アルケニアオンライン~昴のVRMMOゲームライフ。冒険生産なんでも楽しみます。
第34話 外出先での出会い、夏祭りは突然に
妹に脱がされ、散々に着せ替えられたボクは、結局白いシャツ、ジーンズのショートパンツ、白いニーハイソックス、おまけでサマーカーディガンという組み合わせになった。
全部妹が選んだコーデだ。
「ふふん、ちょっと涼し気でそれでいて見せるところを見せる。こういうのも悪くないとおもうの。まぁ、私は着ないんだけど、お姉ちゃんならいけるでしょ?」
妹はどこでこういうのを覚えて来たんだろう?
ボクは妹のニヤニヤした顔をちらちらと見ながら一緒に道を歩いている。
今、ボク達はショッピングセンターに向かって歩いている。
なんでも、賢人兄がそこにいるらしいんだ。
妹がいつの間にか待ち合わせをしていて、ボクを連れて行くことになっているとか。
「ねぇ、ミナ? なんでショッピングセンターなの?」
ボクは隣で腕を組んでくる妹にそう問いかけた。
「え~っと、めっきり外出してなかったでしょ? だから今のうちに慣れておくのもいいんじゃないかな? って」
ボクの見た目が変わってから、ボク自身はほとんど外に出ていない。
前にミナに連れ出された時以来、大体部屋にいるという感じだ。
ただ道を歩いているだけなのに、チラチラこっちを見てくる人がいるのが困る。
そんなに変かな?
珍しい見た目かもしれないけどさ……。
「ミナ、落ち着いてるね。こんなにチラチラ見られてるのに、よくそんなに……」
ミナは思っているよりも、神経が図太いのかもしれない。
いや、ボクが繊細過ぎるのか!?
「お姉ちゃん、性別決まる前もチラチラ見られてたよ? あの時は女性だったけど、今は男性の方が見てくるけどね」
「えっ? そうなの? 全然気が付かなかったよ?」
ミナの言葉にボクはちょっと驚いていた。
そんなことがあったなんて……。
「まぁそうかもしれないね。お兄ちゃんなんかは見られてても気が付いてないし」
賢人兄は普通にイケメンなので、やたらとモテる部分がある。
性格も良く、お父さんとあまり変わらないくらいに家事スキルも高い。
たぶん旦那兼嫁として誰もが欲しがること請け合いだろう。
「そうして甘やかされた妹はだめ妹になると……」
ボクはそう言いながら、ちらりとミナを見る。
「ん? 私は家事得意だよ? お姉ちゃんがだめ妹になってること気が付こうよ」
「!?」
呆れるような顔でボクを見るミナ。
やめて、そんな顔でボクを見ないで!
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「ほら、お姉ちゃん着いたよ?」
ミナがボクの腕を引きながら歩いていく。
そんなボクは半ばゾンビのよう引きずられて歩くのだ。
「もう、お姉ちゃん、しっかりしなよ。現実見てこれから頑張ろう?」
ボクの精神力をガリガリと削りながら、ミナは笑顔でそう言った。
うん、ボク妹に完敗したよ。
「お姉ちゃんはもうだめかもしれません」
ボクの精いっぱいの抵抗は、そう呟くことだけだった。
頑張ったんだよ、本当にさ……。
「おう、昴。なんで死んだ顔してるんだ?」
聞き慣れた声が聞こえてきたので、ボクはその方向に顔を向ける。
「あ~、賢人兄……と、だれ?」
賢人兄、その女誰!? って言えばいいのかな?
ボクの目の前にいる賢人兄の隣には3人の女性が……、いや、女性は2人で1人はミナくらいのちびっ子女子だ。
つまり1人はお子様、他は大人といえる。
たぶん女子高生ってやつだ。
「へぇ~、見た目変わらないのね? どうも、カレン役こと相原花蓮 (あいはらかれん)だよ」
「私は榊鈴 (さかきりん)よ。よろしくね」
「このは……。榊͡このは」
3人の名前は知ってるような気がするけど、どこでだっけ?
「誰……?」
ボクはきょとんと首をかしげた。
それと同時に、ボク以外の人がみんなびっくりしたような顔をした。
「えっ、ちょっと、聞いてたの!? カレンよ、カ・レ・ン」
「リーンですよ! リーン」
「スピカちゃん、私コノハだよ。忘れちゃったの?」
やたら悲しそうな顔をする3人。
うむむ……、こんな顔をどこかで見たことがあるんだけど、どこだっけ……。
「ちょっと待ってね、思い出します」
「昴? 3人はゲーム内の仲良い3人だよ?」
ボクが思い出そうと考え込むその直前、賢人兄がそう説明してきた。
「あ、あ~! ほえ? でも、なんでいるの?」
ようやく分かってすっきりしたボク。
でも同時に、彼女達がいる理由がわからなかった。
「いや~、3人が昴に会いたいって言うもんだから……。ごめんな?」
賢人兄はボクの頭を撫でながら、謝り続ける。
「えっと? よくわからないんだけど、何で会いたいの?」
会えてうれしいことは嬉しいよ?
でも、敢えて会う理由が特に思いつかなかった。
嫌じゃないんだけど、何で今なんだろう?
「あはは、うん、ごめん。迷惑だったら許して?」
「もしかして、昴ちゃん、理解追いついてない? だとしたらごめんね」
「昴ちゃん、ごめん」
3人も一緒に謝り始めてしまった。
あれ?
もしかして誤解されてる?
「いや、別に迷惑とかそうは思ってないんだよ。ただ会いに行くようなイベントあったっけ? と思って。最近外出してなくて思い当たらなかったから」
これはボクの対応が悪かったかもしれない。
3人は悪くないし、誰も悪くない。
まぁ事前に教えてほしかったというのはあるけど、ボクの理解が追いついてなかったのがそもそもの問題だった。
「今度夏祭りあるだろ? どの道そこで合流することになってたからさ。なら、今のうちにと思ってさ」
賢人兄が来週開催の夏祭りについて教えてくれた。
そういえば毎年行ってるもんね。
なるほど、それでか。
「なるほど、分かったよ。まぁ事前に知ってたらよかったんだけど、迷惑じゃないから大丈夫だよ?」
ボクがそう言うと、3人はほっとしたような顔をしてみせた。
ごめんね?
困らせちゃったよね。
「今日は浴衣を見に来たんだよ。それで賢人君は私達の付き添い」
「賢人君がいると色々捗るからね」
「賢人お兄さんは姉達の保護者の役割もあるんです」
「そうだろうと思ったよ、ついでに荷物持ちだろ? 分かってるよ、やるさ」
3人は今日浴衣を見に来たようだ。
ということは、ボク達もかぁ。
賢人兄ってやっぱりモテるよね。
こういう時、頼りにされてるしさ?
「ねぇ、お兄ちゃん。言いたいこと言っていい?」
突然隣のミナがそう言いだした。
「え? いいよ?」
賢人兄がミナにそう言うと、ミナが口を開いてこう言った。
「周り見てみた? 可愛い子5人も侍らせた男という視線に。お兄ちゃん以外、みんな女の子だよ?」
ミナは努めて冷静にそう告げた。
その言葉に、ボクも一緒に周りを見てみる。
「「「……、……」」」
うん、悔しそうな顔発見。
あ、そこの人、ボクの方を見るな!
そして写真撮るな!!
「あっ、うん。なんかその、ごめん」
賢人兄は気まずそうな顔をして謝る。
「あはは、いつも通りだね」
「私達といるときもそうだもんね?」
「昴ちゃん、一緒に浴衣選ぼう」
花蓮さんと鈴さんは学校でも同じことをしているようだ。
本当に仲良しさんだなぁ。
このはちゃんは、まじめな時は丁寧に話すけど、砕けるときは砕けるよね。
いい子だけど、たまに驚く。
あと、結構甘えん坊。
「しかたないな~」
ボクは苦笑しつつそう言った。
このはちゃんは嬉しそうに頷き、ミナは獲物を狙う猫のようにボクを引ん剝く機会をうかがっている。
こうしてボク達は夏祭りの準備のために、浴衣を選ぶのだった。
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