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じゃくまる

生まれた青空

 大きな音と共に、まばゆい光の本流に飲み込まれてしまったボクたち一行。
 まぶしい光から目を守りつつ光が収まるのを待つことにした。
 しばらくの間光はボクたちを包み込み続けていたものの、だんだんと光の勢いが弱まり薄れ始めていく。
 そして、完全に光が収まったころ、ボクたちは思いもよらない光景を目の当たりにしたのだ。

「空が……、青くなってる……」
 それまでの空は、黒い雲が渦を巻くように一面を覆っていた。
 しかし、反転結界陣で反転結界陣を描くことによって生まれた浄化地域の空は青く澄み渡り、大地はある一定の距離まで見渡す限りの緑と土に覆われていた。
 今までのような汚染され、ぬめぬめしたような土や植物は見る影もない。

「びっくりしたにゃ……。でも、終わってみたら、すっきり爽快な空間が出来上がってるのにゃ」
 音緒はぽかんと口を開けていたが、ハッとしたようにそんな感想を口にしていた。

「まさかまさかの多重浄化結界ですね。今のでどうやらスキルが新しく作成されたようです。その名も【反転小結界】です」
「反転小結界?」
 ルーナの言葉に、思わず聞き返すボク。
 さっきまで使っていた反転結界陣では、道の浄化こそできたものの、空間の浄化はできなかった。
 それが今、おそらく百メートルほどであろう距離まで、空間全体が浄化されているのだ。

「はい、スピカ様の作り出した新しいスキルのようです。もともと、術式の研究などで新しい魔術が作成できるようなシステムは存在しています。今回の事象もその一つのようです。簡単に説明しますと、五か所を繋ぐことによって重なり合った部分が強力になり、浄化効果と浄化範囲にボーナスが生まれたようです」
「!?」
 ボク自身がたまたま行ったこととはいえ、ルーナの説明を聞いてボクは絶句してしまった。
 実験といえば実験だったんだけど、まさかこんなことになるなんて……。

「ということは、同じように反転結界陣で反転小結界を構築すれば、同じような効果が生まれる?」
 フィルさんがルーナにそう問いかける。
 するとルーナは軽く頷き「その通りです」と言った。
 つまり、同じようにすることで、効率良く浄化を行うことが可能になるということか……!!

「では、その様に行えば、早く広範囲の浄化が可能になるという感じでしょうか?」
 ミアはそれを応用することで、どんどん浄化が行えるのではないかと考えたようだ。
 その考えにはボクも賛成かな?
 ただ、ここだけの話、妙にSPもMPもごっそり持って行かれていて、今は二桁台しか残っていないのだ。

「理論上はそうなります。ただ、反転小結界の使用SPは二百五十ほどになっています。MPも同量消費されているようで、どうやら浄化クリスタルが生成されたようです。なので、反転小結界で同じようなことをするとなると相当レベルを上げるか、SPもMPも多く内包できる職業に就く必要があります」
「それは……。今すぐには不可能ですね……」
 ルーナの説明を聞いたミアは残念そうにそう言い肩を落とした。

「見てください。陣を発動した中心点に白いクリスタルができています。あれがMPを使って作られた浄化の魔力クリスタルです。周囲から広がってくる穢れを吸収し、あのクリスタルで自動的に反転させて結界を維持しているようです。あのクリスタルが壊れるまでの間は、ずっと維持し続けるでしょう」
 ルーナが指さす方向、つまりボクたちのほぼ真後ろなんだけど、そこには大きさにして五十センチほどの大きな白いひし形をしたクリスタルが回転しながら浮かんでいた。

「たまたまではありましたが、このような結果になったことは喜ばしいことだと思います。調べた限りですが、あれだけで最低一か月は維持できるようです。定期的に魔力を注入することで延長は可能なようですね。驚きの結果ではありましたが、世界の浄化への第一歩のような気がします」
 ルーナは機嫌良さそうに、クリスタルを鑑定した結果をボクたちに教えてくれた。
 どうにもこの結果は、運営側の意図とは違うような気がしている。
 ルーナの説明にもあったけど、実験による偶発的な産物とでもいえばいいのだろうか?
 まぁ、裏技に近い結果という感じだ。

「この情報は後ほどメルヴェイユ様に報告させていただきますね。これで新しい試みが可能になるかもしれません。ただ、人間種での実績がまだないので、妖種限定なのかスピカ様限定なのかはまだわかりません。結果が出るまではしばらくかかると思います」
「それって、結果が出たらどうなるの?」
 ルーナの言い方からすると、バグやチートに近い異常動作のようにも聞こえる。
 でも、研究することで新しいものが生まれると言っている以上、正常なことなのかもしれないけどね。 

「はい、結果が出次第その情報はアーカイブに保存され、歴史的事象の一ページとして記録され公開されるようになります。研究や実験での術の発展、その際に起こる化学反応のすべては世界のシステムとしては正常なものです。またこれがスピカ様が最初であるように、他の所でも最初のものを生み出す人もいるでしょう。公開されることが決まりましたら、お教えいたしますね?」
「うへぇ……」
 つまり、一番最初に何かを発見した人は、ほぼ永久にさらし者にされるってことじゃんか……。
 何で他の人が最初に見つけてくれなかったんだよぉ……。

「魔術という分野においては色々な人が試行錯誤しているのですが、符術や陰陽術という分野においてはまだ試行錯誤している人がいないのです。ですので、その道を選ばれたスピカ様は、誰よりもこの道で注目されるようになるでしょう」
「嬉しくないよ……」
 ルーナは嬉しそうにそう言うけど、ボクはひっそりとしていたいんだよ。
 たまたま思いついて行った実験だったけど、思わぬ結果になってボクは満足といえば満足だった。
 でも、なんだか恥ずかしいよね?

「お~い! 何があったんだ!?」
 少し離れた場所から男性の声が聞こえてきた。
 ボクたちはその声の方向に向かって振り向くと、ついさっき出会った聖堂騎士の人がこっちに向かって走ってくるのが見えた。
 あっ、やっぱり向こうから見えたのか。

「あの大きな光の柱の原因は君たちか!? それに、この場所だけ何でこんなに浄化されているんだ!?」
 大慌てでやって来たのは聖堂騎士のフリートさんだった。

「あ、あはは……」
「あははじゃない。一体何が起きたというんだ!? 説明してもらおう」
「あっ、えっとですね……」
 ボクはものすごい剣幕で問い質してくるフリートさんに経緯を説明した。
 すると、フリートさんは口をぽかんと開けて唖然としていた。

「異世界人冒険者は規格外だと聞いてはいたが、まさかここまでとは……。つまり、君はその新しい方法で空間の浄化に成功したというのか!?」
「えぇ、まぁ、はい……」
 唖然としつつも、興奮気味にそう言ってくるフリートさんに、ボクは若干及び腰になっていた。
 食いつきが良すぎて、怖い……。

「はぁ……。これは上と掛け合って特別報奨金を出さなければいけないようだ。この広い範囲だけでも浄化できたということは、我々にとって大変大きな価値がある。それなりの建物ですら建てられる広さが、最低一か月も維持できるというのだからな。つまり、周囲を同じように浄化していけば、ほぼ確実に汚染されない場所が生まれるということじゃないか」
 どうやら、ボクのやったことはメルヴェイユの街の人々にとっても重大なことだったようだ。
 テンションの高いフリートさんを見て若干引きつつも、ボクはわかったことが一つだけある。
 穢れによる汚染は、突如発生はしないということ。
 周辺の汚染をから、根を伸ばすように広がっていくということだ。

「一刻も早くこの情報を伝えなければならない! 君たちは引き続き探索と浄化を頼む。褒章などについてはギルド経由で君たちに連絡しよう。では、さらばだ!」
 フリートさんはそれだけ言うと、街の方へと走って行ってしまった。

「ん、続き、行く」
「あっ、うん」
 ボクはフィルさんに引っ張られながら歩き、さらに探索を進めることにした。

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