隣人さんは魔術師?!~ネイウィザ~

こうや

抱擁の隣人さん

「・・・・・・【地獄の番犬(ケルベロス)】」
「【地獄の番犬ケルベロス】?!」
「あぁ間違いない、しかもこれは【全ての形状フルタイプ】か・・・本当に化けるぞ。」
「・・・て言うか出現遅くない?これが普通?」
「いや、確かに遅いな。通常は数秒で収まる。これは、強制的に【抑える】必要があるかもな。」
「そんな!【抑え】なんてやった事ないのに!」
「じゃあ小僧が破裂するのを見ておくか?」
「・・・分かったわよ!やりますよ!」
「そうか、じゃあわしの言う通りに動け」
「まさか、あんたに教えられる日が来るとはね」
「やるなら黙ってやれ」
「へいへい。で、何すればいいの?」
「そうだな、まずは・・・」



色欲の悪魔アスモデウスに指示された通りにリブリーは絢太の前に立ち、虚ろな目で絢太を見た後に絢太を抱擁する。
すると、先程までただ静かに俯いていただけの絢太が突然暴れだした。
しかも、暴れ方は異様で暴れると言うよりももがき苦しんでいる様な動きをしていた。



「・・・大丈夫」



その言葉は誰でも簡単に言える言葉であるが故にただの慰めにしかならない程度の言葉だが、この場での効力は絶大で意識がない絢太の心に確かに届いていた。
それを分かっての発言なのかリブリーには何処か自信のような物が有るように見えた。



「大丈夫、大丈夫よ」
「娘、準備出来たぞ」
「・・・分かった」



リブリーは絢太の後頭部にそっと手を置き自分の頭と触れ合わせる。
それと同時に色欲の悪魔アスモデウスは呪文の様なものを唱え始めた。
十数秒経つと色欲の悪魔アスモデウスは口を閉じ、もう一度口を開く。



「いいぞ、娘・・・やれ」
「うん」



リブリーは先程、色欲の悪魔アスモデウスに言われた呪文を思い出すと、頭を絢太の頭から離す。
1度絢太の目を覗き込むとリブリーは口を開く。



「W,E,A,R,E,T,H,O,S,E,T,H,A,T,G,O,V,E,R,N, T,H,E,H,E,A,D・・・発動・・・。」
「遅いぞ、娘。」



呪文の音がなり終わると色欲の悪魔アスモデウスは魔法陣を出現させ絢太が言う違和感の根源、【魔術】を発動させる。
魔法陣の色が青から紫に変わったのを確認すると、リブリーは絢太の両頬に手を置き、次の瞬間、絢太の顔を自分の顔の方に引き寄せそのまま、自分の顔も絢太の顔の前に持っていき、瞬間、口づけをする。
その時、どちらの物かは分からないが2人の足元には確かに涙の様な物が落ちていた。



(入るよ・・・応じて、地獄の番犬ケルベロス



暗闇の空間の中に一人たたずむ少年と見つめ合う黒犬がいた。
1人の女性は少年に近付き顔を覗き込みながら会話を始める。



「君お名前は?」
「・・・・・・・・・・・・」
「私、リブリーって言うのよろしくね」
「・・・・・・僕けんた」
「そう、絢太君って言うのね」
「おねぇさんどこからきたの?」
「・・・本当の世界よ」
「・・・・・・?」
「君がいる世界から来たのよ、黒川絢太君」
「僕がいるのはこの世界だけで十分だよ」



口調が変わる。
先程まで子供の様な口調だった筈なのに急に大人っぽくなっていた。
見た目はそのままなのに目付きと口調、威圧感は大人その物だった。



「何で引き篭ってるの?」
「元の世界には飽きたから」
「違うわ、何で家に引き篭ってるか聞いてるの」
「・・・リブリーには関係ねェ、俺の人生は俺が決める。あんたに何が分かる。俺の苦しみは誰も知らねェ。」
「逃げるの?」
「逃げて何がわりィ。俺はいつも逃げて生きていた、その時に俺を責める奴なんていねェ。だから俺は逃げ続ける、嫌な事から逃げて逃げて逃げて生きてやらァ。そうやって俺はいつまでも逃げ続ける運命なんだよ。」
「それは違うよ。」
「・・・・・・何がだ」
「確かに今までは逃げてきたかもだけど、さっきは違かった。逃げなかったよ。恐怖で震えて逃げたい筈なのに逃げなかったよ?だから絢太君は逃げ続け無くても良いんだよ。普通に生きて良いんだよ。」
「ノクセニコノコゾウヲオマエノセカイニマキコンダノカ。ソッチノセカイデハフツウニハイキラレネェダロォガヨ。」



慣れない言葉で喋る黒犬は絢太に似た口調で喋り出す。
しかし地獄の番犬ケルベロスの言葉には人を小馬鹿にする様な口調が混ざっていた。



「この子には貴方の力がいるのよ、【地獄の番犬ケルベロス】。」
「ソウカヨォ、マァオレニハカンケイネェヨ。コゾウガノゾメバカナエルダケダ。」
「・・・絢太君、まだ逃げて生きたいと思ってる?」
「もちろん、逃げるのは楽だ。無駄に向き合って時間を無駄にする必要がねェ。」
「目の前に逃げなくても良いようになる力が有るのに?」
「・・・こいつの力には頼らない。存在しているだけで良い。前に進む必要は無い。」
「本当にそう思ってる?」
「・・・」
「本当は部屋から出たいんじゃないの?」
「・・・うるせェ」
「本当は部屋から出たいから私の家から帰らなかったんじゃないの?」
「うるせェ」
「逃げるチャンスはいつでもあった筈なのに逃げなかったよ?」
「うるせェ!黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ!」
「本当はあの扉を誰かに開けて欲しかったんじゃないの?」
「黙れェェェェェェ!!!!!」
「本当は学校に行きたかったんじゃないの?」
「・・・!」
「オイコムスメ、コノコゾウヲコノセカイカラダシタイナラヤリカタガチゲェゾ」
「あんたは黙って。」
「ア゙ァ゙ン゙?」
「・・・良いんだ、地獄の番犬ケルベロス
「イヤ、コゾウニハカンケイナイ。オレノシャクニサワッタンダ、タダデカエスワケガナカロウ。」
「あんたの力じゃ私に傷一つ付けられないよ。」
「なんだって?」
「だから、こいつの力じゃ私に傷一つ付けられないって言ったのよ。」
「どうして?」
「・・・知りたいなら私の手を取りなさい。」



やっと自分が優位にたったと思い口角が少し上がった状態で絢太に手を差し出す。
しばらく考えた絢太は手を取る前に口を開いた。



「少し条件がある。」
「なに?」
地獄の番犬ケルベロスの力の使い方を教える事、俺の過去に干渉しない事、他のオカルトたぐいの人間に関わらせない事、これを守ってくれるなら外に出てやらァ。」
「・・・・・・良いわ、その条件を守りましょう。じゃあ外に出るわよ。」
「具体的に何をすればいい。」
「簡単よ、地獄の番犬ケルベロスに命じれば良いの、ここから出せって。」
「んじゃ地獄の番犬ケルベロスここから出せ。」
「ショウガネェナァ、シュジンノメイハキカネェトイケネェシ、ダシテヤル。」
「じゃあ外で会おう絢太君。」
「あァ。」



直後、リブリーの姿は小さい光の様にバラバラになって消えていった。
それを見送り絢太は地獄の番犬ケルベロスに乗り合図を出すと地獄の番犬ケルベロスは何も無い空間を蹴って暗闇に消えた。



光が見に入り少し眩しさを感じながら周りを見渡そうとすると何かが首の動きを遮り遮断される。
原因を突き止める必要も無くただリブリーに抱きつかれているだけだった。



「な、リブリー?!」
「・・・おかえり、絢太君」



その表情にはもう赤の他人とは思えない様な感情が含まれている気がして絢太は思わず。



「・・・ただいま!」



と家族の様に満面の笑みで返事をしてしまった。

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