アルケニアオンライン~昴のVRMMOゲームライフ。冒険生産なんでも楽しみます。
汚染された世界
外部世界の調査ということだけど、ログインしていないメンバーについては今回は誘わないでおくことにする。
ルーナの話によると、一度浄化するとある程度の期間浄化された状態が続くらしい。
ただし、時間を追うごとに侵食されていき、やがては浄化した場所が汚染にまみれてしまうようだ。
それを防止するいい方法がボク達陰陽師系には存在しているらしい。
その名も『反転結界』だ。
陰の穢れによる汚染を陽に転じさせるという荒業で、浄化した場所を長期的に保護するというもので、陣を描き結界石を設置することで機能するらしい。
そんな反転結界の結界石の材料は、穢れを浄化した際に生成された黒い勾玉だ。
これを組み込むことで、陰を陽に反転させ、一週間ほど汚染から保護する結界を生成する。
「というわけで、短時間ではありますが、浄化の練習と付近の探索を行いましょう」
そんなルーナの一声でボクたちは現在、マタンガの集落からしばらく行った汚染地帯との境界線に来ている。
その付近には東門へ続く他の地方からの街道が通っており、現地冒険者や商人たちが馬車に揺られながら通り過ぎて行く。
そんな街道にはちょっとだけ飛び出した道があり、汚染地帯へと続いている。
「本当にここから行くの? ものすっごく不気味なんだけど……」
それもそのはず、汚染を防ぐための結界は白い靄のようなものでわかりやすく表現されているけど、その先は黒い陽炎のようなものが漂い、気味の悪い植物のようなものが生えているのだ。
「踏んだらぬるっとしそうにゃ……」
音緒が背筋を震わせながらそんな感想を口にした。
わかる。
ぬめぬめしたり糸引いたりしそうだもんね。
「さすがの気味の悪さですね。こんなものが私の中に入っていたなんて……」
一度汚染されたことのあるミアにとっては嫌なものでしかないだろう。
それでも今回調査に同行してくれたのは嬉しいかな。
ただ、精霊種でもスライム系なので、汚染されないとも限らない。
なので、前回ミアを浄化した時のアイテムはそのままインベントリに入れてある。
いざという時はこれで浄化だ!!
「……怖い」
NPC人型代表としてフィルさんがついてくることになった。
まぁそんなフィルさんだけど、やっぱり怖いものは怖いようで、若干泣きそうである。
涙目かわいい。
「そんなわけで、ここから進んでいくことになります。すでに進んでいるプレイヤーの方にも守護天使などが付いていると思いますが、守護天使に出来るのは浄化支援とアドバイスくらいなので、期待してはいけませんよ?」
ルーナは現在羽根などを消しているため、ただの人と変わらない姿をしている。
ただ装備が戦乙女っぽい格好なので、見た人は女性騎士がいると思うかもしれない。
「君たち、この先は汚染された地域だ。すでに進んでいるものもいるので目印となる道が見えることもあるかもしれないが、あまり期待しない方がいい。聖堂でもらえる浄化の水では一時間も持たないのだ」
汚染地帯へと突きだしている道の両サイドに、白い金属で作られたプレートメイルを装備した中年の男性騎士が二名立っていた。
その手には白い長剣と白地に黒と金の金属で模様が施されたカイトシールドを持っている。
「聖堂騎士……」
「そうだ。異世界冒険者の人たちには馴染みがないだろうから紹介させてもらう。私はフリート。隣のはケルンだ。四級聖堂騎士で、聖堂騎士の中では中堅にあたる。主に汚染地帯の警戒などを任務としているんだ」
「ケルンだ。聖堂騎士というのは見習いから始まって、一番下の階級が六級となっている。まぁ当然上に行けば行くほど偉いんだが、街中で見かける機会は少ないかもな。よろしくな!」
渋めの中年男性二人が、にこやかに笑いかけながらボクたちに挨拶してきた。
どうやら二人ともそれなりの実力があるみたいだ。
「よっ、よろしくお願いします」
「よろしくにゃ」
「……よろしく」
「よろしくお願いします」
「よろしくお願いしますね」
ボクは若干どもったけど何とか挨拶することができた。
渋い男性は割と好きだから、ちょっとだけドキドキしたのは内緒だ。
「お嬢ちゃんたちがこの先に行くなら、浄化依頼を受けてもらうことになる。まぁ単純に言うと、浄化した面積の記録と発見物の記録くらいだな。冒険者カードを渡してくれれば追加依頼として記録される。報告は冒険者ギルドで頼むことになる」
「絶対受けなきゃダメなんですか?」
フリートさんの説明を聞いて、ボクは思わずそう問い返した。
すると、フリートさんは笑いながら「別に問題はない」とだけ言った。
「ただ、失踪した場合の捜索も含んでいるから入退場記録は必要ってだけだな。あと、浄化した面積だけ資金を獲得できると考えれば結構お得だぞ?」
フリートさんは若干硬い感じの人だけど、今話してくれたケルンさんは快活な人のようだ。
「わかりました。とりあえず受けます」
ボクはそう言うと、冒険者カードをフリートさんに手渡す。
「よろしくにゃ」
「一応作っておいてよかった」
音緒とフィルさんが同じくカードを手渡した。
「私は持ってませんのでお気になさらず」
「私もありませんね。そのうち作ろうかと思いますけど」
ミアとルーナは持っていないことだけ告げると、「くれぐれも気を付けてくれ」とだけフリートさんに言われていた。
「完了だ。返却しよう。浄化範囲については自動記録されるからそこまで気にしなくてもいい。汚染地帯の魔物はとにかく強いから十分注意するように。何かあれば逃げ込んでこい」
「おうよ、腕っぷしだけは自慢だからな。この近辺のくらいならどうにでもなる。任せとけ」
「ありがとうございます、行ってきます」
「いってくるにゃ~」
「行ってくる」
「では」
「ご武運を」
心強いセリフを聞いて、ボクたちは若干安心できたかもしれない。
ともあれ、白い結界を抜けて、新天地へと冒険だ!!
フリートさんたちから離れ、白い結界を抜ける。
抜けた先で感じるのは、張り付くような不快な空気と生暖かい感触だ。
「うげっ。気持ち悪い」
「これはきついにゃ。夏場の蒸した部室にいるような気分にゃ」
「……生臭い」
結界を抜けた先の世界はひどいものだった。
蒸すように感じる温度、生暖かい風、まとわりつくような空気、そしてよくわからない生臭さ。
どうやっても生きていける気がしない、そんな気持ちの悪い世界だった。
「とりあえず起点に反転結界を設置するね」
ボクはさっそく出てすぐの場所に属性防御陣を描く。
今回はすべての元素が必要なので、五行を全部使うことになる。
それぞれの属性となる素材を配置して、それを糧に起動する。
それを二か所設置し、黒い勾玉を陣の中央に設置する。
「いくよ! 【反転結界陣】」
ボクがそう唱えると、一瞬光を発し、黒い勾玉が白い勾玉へと変化した。
すると不思議なことに、二か所の反転結界陣が光で繋がれ、その間の汚染が徐々に消えていったのだ。
そして生み出される黒い勾玉は一瞬で砕け、陣を維持するエネルギーとなって充填されていった。
「素晴らしいですね。汚染が多い状態ではこのように黒い勾玉を生み出しますけど、汚染が浄化されて一定期間すぎるとエネルギーとなるものが無くなります。すると、陣は汚染され破壊されて、穢れの侵食が始まるのです」
一連の作業を見ていたルーナはそう解説した。
ということは、常に供給しなければいけないってことなんだろうな。
「陣を繋いでいければ汚染の浄化期間が延びるかな?」
今、陣の二点間の汚染は光で繋がれ浄化された。
ということは、繋いでいけばもう少し長い間浄化することが可能なのでは?
「可能かもしれません。ただ、一か所破壊されてしまうと水の泡になる可能性があります。汚染には汚染の元になるものがあると思いますから、それを見つけるのも手かもしれません」
ルーナはニコニコしながらボクにそう説明した。
「つまりにゃ、これが陰の穢れということは、黒い勾玉や陰石みたいなのが生み出されているかもしれないってことかにゃ?」
「なら、それを見つけるか反転させればもっと強い浄化になる……?」
「えぇ、その通りです」
音緒とフィルさんのひらめきに、ルーナは両手で丸を描いてその通りと言った。
「でも、それだけじゃ周囲からの汚染にやがて飲み込まれるか……」
「そのために、要塞があります。浄化の力を大きく広げ、街を守る浄化結界を生み出すのです」
ボクの疑問に答えたのはミアだった。
そういえば、ミアも汚染についてはちょっと知ってるんだったよね。
ミアの力があれば汚染されたものも浄化できるって聞いたけど、たぶん結界石みたいなものも浄化できるんだろうな。
「何はともあれ、まずは進みましょう。要塞の座標は分かっていてもまだたどり着いたわけではありませんしね」
「うん」
「だにゃ」
「穢れた世界の冒険、開始」
「浄化、できるように頑張ります」
ルーナの言う通り、まだたどり着いたわけではない。
早くこの汚染を浄化しなければ、この世界に未来はないのだから。
ルーナの話によると、一度浄化するとある程度の期間浄化された状態が続くらしい。
ただし、時間を追うごとに侵食されていき、やがては浄化した場所が汚染にまみれてしまうようだ。
それを防止するいい方法がボク達陰陽師系には存在しているらしい。
その名も『反転結界』だ。
陰の穢れによる汚染を陽に転じさせるという荒業で、浄化した場所を長期的に保護するというもので、陣を描き結界石を設置することで機能するらしい。
そんな反転結界の結界石の材料は、穢れを浄化した際に生成された黒い勾玉だ。
これを組み込むことで、陰を陽に反転させ、一週間ほど汚染から保護する結界を生成する。
「というわけで、短時間ではありますが、浄化の練習と付近の探索を行いましょう」
そんなルーナの一声でボクたちは現在、マタンガの集落からしばらく行った汚染地帯との境界線に来ている。
その付近には東門へ続く他の地方からの街道が通っており、現地冒険者や商人たちが馬車に揺られながら通り過ぎて行く。
そんな街道にはちょっとだけ飛び出した道があり、汚染地帯へと続いている。
「本当にここから行くの? ものすっごく不気味なんだけど……」
それもそのはず、汚染を防ぐための結界は白い靄のようなものでわかりやすく表現されているけど、その先は黒い陽炎のようなものが漂い、気味の悪い植物のようなものが生えているのだ。
「踏んだらぬるっとしそうにゃ……」
音緒が背筋を震わせながらそんな感想を口にした。
わかる。
ぬめぬめしたり糸引いたりしそうだもんね。
「さすがの気味の悪さですね。こんなものが私の中に入っていたなんて……」
一度汚染されたことのあるミアにとっては嫌なものでしかないだろう。
それでも今回調査に同行してくれたのは嬉しいかな。
ただ、精霊種でもスライム系なので、汚染されないとも限らない。
なので、前回ミアを浄化した時のアイテムはそのままインベントリに入れてある。
いざという時はこれで浄化だ!!
「……怖い」
NPC人型代表としてフィルさんがついてくることになった。
まぁそんなフィルさんだけど、やっぱり怖いものは怖いようで、若干泣きそうである。
涙目かわいい。
「そんなわけで、ここから進んでいくことになります。すでに進んでいるプレイヤーの方にも守護天使などが付いていると思いますが、守護天使に出来るのは浄化支援とアドバイスくらいなので、期待してはいけませんよ?」
ルーナは現在羽根などを消しているため、ただの人と変わらない姿をしている。
ただ装備が戦乙女っぽい格好なので、見た人は女性騎士がいると思うかもしれない。
「君たち、この先は汚染された地域だ。すでに進んでいるものもいるので目印となる道が見えることもあるかもしれないが、あまり期待しない方がいい。聖堂でもらえる浄化の水では一時間も持たないのだ」
汚染地帯へと突きだしている道の両サイドに、白い金属で作られたプレートメイルを装備した中年の男性騎士が二名立っていた。
その手には白い長剣と白地に黒と金の金属で模様が施されたカイトシールドを持っている。
「聖堂騎士……」
「そうだ。異世界冒険者の人たちには馴染みがないだろうから紹介させてもらう。私はフリート。隣のはケルンだ。四級聖堂騎士で、聖堂騎士の中では中堅にあたる。主に汚染地帯の警戒などを任務としているんだ」
「ケルンだ。聖堂騎士というのは見習いから始まって、一番下の階級が六級となっている。まぁ当然上に行けば行くほど偉いんだが、街中で見かける機会は少ないかもな。よろしくな!」
渋めの中年男性二人が、にこやかに笑いかけながらボクたちに挨拶してきた。
どうやら二人ともそれなりの実力があるみたいだ。
「よっ、よろしくお願いします」
「よろしくにゃ」
「……よろしく」
「よろしくお願いします」
「よろしくお願いしますね」
ボクは若干どもったけど何とか挨拶することができた。
渋い男性は割と好きだから、ちょっとだけドキドキしたのは内緒だ。
「お嬢ちゃんたちがこの先に行くなら、浄化依頼を受けてもらうことになる。まぁ単純に言うと、浄化した面積の記録と発見物の記録くらいだな。冒険者カードを渡してくれれば追加依頼として記録される。報告は冒険者ギルドで頼むことになる」
「絶対受けなきゃダメなんですか?」
フリートさんの説明を聞いて、ボクは思わずそう問い返した。
すると、フリートさんは笑いながら「別に問題はない」とだけ言った。
「ただ、失踪した場合の捜索も含んでいるから入退場記録は必要ってだけだな。あと、浄化した面積だけ資金を獲得できると考えれば結構お得だぞ?」
フリートさんは若干硬い感じの人だけど、今話してくれたケルンさんは快活な人のようだ。
「わかりました。とりあえず受けます」
ボクはそう言うと、冒険者カードをフリートさんに手渡す。
「よろしくにゃ」
「一応作っておいてよかった」
音緒とフィルさんが同じくカードを手渡した。
「私は持ってませんのでお気になさらず」
「私もありませんね。そのうち作ろうかと思いますけど」
ミアとルーナは持っていないことだけ告げると、「くれぐれも気を付けてくれ」とだけフリートさんに言われていた。
「完了だ。返却しよう。浄化範囲については自動記録されるからそこまで気にしなくてもいい。汚染地帯の魔物はとにかく強いから十分注意するように。何かあれば逃げ込んでこい」
「おうよ、腕っぷしだけは自慢だからな。この近辺のくらいならどうにでもなる。任せとけ」
「ありがとうございます、行ってきます」
「いってくるにゃ~」
「行ってくる」
「では」
「ご武運を」
心強いセリフを聞いて、ボクたちは若干安心できたかもしれない。
ともあれ、白い結界を抜けて、新天地へと冒険だ!!
フリートさんたちから離れ、白い結界を抜ける。
抜けた先で感じるのは、張り付くような不快な空気と生暖かい感触だ。
「うげっ。気持ち悪い」
「これはきついにゃ。夏場の蒸した部室にいるような気分にゃ」
「……生臭い」
結界を抜けた先の世界はひどいものだった。
蒸すように感じる温度、生暖かい風、まとわりつくような空気、そしてよくわからない生臭さ。
どうやっても生きていける気がしない、そんな気持ちの悪い世界だった。
「とりあえず起点に反転結界を設置するね」
ボクはさっそく出てすぐの場所に属性防御陣を描く。
今回はすべての元素が必要なので、五行を全部使うことになる。
それぞれの属性となる素材を配置して、それを糧に起動する。
それを二か所設置し、黒い勾玉を陣の中央に設置する。
「いくよ! 【反転結界陣】」
ボクがそう唱えると、一瞬光を発し、黒い勾玉が白い勾玉へと変化した。
すると不思議なことに、二か所の反転結界陣が光で繋がれ、その間の汚染が徐々に消えていったのだ。
そして生み出される黒い勾玉は一瞬で砕け、陣を維持するエネルギーとなって充填されていった。
「素晴らしいですね。汚染が多い状態ではこのように黒い勾玉を生み出しますけど、汚染が浄化されて一定期間すぎるとエネルギーとなるものが無くなります。すると、陣は汚染され破壊されて、穢れの侵食が始まるのです」
一連の作業を見ていたルーナはそう解説した。
ということは、常に供給しなければいけないってことなんだろうな。
「陣を繋いでいければ汚染の浄化期間が延びるかな?」
今、陣の二点間の汚染は光で繋がれ浄化された。
ということは、繋いでいけばもう少し長い間浄化することが可能なのでは?
「可能かもしれません。ただ、一か所破壊されてしまうと水の泡になる可能性があります。汚染には汚染の元になるものがあると思いますから、それを見つけるのも手かもしれません」
ルーナはニコニコしながらボクにそう説明した。
「つまりにゃ、これが陰の穢れということは、黒い勾玉や陰石みたいなのが生み出されているかもしれないってことかにゃ?」
「なら、それを見つけるか反転させればもっと強い浄化になる……?」
「えぇ、その通りです」
音緒とフィルさんのひらめきに、ルーナは両手で丸を描いてその通りと言った。
「でも、それだけじゃ周囲からの汚染にやがて飲み込まれるか……」
「そのために、要塞があります。浄化の力を大きく広げ、街を守る浄化結界を生み出すのです」
ボクの疑問に答えたのはミアだった。
そういえば、ミアも汚染についてはちょっと知ってるんだったよね。
ミアの力があれば汚染されたものも浄化できるって聞いたけど、たぶん結界石みたいなものも浄化できるんだろうな。
「何はともあれ、まずは進みましょう。要塞の座標は分かっていてもまだたどり着いたわけではありませんしね」
「うん」
「だにゃ」
「穢れた世界の冒険、開始」
「浄化、できるように頑張ります」
ルーナの言う通り、まだたどり着いたわけではない。
早くこの汚染を浄化しなければ、この世界に未来はないのだから。
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