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じゃくまる

第2章 第24話 マタンガの集落からメルヴェイユの街まで駆け抜ける

 来た道を急いで戻る、道中マタンガ達はこちらを襲うことなく、むしろ手振るように腕を動かしていた。
 マタンガ達は基本的にフレンドリーなようだ。
 これはマスコット化できるんじゃないかな?
 例えば……『キノコン』や『マタンガン』とかそんな感じで。

「お姉ちゃん、念のために街前では人化してね? 獣人族がいるとはいっても、好奇心旺盛な人は多いから。それに狐獣人ってここ辺りにはいないらしいからね」
 マイアとケラエノの身体強化術による補助を受けているボク達は、通常より速い速度で森を駆け抜けることが出来た。
 それに、身体強化術により心肺を強化されているので疲労感と息切れがまったくない。
 身体強化術の万能さが少し羨ましくなる。

「いいな~、身体強化術。なんで術系のボクにはないのさ!」
 走りながらボクはマイア達にそう言う。

「でも、陰陽師になると万能になるでしょ? 場合によっては死者すら蘇らせるとか]
 一応スキルについては説明があるので、他職でも調べることで効果を知ることは出来る。
 ただし、どう使うかでまったく違う状況が発生するため、特に道士系のスキルは他職には理解しづらいのだ。
 その中でも理論上存在する技術がある。
 それが、『泰山府君の祭』である。
 ただし、実際に使った人がいない為、現実での伝説を信じるならば死者すらも蘇らせる。
 良くて重病者や命の危機を救う程度の物になるだろう。

「伝説は伝説だよ? 鵜呑み禁止。実際に見たことあるなら別だけどさ」
 スキル単体を見て弱いと感じられていたものが、組み合わせ次第で化けることは、昨今多いはずだ。
 もちろんその逆もあるだろうから、性能をそのまま信じるのは愚かかもしれない。
 それは例え、システムが決まっているMMORPGにおいてもありうることだ。

「そうだね。実際見てから感想言うよ。お姉ちゃん」
 ボクの隣を走るマイアは笑顔でそう言う。
 期待通りの物を見せてあげられるかはわからないけど、そんな可愛い妹のためにもちょっと頑張ってみようかな。

「そろそろ街だから注意して!」
 前を走るエレクトラが後方のボク達に注意を促す。
 エレクトラとケラエノは足が速い。
 エレクトラに関しては想定内だけど、ケラエノもとは思わなかった。

「スピカ。今まで隠していたけど、実は運動得意なの」
 ケラエノを見ていたボクに、ケラエノはそう言った。

「!?」
「あっ、やっぱり運動できないはずって考えてたのね? こっちをじっと見ながら難しい顔してたからわかったわ」
 どうやらボクの考えていることは顔に出るようだ。
 すっかりケラエノに考えを読まれてしまっている。

「しょんぼりしないでよ。もう着くわよ?」
 軽く落ち込んでいたボクにそう声を掛けると、東門前の門番が声を掛けてきた。

「冒険者か。依頼を受けているならギルドカードを見せてくれ。受けていない場合は登録地点がメルヴェイユではない場合、入街料を貰うことになっている」
 見たことのない顔の門番がそう声を掛けてきた。
 東門にいるから東門の門番だろうけど……。

「おい新人。その子等はこの街所属だ。おかえりなさい、ギルドカードを提示していただければ問題なく通れますよ」
 門の反対側からやってきた別の門番が、今まで応対してくれていた門番に注意を促しつつそう言った。

「はい、これです」
 基本的に冒険者か行商人くらいしか街の外へ出る人はいないので、出入りが多く発生することはない。
 この前のように、商隊がある場合などは別だが、基本的にそういう人達は南門を利用する決まりになっている。
 なので、東や西の門はスムーズに出入りできるのだ。
 なので、どんどん顔見知りになっていく。

「確認しました。結構な数倒されているようで、さすがですね」
 各門では同じように確認を行うが、冒険者の場合何を何体狩ったかが調べられる。
 たまに禁猟区の動物などを狩る人がいるようで、保護の為なのだとか。

「それでは、お気をつけて。またマタンガ狩りに行かれる際はご一報ください」
 東門の門番と別れ、街の中に入る。
 すぐさま向かうは拠点であるマーサ魔道具店へと向かう。


☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


「お帰りなさいませ、ご主人様。どうなさいましたか?」
 店に入ると、すぐにミアが出迎えてくれた。

「ミア、あのね」
「落ち着いてください、ご主人様。ムーンリーフのハーブティーをどうぞ」
 息を切らせたボクを心配したのか、ミアがアニスさんが出してくれたものと同じハーブティーを出してくれた。

「あれ? これは?」
「冒険者ギルドを通りかかった際に、アニス様が教えてくれたものです。ご主人様が気に入ってるようだからと」
 ミアは嬉しそうにそう言うと、マイア達にも同じものを用意した。

「あっ、おいしい。落ち着く」
「ほんのり安らぐ効果を感じるわ」
「寝る前には最適かもしれませんね」
 安らぎを与えるムーンリーフはポーションにしてもお茶にしても好まれるようだった。

「ありがとう、ミア」
 ボクはすぐにお礼を言う。

「いえ、ご主人様の笑顔が見られたので十分です。それで、慌てていらっしゃったようですが、もしかして集落に辿りつきましたか?」
 笑顔のミアは、落ち着いたころ合いを見計らってそのように尋ねてきた。

「あれ? なんでわかるの?」
 どうしてこうもみんなボクの考えを読むんだ……。

「いえ、朝頃にお話ししていたのでそのことかと」
 ミアは察しが良い。
 察しが良いスライムってなんだろうか……?

「まぁそうなんだよね。それでミアを連れてきてほしいって頼まれたんだ」
 ボクがそう言うと、ミアは頷く。

「かしこまりました。私で良ければ向かいましょう。そろそろ夜に差し掛かるので、後日朝から向かえば十分でしょう」
 ミアはそれだけ言うと、お茶のお代わりとお菓子を用意してくれた。

「こちらはアーク様がお作りになられたプリンです。それとクッキーがそれなりの量ありますね。私が店番している時にアーク様がいらっしゃって、ずっと料理を作り続けていたのです」
 アーク兄は何をやってるんだろうか。
 バスケット一杯のクッキーに、10個ほどのプリンがそこにはあった。

「そういえば、フィルさんは?」
 いつもなら顔を出すはずのフィルさんがここに来ない。
 珍しいことがあるものだ。

「ええっと……。フィル様は……」
 初めてミアが言い難そうにしているところを見た。
 一体何があったんだろう?
 悪いことじゃなければいいけど……。

「問題があったなら教えて! フィルさんああ見えて思ったより非力だから危ないんだよ」
 基本的に魔術もあるので簡単には負けることはないフィルさん。
 というか、負けたところを見たことがない。
 ただ、力は弱いので組み付かれると、抑え込まれやすい。

「あっ、いえ」
 ミアが制止しようとする。

「とりあえず、ボクの部屋から何か使える道具を……」
 術はあっても案外非力なので、道具が必要になる。
 さて、良い道具はあったっけなぁ……。

 そう思い、ボクは自室の扉を開ける。
 すると――。

「…………」
 開けた扉を無言でボクは閉めた。
 うん、見なかったことにしよう。

「お、おかえりなさいませ」
 ミアが申し訳なさそうにしている。

「おかえり~、どうだったの?」
 エレクトラがクッキーを頬張りながらそう尋ねてきた。

「あぁ、うん。問題はなかったよ。解決した。別件が解決してないけど」
「?」
 ボクの機械的な返事に、エレクトラは疑問符を浮かべている。

「お姉ちゃん」
 マイアがボクに声を掛けてきた。
 そのマイアの顔を見ると、そこにはどんまいと書かれている気がした。

「で、どうしたの?」
 プリンを上品に食べるケラエノが、最後に質問してきた。

「フィルさんは、無事だったよ。ボクの布団に顔を埋めて幸せそうに寝てたけど」
 そう、フィルさんは可憐な見た目に似合わない、はしたない恰好でボクの枕を抱き枕にして幸せそうに頬ずりしながら寝ていたのだ。
 なお、スカートの中身は丸見えになっていた。

「あはは……」
 ボクの乾いた笑いに、ケラエノが同情の表情を浮かべていた。
 

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