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じゃくまる

第2章 第6話 屋台の終わり、プレイヤー達とNPC達の関係


 メルヴェイユフェスティバルに出店する日は一日だけにしている。
 なぜなら、三日間開催されるフェスティバルのうち、二日以上を費やすと、ほとんど紹介できる場所がなくなってしまうからだ。
 なので、初日に必要なところへ回った後は、二日目に屋台の出店するようにしている。
 実のところ、三日目がメインだという事情もあるんだけどね。

「注文、スピカ」
 本日最後のディナータイム営業。
 色々と仕事を終えて来たちびっ子エルフこと、フィルさんだ。
 まぁ、年齢はボクよりは上なので、子供扱いは出来ない。でも見た目だけ小さいんだけどね。
 見た目だけならある意味ロリともいえる。

「ボクは料理じゃないよ? ちゃんとしたものを食べないと大きくなれないよ?」
 来店早々、フィルさんはボクを注文する。
 フィルさんの頭の中はどうなっているんだろう?
 あっ、嫌な意味じゃないよ。

「包んでお持ち帰りで。早く」
 ふくれっ面をしながら、ボクにそう催促するフィルさん。

「さすがに自分で自分は包めないよ」
「後で包んであげるから、とりあえずご飯食べて行ってくれ。フィルさん」
 ボクが困ったようにフィルさんにそう伝えていると、アーク兄が助け船? を出してくれた。
 ただし、根本的な解決には至っていない。

「理解した。あとで楽しみにしてる。オススメ教えてほしい」
 すぐにむくれたり無表情になるフィルさんだが、アーク兄の保護者スキルの前には素直に従うようだ。

「アークの許可を得るということは、大義名分を得るということ。拒否する理由にならない」
 小さな胸を張り、フィルさんが勝ち誇ったようにそう言い放つ。
 なんだか見ていて微笑ましくなるなぁ。

「フィルさんは何が好きで何が嫌い?」
 フィルさんの好みをしっかり聞いたことはないので、今回初めて聞くことになる。
 というか、アーク兄がボクに作らせようとしている気がするのだ。

「野菜や魚は好き。肉類はそれなり。苦いものは苦手。それ以外は問わない。あと、スピカの手料理希望」
 基本的には苦いものを避けるのがベストなようだ。
 肉類については要望がない場合は少量の使用にとどめるとしよう。

「ピーマンはどう?」
 この世界のピーマンはこっちのピーマンとほとんど変わらない。
 ただ、種がやたら辛いくらいだろうか。

「少量の苦みなら大丈夫。種は却下」
 まぁあの激辛な種はきついよね。
 となると……。

「じゃあ、ライスと青椒肉絲にしようかな? 最近練習してるんだけどね」
 自信を持って勧める料理ではなく、練習中の料理を出そうという、お店にあるまじき行為。
 他のお店では絶対やらない行為だ。

「むふぅ。スピカの手料理なら練習中でも問題ない。むしろ練習中どんと来い。ウェルカム」
 フィルさんはよくわからない人だ。
 なぜだかボクをやたらと気に入っていて、何かと便宜を図ろうとする。
 
「おぉ? スピカちゃんの手料理だって!?」
 他の席からそんな声が聞こえてきた。

「おぉ、俺もくれ! 死んでもいいから!」
「胃薬あるから問題ない、俺にも!」
「おいおい落ち着け。いいか? 同じものを注文してやれよな、その方が負担が少ないんだ?」
 あっちこっちからそんな声が上がる中、誰かから注文を1つにするようにとの提案が出てくる。

「おぉ、そうだな。最初はフィルちゃんでいいから、終わり次第頼むぜ!」
「そうだな。見ろ、フィルちゃんのあの不機嫌そうな顔。最初に食べさせてあげないと恐ろしい目に遭うぞ」
「あぁ、俺はもうあの恐ろしい目に遭いたくない……」
「最近性転換薬を開発したって話だぞ? ターゲット決まってるのか!?」
「王都の研究所の招致をすべて断った豪傑だからなぁ……」
 フィルさんは知らないところで何か危ないことをしているようだ。
 みんなはフィルさんをかなり恐れているようだ。

「じゃあみんな同じやつで、フィルさんが最初ね? それとフィルさん。あんまりみんなに人体実験したらダメだよ?」
「ん、気を付ける」
 フィルさんは素直に頷く。
 その様子を見たみんなは、安堵の息を吐いていた。

「まぁ、フィルちゃんの実験は色々と怪しいものは多いけど、結果的に健康にはなるところが恐ろしいんだよな」
「そうだなぁ。恨む理由もないし、そんなひどいことになるわけじゃないからな」
「ただまぁ……。それまでの過程がものすっごく恐ろしいんだよな。性転換薬の被験者は誰になるのかも気になるところだし」
 みんなが口々にそんな話をしているのを聞きながら、ボクは厨房へと歩いていった。
 早速作らないとね。


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 端末から料理の情報を引き出しつつ、手順を確認。
 下拵えやらなんやらを頑張り、なんとか完成させる。
 中華用スープの素とかそういうの、何でここにあるんだろう?

「ねぇ、アーク兄。出来たんだけどさ、聞いていい? 何でこの近辺にない調味料があるのさ?」
 このゲームが色々なことを出来るのは知っている。
 それでも一番不思議なのは、何で調味料が新しく作れるのかということだ。
 
「逆に聞くけど、何でできないと思った?」
 質問を質問で返されたのは何も言わないけど、何で出来ないと思ったのかという問いには一瞬答えられなかった。

「え? だってこれはゲームで……」
 ボクの答えに、アーク兄はそっと首を横に振る。

「たしかにゲームだ。しかしこの世界自体は生きている。実際に作物も育つし時の流れもある。進化もしてるんだ。知識と代用できる素材があれば研究が好きな奴らが勝手に作り上げるさ。実際これらも研究好きなプレイヤー達が試行錯誤して作ってるんだ。すごいだろ?」
「それはもう異世界っていうんじゃ……」
 たしかにすごいけど、それではゲームという括りの中でだけ発展していく異世界なのでは?
 ボクはそう思ってしまった。

「そうかもなぁ。でも、俺達はここには生身で来れない。間接的に関わるためにはゲームというシステムを通してだけだ。まっ、実際俺はここが現実だろうと俺達自身がプログラムだろうと関係ないと思ってる。だから、ある意味異世界というのは正しくて、ある意味では間違ってるんだと思う。それに、ここで作る料理は思ったよりも味が変わらないんだ。同じ作り方してるからな」
 アーク兄にとってはここがどうであれ関係ないようだった。
 
「ふぅん。そっか。まぁそうだよね。出来る以上は切り分けて考える意味はないよね」
 ボクはそう言うと、出来上がった料理をフィルさんの元へと運び始める。

「まっ、とはいえども、出来ないこともまた多いんだけどな」
 アーク兄はそっと呟いた。

「?」
「なんでもない、行ってこい」
 厨房出入り口でボクが首を傾げていると、アーク兄はボクに行くように促した。


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「おいしい。そして不思議な味」
 フィルさんはおいしそうにモリモリ食べている。

「おぉ、なんかめちゃくちゃおいしそうだな」
「俺達にも早くくれ~!」
「はい、ただいま」
「マイア、どんどん運んで来て」
「了解、お姉ちゃん」
 他のお客も催促してきたので、こちらもマイアと手分けして運ぶことにした。

「はい、おまたせです」
「おぉ、ありがてぇ」

「はい、こちらもどうぞ」
「ありがとう、マイアちゃん」

「スピカちゃんの手料理うめぇ!」
「まだ習いたてですけどね」
 てきぱきと配膳し、料金を受け取る。
 質問や追加注文を受けると、答えたり厨房に伝えに行く。

 気が付けばディナータイムもあっという間に終了に向かって行った。

「満足。かなり食べた」
「フィルさん、その小さい身体のどこにそんなに……」
 フィルさんのお腹はポッコリと膨れていた。
 すごい量を食べていたけど大丈夫なのだろうか。

「大丈夫、成長期。エルフの成長は遅い」
 小さな胸を張りながらそう答えるフィルさん。
 どうやらエルフの中では本当に幼い方のようだ。

「さて、帰りはスピカをお持ち帰りする」
 未だに忘れていなかったフィルさんは、再びそのことを口に出した。

「帰る場所はみんないっしょだから、お持ち帰りもないんだけどね」
 ボクは困った風にフィルさんにそう言うと――。

「知ってる。でも、気分」
 そう簡単にフィルさんは言った。
 その時、少しフィルさんが微笑んだような気がした。
 ほとんど変わらない表情ではあるけど。

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