アルケニアオンライン~昴のVRMMOゲームライフ。冒険生産なんでも楽しみます。
小聖堂の謎を追え
村の小聖堂は頑丈に出来ているらしく、現在も問題なくそこに存在していた。
小高い丘に建てられたその小聖堂は、近くに墓地が存在しており、異様な雰囲気に包まれていた。
「扉は外れかけてるね。中には入れそうだけど、いくよね?」
ボクがそう問いかけると、みんな同時に頷いた。
よし、ならボクが先行して行こう。
「おいしょっと。よいしょっと」
外れかけている扉は大きく、動かすだけでも大変だ。
なんとか頑張ってその扉を外すと、中からは埃の臭いが漂ってきた。
「うっ。ハウスダストとか勘弁してほしいよ。ボクの毛が汚れちゃう……」
今のボクは妖狐の姿なので、耳や尻尾が埃まみれになるのは避けたいところだ。
街中やNPCがいるところでは基本的に人間の姿をとっているので、ボクが妖狐だと知らない人も多いんじゃないかな?
とにもかくにも、ボクは先陣を切って暗い小聖堂の中に入っていく。
「う~ん。昼間だけど外が雲に覆われていて薄暗いせいで中も薄っすらとしか見えないなぁ」
「うぅ。私は夜目は効く方だからまだ見える方にゃ。椅子とかが倒れたり崩れたりしているのはわかるけど、人はいないにゃ」
「もしよろしければ灯り点けましょうか?」
「見えないと危ない。お願いする」
「かしこまりました。『光よ、我らを照らし給え』」
ルーナがそう言うと同時に、白く輝く球が上空へと昇っていく。
そして天井に辿りついた時、カッと光り、小聖堂内を明るく照らした。
「すごいですね。こんなに明るく輝く光の魔術があるなんて」
ミアが明るく照らす光球を見ながらそう呟く。
「同感。普通のライトの魔術ならここまで明るくならない」
フィルさんもミアと同意するように呟いた。
どうやら通常の魔術光ではもう少し光量は低いようだ。
「ふふ、そこは天使ですから。それにあれは魔術ではなく神術(しんじゅつ)です。神の力を乗せた言葉で事象を生み出す技です」
神術というのは初めて聞いたけど、神通力とは違うのだろうか?
でも確かに、あの光球からは不思議なエネルギーを感じ取ることができた。
「不思議な技。私には使えない?」
「はい、申し訳ありません。スピカ様とマイア様でしたらいずれ使えるようにはなるかもしれませんが」
「むぅ。残念」
「まぁスピカにゃんなら狐火が出せるだろうにゃ」
「あぁ、狐火なら灯りの代わりにはなるか……。でもあれ、遠くには届かないし光量はないよ?」
音緒の言う狐火の術は、基本的に術者の周囲を照らすものだ。
一応投げつけることはできるけど、すぐに戻ってきてしまうしね。
「明るくなって分かったけど、随分荒れてるね。さすがに長いこと放置されていただけあるのかな」
「この様子では、夜に亡霊のようなものが出てきてもおかしくはありませんね」
周囲の光景を見ながらミアがそう言った。
小聖堂内は一部の壁がひび割れ、破片が床に散らばっていた。
並べられた椅子は崩れたものも多く、まともな状態で残っているものはほんのわずかしかない。
天井の一部は崩落しており、その破片は床に散らばっているし、崩落個所からは空を見ることができた。
赤い絨毯だったものは薄汚れ擦り切れ、一部だけしか原形を留めていなかった。
この小聖堂は、どうやら入り口から祭壇まで赤い絨毯が敷かれていたようだ。
「燭台には蝋燭はないか。奥の天使像は薄汚れてるけど、無事みたいだね。ただ、両手で持っていたであろう物がなくなってる……」
祭壇奥に設置されている天使像は、跪くようにして両手を前に出している。
その手の形から、そこには何かを持つようになっていたはずだ。
天使像の周囲には溝があり、そこから何かが流れていたように見受けられた。
「天使像は聖杯のレプリカを両手で持つように作られていました。それはすべての小聖堂、聖堂で同じようになっています。大聖堂だけはその役割は女神像でしたが」
ルーナは天使像に近づくと、その両手に手を添えて撫でながらそう説明した。
天使像は聖杯を所持していた。
しかし、今はそれが失われている。
これが意味するところは――。
「誰かが持ち去ったか」
「はい。あれは単体でも浄化の水を生み出します。ただ、天使像に破損がないことを考えると、野盗の類ではなさそうです。おそらくですが、この小聖堂の関係者の誰かが持ち去ったとみるべきです」
汚染に飲み込まれた村、失われた聖杯のレプリカ。
そして、目撃された謎の光。
ここでは一体なにがあったというのだろうか。
「ん。どこからか風を感じる」
「どうしたの? フィルさん」
フィルさんが風を感じると言い出し、小聖堂内を調べ始めた。
一部の壁も壊れていることから、隙間風が入ってきているんじゃないだろうか?
「どうかしたのかにゃ?」
「う~ん。たしかに一瞬風を感じた。それも外からじゃない」
フィルさんはこてんと首を傾げ考え込んでしまった。
風、風ねぇ……。
「ご主人様。祭壇横にある本棚ですが、少し隙間があるようです」
「ほんと?」
ミアの指さす方向には、本棚が設置されていた。
本棚は壁に沿うようにして三台設置されている。
「まさか、本棚を動かすと隠し扉があるとかかにゃ?」
「まっさか~」
音緒の言葉にボクは思わずツッコミを入れてしまう。
そんな単純な仕掛けなわけないじゃんか。
「本棚には特に仕掛けはないようですね。固定されているわけでもないですし、レールもありません。普通に動かそうと思えば動くと思いますよ?」
ルーナが本棚を調べながらそう言う。
う~ん、なら動かしてみるしかないか。
「お願いできる?」
「お任せあれ、スピカ様」
ルーナは見た目は華奢だが意外と力持ちだ。
ボクよりは力があるので、本の詰まっている本棚でも動かすことは可能だろう。
「それじゃあ、いきますよ~? ふんにゃ~!!」
気の抜ける声を出しながら、ルーナは本棚をずり動かしていく。
少しずつ斜め前に動かしていき、本棚の背後に空間が出来始めた。
「ありがとう、ルーナ。これで調べられるね」
ルーナが本棚を動かしてくれたので、ボクたちはさっそくその後ろを調べることにした。
「本棚のあった場所の後ろ側は壁だね。左右対称の作りだから、ここには何もなさそうだ」
「う~ん。でも何か違和感があるにゃ。微かに風を感じるのにゃ」
「はい、しかし触った感じもただの壁ですね。なんでしょうか?」
「隠し扉?」
「なるほど、さすがフィル様です。可能性はありますね。しかし、どうやればいいのでしょうか」
ボクたちは微かに風を感じるその壁の前で悩みこんでしまう。
そういえば、冒険者が謎の光を見た時は暗かったんだよね?
そっか、灯りか。
「ルーナ、光球を一旦消して」
「えっ? わっ、わかりました」
ルーナはボクの指示を受けて天井の光球を消した。
「よし。【狐火】」
暗いままではわからないので、光量控えめな狐火を灯す。
「あっ」
光量がさほどない狐火では周囲は少ししか照らすことはできない。
しかしそれが良かったのか、今まで壁だった場所にぽっかりと暗い穴が開いていたのだ。
「穴が開いてる。これ、もしかして……」
ボクはゆっくり穴に近づく。
すると、奥からは風を感じることができた。
ただし、その臭いはやや湿っぽく臭さを感じることができる。
「盲点でした。光量によって発動する結界ですか」
「明るいほど見えなくなる。暗いほど見える。この結界の感じ、知ってる」
ルーナの言葉を聞き、フィルさんは何かが分かったようだった。
「これは幻影結界。エルフ特有の結界。迷いの森の原理の応用」
「えっと、つまり……?」
「この先にはエルフがいる」
ボクの疑問にフィルさんは端的に答えた。
どうやらボクたちは謎の光の正体に迫ることができそうだった。
小高い丘に建てられたその小聖堂は、近くに墓地が存在しており、異様な雰囲気に包まれていた。
「扉は外れかけてるね。中には入れそうだけど、いくよね?」
ボクがそう問いかけると、みんな同時に頷いた。
よし、ならボクが先行して行こう。
「おいしょっと。よいしょっと」
外れかけている扉は大きく、動かすだけでも大変だ。
なんとか頑張ってその扉を外すと、中からは埃の臭いが漂ってきた。
「うっ。ハウスダストとか勘弁してほしいよ。ボクの毛が汚れちゃう……」
今のボクは妖狐の姿なので、耳や尻尾が埃まみれになるのは避けたいところだ。
街中やNPCがいるところでは基本的に人間の姿をとっているので、ボクが妖狐だと知らない人も多いんじゃないかな?
とにもかくにも、ボクは先陣を切って暗い小聖堂の中に入っていく。
「う~ん。昼間だけど外が雲に覆われていて薄暗いせいで中も薄っすらとしか見えないなぁ」
「うぅ。私は夜目は効く方だからまだ見える方にゃ。椅子とかが倒れたり崩れたりしているのはわかるけど、人はいないにゃ」
「もしよろしければ灯り点けましょうか?」
「見えないと危ない。お願いする」
「かしこまりました。『光よ、我らを照らし給え』」
ルーナがそう言うと同時に、白く輝く球が上空へと昇っていく。
そして天井に辿りついた時、カッと光り、小聖堂内を明るく照らした。
「すごいですね。こんなに明るく輝く光の魔術があるなんて」
ミアが明るく照らす光球を見ながらそう呟く。
「同感。普通のライトの魔術ならここまで明るくならない」
フィルさんもミアと同意するように呟いた。
どうやら通常の魔術光ではもう少し光量は低いようだ。
「ふふ、そこは天使ですから。それにあれは魔術ではなく神術(しんじゅつ)です。神の力を乗せた言葉で事象を生み出す技です」
神術というのは初めて聞いたけど、神通力とは違うのだろうか?
でも確かに、あの光球からは不思議なエネルギーを感じ取ることができた。
「不思議な技。私には使えない?」
「はい、申し訳ありません。スピカ様とマイア様でしたらいずれ使えるようにはなるかもしれませんが」
「むぅ。残念」
「まぁスピカにゃんなら狐火が出せるだろうにゃ」
「あぁ、狐火なら灯りの代わりにはなるか……。でもあれ、遠くには届かないし光量はないよ?」
音緒の言う狐火の術は、基本的に術者の周囲を照らすものだ。
一応投げつけることはできるけど、すぐに戻ってきてしまうしね。
「明るくなって分かったけど、随分荒れてるね。さすがに長いこと放置されていただけあるのかな」
「この様子では、夜に亡霊のようなものが出てきてもおかしくはありませんね」
周囲の光景を見ながらミアがそう言った。
小聖堂内は一部の壁がひび割れ、破片が床に散らばっていた。
並べられた椅子は崩れたものも多く、まともな状態で残っているものはほんのわずかしかない。
天井の一部は崩落しており、その破片は床に散らばっているし、崩落個所からは空を見ることができた。
赤い絨毯だったものは薄汚れ擦り切れ、一部だけしか原形を留めていなかった。
この小聖堂は、どうやら入り口から祭壇まで赤い絨毯が敷かれていたようだ。
「燭台には蝋燭はないか。奥の天使像は薄汚れてるけど、無事みたいだね。ただ、両手で持っていたであろう物がなくなってる……」
祭壇奥に設置されている天使像は、跪くようにして両手を前に出している。
その手の形から、そこには何かを持つようになっていたはずだ。
天使像の周囲には溝があり、そこから何かが流れていたように見受けられた。
「天使像は聖杯のレプリカを両手で持つように作られていました。それはすべての小聖堂、聖堂で同じようになっています。大聖堂だけはその役割は女神像でしたが」
ルーナは天使像に近づくと、その両手に手を添えて撫でながらそう説明した。
天使像は聖杯を所持していた。
しかし、今はそれが失われている。
これが意味するところは――。
「誰かが持ち去ったか」
「はい。あれは単体でも浄化の水を生み出します。ただ、天使像に破損がないことを考えると、野盗の類ではなさそうです。おそらくですが、この小聖堂の関係者の誰かが持ち去ったとみるべきです」
汚染に飲み込まれた村、失われた聖杯のレプリカ。
そして、目撃された謎の光。
ここでは一体なにがあったというのだろうか。
「ん。どこからか風を感じる」
「どうしたの? フィルさん」
フィルさんが風を感じると言い出し、小聖堂内を調べ始めた。
一部の壁も壊れていることから、隙間風が入ってきているんじゃないだろうか?
「どうかしたのかにゃ?」
「う~ん。たしかに一瞬風を感じた。それも外からじゃない」
フィルさんはこてんと首を傾げ考え込んでしまった。
風、風ねぇ……。
「ご主人様。祭壇横にある本棚ですが、少し隙間があるようです」
「ほんと?」
ミアの指さす方向には、本棚が設置されていた。
本棚は壁に沿うようにして三台設置されている。
「まさか、本棚を動かすと隠し扉があるとかかにゃ?」
「まっさか~」
音緒の言葉にボクは思わずツッコミを入れてしまう。
そんな単純な仕掛けなわけないじゃんか。
「本棚には特に仕掛けはないようですね。固定されているわけでもないですし、レールもありません。普通に動かそうと思えば動くと思いますよ?」
ルーナが本棚を調べながらそう言う。
う~ん、なら動かしてみるしかないか。
「お願いできる?」
「お任せあれ、スピカ様」
ルーナは見た目は華奢だが意外と力持ちだ。
ボクよりは力があるので、本の詰まっている本棚でも動かすことは可能だろう。
「それじゃあ、いきますよ~? ふんにゃ~!!」
気の抜ける声を出しながら、ルーナは本棚をずり動かしていく。
少しずつ斜め前に動かしていき、本棚の背後に空間が出来始めた。
「ありがとう、ルーナ。これで調べられるね」
ルーナが本棚を動かしてくれたので、ボクたちはさっそくその後ろを調べることにした。
「本棚のあった場所の後ろ側は壁だね。左右対称の作りだから、ここには何もなさそうだ」
「う~ん。でも何か違和感があるにゃ。微かに風を感じるのにゃ」
「はい、しかし触った感じもただの壁ですね。なんでしょうか?」
「隠し扉?」
「なるほど、さすがフィル様です。可能性はありますね。しかし、どうやればいいのでしょうか」
ボクたちは微かに風を感じるその壁の前で悩みこんでしまう。
そういえば、冒険者が謎の光を見た時は暗かったんだよね?
そっか、灯りか。
「ルーナ、光球を一旦消して」
「えっ? わっ、わかりました」
ルーナはボクの指示を受けて天井の光球を消した。
「よし。【狐火】」
暗いままではわからないので、光量控えめな狐火を灯す。
「あっ」
光量がさほどない狐火では周囲は少ししか照らすことはできない。
しかしそれが良かったのか、今まで壁だった場所にぽっかりと暗い穴が開いていたのだ。
「穴が開いてる。これ、もしかして……」
ボクはゆっくり穴に近づく。
すると、奥からは風を感じることができた。
ただし、その臭いはやや湿っぽく臭さを感じることができる。
「盲点でした。光量によって発動する結界ですか」
「明るいほど見えなくなる。暗いほど見える。この結界の感じ、知ってる」
ルーナの言葉を聞き、フィルさんは何かが分かったようだった。
「これは幻影結界。エルフ特有の結界。迷いの森の原理の応用」
「えっと、つまり……?」
「この先にはエルフがいる」
ボクの疑問にフィルさんは端的に答えた。
どうやらボクたちは謎の光の正体に迫ることができそうだった。
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