暗黒騎士物語
森へ
エリオスの樹海は広大な森だ。
その外周は広く、北西には山岳地帯が広がっている。
この山岳地帯は鉱山であり、ドワーフ共の集落がある。
ドワーフ共は穴を掘り、鉱石を採掘する。
その一つの使われなくなった坑道に、ダハーク達は隠れている。
穴の中には配下である蛇人や蛇女の戦士達が集まっている。
まさに蛇の巣穴だ。
他にも狼人もいたが、奴らは今森の中へと入っているのでここにはいない。
時折天使達が近くを通るが、発見されてはいない。
「若様。ダハーク様」
穴の中で気晴らしにラミア共を抱いているとローブを纏った者がダハークに声をかける。
2本足の種族と同じように足がある。
しかし、本当の姿はラミアと同じように腰から下は蛇である。
狡知の女神ボティス。
魔術師のローブを纏ったその女は、ダハークの母ディアドナの第一の側近の小神であり、配下の中で一番の知恵者だ。
策謀が得意であり、エリオスの奴らの眷属、人間を裏切らせ拝蛇教団を作ったのもボティスだ。
その中でも信仰心が篤い者には恩寵を与え、蛇人間に生まれ変わらせたりもする。
ダハークが聞いたところによると、人間達の間ではイーグの呪いと呼んでいるそうだ。
そのボティスはお目付け役として一緒に来た。
「何だ? ボティス? 俺に何か用か? お前の言う通り、アルフォス共とは戦わずにすませているぞ」
「やはり、戦えない事が不満ですか?」
「当たり前だ! ボティス!」
ダハークは不機嫌そうに答えるとボティスを睨む。
ボティスはアルフォスと戦う事を禁じている。
そのため、ダハークはイライラが止まらない。
前はアルフォスに負けた。しかし、今度も負けるとは限らない。
ダハークは戦えない事で不満が溜まる。
母親の言いつけでなければボティスの言うことなど聞きはしなかっただろう。
「ウフフフ、申し訳ございません、若様。しかし、もう少しの辛抱です。蛇の毒は既に奴らの体内に入っております。成功しないはずがございません」
ボティスは笑う。
こちらが力押しで凶獣の封印を解くつもりだと思わせる予定なのだ。
「ふん、全てはお前の計画通りか? ボティス?」
ダハークはボティスの後ろにいる者を見る。
小さい体躯だ。そして、その姿は異形である。
全身がさび色の金属で覆われている。
鎧を着ているのではない。体の半分以上が金属で出来ているのだ。
そもそもこの隠れる場所はこの者の手引きによるものだ。
ダハークはこの者の詳しい素性は知らない。
だがそんな事はどうでも良かった。
「はい、若様。必ず上手くいくでしょう」
「なるほどな、だったら早くしろ。俺はいつまでも待つのが嫌いだ」
そう言うとダハークはボティスから目を反らす。
闇が広がる穴の中で、2匹の蛇が潜むだった。
◆
エルドの宮殿の一室でチユキ達全員は集まっている。
「さて……。どうしようかしらね……」
チユキはコウキがエルフ達に連れ去られ、どうするか悩む。
普通に考えて、取り戻すのが正しい。
しかし、取り戻すべきかどうかで悩んでいた。
冷静になって考えるとコウキはレーナ神殿に預けられた子だ。つまり、女神レーナに捧げられた子である。
そして、エルフはエリオスの神々の眷属。
レーナに返すように説得してもらうのが一番楽だ。
これならチユキ達も動く必要がない。
既に司祭のハウレナが聖レナリア共和国の神殿にこの事を伝えているはずだ。そこからレーナに報告するだろう。
もっとも、レーナが黙認する可能性もある。
レーナ達、エリオスの神々はよほどの事がない限り、直接関わったりしない。
自らの神殿に預けられたとはいえ、一人の少年なんか、気にしない可能性もある。
レーナが黙認するならチユキ達がとやかく言う事ではない。
放っておけば良いのだ。
しかし、そうはいかないようであった。
「大丈夫だよ、サーナちゃん! 必ずコウキ君は取り戻して来るからね! そうだよね、チユキさん!」
サーナをあやしていたシロネはチユキを見る。
シロネはチユキと違い、取り戻しに行く気まんまんである。
「えーっと……」
何と言うべきか迷い、チユキは言葉が出なくなる。
「シロネ。エルフに攫われたのなら、助けに行く必要はないんじゃないか? 案外向こうで幸せに暮らすかもしれないぞ」
レイジが言う。
実はレイジの言う通りなのである。
エルフは常若で女性しかいない上に、美形揃いだ。
男性の中には、エルフに攫われたいと考える者は多かったりする。
だから、コウキもエルフの国で育った方が良いかもしれなかった。
もっとも、レイジとしては娘に男が付くのを嫌がっただけだろう。
「レイ君、それはサーナが可哀想だよ」
サホコはすかさず抗議する。
サーナも言葉がわかるのか、機嫌が悪そうだ。
それはリノ、ナオ、キョウカも同じようだ。
ちなみにカヤは特に何も反応をしていない。
「確かにサーナが可哀想ですわね」
「そうっすよ。サーナちゃんが可哀想っす」
「そうそう、将来イケメンになる子は取り戻すべきだよ」
サホコとナオとリノがすかさず抗議をする。
ただ、リノだけ取り戻す理由が違っているなとチユキは思う。
ちなみにエルフは面食いであり、ブサイクには見向きもしないので、コウキが美形に育つ可能性は高かったりする。
「というわけで取り戻しに行こう」
シロネは胸を張って言う。
これは止められないだろうと思い、チユキは溜息を吐く。
「仕方がないわ、でも全員では行けないわよ? サホコさんはサーナちゃんに付いていないといけないし、父親も……一緒に残った方が良いわね。行くのは……、ええとシロネさんは決まっているとして、後はナオさんにリノさんも行った方が良いわね……」
チユキは人選を考える。
シロネ、そして探知力が高いナオにエルフを超える精霊魔法が使えるリノも行った方が良いだろう。
しかし、それだとシロネが暴走した時に止める者がいない。
だからチユキ自身かカヤが行くべきであった。
「それでしたら、チユキ様も行かれた方が良いかもしれません。この国の仕事は私が進めておきますので」
チユキの視線に気付いたカヤが言う。
カヤが言う仕事とは城壁を作る事である。
結局、エルドも城壁を造る事になった。
城壁を造れば市民の数を制限する事になる。
なぜなら、市民は城壁の中に住む権利を与えねばならず。
市民の数を無限に増やせば、城壁内にすべて収容できない。
やがて、エルドは聖レナリア共和国と同じようになるだろう。
しかし、仕方がなかった。
城壁を造らなくて済むほど、この世界は安全ではない。
また、城壁を造るのに合わせてレーナ教団の支援を積極的に受ける事にした。
レーナは守護の女神であり、その信者には城壁造りの職人もいる。
ドワーフの手も借りる予定だが、数が少ないので人間の職人も必要だ。
また、聖レナリアの神殿騎士達に駐留してもらう事になった。
エルドは新しい国だ。街道の安全を守るための騎士を用意出来ない。
だから、代わりに聖レナリア共和国に頼るのである。
これで教団の影響は強くなる。
しかも、湿地の蜥蜴人達と敵対してしまった以上、早急にエルドの防衛力を上げる必要がある。
悠長に騎士の育成は出来なかった。
その城壁の建造と騎士団との協議は、当初反対していたチユキではなくカヤがした方が良いのである。
「そう? なら私も行くわ。カヤさん、あとはお願いね 」
チユキが言うとシロネは嬉しそうにする。
そして、レイジと並びこの国代表であるキョウカも残ってもらう。
これでコウキの奪還メンバーは決まった。
動くなら早い方が良いだろう。
こうして、チユキ達はエルフの国へと向かう事になったのであった。
◆
ルウシエン達は常若にして夢幻の都アルセイディアと戻る途中である。
行きと違いエリオスの樹海に戻るのは簡単であった。
何故なら、転移魔法で戻ればよいからだ。
しかし、防衛上の理由から、直接アルセイディアには戻れない。
だから、転移で戻れるのは森の外れまでだ。
そこからアルセイディアへと戻る。
だけど、ケリュネイアの牽く車なら、すぐに戻れるだろう。
ルウシエンは視線を落とす。
ルウシエンの膝に頭を乗せて少年が一人眠っている。
可愛い子だ。
ルウシエンは一目見た瞬間、どうしても欲しくなってしまったのである。
こんな気持ちになったのは初めてであった。
「ぐへへへへ」
ルウシエンは思わず笑ってしまう。
そして、ルウシエンは視線を感じて顔を上げる。
するとテス、ピアラ、オレオラがこちらを見ている。
「何? 貴方達、何か言いたい事でもあるのかしら?」
ルウシエンが睨むと3名は視線を逸らす。
「いえ、なんでもないです。ルウシエン様」
「あたいも何もないです。別にドン引きしていないです」
「はい、姫様。ピアラ殿言う通り、引いていないです」
「特に何もないのなら、そんな目で見ないで欲しいわね。まったく……」
ルウシエンは不機嫌そうに言う。
しかし、彼女達が不満に思っている事も理解していた。
予定ではもっと長く勇者の国に滞在する予定だった。
特にピアラとオレオラは勇者の側にもっといたかったようだ。
しかし、ルウシエンが急に帰ると言い出したので、残る機会を失ってしまった。
「しかし、良いのでしょうか? そこらの人間ならともかく、勇者達の所から連れて来ても」
オレオラが心配そうに言う。
「あら、問題ないわ。この子は勇者の娘のお守りをしていただけで、特に関わりがあるみたいじゃないもの。レーナ様だって、わざわざ人の子一人がどうなろうか気にしないわよ」
ルウシエンは当然の事を言う。
人間の娘はすぐに枯れてしまう下賤な存在だ。
コウキもエルフの国にいる方が良いに決まっている。
「まあ、確かに……」
ピアラもうんうんと頷く。
ピアラも過去に経験があるのだろうかルウシエンに同意する。
「そういう事よ、この子だってすぐに枯れる人間の娘よりも私達と一緒にいる方が良いわ」
ルウシエンは可愛い子コウキの頬を撫でる。
するとコウキは嬉しそうな様子を見せる。
きっと楽しい夢を見ているだろう。
「ふふふ、きっと立派な妖精騎士になるわ」
ルウシエンはコウキを胸に抱きよせる。
「眠りなさい♪
眠りなさい♪
可愛い子♪
貴方を夢の国へ連れて行ってあげる♪
そこは老いのない、楽しいエルフの国♪
目を覚ましたら美しい花園で踊りましょう♪
さあ、眠りなさい♪
眠りなさい♪
可愛い子♪」
ルウシエンは歌う。
ケリュネイアの引く車に揺られながら。
★★★★★★★★★★★★後書き★★★★★★★★★★★★
ボティスもダハークのように少し名前を変えようと思ったけどこのままです。挟腕の男も名前そのままで出そうかなと思っています。
わかった人はすごいと思います。
ちなみに蛇人の呼び名はクト〇ルフから……。
……以上なろうから後書き転載。
それからシズフェの短編をどうするか迷っています。
「戦乙女シズフェの冒険」という形で別枠にして出そうと思っていたのですが、本編でこんなに時間がかかるとは思わなかったので予定を変更した方が良いかもしれません。
誤字等がありましたら、報告して下さると嬉しいです。
その外周は広く、北西には山岳地帯が広がっている。
この山岳地帯は鉱山であり、ドワーフ共の集落がある。
ドワーフ共は穴を掘り、鉱石を採掘する。
その一つの使われなくなった坑道に、ダハーク達は隠れている。
穴の中には配下である蛇人や蛇女の戦士達が集まっている。
まさに蛇の巣穴だ。
他にも狼人もいたが、奴らは今森の中へと入っているのでここにはいない。
時折天使達が近くを通るが、発見されてはいない。
「若様。ダハーク様」
穴の中で気晴らしにラミア共を抱いているとローブを纏った者がダハークに声をかける。
2本足の種族と同じように足がある。
しかし、本当の姿はラミアと同じように腰から下は蛇である。
狡知の女神ボティス。
魔術師のローブを纏ったその女は、ダハークの母ディアドナの第一の側近の小神であり、配下の中で一番の知恵者だ。
策謀が得意であり、エリオスの奴らの眷属、人間を裏切らせ拝蛇教団を作ったのもボティスだ。
その中でも信仰心が篤い者には恩寵を与え、蛇人間に生まれ変わらせたりもする。
ダハークが聞いたところによると、人間達の間ではイーグの呪いと呼んでいるそうだ。
そのボティスはお目付け役として一緒に来た。
「何だ? ボティス? 俺に何か用か? お前の言う通り、アルフォス共とは戦わずにすませているぞ」
「やはり、戦えない事が不満ですか?」
「当たり前だ! ボティス!」
ダハークは不機嫌そうに答えるとボティスを睨む。
ボティスはアルフォスと戦う事を禁じている。
そのため、ダハークはイライラが止まらない。
前はアルフォスに負けた。しかし、今度も負けるとは限らない。
ダハークは戦えない事で不満が溜まる。
母親の言いつけでなければボティスの言うことなど聞きはしなかっただろう。
「ウフフフ、申し訳ございません、若様。しかし、もう少しの辛抱です。蛇の毒は既に奴らの体内に入っております。成功しないはずがございません」
ボティスは笑う。
こちらが力押しで凶獣の封印を解くつもりだと思わせる予定なのだ。
「ふん、全てはお前の計画通りか? ボティス?」
ダハークはボティスの後ろにいる者を見る。
小さい体躯だ。そして、その姿は異形である。
全身がさび色の金属で覆われている。
鎧を着ているのではない。体の半分以上が金属で出来ているのだ。
そもそもこの隠れる場所はこの者の手引きによるものだ。
ダハークはこの者の詳しい素性は知らない。
だがそんな事はどうでも良かった。
「はい、若様。必ず上手くいくでしょう」
「なるほどな、だったら早くしろ。俺はいつまでも待つのが嫌いだ」
そう言うとダハークはボティスから目を反らす。
闇が広がる穴の中で、2匹の蛇が潜むだった。
◆
エルドの宮殿の一室でチユキ達全員は集まっている。
「さて……。どうしようかしらね……」
チユキはコウキがエルフ達に連れ去られ、どうするか悩む。
普通に考えて、取り戻すのが正しい。
しかし、取り戻すべきかどうかで悩んでいた。
冷静になって考えるとコウキはレーナ神殿に預けられた子だ。つまり、女神レーナに捧げられた子である。
そして、エルフはエリオスの神々の眷属。
レーナに返すように説得してもらうのが一番楽だ。
これならチユキ達も動く必要がない。
既に司祭のハウレナが聖レナリア共和国の神殿にこの事を伝えているはずだ。そこからレーナに報告するだろう。
もっとも、レーナが黙認する可能性もある。
レーナ達、エリオスの神々はよほどの事がない限り、直接関わったりしない。
自らの神殿に預けられたとはいえ、一人の少年なんか、気にしない可能性もある。
レーナが黙認するならチユキ達がとやかく言う事ではない。
放っておけば良いのだ。
しかし、そうはいかないようであった。
「大丈夫だよ、サーナちゃん! 必ずコウキ君は取り戻して来るからね! そうだよね、チユキさん!」
サーナをあやしていたシロネはチユキを見る。
シロネはチユキと違い、取り戻しに行く気まんまんである。
「えーっと……」
何と言うべきか迷い、チユキは言葉が出なくなる。
「シロネ。エルフに攫われたのなら、助けに行く必要はないんじゃないか? 案外向こうで幸せに暮らすかもしれないぞ」
レイジが言う。
実はレイジの言う通りなのである。
エルフは常若で女性しかいない上に、美形揃いだ。
男性の中には、エルフに攫われたいと考える者は多かったりする。
だから、コウキもエルフの国で育った方が良いかもしれなかった。
もっとも、レイジとしては娘に男が付くのを嫌がっただけだろう。
「レイ君、それはサーナが可哀想だよ」
サホコはすかさず抗議する。
サーナも言葉がわかるのか、機嫌が悪そうだ。
それはリノ、ナオ、キョウカも同じようだ。
ちなみにカヤは特に何も反応をしていない。
「確かにサーナが可哀想ですわね」
「そうっすよ。サーナちゃんが可哀想っす」
「そうそう、将来イケメンになる子は取り戻すべきだよ」
サホコとナオとリノがすかさず抗議をする。
ただ、リノだけ取り戻す理由が違っているなとチユキは思う。
ちなみにエルフは面食いであり、ブサイクには見向きもしないので、コウキが美形に育つ可能性は高かったりする。
「というわけで取り戻しに行こう」
シロネは胸を張って言う。
これは止められないだろうと思い、チユキは溜息を吐く。
「仕方がないわ、でも全員では行けないわよ? サホコさんはサーナちゃんに付いていないといけないし、父親も……一緒に残った方が良いわね。行くのは……、ええとシロネさんは決まっているとして、後はナオさんにリノさんも行った方が良いわね……」
チユキは人選を考える。
シロネ、そして探知力が高いナオにエルフを超える精霊魔法が使えるリノも行った方が良いだろう。
しかし、それだとシロネが暴走した時に止める者がいない。
だからチユキ自身かカヤが行くべきであった。
「それでしたら、チユキ様も行かれた方が良いかもしれません。この国の仕事は私が進めておきますので」
チユキの視線に気付いたカヤが言う。
カヤが言う仕事とは城壁を作る事である。
結局、エルドも城壁を造る事になった。
城壁を造れば市民の数を制限する事になる。
なぜなら、市民は城壁の中に住む権利を与えねばならず。
市民の数を無限に増やせば、城壁内にすべて収容できない。
やがて、エルドは聖レナリア共和国と同じようになるだろう。
しかし、仕方がなかった。
城壁を造らなくて済むほど、この世界は安全ではない。
また、城壁を造るのに合わせてレーナ教団の支援を積極的に受ける事にした。
レーナは守護の女神であり、その信者には城壁造りの職人もいる。
ドワーフの手も借りる予定だが、数が少ないので人間の職人も必要だ。
また、聖レナリアの神殿騎士達に駐留してもらう事になった。
エルドは新しい国だ。街道の安全を守るための騎士を用意出来ない。
だから、代わりに聖レナリア共和国に頼るのである。
これで教団の影響は強くなる。
しかも、湿地の蜥蜴人達と敵対してしまった以上、早急にエルドの防衛力を上げる必要がある。
悠長に騎士の育成は出来なかった。
その城壁の建造と騎士団との協議は、当初反対していたチユキではなくカヤがした方が良いのである。
「そう? なら私も行くわ。カヤさん、あとはお願いね 」
チユキが言うとシロネは嬉しそうにする。
そして、レイジと並びこの国代表であるキョウカも残ってもらう。
これでコウキの奪還メンバーは決まった。
動くなら早い方が良いだろう。
こうして、チユキ達はエルフの国へと向かう事になったのであった。
◆
ルウシエン達は常若にして夢幻の都アルセイディアと戻る途中である。
行きと違いエリオスの樹海に戻るのは簡単であった。
何故なら、転移魔法で戻ればよいからだ。
しかし、防衛上の理由から、直接アルセイディアには戻れない。
だから、転移で戻れるのは森の外れまでだ。
そこからアルセイディアへと戻る。
だけど、ケリュネイアの牽く車なら、すぐに戻れるだろう。
ルウシエンは視線を落とす。
ルウシエンの膝に頭を乗せて少年が一人眠っている。
可愛い子だ。
ルウシエンは一目見た瞬間、どうしても欲しくなってしまったのである。
こんな気持ちになったのは初めてであった。
「ぐへへへへ」
ルウシエンは思わず笑ってしまう。
そして、ルウシエンは視線を感じて顔を上げる。
するとテス、ピアラ、オレオラがこちらを見ている。
「何? 貴方達、何か言いたい事でもあるのかしら?」
ルウシエンが睨むと3名は視線を逸らす。
「いえ、なんでもないです。ルウシエン様」
「あたいも何もないです。別にドン引きしていないです」
「はい、姫様。ピアラ殿言う通り、引いていないです」
「特に何もないのなら、そんな目で見ないで欲しいわね。まったく……」
ルウシエンは不機嫌そうに言う。
しかし、彼女達が不満に思っている事も理解していた。
予定ではもっと長く勇者の国に滞在する予定だった。
特にピアラとオレオラは勇者の側にもっといたかったようだ。
しかし、ルウシエンが急に帰ると言い出したので、残る機会を失ってしまった。
「しかし、良いのでしょうか? そこらの人間ならともかく、勇者達の所から連れて来ても」
オレオラが心配そうに言う。
「あら、問題ないわ。この子は勇者の娘のお守りをしていただけで、特に関わりがあるみたいじゃないもの。レーナ様だって、わざわざ人の子一人がどうなろうか気にしないわよ」
ルウシエンは当然の事を言う。
人間の娘はすぐに枯れてしまう下賤な存在だ。
コウキもエルフの国にいる方が良いに決まっている。
「まあ、確かに……」
ピアラもうんうんと頷く。
ピアラも過去に経験があるのだろうかルウシエンに同意する。
「そういう事よ、この子だってすぐに枯れる人間の娘よりも私達と一緒にいる方が良いわ」
ルウシエンは可愛い子コウキの頬を撫でる。
するとコウキは嬉しそうな様子を見せる。
きっと楽しい夢を見ているだろう。
「ふふふ、きっと立派な妖精騎士になるわ」
ルウシエンはコウキを胸に抱きよせる。
「眠りなさい♪
眠りなさい♪
可愛い子♪
貴方を夢の国へ連れて行ってあげる♪
そこは老いのない、楽しいエルフの国♪
目を覚ましたら美しい花園で踊りましょう♪
さあ、眠りなさい♪
眠りなさい♪
可愛い子♪」
ルウシエンは歌う。
ケリュネイアの引く車に揺られながら。
★★★★★★★★★★★★後書き★★★★★★★★★★★★
ボティスもダハークのように少し名前を変えようと思ったけどこのままです。挟腕の男も名前そのままで出そうかなと思っています。
わかった人はすごいと思います。
ちなみに蛇人の呼び名はクト〇ルフから……。
……以上なろうから後書き転載。
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コメント
眠気覚ましが足りない
修正報告追加です。
しかし、湿地の蜥蜴~
↓
しかも、湿地の蜥蜴~
ここは、理由の追加に当たるので。
眠気覚ましが足りない
更新お疲れ様です。
やはり、冒険が始まる予感、の回はなんとなく気分が上がりますね。
まぁ、ほぼ転載らしいので待ち遠しければなろうの方で全部読めちゃうでしょうけど。
自分も細かい所以外は修正不要だと思いますので、加筆に期待してます。
さようなら、麗しき常若の姫。
こんにちは、ド腐れしショタコンの姫。
テス、早くクロキのもとへ逃げておいで……。
ジュシオはなろう版の頃から出てますね。確認してきたので間違いないです。
修正報告です。
~、取り戻すべきかどうかで悩む。
↓
~、取り戻すべきかどうかで悩んでいた。
書いてあるわけではないですが、前の回の後からずっと悩んでいるので、進行形+完了・継続で“た”がいいでしょう。
シロネは取り戻しに行く気である。
↓
シロネは取り戻しに行く気まんまんである。
荒立てた鼻息すら聞こえてきそうな感じの方がシロネらしいかな、と。
でも全員ではいけないわね。
↓
でも全員では行けないわよ?
諭すために言葉を投げ掛ける、疑問ではなく会話文としてアクセントが語尾に来る感じ、英語でいう付加疑問文を和訳した、みたいなやつです。
父親も一緒に残った方が良いわね……。
↓
父親も……一緒に残った方が良いわね。
会話中に一考した様子を示す“……”は、“父親”の直後の方が良いかと思います。消してしまいましたが、最後の“……”も残したままで大丈夫です。
そうね、私も行くわ。カヤさん。後はお願いね
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そう? なら私も行くわ。カヤさん、あとはお願いね
歯止め役として自分(チユキ)かカヤか、と考えている所に選択肢の一方からの提案。その意見を汲んだ所です。
変更部分に関しては、最初に“そう”に?を追加したのは、了解だけでなく“良いんだね?”と確認の意味を含めたからです。次に“なら”を追加しましたが、“じゃあ”でも良いかと。最後にたぶんミスですが、“カヤさん”の後に打たれた句点を読点に。
根崎タケル
更新しました。
眠気覚ましが足りない様。誤字報告ありがとうございます。
修正しました。
シズフェについては迷うところもあります。
あれ、ジュシオは登場していたはず?