アルケニアオンライン~昴のVRMMOゲームライフ。冒険生産なんでも楽しみます。
ゴブリンアーミー召喚術師の最後と新たなる敵
人魔入り混じり混沌とした戦場。
こちらは最大火力で撃てる魔術には限りがある。
一時的に【アクセラレーション】と【ウィズダムマジック】を駆使してリキャストを短くしたとしても、その【アクセラレーション】と【ウィズダムマジック】の方のリキャストが終わらないのだ。
説明にはこう記載されている。
『加速支援魔術【アクセラレーション】はほかの加速支援魔術などの効果を受け付けない』
つまり、これ自体は一旦使用停止すると、リキャストが発生し次に使えるようになるまで時間がかかってしまうということだ。
起死回生の一手としては使い勝手はいいのだが、倒しきれずに効果が終わってしまうと途端にピンチに陥るのだ。
「雑魚共がどれほど群がっても無意味! わしに倒されるがよいわ!!」
「なんの!!」
重そうな杖での一撃がアモスの盾を穿つ。
その度に重い音が響き、打ちあいの激しさを物語る。
取り巻きのゴブリンアーミーを倒し、その間に本体に攻撃を加える。
ただそれだけだが、人数が少ないとどうしても処理に時間がかかってしまう。
【アクセラレーション】も【ウィズダムマジック】も今はリキャスト中のため使うことができず、挽回するための一手が足りなかった。
「『全てを焼き尽くす紅蓮の炎よ、我が敵を焼き尽くせ! 【プロミネンス】』」
激しく吹き上がる高熱の火柱にゴブリンアーミーたちが巻き込まれ焼き尽くされていく。
アモスとゴリアテに撃つわけにはいかないため、どうしても後方の広い範囲に撃つことになるが仕方ない。
「くぁっ、熱がひどいなっ!」
ゴリアテが呻く。
離れていても当たり前のように感じてしまう熱量がそこにはあった。
「耐火ポーションをケチるからだ、馬鹿め」
「しょうがないだろ? 拠点手に入れるために節約してるんだからな」
「本末転倒という言葉をしらんのか?」
「んなもの、現実世界に置いてきたわ!!」
「バカ言ってないで集中しろよ、お前ら……」
年上だということは重々承知しているものの、こういう時つい口が悪くなってしまう。
前衛二人組は漫才のようなことを繰り広げながら、敵と戦い続けていた。
「アークさ~ん、来たよ~!!」
不意に上空から声が聞こえてきた。
見上げるとそこには、烏丸家のお嬢さん二人組が飛んでいる。
そして視線を下げると、ぞろぞろと大勢のプレイヤーが烏天狗に追従するように移動して来ていた。
「アモス! ゴリアテ! 来たぞ!!」
「やっとか、待ちくたびれたぜ」
「まだ終わっとらん!」
「アーク君、ちょっとMP足りないから待ってね!」
「あっ、魔力回復ポーション予備持ってます。どうぞ」
「ありがとう~、マイアちゃん」
「一撃必殺」
「二発撃ってるけど大丈夫かにゃ?」
「うるさい猫又」
「ここではみんなのアイドル猫獣人の音緒ちゃんにゃ」
「猫耳、猫尻尾~。うふふ」
「アイル、その前に仕事終えようね?」
「シル、敵に投げナイフの投擲お願いね。毒塗ってある奴」
「了解、カリーナ」
「なんだかんだで楽しく連携出来てますね。でも、正直MPがつらい……」
「がんばれよ、マックス」
「ありがとうございます、アークトゥルス」
「よっしゃ~! 本隊が来る前に最後の飛び込みいくよ!!」
「「「「「「わかりました、姐さん(お姉様)」」」」」」
俺たちの攻撃の後、少しして本隊が無事に合流してきた。
パッと見た感じ、だんだんと傷の増えていっている様子のゴブリンアーミー召喚術師。
そこそこダメージを与えることには成功しているようだ。
「ご苦労、アークトゥルス。あとは俺たちが受け持つ」
「悪いな、ネモ。ちょっと休んでからすぐ行くわ」
「あぁ、倒れている人にも手当てできる時間が必要だしな」
ネモたちが合流し、俺たちは一時的に後ろへと下がる。
すぐさま回復を始めつつ、全体の動きを確認していく。
ネモたちの戦術は単純で、最前線に重戦士を配置、そして遊撃として戦士や剣士、刀士や盗賊といった職業で抑え込みながら削り込んでいく。後衛には支援職としてのエンチャント系魔術師や回復としての神官、援護射撃の攻撃妖魔術師と弓師、召喚師や道士、偵察及び遊撃の烏天狗で構成されている。
空を飛べる職業は他にもあるのだが、まだ開放されていないものもある上に、適性上、簡単には進化出来ない種族や職業も存在している。
天使や竜騎士、竜人や有翼人などもいるようだが、残念ながらまだ見かけてはいない。
『総員、これが最後の戦闘だ。長く苦しい戦いだったが、皆の貢献のおかげでどうにか対処することができた。今回の反省を生かし、次回はもっとスムーズに討伐できるように改善していきたいと思う。さぁ、今こそ最後の戦い! ゆくぞ!!』
ネモが全体に発した言葉により、多少なりとも士気が上がったように見える。
その効果はやはり高いようで、スペック以上の性能を引き出しているような気すらしていた。
「バカな!? たかが人間共にここまでやられるだと!? ご、ゴディアス様!!」
人の圧力、襲い掛かる数の暴力により、どんどん削られていくゴブリンアーミー召喚術師。
悔しそうな表情をしつつも、何かに向かって助けを求めるような動きを行う。
その時、そこからともなく声が響いた。
『主の力が宿りし石を渡したにもかかわらず、負けるとは……。この無能め。私は貴様を救うことはしない。だが、このまま彼らをそのまま帰すわけにもいかない。貴様の命、その石に利用させてもらおう。主の欠片である陰石よ。その命を吸収し、その者共に冥府の裁きを』
少し低めの男の声が響く。
その声を聴いた途端、ゴブリンアーミー召喚術師は唖然とした顔をして固まってしまった。
「ごっ、ゴリアテ……様……」
黒いオーラが黒い石から放たれ、それに巻き込まれたゴブリンアーミー召喚術師は急激に弱体化。
見て分かるように、体が小さくなっていくのだった。
「せいっ!!」
前衛の誰かの一撃を受け、ゴブリンアーミー召喚術師は杖をその手から落とし、地面に倒れ伏した。
しかし、その手に持った黒い石は黒いオーラを放ちながらその場で宙に浮いていた。
『さぁ、死ぬがいい。主の計画を邪魔した者達に冥府の裁きを!!』
黒い石が強烈にオーラをまき散らすと、それが徐々にこちらへと向かって侵食していく。
まるで生き物のように、空間ごと食べるかのように向かってくる。
『総員、下がれ!!』
ネモの指示がかかり、全員が少しずつ下がっていく。
だが、下がるにも限度がある。
このまま下がると、村を巻き込みかねないのだ。
「どうする……?」
俺は考える。
でも、良い手は思いつかない。
「『紅蓮の槍よ、相手を穿て!!【フレアランス】』」
とにかくやるしかない、そう思った俺は魔術を放つ。
しかし、黒いオーラに接触すると、途端に霧散してしまった。
あれには魔術は効かないようだ。
「一射」
コノハちゃんが矢を放つが、それも黒いオーラに接触すると霧散してしまう。
「だめ、無念」
『フフハハハハハ、メルヴェイユ如きの力でどうにかなるはずなかろう!! 我が主はメルヴェイユよりも強いのだからな!!』
絶体絶命……。
俺たちに残された道は、ほかにないのか?
「スピカちゃん……」
近くにいたコノハちゃんが、妹の名前をつぶやく。
俺はコノハちゃんの方を見ると、その視線の先を追った。
「すっ、すぴか……?」
そこには、少しふらつきながらも弱弱しく笑う、妹の姿があった。
「やぁ、ただいま」
こちらは最大火力で撃てる魔術には限りがある。
一時的に【アクセラレーション】と【ウィズダムマジック】を駆使してリキャストを短くしたとしても、その【アクセラレーション】と【ウィズダムマジック】の方のリキャストが終わらないのだ。
説明にはこう記載されている。
『加速支援魔術【アクセラレーション】はほかの加速支援魔術などの効果を受け付けない』
つまり、これ自体は一旦使用停止すると、リキャストが発生し次に使えるようになるまで時間がかかってしまうということだ。
起死回生の一手としては使い勝手はいいのだが、倒しきれずに効果が終わってしまうと途端にピンチに陥るのだ。
「雑魚共がどれほど群がっても無意味! わしに倒されるがよいわ!!」
「なんの!!」
重そうな杖での一撃がアモスの盾を穿つ。
その度に重い音が響き、打ちあいの激しさを物語る。
取り巻きのゴブリンアーミーを倒し、その間に本体に攻撃を加える。
ただそれだけだが、人数が少ないとどうしても処理に時間がかかってしまう。
【アクセラレーション】も【ウィズダムマジック】も今はリキャスト中のため使うことができず、挽回するための一手が足りなかった。
「『全てを焼き尽くす紅蓮の炎よ、我が敵を焼き尽くせ! 【プロミネンス】』」
激しく吹き上がる高熱の火柱にゴブリンアーミーたちが巻き込まれ焼き尽くされていく。
アモスとゴリアテに撃つわけにはいかないため、どうしても後方の広い範囲に撃つことになるが仕方ない。
「くぁっ、熱がひどいなっ!」
ゴリアテが呻く。
離れていても当たり前のように感じてしまう熱量がそこにはあった。
「耐火ポーションをケチるからだ、馬鹿め」
「しょうがないだろ? 拠点手に入れるために節約してるんだからな」
「本末転倒という言葉をしらんのか?」
「んなもの、現実世界に置いてきたわ!!」
「バカ言ってないで集中しろよ、お前ら……」
年上だということは重々承知しているものの、こういう時つい口が悪くなってしまう。
前衛二人組は漫才のようなことを繰り広げながら、敵と戦い続けていた。
「アークさ~ん、来たよ~!!」
不意に上空から声が聞こえてきた。
見上げるとそこには、烏丸家のお嬢さん二人組が飛んでいる。
そして視線を下げると、ぞろぞろと大勢のプレイヤーが烏天狗に追従するように移動して来ていた。
「アモス! ゴリアテ! 来たぞ!!」
「やっとか、待ちくたびれたぜ」
「まだ終わっとらん!」
「アーク君、ちょっとMP足りないから待ってね!」
「あっ、魔力回復ポーション予備持ってます。どうぞ」
「ありがとう~、マイアちゃん」
「一撃必殺」
「二発撃ってるけど大丈夫かにゃ?」
「うるさい猫又」
「ここではみんなのアイドル猫獣人の音緒ちゃんにゃ」
「猫耳、猫尻尾~。うふふ」
「アイル、その前に仕事終えようね?」
「シル、敵に投げナイフの投擲お願いね。毒塗ってある奴」
「了解、カリーナ」
「なんだかんだで楽しく連携出来てますね。でも、正直MPがつらい……」
「がんばれよ、マックス」
「ありがとうございます、アークトゥルス」
「よっしゃ~! 本隊が来る前に最後の飛び込みいくよ!!」
「「「「「「わかりました、姐さん(お姉様)」」」」」」
俺たちの攻撃の後、少しして本隊が無事に合流してきた。
パッと見た感じ、だんだんと傷の増えていっている様子のゴブリンアーミー召喚術師。
そこそこダメージを与えることには成功しているようだ。
「ご苦労、アークトゥルス。あとは俺たちが受け持つ」
「悪いな、ネモ。ちょっと休んでからすぐ行くわ」
「あぁ、倒れている人にも手当てできる時間が必要だしな」
ネモたちが合流し、俺たちは一時的に後ろへと下がる。
すぐさま回復を始めつつ、全体の動きを確認していく。
ネモたちの戦術は単純で、最前線に重戦士を配置、そして遊撃として戦士や剣士、刀士や盗賊といった職業で抑え込みながら削り込んでいく。後衛には支援職としてのエンチャント系魔術師や回復としての神官、援護射撃の攻撃妖魔術師と弓師、召喚師や道士、偵察及び遊撃の烏天狗で構成されている。
空を飛べる職業は他にもあるのだが、まだ開放されていないものもある上に、適性上、簡単には進化出来ない種族や職業も存在している。
天使や竜騎士、竜人や有翼人などもいるようだが、残念ながらまだ見かけてはいない。
『総員、これが最後の戦闘だ。長く苦しい戦いだったが、皆の貢献のおかげでどうにか対処することができた。今回の反省を生かし、次回はもっとスムーズに討伐できるように改善していきたいと思う。さぁ、今こそ最後の戦い! ゆくぞ!!』
ネモが全体に発した言葉により、多少なりとも士気が上がったように見える。
その効果はやはり高いようで、スペック以上の性能を引き出しているような気すらしていた。
「バカな!? たかが人間共にここまでやられるだと!? ご、ゴディアス様!!」
人の圧力、襲い掛かる数の暴力により、どんどん削られていくゴブリンアーミー召喚術師。
悔しそうな表情をしつつも、何かに向かって助けを求めるような動きを行う。
その時、そこからともなく声が響いた。
『主の力が宿りし石を渡したにもかかわらず、負けるとは……。この無能め。私は貴様を救うことはしない。だが、このまま彼らをそのまま帰すわけにもいかない。貴様の命、その石に利用させてもらおう。主の欠片である陰石よ。その命を吸収し、その者共に冥府の裁きを』
少し低めの男の声が響く。
その声を聴いた途端、ゴブリンアーミー召喚術師は唖然とした顔をして固まってしまった。
「ごっ、ゴリアテ……様……」
黒いオーラが黒い石から放たれ、それに巻き込まれたゴブリンアーミー召喚術師は急激に弱体化。
見て分かるように、体が小さくなっていくのだった。
「せいっ!!」
前衛の誰かの一撃を受け、ゴブリンアーミー召喚術師は杖をその手から落とし、地面に倒れ伏した。
しかし、その手に持った黒い石は黒いオーラを放ちながらその場で宙に浮いていた。
『さぁ、死ぬがいい。主の計画を邪魔した者達に冥府の裁きを!!』
黒い石が強烈にオーラをまき散らすと、それが徐々にこちらへと向かって侵食していく。
まるで生き物のように、空間ごと食べるかのように向かってくる。
『総員、下がれ!!』
ネモの指示がかかり、全員が少しずつ下がっていく。
だが、下がるにも限度がある。
このまま下がると、村を巻き込みかねないのだ。
「どうする……?」
俺は考える。
でも、良い手は思いつかない。
「『紅蓮の槍よ、相手を穿て!!【フレアランス】』」
とにかくやるしかない、そう思った俺は魔術を放つ。
しかし、黒いオーラに接触すると、途端に霧散してしまった。
あれには魔術は効かないようだ。
「一射」
コノハちゃんが矢を放つが、それも黒いオーラに接触すると霧散してしまう。
「だめ、無念」
『フフハハハハハ、メルヴェイユ如きの力でどうにかなるはずなかろう!! 我が主はメルヴェイユよりも強いのだからな!!』
絶体絶命……。
俺たちに残された道は、ほかにないのか?
「スピカちゃん……」
近くにいたコノハちゃんが、妹の名前をつぶやく。
俺はコノハちゃんの方を見ると、その視線の先を追った。
「すっ、すぴか……?」
そこには、少しふらつきながらも弱弱しく笑う、妹の姿があった。
「やぁ、ただいま」
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