アルケニアオンライン~昴のVRMMOゲームライフ。冒険生産なんでも楽しみます。
第39話 ハイオークと裏切者
緊急クエストの発生が告知されると、段々と周りが騒がしくなっていった。
色んな種族に進化したり、そのままだったりするプレイヤー達の皆さんが集まって来たのだ。
「本当にこんなところでイベントが起きてるのか?」
重戦士風な男性がそう言うも、この場にいるのはプレイヤー達とボク、そしてボクの後ろに隠れているハイオークの少年だけだ。
「そこの美しいお嬢さん、君の後ろにいるのがハイオークかい?」
騎士風の男性がそう尋ねてくる。
「はい、その様に自己紹介されました」
ボクがそう言うと、ケイアンはボクのお尻の辺りの布をぎゅっと握ってますます隠れてしまう。
ボクはその様子を見ながら、軽く頭を撫でて落ち着かせる。
「大丈夫、みんなが助けてくれるよ」
ボクがそう言うと落ち着いてきたのか、少し前に出てみんなに伝えた。
「あのっ! ハイオークの村が裏切者のハイオークジェネラルの手下に襲われているんです! 彼らは今、『絆の要塞』を占領しています。おそらく、要塞に配備する兵士を求めているんだと思います!」
「「「!!」」」
ケイアンの言葉に、一同驚きを隠せない様子だ。
それもそのはず、『絆の要塞』とはクランシステムの解放条件になっている必須の要塞のことだ。
今まで場所すらも知らされることなく、探しても見つからなかったのだから。
「それで、そのハイオークの村を助けることで得られるメリットとはなんだ?」
重戦士風の男性が、ゆっくりだがケイアンにそう問いかける。
メリットもないのにただ助けるわけにはいかないのだろう。
「メリット……。絆の要塞の位置と、占領戦の時の援軍の約束が出来るはずです。掛け合うのは任せてください。ただ、村が完全に占領されたらそれも出来なくなってしまいます」
ケイアンの言うことは正しいんだと思う。
それでも、万が一それが虚偽だった場合のことも考えなければいけない。
重戦士風の男性はそう考えているのかもしれない。
「俺達は参加するぜ! 万が一偽りだったとしても、切り抜けられるだろ?」
「俺達もだ! ハイオーク? 絆の要塞? 上等だ!!」
「私達もやるわ!」
「私も!」
「俺も!」
次々と声が上がる。
代表が決まっていれば、みんな意見を述べるのに遠慮はないようだ。
誰も自分が率先して代表になりたいだなんて思わないからね。
そういう意味じゃ、この重戦士風の男性は一味違うのかもしれない。
一見30代くらいに見えるこの黒髪の男性なら……。
「お嬢ちゃんが、スピカか? 俺はアモスという。職業は重戦士。硬いだけが取り柄のただのさえない戦士だ」
差し出された手を握り返し、ボクも自己紹介をする。
「ボクはスピカ。えっと、道士です。一応進化はしていますけど、あまり期待しないで頂けると……」
ボクがそう言うと、アモスさんは穏やかに微笑んだ。
「そうか、君が――」
「お~い、スピカ~!」
「あれ? アーク兄?」
群衆の中に聞き覚えのある声があったので、思わずそう言ってしまった。
「おぉ、確かにスピカだ。やったじゃないか、隠しクエストってやつだぞ? これ」
アーク兄はそう言うと、ボクの頭をぐりぐりと撫でる。
ちょっと乱暴で首が痛いけど……。
「痛いよ、アーク兄」
ボクが抗議すると、慌てて手を離した。
「うわっ、ごめん。ってアモス?」
ボクの方に謝りつつ、アモスさんの方を見て驚くアーク兄。
「おう、アークトゥルスか。やっぱりな。いつも自慢していたからもしやとは思ったが……」
「おう、かわいいだろう? うちの妹は」
「まぁ……な」
アモスさんはそっぽを向くも、小さな声でそう言ったのが聞こえる。
ボクの耳は案外高性能なのだ。
身体能力はあれだけども……。
「アークトゥルスにアモスか。ベータ時代最強格の2柱だぞ!?」
プレイヤーの一人が驚きの声を上げる。
「戦場の魔術師アークトゥルス。不利な戦況をひっくり返すほどの機動力、斬新な作戦を打ち立てる行動力と発想力。そしてその魔術センス……。大賢者と言われたのも頷けるな」
アーク兄をそう呼ぶプレイヤーもいるようだ。
ちなみに、ボクはアーク兄のベータ時代を知らないので、まったくわからないことだった。
「アモス、戦場の動く要塞か。前線に立たせたら城門以上に抜けないという恐ろしい防御力を誇った男だ。その一撃も強く、野生のレイドボスなんて言われてたくらいだからな。敵対はしたくないな」
アモスさんも陰で色々と言われていたようだ。
野生のレイドボスにはちょっと笑ってしまうけど。
「あの二人って犬猿の仲だと思ってたんだけど、間違ってたんだな」
「あぁ、あのアモスを抜いた男は3人いるが、その中の一人がアークトゥルスだ」
どうやら思っていた以上に、アーク兄ははっちゃけていたようだ。
「アーク兄?」
ボクが半眼でそう言うと、照れたように頭を掻く。
「あはは、いやぁ。まいったねぇ? なぁ、アモス」
そのままアモスさんに振るアーク兄。
「可愛い妹の前では形無しか。まぁいい。それで、村は?」
やれやれといった感じで、アモスさんはアーク兄にそう対応すると、ケイアンに向かってそう問いかける。
「はっ、はい! 案内します!」
ケイアンはもうすっかり良くなったようで、元気に歩き始めた。
希望が見えたことが嬉しいんだろう。
こうして、過去のトッププレイヤー二人が前面に出てくるというサプライズはあったものの、緊急クエストは始まりを告げた。
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