」
「ええ、おはよう。ええと、確か夕紀ゆうきの友達の杉乃すぎのくんよね?これ止めなくていいのかしら?」
「うん、杉乃すぎのはるよろしくね。大丈夫だよ。いつものことだから」
「そ、そう?こちらこそ宜しくお願いするわ」
 彼女は穂榀澪凪みおなさん。中学では校内で1・2を争う程の美人で、身長は160cmほど黒髪ロングで大和撫子を体現したかのよう。と、元クラスメイトの田辺たなべくんは評価していた。勉強もよくできテストではいつも上位にいた気がする。きっと特進クラスだろう。ただ、僕も絵翔も話したことはおろか同じクラスにもなったことがない。僕は彼女と同じクラスになるので仲良くしていきたい。
「2人ともそんなことしてないで、そろそろ講堂へ行こう」
「春くん⁉︎そんなこととは聞き捨てられないな!これは大事なことだよ!澪ちゃんもそう思うよね⁉︎」
「え?そ、そうね」
「中野さん穂榀さん困ってるよ。絵翔ももう十分?」
「おう!満足だ!」
「これは戦争だよ!遊びじゃないよ!」
「一時休戦というこうか。また後で開戦しようか」
 中野さんをなだめながら僕たちは講堂へ向かった。


 講堂は全校生徒入ることが可能で総席数は1400席にもなる。建物内はコンサートホールなどをイメージしてもらえればいいだろう。入学式だけでなく、卒業式や文化祭の開閉会式など多くのことがここで行われる。
 講堂に着くと受付に列が出来ていた。講堂へはオープンスクールで1度来ているのでそれから目新しさは感じない。改めて考えると全校生徒がここに入った時は凄いだろうな。少し待つと自分たちの番がやってきた。
「おはようございます。特進クラスの杉乃春です」
「おはようございます。杉乃くんですね。番号は1116です。クラス毎に分かれての座席になっていますので、入っていって生徒会役員の指示に従ってください」
「ありがとうございます」
 後ろが詰まると行けないし、絵翔達ともここで別れるので早く行こう。行くとすぐに役員の人がいた。
「1組はここから一番奥の右前です。出席番号順で座ってください」
「分かりました。ありがとうございます」
 そう言って僕は自分の席へ歩き出した。ここからだとちょっと距離があるな。生徒もだいぶ入って来ている。僕たち割と遅かったみたいだなぁ。そんなことを思っていると1組の場所まで来た。だいぶ埋まっているから分かりやすいな。あそこだな。
「すいません、ちょっと前失礼します」
「ああ、ごめんごめん」
「ありがとう」
 やっと席に座れた。まだ少し開式まで時間があるな。そう思っていると横から声を掛けられた。
「ねえ、開式まで時間もあるし少し話さないかい?」
「そうだね。僕も暇だなと思ってたんだ」
「そう?それは良かった。僕は須恵すえあおい。よろしく」
 そう名乗った須恵くんは見たところ僕と身長はあまり変わらないようだ。顔立ちは中性的で男って感じはあまりしない。髪は少し茶色に染めている。その茶髪がまた似合っていて、柔らかい雰囲気を出している。
「よろしく。僕は杉乃春」
「杉乃くんは同じ中学の人っている?」
「春でいいよ。いるよ。同じ特進の穂榀澪凪さん。違うクラスの水原みずはら絵翔かいと中野なかの夕紀ゆうきさんだね。。穂榀さんは…ほら、あの子だよ」
 そう言って僕は穂榀さんに手を振った。彼女もどこか退屈そうだ。
「うわぁ、凄く綺麗な子だ…」
 そう言うと、須恵くんは固まってしまった。もしかして…
「おーい、須恵くん?もしかして惚れた?」
「え?いやいや、流石にそんなわけないよ!ただ、今まであんなに綺麗な子を見たことがなかったから見惚れてしまったんだよ」
 そういうことを惚れるって言うと思うんだけどな…
「それと、僕のことも碧でいいよ。春くん」
「わかったよ。碧くんって昔から女の子みたいな名前っていじられなかった?僕は何回かあったんだよね」
「春くんもかい?結構傷つくんだよね」
「そうそう。小さい頃は近所の人に春ちゃんって呼ばれて凄く恥ずかしかったんだ」
「あ〜あったあった」
 碧くんとそんな話で盛り上がっているとアナウンスが入った。
『只今より、入学式を開始します。ご静かに願います』
「もう始まるね」
「うん、楽しみだよ」
 さあ、入学式だ。


 舞台袖に女性の先生が出てきた。たぶん教頭先生辺りだろう。どうやらあの先生が司会をするみたいだ。
『起立。只今より入学式を開式します。着席。始めに学校長挨拶』
 そう言うと男性が舞台袖から出てきた。年は50代前半だろうか。綺麗な黒髪をオールバックにしているのがとてもよく似合っている。学園長というよりかは社長といった雰囲気がある。
『新入生諸君、入学おめでとう。学校長の澤鬼さわきはじめだ。私から言うことは1つ。是非、学校生活を楽しんでくれ』
 そう言うとまた、舞台袖へと消えていった。挨拶の少なさに少し講堂内が騒つく。特に保護者席の方から。僕は少し物足りない気もするが、多くは語らずといった感じでかっこよかったと思う。
『続きまして、生徒会長挨拶』
 今度は女生徒が出てきた。髪は染めておらず黒でショートのようだ。背はそこまで高くない。女子高生の平均的なところだろう。どこか似た雰囲気の人を知っている気がする…。
『初めまして。生徒会長の穂榀ほしな梨歩なほです。新入生の皆様、保護者の皆様、御入学おめでとうございます。本校はまだまだ出来たばかりの学校です。伝統などはまだ出来上がっておらず行事など基盤などが整ってきているところです。皆さんと一緒に今後学校を盛り上げていけたらと思います。私からもですが、この天ヶ河あまがかわ高等学校での生活を楽しんでください。以上です。』
 そう言って彼女は笑顔で挨拶を締めくくった。挨拶が終わると、大きな拍手に会場が包まれた。生徒会長の堂々たる挨拶は多くの人の心を掴んだようだ。あとあの笑顔かな?それと、〈穂榀〉という名字、もしかしたら穂榀さんのお姉さんかもしれない。後で聞いてみよう。
『続きまして、新入生答辞。新入生代表蓮乗れんじょうきょう。』
「はい!」
 代表の人は男の人みたいだ。同じクラスだ。背が高いな〜。絵翔と同じくらいか少し高いな。眼鏡がとても似合っている。出来る大人といった風貌だ。同級生という事を忘れてしまうほどに大人びている。彼が生徒会長をやる姿が目に浮かぶ。というか、名前かっこいいな。
 蓮乗さんが壇上へ上がり学校長の前まで行った。
『暖かい春の訪れを感じられる今日、私達新入生408名はこの天ヶ河高等学校の入学式を迎えました。先輩方、教員の皆さま、そして後ろにいる同級生達と送る高校生活への期待に胸を高鳴らせています。より一層精進し、高校生活を開くって行きたいと思います。平成〇〇年、4月3日、新入生代表蓮乗響』
 彼の答辞が終わるとまたも会場は大きな拍手に包まれた。生徒会長と同じく堂々として、そして逞しさを感じる挨拶だった。それにしても今年は408人入ったんだ。賑やかになりそうだな。
『以上を持ちまして入学式を閉会します。この後は各クラスでのオリエンテーションとなります。教員の指示にしたがって教室へ移動してください。』
 そう案内が入ると1組の位置に男性がやってきた。あの人の指示で動くようだ。
「まずは1組からの移動です。出席番号順についてくるように」
 そう言われた僕たちは先生の指示でそれぞれのクラスへ移動した。

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