アルケニアオンライン~昴のVRMMOゲームライフ。冒険生産なんでも楽しみます。
第2章 第25話 いざ、マタンガ集落へ
翌日、ボクは朝からミナと一緒にゲームにログインすることにした。
最近ゲームに振り回されている気がするなぁ……。
「お姉ちゃん、今日はマタンガ村の件終わったら、着付けするからね?」
今日は八月十四日、夏祭りの前夜際がある。
ほとんど夏祭りと変わらないけど、違いは盆踊りや打ち上げ花火がないくらいだろうか。
「うん、わかった。今からだからお昼くらいにはログアウトかな?」
さっそくボク達はログインすることにした。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
「ところでお姉ちゃん、クエストの報告してないけどいいの?」
「あっ」
昨日中に終わっていたのに、うっかり報告を忘れていた。
しまったなぁ……。
「それじゃ報告してくる。エレクトラ達が来たら東門で!」
ボクはそう言うと、急いで店を飛び出した。
「ご主人様、私はマイア様と一緒にお待ちしております」
「わかったー!!」
ミアの一言に大きな声で返事だけして、急いでギルドへ向かう。
僕が走ってるのが珍しいのか、途中に何度か声を掛けられたものの、なんとかギルドまで到着。
さすがに息が続かないよ……。
「はぁはぁ……」
うぅ、だめだ。
急ぎ過ぎて吐きそう……。
「あれ? スピカちゃん?」
息も絶え絶えで座り込んでしまったボクは、不意に声を掛けられた。
「んえ? あー、アニスさんか」
「大丈夫? その武蔵国風衣装は座り込んでも見えないけど、女の子がそんなふうに座り込んでたら危ないよ?」
ギルドの扉横で胡坐をかいて座り込んでいるボク。
いつも通りの狩衣に指貫を穿いた姿なので、丸見えになることはない。
ただちょっと、腰が空いているのが気になるくらいか。
「で、どうしたの?」
ボクを立たせたアニスさんは、覗きこみながらそう尋ねてくる。
「ちょっと用事があって急いでたんですけど、クエストの報告忘れていました」
「そうなんだ? 急ぎでもないんだし無理しなくても。とりあえずチェックしちゃうね」
きょとんとした顔でそう話すアニスさん。
ボクの手を引いてギルドの扉をくぐっていく。
カランカラン
乾いたベルの音が鳴り響くと、近くにいた冒険者が扉の方に顔を向ける。
ある意味いつも通りの光景だ。
「おぉ? アニスちゃんが同伴出勤とはなぁ。しかもお目当てのスピカちゃんか」
「おぉ? ついに食っちまったか? アニス、実は猫じゃなくて虎なんじゃねえのか?」
「アニスさん最低。可愛いスピカちゃんをそんなふうにするなんて!」
「ちょ、ちょっとまってよ!? あたし何もしてないよ!?」
何故か一斉に罵声を浴びせられるアニスさん。
人気受付嬢ってなんだっけ?
「アニスちゃんも可愛いけど、やっぱ飛び抜けた可愛さって訳じゃないからな。愛嬌はあるんだけどなぁ」
「そうそう、アニスはマスコットとしてはいいんだけどなぁ。結構肉食的だからギャップに引く人もいるかもしれないな」
「でも、明るく可愛く愛嬌もある。それでいて優しい受付嬢ってなると、やっぱり憧れるわよね。初心な冒険者さんが勝手に引っかかっていくくらいには」
「アニスはあれだもんな? 貴族のお誘いも断った豪傑だからな。今頃籍入れてれば貴族の奥様だったのになぁ」
「アニスだったら子供たくさん産みそうだし、跡目争いが大変になりそうだけどな!」
「ちょっと、それセクハラよ? まったく、どうしてこうもモラルがないのかしら」
ボク達をよそに、アニスさんの話題で盛り上がるギルドにいる人達。
本人置いてけぼりになっているのも気にせず、どんどん暴露話が進んでいく。
「ちょちょちょっと! ストップ、ストーップ! あたしの恥ずかしい過去とかこれ以上掘り返さないで!」
顔を真っ赤にしながら両手をぶんぶん振り回して抗議するアニスさん。
その姿は大人というより、少女っぽくも見えて可愛らしかった。
「まぁ、そういうこともありますよ。ほら、人気者じゃなければこんな風に言われませんし」
未だ顔を真っ赤にしているアニスさんをなだめるようにボクはそう言う。
「うぅ~……」
言いたいことはあるだろうけど、今は話のネタにしかならなそうなので我慢してもらうことにしよう。
「はは、これじゃスピカちゃんの方がお姉さんって感じだな。マイアちゃんといいスピカちゃんといい、二人ともとびっきりの美人さんだからなぁ。将来が楽しみだ」
「そう言えば、ハイオークの村長の息子がゾッコンなんだって? 掟で禁止されてるから泣く泣く諦めたみたいだけどさ」
「まじかっ! やるねぇ! どう見ても高嶺の花だろ?」
「まぁスピカちゃん達のパーティーは女の子多いしな。入りたいやつ多いだろうけど、アークトゥルスさんがいるからみんな諦めるんだよなぁ」
なんだかボクの方に矛先が向き始めた。
さっさと報告して集落に行こう。
「アニスさん、報告だけ終えたいんですけど、いいですか?」
ボクが未だ顔を真っ赤にしているアニスさんにそう囁くと、ゆっくり顔を上げてアニスさんが言った。
「了解だよ。さくっとやっちゃうね」
アニスさんはボクからギルドカードを受け取ると、すぐに作業を開始した。
「にしても、スピカちゃん達をマタンガの森で見たんだけど、余裕そうに奥へ奥へと進んでいくんで信じられない思いだったよ」
ふと、マタンガの森での出来事が話に出た。
「あぁ、あいつらか。敵意があるわけじゃないから降参すると襲ってこないんだよな。倒しても恨みというか、そういうのがないみたいだし、変な奴らだよな」
「でも実力を上げるにはマタンガってのは本当みたいだぜ? Bランク以上になってる冒険者はしばらくあそこに通い詰めてたみたいだしさ」
「D程度じゃ歯が立たないけど、Cからならなんとかなるか。異世界人は補正ってのがあるらしいからDくらいから行けるみたいだな。羨ましい」
メルヴェイユ付近のマタンガは、討伐ランク的にはC以上のようだ。
ボク達は地道にクエストを達成しているので、今はEランクになっている。
もうすぐDランクに上がるので、受注できるクエストの幅が広がるけど、マタンガの討伐依頼なんてEランクのボク達がよく受けることで来たよねぇ。
「はい、お待たせ~。どうしたの? 変な顔して」
ギルドカードを持ってきたアニスさんが、ボクの顔を見てそんなことを尋ねてきた。
「マタンガ討伐クエストって、Cランク以上からのクエストなんですか?」
「? うん、一応はね。スピカちゃん達は優遇されている方だから実力的に問題ないということで、Eでも受けられるようにはなってるけど、優遇措置が嫌だったり?」
ボクは知らなかったが、どうやら何かが原因で優遇されているらしい。
でも、直近で何かしたっけ?
「優遇ですか? されるようなことしましたっけ?」
ボクがそう言うと、アニスさんがある件について口にした。
「ハイオーク問題の解決と、鉄鋼流通量増加に対する貢献のおかげね。戦力がかなり上がってるし、王宮でも叙勲すべきか否か議論に上がってるそうよ?」
まさか、たまたま出会ったケイアン君の事件が、ここまで大事に発展するとは思ってもいなかった。
確かに、鉄製品も多少安くなり、冒険者の質も上がったらしいけど……。
「おう、憧れの鉄装備が手に入って俺っちもご機嫌よ! ありがとなぁ~。前のままだと高くて手が出せなかったんだ」
「そうそう、おかげで死傷者も減ってるし、行動範囲も伸びたんだぜ? 大手柄だよ」
ここ最近、街の景気がとても良くなっているとマーサさんから聞かされていたことを思い出した。
行動範囲が広がったため、今まで手に入らなかった素材が手に入り、街が潤っているらしいのだ。
「そっかぁ。みんなと一緒に解決したことだけど、冒険者さん達にも影響が出ているようで良かったよ」
それからボクは、少しばかりみんなに頭を撫でられる羽目になった。
手加減はしてくれたけど、一気に来られるとさすがに少し痛い……。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
ギルドで少し時間を取られたボクは、早歩きで東門へと向かう。
みんなに撫でられたため、髪の毛は少しぐちゃぐちゃになっているけど、整えている時間はない。
「おー、おかえり~! まってたよ~!!」
東門へ着くと、エレクトラがすでに待っていた。
「髪の毛ぐちゃぐちゃね?」
ケラエノがそう言いながら櫛を持って近づいてくる。
「お姉ちゃん、もうギルドのマスコットでいいんじゃない?」
まるで見ていたかのようにマイアがそう言う。
「はぁ。もう撫でられ疲れたよ……」
ボクは少しばかりうんざり気味だった。
「ご主人様が褒められるのは嬉しい限りです。街の景気が良くなった要因の一つはご主人様なのですから」
ミアは慈愛に満ちた表情でボクにそう言うと、不定形のスライム状に姿を変えた。
「さて、ミアを抱えたら出発だ」
スライム状のミアを胸元に抱きかかえて、ボク達はマタンガの集落へと出発した。
最近ゲームに振り回されている気がするなぁ……。
「お姉ちゃん、今日はマタンガ村の件終わったら、着付けするからね?」
今日は八月十四日、夏祭りの前夜際がある。
ほとんど夏祭りと変わらないけど、違いは盆踊りや打ち上げ花火がないくらいだろうか。
「うん、わかった。今からだからお昼くらいにはログアウトかな?」
さっそくボク達はログインすることにした。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
「ところでお姉ちゃん、クエストの報告してないけどいいの?」
「あっ」
昨日中に終わっていたのに、うっかり報告を忘れていた。
しまったなぁ……。
「それじゃ報告してくる。エレクトラ達が来たら東門で!」
ボクはそう言うと、急いで店を飛び出した。
「ご主人様、私はマイア様と一緒にお待ちしております」
「わかったー!!」
ミアの一言に大きな声で返事だけして、急いでギルドへ向かう。
僕が走ってるのが珍しいのか、途中に何度か声を掛けられたものの、なんとかギルドまで到着。
さすがに息が続かないよ……。
「はぁはぁ……」
うぅ、だめだ。
急ぎ過ぎて吐きそう……。
「あれ? スピカちゃん?」
息も絶え絶えで座り込んでしまったボクは、不意に声を掛けられた。
「んえ? あー、アニスさんか」
「大丈夫? その武蔵国風衣装は座り込んでも見えないけど、女の子がそんなふうに座り込んでたら危ないよ?」
ギルドの扉横で胡坐をかいて座り込んでいるボク。
いつも通りの狩衣に指貫を穿いた姿なので、丸見えになることはない。
ただちょっと、腰が空いているのが気になるくらいか。
「で、どうしたの?」
ボクを立たせたアニスさんは、覗きこみながらそう尋ねてくる。
「ちょっと用事があって急いでたんですけど、クエストの報告忘れていました」
「そうなんだ? 急ぎでもないんだし無理しなくても。とりあえずチェックしちゃうね」
きょとんとした顔でそう話すアニスさん。
ボクの手を引いてギルドの扉をくぐっていく。
カランカラン
乾いたベルの音が鳴り響くと、近くにいた冒険者が扉の方に顔を向ける。
ある意味いつも通りの光景だ。
「おぉ? アニスちゃんが同伴出勤とはなぁ。しかもお目当てのスピカちゃんか」
「おぉ? ついに食っちまったか? アニス、実は猫じゃなくて虎なんじゃねえのか?」
「アニスさん最低。可愛いスピカちゃんをそんなふうにするなんて!」
「ちょ、ちょっとまってよ!? あたし何もしてないよ!?」
何故か一斉に罵声を浴びせられるアニスさん。
人気受付嬢ってなんだっけ?
「アニスちゃんも可愛いけど、やっぱ飛び抜けた可愛さって訳じゃないからな。愛嬌はあるんだけどなぁ」
「そうそう、アニスはマスコットとしてはいいんだけどなぁ。結構肉食的だからギャップに引く人もいるかもしれないな」
「でも、明るく可愛く愛嬌もある。それでいて優しい受付嬢ってなると、やっぱり憧れるわよね。初心な冒険者さんが勝手に引っかかっていくくらいには」
「アニスはあれだもんな? 貴族のお誘いも断った豪傑だからな。今頃籍入れてれば貴族の奥様だったのになぁ」
「アニスだったら子供たくさん産みそうだし、跡目争いが大変になりそうだけどな!」
「ちょっと、それセクハラよ? まったく、どうしてこうもモラルがないのかしら」
ボク達をよそに、アニスさんの話題で盛り上がるギルドにいる人達。
本人置いてけぼりになっているのも気にせず、どんどん暴露話が進んでいく。
「ちょちょちょっと! ストップ、ストーップ! あたしの恥ずかしい過去とかこれ以上掘り返さないで!」
顔を真っ赤にしながら両手をぶんぶん振り回して抗議するアニスさん。
その姿は大人というより、少女っぽくも見えて可愛らしかった。
「まぁ、そういうこともありますよ。ほら、人気者じゃなければこんな風に言われませんし」
未だ顔を真っ赤にしているアニスさんをなだめるようにボクはそう言う。
「うぅ~……」
言いたいことはあるだろうけど、今は話のネタにしかならなそうなので我慢してもらうことにしよう。
「はは、これじゃスピカちゃんの方がお姉さんって感じだな。マイアちゃんといいスピカちゃんといい、二人ともとびっきりの美人さんだからなぁ。将来が楽しみだ」
「そう言えば、ハイオークの村長の息子がゾッコンなんだって? 掟で禁止されてるから泣く泣く諦めたみたいだけどさ」
「まじかっ! やるねぇ! どう見ても高嶺の花だろ?」
「まぁスピカちゃん達のパーティーは女の子多いしな。入りたいやつ多いだろうけど、アークトゥルスさんがいるからみんな諦めるんだよなぁ」
なんだかボクの方に矛先が向き始めた。
さっさと報告して集落に行こう。
「アニスさん、報告だけ終えたいんですけど、いいですか?」
ボクが未だ顔を真っ赤にしているアニスさんにそう囁くと、ゆっくり顔を上げてアニスさんが言った。
「了解だよ。さくっとやっちゃうね」
アニスさんはボクからギルドカードを受け取ると、すぐに作業を開始した。
「にしても、スピカちゃん達をマタンガの森で見たんだけど、余裕そうに奥へ奥へと進んでいくんで信じられない思いだったよ」
ふと、マタンガの森での出来事が話に出た。
「あぁ、あいつらか。敵意があるわけじゃないから降参すると襲ってこないんだよな。倒しても恨みというか、そういうのがないみたいだし、変な奴らだよな」
「でも実力を上げるにはマタンガってのは本当みたいだぜ? Bランク以上になってる冒険者はしばらくあそこに通い詰めてたみたいだしさ」
「D程度じゃ歯が立たないけど、Cからならなんとかなるか。異世界人は補正ってのがあるらしいからDくらいから行けるみたいだな。羨ましい」
メルヴェイユ付近のマタンガは、討伐ランク的にはC以上のようだ。
ボク達は地道にクエストを達成しているので、今はEランクになっている。
もうすぐDランクに上がるので、受注できるクエストの幅が広がるけど、マタンガの討伐依頼なんてEランクのボク達がよく受けることで来たよねぇ。
「はい、お待たせ~。どうしたの? 変な顔して」
ギルドカードを持ってきたアニスさんが、ボクの顔を見てそんなことを尋ねてきた。
「マタンガ討伐クエストって、Cランク以上からのクエストなんですか?」
「? うん、一応はね。スピカちゃん達は優遇されている方だから実力的に問題ないということで、Eでも受けられるようにはなってるけど、優遇措置が嫌だったり?」
ボクは知らなかったが、どうやら何かが原因で優遇されているらしい。
でも、直近で何かしたっけ?
「優遇ですか? されるようなことしましたっけ?」
ボクがそう言うと、アニスさんがある件について口にした。
「ハイオーク問題の解決と、鉄鋼流通量増加に対する貢献のおかげね。戦力がかなり上がってるし、王宮でも叙勲すべきか否か議論に上がってるそうよ?」
まさか、たまたま出会ったケイアン君の事件が、ここまで大事に発展するとは思ってもいなかった。
確かに、鉄製品も多少安くなり、冒険者の質も上がったらしいけど……。
「おう、憧れの鉄装備が手に入って俺っちもご機嫌よ! ありがとなぁ~。前のままだと高くて手が出せなかったんだ」
「そうそう、おかげで死傷者も減ってるし、行動範囲も伸びたんだぜ? 大手柄だよ」
ここ最近、街の景気がとても良くなっているとマーサさんから聞かされていたことを思い出した。
行動範囲が広がったため、今まで手に入らなかった素材が手に入り、街が潤っているらしいのだ。
「そっかぁ。みんなと一緒に解決したことだけど、冒険者さん達にも影響が出ているようで良かったよ」
それからボクは、少しばかりみんなに頭を撫でられる羽目になった。
手加減はしてくれたけど、一気に来られるとさすがに少し痛い……。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
ギルドで少し時間を取られたボクは、早歩きで東門へと向かう。
みんなに撫でられたため、髪の毛は少しぐちゃぐちゃになっているけど、整えている時間はない。
「おー、おかえり~! まってたよ~!!」
東門へ着くと、エレクトラがすでに待っていた。
「髪の毛ぐちゃぐちゃね?」
ケラエノがそう言いながら櫛を持って近づいてくる。
「お姉ちゃん、もうギルドのマスコットでいいんじゃない?」
まるで見ていたかのようにマイアがそう言う。
「はぁ。もう撫でられ疲れたよ……」
ボクは少しばかりうんざり気味だった。
「ご主人様が褒められるのは嬉しい限りです。街の景気が良くなった要因の一つはご主人様なのですから」
ミアは慈愛に満ちた表情でボクにそう言うと、不定形のスライム状に姿を変えた。
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