アルケニアオンライン~昴のVRMMOゲームライフ。冒険生産なんでも楽しみます。
アニスさんたちの訪問
何やら朝から訪問客が三人来た。
もしかしてコテージを無許可で仮設置したから苦情言いに来たのかな?
「音緒、何の用だと思う?」
ボクは狩り用の服に着替えながら音緒に尋ねる。
ちなみに最近の狩り用の服は白衣(しらぎぬ)と緋袴(ひばかま)、つまり最近よく着ている、いわゆる巫女装束というやつだ。
「わからないにゃ。汚染地帯の土地に権利なんてあるわけないだろうしにゃ」
音緒は寝間着から着替えながらそう答えた。
じゃあ何の用だろうか?
「あっ、もしかして報奨金かな?」
「昨日の今日でというのは、ないと思うにゃ。ところでフィルちゃん起こさなくていいのかにゃ?」
「まだ寝てるしいいと思うよ? むしろミアとルーナの起きる時間が早くてびっくりだよ」
大部屋しかなかったので、みんなで敷物布いて床で寝た。
ベッドがないので腰がすごく痛いけど、不思議と部屋の温度は快適だったのでよく寝られたと思う。
床で寝る経験なんて、ほとんどなかったしなぁ……。
「朝食の準備ができましたので、用が終わり次第食べてくださいね? ご主人様」
キッチンはまだないので、床に台を置いてそこで調理したようだ。
お皿は木皿があるので、それに盛り付けて準備完了という感じだ。
「それにしても朝起こす時びっくりしました。スピカ様に絡みつくように音緒様とフィル様がくっついて寝てるんですから」
「たしかに。どうりでやたら周囲が温かいわけだ」
小さい子がくっついて集まって寝るというのはよくあるけど、中学生であるボクたちがくっついて集まるというのはどうなんだろう?
はっきり言うけど、ボクも音緒も小さいけど小学生ではないよ!?
「にゃ~。くっついて集まって寝るのは子供にはよくあることにゃ。動物でも同じにゃ。妖種ならなおさらにゃ」
「意味が分からないよ!?」
妖種だろうと人間だろうと動物だろうとくっついて寝るのは安心感があるのかもしれない。
まぁそうは言っても、夏場にやられたら暑くてたまらないけど。
「あの、仲が良いことは良いのですが、外の人たちは放っておいて大丈夫ですか?」
「あっ」
「忘れてたにゃ」
「あらあら」
「むにゃ……」
ミアの言葉で、急ぐ用事があることを思い出した。
すっかり話し込んじゃってたから、だいぶ待たせていると思う。
「いっ、行ってくる!!」
「ご主人様、袴!!」
「あわわわわ」
うん、上だけ着てから話し込んでたせいだ……。
危うく下着丸出しになるところだった……。
************
「お、お待たせしました!」
「お、おう……」
「スピカちゃん、髪! 髪!」
「あわわわわ」
「はぁ……。そう大した用でもないので、整えながら聞いてくれ」
聖堂騎士のフリートさんがボクを見て溜息一つ吐いてそう言った。
ちなみにアニスさんはボクの髪の毛を手入れするために後ろに回ってる。
一人だけ見覚えあるけど、あまり知らない大柄な男性がいるけど、誰だっけ?
「じーっ」
「声に出して言わなくていい。あまり出てくる機会がないからな。私はリカルドだ。聞いたことはあるだろう?」
「あぁ、ギルドマスター?」
「そうだ」
ボクがじーっと見ていたので、リカルドさんは困惑しながら教えてくれた。
実に優しい。
「今回我々が来たのは、単純に報告ついでに冒険者ギルドに立ち寄った際、確認しようという流れになったのでやって来た次第だ。すまないが、報奨金の支払いはしばらく待ってほしい。これほどの成果だ、かなりの額になると予想される」
「それにしてもすごいね、スピカちゃん。こんなに広い範囲を浄化できちゃうなんて」
「えへへ。そうかな? たまたまだったけどやってよかったよ」
「うむ、たしかにな。ギルドから支払われる金額もそれなりの額になるだろうな。こんなに小さい子に大金持たせてもいいものか悩むところだが……」
「小さくないから! 普通ですから! ふ・つ・う!!」
「スピカにゃん。年齢の平均より下回ってる身長は普通とは言わないにゃ」
「あれ!? いつの間に!?」
いつの間にかボクの側に音緒が来ていた。
年齢平均より下回ってるとか、失礼しちゃう!
「報奨金はゆっくりでいいですよ。ボクは兄妹と仲間とのんびりやりますし。リカルドさん、ボクは小さく見えるかもしれませんけど、目の錯覚ですから。これでも十三歳なんですからね」
「すまない。見た目でものを言うのは大人として間違っていたな。そうか、もう十三歳か。ちなみに、この辺りの成人年齢は十六歳だ。まだ子供の分類だから気を付けるようにな」
「そうだよ? 十六歳になるまではお酒も飲めないし、ちょっと変なお店にも行けないからね?」
「行かないし飲まないよ!?」
なんだよ、寄ってたかって子供扱いして!
いやまぁ、現実世界でも子供の分類だから当然といえば当然なんだけどさ……。
「ははは、人気なのはいいことだ。さて、状況も確認できたことだし、私は戻ろう。支払われる際は冒険者ギルド経由となるので、忘れないでくれ」
そう言うと、フリートさんはメルヴェイユの街の方向へと戻って行こうとする。
「そういえば、このコテージですけど、浄化した場所に設置したりしても大丈夫だったりします?」
ボクは戻って行こうとするフリートさんを呼び止め、コテージの設置が問題ないか確認した。
「ここら辺一帯は、浄化されたといっても危険地帯であることには変わりはない。それに一時的な設置であれば現状問題はないだろう。どうやらそれも、不思議なマジックアイテムのようだしな」
呼び止められたフリートさんは振り返ると、そのように告げた。
今のところ問題ないならいいか。
あとで土地権利問題にならなければいいだけだし。
「よかったわね、スピカちゃん」
「うん。あっ、髪の毛の手入れとセット、ありがとうございます」
「それにしても、丸太の家か。珍しいものだな。どうやって設置したのだ?」
リカルドさんはボクたちの携帯式コテージに興味津々なようだ。
レアリティがレジェンドっていうくらいだから、そうそう持ってる人いないよね。
「ダンジョンで手に入れたマジックアイテムなんです。設置して呪文を唱えると大きくなって中で過ごせるようになるんです」
「ほおぅ。それは便利そうだ。しかし、今まで似たようなものを持っている冒険者はいなかったな」
「あっ、もしかしたらとある地下神殿で手に入れたからかも」
「地下神殿?」
あっ、しまった。
あの場所のこと言っても良かったんだっけ!?
リカルドさんが目を細めてこっちをじっと見てるよ~……。
「どうなさいました? スピカ様?」
ボクが困っていると、ルーナがやって来た。
助かった!
「なっ!? 天使だと!?」
ルーナの姿を見たリカルドさんは驚きの表情をしていた。
もしかして、天使ってほとんど見かけなかったりするのかな?
「おはようございます。私はメルヴェイユ様とアニエス様の部下でルーナと申します。我々天使は異世界人冒険者が一定水準まで成長すると、更なる冒険へ誘い、サポートするために派遣されています。街中では天使の象徴は見えないようにしているので気が付くことはほとんどないと思いますけどね」
ルーナは当然のようにそう言った。
そりゃそうだよね、街中に天使がいたら驚くよ。
「ふむ。つまり、天使の助けを得て獲得したということか」
「ちょっとだけ違いますけど、似たようなものですね」
実際には天使関連ではなく、女神関連の地下神殿だったわけだけどね。
その辺りは誤魔化しておこう。
ズィークさんが討伐されたらたまったものじゃないし。
「しかし、天使か……。聖堂が黙っていないだろうな」
リカルドさんは難しそうな顔をしてそう言った。
たしかに、聖堂といえば、神やその遣いの天使などには敏感だろうけどね。
「聖堂自体については我々は関知していません。唯一関心があるとすれば司教と神官長くらいなものです」
「なるほど。異世界人と神に大いに関わっているのはそのお二人だからな。ならば問題ないか」
「えぇ。自分たちの勢力に取り込もうと考えない二人なら、問題が起きることはないでしょう。ただ、他に生き残っている国がある場合は話が変わってきますが」
「えっ? 他にも生き残っている国あるの!?」
リカルドさんとルーナの話をのんびり聞いていたボクだけど、最後のルーナの一言に興味を引かれた。
「一応あるようです。ただ、濃い瘴気に包まれてしまったため、現在は状況を確認することができません。いずれその場所には辿りつけると思いますが。今はまずこの周囲と要塞です。さて、そろそろ戻りませんか? スピカ様」
「あっ、そうだった。ご飯だね!」
「おぉ、そうか。邪魔して悪かったな」
「朝食かぁ。あたしも相伴にあずかってもいいかな?」
「こら、アニス君」
「えぇ、構いませんよ? 多めに作ってありますので」
「スピカ君さえよければ、私もいいかね?」
「はい、ルーナも言ってるように大丈夫ですよ? どうせですし、みんなで食べましょう」
「やったー!!」
「アニス君、落ち着きなさい」
フリートさんは仕事のために既に戻ってしまったけど、リカルドさんとアニスさんはまだ時間があるようだった。
なら、空いてるもう一方の部屋で食べるしかないよね!
ところで、フィルさんまだ寝てるのかな?
全然見ないんだけど……。
もしかしてコテージを無許可で仮設置したから苦情言いに来たのかな?
「音緒、何の用だと思う?」
ボクは狩り用の服に着替えながら音緒に尋ねる。
ちなみに最近の狩り用の服は白衣(しらぎぬ)と緋袴(ひばかま)、つまり最近よく着ている、いわゆる巫女装束というやつだ。
「わからないにゃ。汚染地帯の土地に権利なんてあるわけないだろうしにゃ」
音緒は寝間着から着替えながらそう答えた。
じゃあ何の用だろうか?
「あっ、もしかして報奨金かな?」
「昨日の今日でというのは、ないと思うにゃ。ところでフィルちゃん起こさなくていいのかにゃ?」
「まだ寝てるしいいと思うよ? むしろミアとルーナの起きる時間が早くてびっくりだよ」
大部屋しかなかったので、みんなで敷物布いて床で寝た。
ベッドがないので腰がすごく痛いけど、不思議と部屋の温度は快適だったのでよく寝られたと思う。
床で寝る経験なんて、ほとんどなかったしなぁ……。
「朝食の準備ができましたので、用が終わり次第食べてくださいね? ご主人様」
キッチンはまだないので、床に台を置いてそこで調理したようだ。
お皿は木皿があるので、それに盛り付けて準備完了という感じだ。
「それにしても朝起こす時びっくりしました。スピカ様に絡みつくように音緒様とフィル様がくっついて寝てるんですから」
「たしかに。どうりでやたら周囲が温かいわけだ」
小さい子がくっついて集まって寝るというのはよくあるけど、中学生であるボクたちがくっついて集まるというのはどうなんだろう?
はっきり言うけど、ボクも音緒も小さいけど小学生ではないよ!?
「にゃ~。くっついて集まって寝るのは子供にはよくあることにゃ。動物でも同じにゃ。妖種ならなおさらにゃ」
「意味が分からないよ!?」
妖種だろうと人間だろうと動物だろうとくっついて寝るのは安心感があるのかもしれない。
まぁそうは言っても、夏場にやられたら暑くてたまらないけど。
「あの、仲が良いことは良いのですが、外の人たちは放っておいて大丈夫ですか?」
「あっ」
「忘れてたにゃ」
「あらあら」
「むにゃ……」
ミアの言葉で、急ぐ用事があることを思い出した。
すっかり話し込んじゃってたから、だいぶ待たせていると思う。
「いっ、行ってくる!!」
「ご主人様、袴!!」
「あわわわわ」
うん、上だけ着てから話し込んでたせいだ……。
危うく下着丸出しになるところだった……。
************
「お、お待たせしました!」
「お、おう……」
「スピカちゃん、髪! 髪!」
「あわわわわ」
「はぁ……。そう大した用でもないので、整えながら聞いてくれ」
聖堂騎士のフリートさんがボクを見て溜息一つ吐いてそう言った。
ちなみにアニスさんはボクの髪の毛を手入れするために後ろに回ってる。
一人だけ見覚えあるけど、あまり知らない大柄な男性がいるけど、誰だっけ?
「じーっ」
「声に出して言わなくていい。あまり出てくる機会がないからな。私はリカルドだ。聞いたことはあるだろう?」
「あぁ、ギルドマスター?」
「そうだ」
ボクがじーっと見ていたので、リカルドさんは困惑しながら教えてくれた。
実に優しい。
「今回我々が来たのは、単純に報告ついでに冒険者ギルドに立ち寄った際、確認しようという流れになったのでやって来た次第だ。すまないが、報奨金の支払いはしばらく待ってほしい。これほどの成果だ、かなりの額になると予想される」
「それにしてもすごいね、スピカちゃん。こんなに広い範囲を浄化できちゃうなんて」
「えへへ。そうかな? たまたまだったけどやってよかったよ」
「うむ、たしかにな。ギルドから支払われる金額もそれなりの額になるだろうな。こんなに小さい子に大金持たせてもいいものか悩むところだが……」
「小さくないから! 普通ですから! ふ・つ・う!!」
「スピカにゃん。年齢の平均より下回ってる身長は普通とは言わないにゃ」
「あれ!? いつの間に!?」
いつの間にかボクの側に音緒が来ていた。
年齢平均より下回ってるとか、失礼しちゃう!
「報奨金はゆっくりでいいですよ。ボクは兄妹と仲間とのんびりやりますし。リカルドさん、ボクは小さく見えるかもしれませんけど、目の錯覚ですから。これでも十三歳なんですからね」
「すまない。見た目でものを言うのは大人として間違っていたな。そうか、もう十三歳か。ちなみに、この辺りの成人年齢は十六歳だ。まだ子供の分類だから気を付けるようにな」
「そうだよ? 十六歳になるまではお酒も飲めないし、ちょっと変なお店にも行けないからね?」
「行かないし飲まないよ!?」
なんだよ、寄ってたかって子供扱いして!
いやまぁ、現実世界でも子供の分類だから当然といえば当然なんだけどさ……。
「ははは、人気なのはいいことだ。さて、状況も確認できたことだし、私は戻ろう。支払われる際は冒険者ギルド経由となるので、忘れないでくれ」
そう言うと、フリートさんはメルヴェイユの街の方向へと戻って行こうとする。
「そういえば、このコテージですけど、浄化した場所に設置したりしても大丈夫だったりします?」
ボクは戻って行こうとするフリートさんを呼び止め、コテージの設置が問題ないか確認した。
「ここら辺一帯は、浄化されたといっても危険地帯であることには変わりはない。それに一時的な設置であれば現状問題はないだろう。どうやらそれも、不思議なマジックアイテムのようだしな」
呼び止められたフリートさんは振り返ると、そのように告げた。
今のところ問題ないならいいか。
あとで土地権利問題にならなければいいだけだし。
「よかったわね、スピカちゃん」
「うん。あっ、髪の毛の手入れとセット、ありがとうございます」
「それにしても、丸太の家か。珍しいものだな。どうやって設置したのだ?」
リカルドさんはボクたちの携帯式コテージに興味津々なようだ。
レアリティがレジェンドっていうくらいだから、そうそう持ってる人いないよね。
「ダンジョンで手に入れたマジックアイテムなんです。設置して呪文を唱えると大きくなって中で過ごせるようになるんです」
「ほおぅ。それは便利そうだ。しかし、今まで似たようなものを持っている冒険者はいなかったな」
「あっ、もしかしたらとある地下神殿で手に入れたからかも」
「地下神殿?」
あっ、しまった。
あの場所のこと言っても良かったんだっけ!?
リカルドさんが目を細めてこっちをじっと見てるよ~……。
「どうなさいました? スピカ様?」
ボクが困っていると、ルーナがやって来た。
助かった!
「なっ!? 天使だと!?」
ルーナの姿を見たリカルドさんは驚きの表情をしていた。
もしかして、天使ってほとんど見かけなかったりするのかな?
「おはようございます。私はメルヴェイユ様とアニエス様の部下でルーナと申します。我々天使は異世界人冒険者が一定水準まで成長すると、更なる冒険へ誘い、サポートするために派遣されています。街中では天使の象徴は見えないようにしているので気が付くことはほとんどないと思いますけどね」
ルーナは当然のようにそう言った。
そりゃそうだよね、街中に天使がいたら驚くよ。
「ふむ。つまり、天使の助けを得て獲得したということか」
「ちょっとだけ違いますけど、似たようなものですね」
実際には天使関連ではなく、女神関連の地下神殿だったわけだけどね。
その辺りは誤魔化しておこう。
ズィークさんが討伐されたらたまったものじゃないし。
「しかし、天使か……。聖堂が黙っていないだろうな」
リカルドさんは難しそうな顔をしてそう言った。
たしかに、聖堂といえば、神やその遣いの天使などには敏感だろうけどね。
「聖堂自体については我々は関知していません。唯一関心があるとすれば司教と神官長くらいなものです」
「なるほど。異世界人と神に大いに関わっているのはそのお二人だからな。ならば問題ないか」
「えぇ。自分たちの勢力に取り込もうと考えない二人なら、問題が起きることはないでしょう。ただ、他に生き残っている国がある場合は話が変わってきますが」
「えっ? 他にも生き残っている国あるの!?」
リカルドさんとルーナの話をのんびり聞いていたボクだけど、最後のルーナの一言に興味を引かれた。
「一応あるようです。ただ、濃い瘴気に包まれてしまったため、現在は状況を確認することができません。いずれその場所には辿りつけると思いますが。今はまずこの周囲と要塞です。さて、そろそろ戻りませんか? スピカ様」
「あっ、そうだった。ご飯だね!」
「おぉ、そうか。邪魔して悪かったな」
「朝食かぁ。あたしも相伴にあずかってもいいかな?」
「こら、アニス君」
「えぇ、構いませんよ? 多めに作ってありますので」
「スピカ君さえよければ、私もいいかね?」
「はい、ルーナも言ってるように大丈夫ですよ? どうせですし、みんなで食べましょう」
「やったー!!」
「アニス君、落ち着きなさい」
フリートさんは仕事のために既に戻ってしまったけど、リカルドさんとアニスさんはまだ時間があるようだった。
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