アルケニアオンライン~昴のVRMMOゲームライフ。冒険生産なんでも楽しみます。

じゃくまる

第35話 浴衣と昴と友達と


 女性陣は浴衣を選び、ボクは着せ替え人形になる。
 しばらくずっとこの繰り返しだったが、ボクは白地に紫とコバルトグリーンの色で描かれた紫陽花柄の浴衣を選んだ。
 ちょっとだけお高めだったのは内緒だ。

「へぇ~、なかなか見ない色合いだね。けど似合ってるじゃないか」
 ボクはとりあえず試着をし、それを賢人兄に見せる。
 賢人兄は嬉しそうに色んな角度から見ると、太鼓判を押してくれた。

「うん、良く似合う」
「ふふん、ありがと、賢人兄」
 ボクはお礼を言い、そのままミナ達の元へと向かう。

「じゃあ次は私の」
 そう言うと、ミナは白地にミントグリーンの鉄線柄の浴衣を着て賢人兄に見せに行く。

「昴といい、よくそんな色見つけて来たね。けど、爽やかな色合いがいいね。似合う」
 ミント系の色って思ったよりも浴衣に合うんだなぁと、ボクはしみじみそう思っていた。
 たしかに、ミナも可愛い。

「昴ちゃん、これ」
 このはちゃんがボクの元へと駆け寄り、着ていた浴衣を見せてくれる。
 このはちゃんが着ていた浴衣は、水色に菊の模様をあしらった浴衣だ。
 涼し気な感じがこのはちゃんによく似合う。

「うん、似合ってる似合ってる。かわいい」
「ありがとう」
 このはちゃんはやや照れるようにそう言うと、姉達の方を指さした。

「鈴お姉ちゃんと花蓮お姉ちゃんは、賢人お兄さんに見せるために来てる」
 このはちゃんの指さした先には、色々とアドバイスをしたり感想を伝える細かい男、賢人兄の姿があった。
 なんだか慣れた様子で、色々な浴衣を見比べている。

「賢人兄、お母さんみたい」
 実際家事も出来るし、ファッションセンスも悪くないのだから、もしかしたら母性的な何かが秘められているのかもしれない。

「お兄ちゃんの可能性」
 ミナはぽつりと呟くと、興味を失ったのかボクの袖を引っ張り出した。

「お姉ちゃん、このはちゃん。飲み物買いに行こう」
 もしかしたら、ミナなりに賢人兄達に気を遣ったのかもしれない。
 モテ男、賢人のその後はいかに……。


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「はぁ、飲み物が美味しい」
 ボク達は今、ショッピングセンターの休憩所付近のベンチに座っている。
 ゲームを長くやらない時間は久しぶりかもしれない。
 帰ったら帰ったで、採集や採掘とかやらなきゃいけないことも多いんだけどね。

「ゲームは楽しいけど、出かける時間も大事だと思う。昴ちゃんとミナちゃんと遊びに行けたのは嬉しい」
 隣に座るこのはちゃんがぽつりとそう呟いた。

「そうだね、私も一緒できてうれしいかも」
 ボクを挟んで反対側に座るミナが同じようにそう呟く。

「なんだかのんびりしてるねぇ」
 ボク達3人は、何をするでもなく、ただ一緒にぼんやりとしていた。

「それにしても、ミナちゃんのマイアはなんだかかっこいいよね」
 このはちゃんは、ゲーム内のマイアを思い出しているのだろう、そう言いながら少し楽しそうにしている。

「たしかに、黒銀色の髪の神官戦士。強そう」
 このはちゃんのイメージを引き継ぐように、ボクも想像してみる。

 ミナはきっとお母さんのようにすらっとした美人になるだろう。
 そう考えると、美人神官戦士が誕生することになるわけだが。

「とりあえず武器は槍かメイスかハンマーかバトルアックスで」
「いや、案外ナイフかもしれない」
「はぁ。とりあえず、その話は後。神聖魔術とかも使えるから結構強いんだよ。……見習いだけど」
 ミナはぷいっと顔を背けると、小さな声でそう言った。
 でも、女性神官戦士かぁ。
 絶対かっこいいよね。
 小さなミナに大きな武器を持たせるのもありかも。

「お姉ちゃん、変なこと考えてないで行くよ。もう終わったみたいだし。ご飯食べたら帰るんだからね」
「あっ、うん。いこ、このはちゃん」
「はい」
 ミナが先に立ち上がり、近くにやって来た賢人兄達の元へ行く。
 遅れてボク達も合流し、ご飯を食べに向かうことになった。

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