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じゃくまる

絶体絶命! ゴブリンアーミー召喚術師の力の秘密

「ほいほいっと、ハイオークシャーマン全滅を確認っと。メッセージは送ったぞ? 援軍送ってくれるってさ」

 前衛のハイオーク戦士たちを強化していたハイオークシャーマンは全滅した。
 ノーマルモンスターの扱いだったので、かなり楽に倒せたんじゃないだろうか?
 そうは言っても、ハイオークというの一筋縄ではいかない相手なので、油断は禁物だ。

「案外あっさり終わったね?」

「だな~。ハイオークシャーマンとはいっても、状態異常の時に奇襲されれば結構脆いものなんだな。ハイオーク戦士には効果がなさそうだけどな」

 実際ハイオーク戦士たちの力はもの凄いものがある。
 数人の重戦士を相手に怯むことなく叩き潰すように攻撃し、さらには押し込んでいく。
 これで身体能力まで強化されていたら、こっちの前衛はもたなかっただろう。

「よもや、人間どもがここまで攻め込んでくるとはな。ハイオーク連中も所詮はただの雑魚ということか」

 今まで瞑想を続けていたゴブリンアーミー召喚術師が辺りを見回しながらそう言った。
 どうやらハイオークシャーマンたちが全滅したことに気が付いて瞑想を解除したようだ。

「我らゴブリンアーミーは、ゴディアス様の指示でこの地を攻め落とすためにやってきた。補給部隊を率いていたハイゴブリンが討たれるとは思いもしなかったがな。あれがいれば、戦局はもっと違うものになっていただろう」

 ゴブリンアーミー召喚術師は憎々し気にそう語る。
 率いる人数が増えれば増えるほどに強くなるハイゴブリンがいれば、確かに戦局は変わっていたかもしれない。
 三百人以上を率いるハイゴブリンの強化能力がどれほどのものかはわからないけど、きっと放っておいていいものではなかっただろう。

「だが、それでも我らは勝たねばならぬ。陰石(かげいし)の力が回復するまであと少し。時間稼ぎの無駄話に付き合ってくれて感謝するぞ」

「その陰石が何かはわからないが、俺たちがそれまでにお前を倒せないとでも思ってるのか? まぁ、石に魔力を送ってることは知っていたけどな」

 アーク兄の言葉に、ゴブリンアーミー召喚術師は少し驚いたような顔をした。
 しかし、すぐに元の表情に戻り、こちらを挑発するような言葉を投げかけてくる。

「ぐふふふふふ。よもや見えていたとは予想だにしなかったぞ? この石は特別なものでな、発動時に魔力の流れが見えず、防ぐことが困難なのだよ。このようにな『闇より生まれし雷よ! 愚か者どもを焼き尽くせ!!【ダークネスライトニング】』」

 ゴブリンアーミー召喚術師がそう言うと、突然ボクたちの頭上に黒い雷を一本落としてきた。
 呪文の詠唱があり、石が光ったのは確認できた。
 つまり、詠唱から発動までは確認できたのだ。

 何だ、余裕じゃないか? とボクは思い、アーク兄の顔を見る。
 でも、アーク兄は驚いた顔をしていたのだ。
 
「アーク兄? どうしたの?」

「あの石は厄介だな。魔術ってのは簡単に言うと、頭の中でやりたいことを思い浮かべる魔術の構成という作業がある。その後、対象の設定、実際に発動するための魔力の確保を行う。威力や速度に関してはスキルレベル次第で調整が可能になるんだけどな。んで、実際に発動する時、その魔力と求めに応じた威力と速度、指定した対象の座標の決定が行われる。その時、指定した対象の周囲に発動前の座標ロックという動作が挟まれるんだが、あの石から出た攻撃は、座標ロックを無視して直接こっちを狙ってきやがるんだ」

「???」

「つまり、簡単に言うと――」

 ボクは説明を聞いてもさっぱりわからなかった。
 アーク兄は補足してくれようとしているようだが、ゴブリンアーミー召喚術師がそれを許さなかった。

「散開しろ!!」

 アーク兄の突然の大声にびっくりしつつも、急いで横へ飛ぶ。
 アーク兄も今いる場所からやや後方に一気に下がる。
 すると、その場所に黒い雷が一本落ちてきたのだ。

「ちっ、発動するのは分かってるのに、その後の動きが見えない……!!」

 アーク兄は悔しそうにゴブリンアーミー召喚術師を睨みながらそう言った。

「えっと、つまりどういうこと?」

「あぁ。簡単に言うと、普通の魔術みたいに撃ってくる場所が読めない、見えないってことだ。今みたいに密集してるならわかる。でも散開した時、個別に降らされたらまったくわからない」

「ぐふふふふふ。よもやそのようなことまで分かるとはな。一流の魔術師ということか。その通り! わざわざ攻撃予告を出すなど馬鹿げておる。この石はその攻撃予告を一切なくしてくれる優れものなのだよ」

「俺たちの集中力をかき乱すには良い武器じゃないか? 長期戦は厳しそうだな」

「ぐふふふふふ。まったくもってその通りよ。お前らを驚かせることができた上に時間も稼ぐことができる。実に素晴らしいと思わないかね? 単発のダークライトニング程度であれば石の力はそこまで使わぬ。大規模な攻撃に使うと、かなりの力は使うがね。さて、そろそろ終わりにしようではないか」

 ゴブリンアーミー召喚術師は呪文の詠唱に入った。
 同時にその周りには結界のようなものが張られ、近づけないように包み込まれてしまう。

「汚いぞ! 全周囲防御で詠唱魔術を使うなんて反則だぞ!!」

「ぐふふふふふ。石の力による自動防御結界。実にいいものだとおもわないかね? そのおかげで人間共を安全に、そして速やかに排除することができるのだから」

 絶体絶命……。
 魔術が不得意なボクにでも分かるくらいの圧力を、目の前のゴブリンアーミー召喚術師から感じる。
 高威力広範囲の魔術を使用しようとしているのだろう。
 ボクたちに打てる手はないのか!?

「ならば、これでも食らえ! 『見えざるベールを打ち砕け、影の刃よ! 【シャドウブレイカー】』」

 アーク兄の詠唱に応じて生成された黒い短剣は六本。
 その六本の短剣が六芒星を描くようにゴブリンアーミー召喚術師の周囲に突き刺さる。
 直後、大きな音と共に闇色の黒い光が天まで立ち昇る。

「ぐぬぅ。この攻撃、石の力がなければ当に結界など破られていたかもしれぬ。貴様、ただの人間ではないな!?」

「お生憎様。こちとら何の取り柄もないただの人間でござい」

「ぬかしおる。だが詰めが甘かったようだな。貴様の魔術でも、我の結界を破ることは叶わぬ! 死ぬがよい! 『呼び出せしは地獄の炎。来たれ、罪人を焼き尽くす罪過の炎よ! 【ゲヘナ】』」

 アーク兄の放った結界破壊の魔術は目立った効果はなく、多少揺らいだ程度のものだった。
 一瞬怯んだ顔をしていたゴブリンアーミー召喚術師だったが、効かないと分かると獰猛な笑みを浮かべた。
 アーク兄の憎まれ口に対して、ゴブリンアーミー召喚術師が放った魔術は何もかも焼き尽くすとすら思える、黒い炎を纏っていた。

「ちっ、これはやばいな。リーン、いけるか?」

「差し迫ってるのに余裕なのはどうかと思うよ~? でもそうねぇ。無理かな~」

「だよなぁ」

 迫りくるゴブリンアーミー召喚術師の魔術。
 その攻撃は地面を這うように確実に燃え広がっていく。
 ボクたちが余裕そうに話しているのは、その速度が他の攻撃魔術より遅いからに他ならない。

 そう、その攻撃は遅いのだ。
 笑っちゃうくらいにね?

「スピカ、何笑ってるんだ? 怖くておかしくなったのか?」

 アーク兄が不満そうに、しかし心配そうにそう尋ねてくる。
 どうして、そんな顔をしているの?

 みんなが不安そうに見つめる中、ボクは腰の刀に手をかける。
 ボクにしか聞こえない声に従って。

(スピカや、そのゴブリンの魔術は別の者の力じゃ。それも、この世界に潜んだあやつのな。紛れもない異世界の力じゃ。スピカや、妾が教えた技を使い打ち砕くのじゃ)

「【天狐流刀術:斬神】」

 ボクは短くそう言い、妖力を高めて居合いで刀を抜き放つ。
 直後、刀身の先端から刃の形をした青白い光が迸り、迫りくる黒い炎を切り裂いた。

「なっ、なんだと!? バカな!! ゴディアス様より渡された陰石(かげいし)にひびが入るなど!?」

 切り裂かれた黒い炎はそのまま陽炎のように消え去り、ゴブリンアーミー召喚術師を覆っていた結界が甲高い音を立ててガラスのようにひび割れ崩れていく。

「うっ。アーク兄……」

「スピカ!?」

「スピカちゃん!?」

「スピカちゃん」

「スピカにゃん!?」

 一気に力を解放したボクは、急激に妖力不足に陥り、意識を保てなくなる。
 体が闇へと沈んでいく。
 みんなの声が遠くなり、ボクはそのまま意識を失った。

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