暗黒騎士物語
暗黒騎士VS死神
クーナはクロキと共にグロリアスに乗り空を飛ぶ。
眼下で黒薔薇の花園が広がっている。
巨大な黒薔薇の花弁の中にいるのは妖花乙女達だ。
妖花乙女は瘴気を養分として成長するが、養分が足りなくなると生き物を殺して養分を吸う事もある。
しかし、今は問題ない。
なぜなら、瘴気の塊が目の前にあるのだから。
黒薔薇がモードガルに纏わりつき、瘴気を吸い上げる。
「我が眷属よ! あの黒薔薇を断ち切れ!」
ザルキシスが叫ぶ。
アンデッドにとって瘴気は動力源でもある。
それが、少なくなればアンデッドは動けなくなる。
だから、ザルキシスの言葉で死の軍勢が黒薔薇を排除しようと向かってくる。
もちろんポレンとヘルカート、グゥノ達が迎え撃つ。 
敵の方が数は多い。
しかし、この魔道結界の中ではポレン達が優位であるので、負けはしない。 
「クーナ。良いかい?」
クロキが振り向いてクーナを見る。
これからクロキはザルキシスと戦うのだ。
そして、下には死の御子がいる。こちらが優位でも奴らは危険だ。
クーナも加勢に行かねばならない。
だから、クーナは頷いた。
「もちろんだ! クロキ! 存分に戦ってくれ! クーナは下の死の軍勢を叩く!」
そう言ってクーナはグロリアスから飛び降りる。
モードガルの体に飛び降りるとアルラウネと切り裂こうとする幽鬼の騎士達に向かう。
「消えろ! 屍ども!」
クーナは大鎌で幽鬼の騎士数体を倒す。
幽鬼程度なら、どれ程の数がいてもクーナなら勝てる。
問題は死の御子であった。
蝙蝠女ザファラーダと蛆蝿ザルビュートはポレンと戦っている。
どちらも手負いだ。
腹を満たしたポレンなら両者が万全でも勝てるだろう。
だから、クーナは他の死の御子を探す。
ザファラーダやザルビュート以外にも強い死の御子はいる。
そいつらの相手をするべきであった。
薔薇に覆われたモードガルでは戦いが繰り広げられている。
クーナはその中を歩き、様子を見る。
「ところで、なぜお前はクーナの背後に立つのだ?」
歩いているクーナの背後に蛙人の戦士が近づいて来る。
その様子がおかしい。
もっとも、その原因はクーナにはわかる。
突然、蛙人から数本の触手が腹を突き破って出てくる。
触手の先には口があり、クーナに吸い付こうと襲いかかる。
「背後からくるなら、もっと怪しまれないようにするのだな。お前の動きはバレバレだ」
クーナは蛙人が敵に操られているのはわかっていた。
だから、簡単に対処できる。
大鎌を回転させて、触手を斬ると、蛙人の頭を斬り落とす。
頭の無くなった蛙人は逃げるように後ろにさがる。
「さすがだね。ますます欲しくなったよ。その可愛いほっぺに僕のシルシをつけてあげたいな」
蛙人の体の頭のなくなったから箇所から何者かが出てくる。
紅玉の公子ザシャ。
その姿は人間の子どもと同じである。
しかし、その本当の姿はクーナには見ていた。
巨大な醜い赤い蛭。
それがザシャの正体である。
ザシャは蛙人の体から出てくるといやらしく笑う。
「馬鹿か? クーナに触れて良いのはクロキだけだ。お前のような不細工が触れて良いと思うなよ。そもそもザファラーダに劣る貴様が勝てると思っているのか?」
クーナはザシャに大鎌を向ける。
クーナの知る限りザシャは死の公子の中でも特に強くはないはずであった。
ザファラーダやザルビュートに比べれば小物である。
だから、クーナは負けるとは思えなかった。
しかし、ザシャは余裕の表情である。
「それはどうかな? 確かに僕は弱い。だけど、それを補うために強い生物を作っているんだ。そして、このモードガルには僕の取って置きがあるのさ! 暗黒騎士の時には出さなかったこいつの相手をしてもらうよ! 出でよ死命蟲王!」
ザシャがそう叫ぶとモードガルの体の中から巨大な甲虫が出てくる。
巨大な顎をカシャカシャとならしクーナを威嚇する。
「君も蟲を使うようだね、僕も同じなんだ。気が合うかもしれないね、僕達は。さあ蟲戦といこうじゃないか?」
ザシャは死命蟲王に乗り笑う。
この黒薔薇の庭園はアンデッドの力を削ぐが、生きている虫には効き目が薄い。
この場で1番危険な相手はザシャなのかもしれなかった。
ならば、クーナが相手をするべきだろう。
「お前なんかと気が合うわけがないぞ! だが、蟲戦というのなら乗ってやる! 出てこい魔虹彩鋏甲虫!」
クーナの呼び声に応えて巨大な虹色のクワガタが出てくる。
クーナが飼っている蟲の中でも戦闘に特化して、姿も虹色に輝く美しい蟲である。
ザシャの不気味な蟲ごときに負けるつもりはない。
ザシャはさらに蛾人にウデムシやゲジゲジに似た気持ち悪い蟲達を召喚する。
もちろん、クーナも新たに蟲を召喚する。
クーナは頭上でも戦闘が繰り広げられているのを感じる。
クーナの大切なクロキとザルキシスの戦いが始まったのだ。
クーナはクロキの勝利を確信している。だから、目の前のザシャに集中する。
「さあ行け死命蟲王!」
ザシャの声と共に甲虫が向かって来る。
「魔虹彩鋏甲虫! あんな不細工等捻りつぶしてしまえ!」
◆
クロキはモードガルの頭上でザルキシスと対峙する。
ザルキシスの周りにはモードガルから伸びた巨大な触手が蠢いている。
触手の口には巨大な牙が生え、その奥から悪霊の嘆きが聞こえる。
その触手の間でグロリアスが自分を乗せて空を飛ぶ。
触手がグロリアスを捕えようと向かう。
触手の口が開くと青い光を吐き出す。
「グロリアス!」
クロキが叫ぶとグロリアスは咆哮して、爆炎の吐息で青い光を吹き飛ばす。
上位竜であるグロリアスの力ならその程度の攻撃でやられはしない。
爆炎の吐息で次々と触手を吹っ飛ばす。
「防ぐか! 暗黒騎士! 次はこれだ! 出てこい炎の髑髏共よ!」
次にザルキシスは炎を纏った巨大な髑髏を呼び出す。
炎の髑髏はクロキ達を喰らおうと襲い掛かる。
クロキは黒い炎を出して髑髏を消しとばす。
「おのれ! 暗黒騎士! ならばこれならどうだ! 悪霊よ! 我が剣に集まれ!」
ザルキシスの罪の剣に蒼い霊魂が纏わりつく。
一見炎のようにみえるが、感じるのは冷気である。
人の顔が浮き出た蒼炎の剣が向けて振るわれる。
クロキも黒い炎を剣身に纏わせ向かえ撃つ。
空中で炎がぶつかる。
「うわっ!」
飛ばされたのはクロキ達であった。
ザルキシスの力は凄まじく、モードガルから溢れる魔力が注ぎ込まれているようであった。
モードガルから放たれた悪霊がザルキシスの体に吸い込まれていくのがクロキの目に見える。
「死ね! 暗黒騎士!」
ザルキシスは剣を次々と振るう。
その一つ一つが強力で、クロキは受け流すだけで精一杯だ。
しかし、その勢いが徐々に弱くなる。
理由は黒薔薇によりモードガルの瘴気が吸われ、ザルキシスに渡す力がなくなっているからだ。
それに対してクロキは瘴気を吸って成長した黒薔薇から、魔力を吸収して力を増している。
そのため、次第にクロキが優位になっていく。
「ぐううううううう! 何故だ!? 何故だ!? 世界を! 世界を死で満たす事が何故出来ないのだ!?」
ザルキシスは悔しそうに叫ぶ。
クロキはその言葉を聞きザルキシスに少しだけ心が痛くなる。
ザルキシスは世界に死を撒く存在として生まれたのだ。それが敵わない事はとても悔しいのだろうと推測する。
「ザルキシス。お前もモデスのように変われたら良かったのに……」
クロキは呟く。
モデスの力は破壊の力だ。ナルゴルによって世界を破壊するために生まれた。
しかし、自身の考えで行動して、その運命を変えた。
ザルキシスも運命を変える事が出来るはずである。
世界を死で満たす事はさせない。クロキもこの世界に愛着があるのだ。
「行くぞ! ザルキシス! 竜達よ! 力を貸してくれ!」
クロキは体の中の竜達が咆哮する。
全身に活力が漲り、クロキは魔力が高まるのを感じる。
そして、クロキは魔剣を構える。
「おのれ暗黒騎士! モードガル! その全ての力を貸せ!」
次の瞬間、ザルキシスの体はモードガルに食らいつかれた。
飲み込まれたような音が響くと、モードガルの口が限界まで開かれる。
巨大なモードガルの口の中。そこにあったのはザルキシスの顔だ。
悪霊が一つになり顔となったのだ。
モードガルが口を大きく広げクロキを飲み込もうと迫る。
「グロリアス!」
クロキが叫ぶとグロリアスは飛び、そのすぐ後をモードガルが追う。
「はあああああ!」
クロキは渾身の力を込めて魔剣を横に振るう。
剣身から赤い光を帯びた黒い炎が伸びる。
「オノレエエエエエエエ! 暗黒騎士イイイイイイイイイ!」
ザルキシスの叫び。
力を失ったモードガルではクロキの力には敵わない。
モードガルは上下に斬り裂かれる。
上半身が吹き飛び、残った体が膝を付く。
するとグゥノ達から歓声が上がる。
捕らわれていたモードガルの下半身を黒薔薇が覆っていく。
残った死の眷属達は吹き飛んだ上半身へと集まる。
完全に消し飛ばす事は出来なかった。残ったモードガルの体は動き逃げようとしている。
「おのれ! 暗黒騎士! いつか貴様を縊り殺してやる!」
モードガルの体から出たザルキシスが叫ぶと死の眷属達が睨む。
ザファラーダにザルビュートにザシャ。彼らも健在であった。ザルキシスと同じように睨んでいる。
モードガルの体が幽幻の霧に包まれると消えていく。
黒薔薇の花園は魔道結界として未完成だ。結界の綻びから逃げたようだ。
クロキはグロリアスと共に庭園に降りる。
下にはクーナがいる。その傍らには巨大な蟲の死骸が横たわっている。
どうやらクーナが倒したようであった。
「クロキ!」
クーナは嬉しそうに駆け寄るとクロキに抱き着く。
クロキは腕を広げてクーナを受け止めると、頭を撫でる。
「さすがクロキだ! 死神なんか敵じゃないぞ!」
クーナが頭をクロキの胸に擦り付ける。
そのクーナの後ろからポレン達が近づく。
「うう、お腹空きました~」
「殿下~。さっき、いっぱい食べたはずなのさ」
「でも~。ぷーちゃん。あんなに動いたらお腹が空くよ~」
ポレンとプチナは緊張感のないやり取りをする。
それを見てクロキは笑う。
「こちらが優位とはいえ、さすがに討たせてはくれないみたいだね。ゲロゲロゲロ」
「はい、ヘルカート殿。強敵でした……」
ポレンと共に来たヘルカートが言うとクロキは頷く。
ザルキシスも死の御子も最後の力を振り絞って戦っていた。討ち取るのは容易ではない。
グゥノ達もこちらに来る。
「閣下。死神は去りました。どうしますか?」
ザルキシスは去った。追う事も出来るが、黒薔薇の花園はこの場所からは動かせない。
黒薔薇の花園のない所では戦うのは得策ではない。
「そうだね……。さすがにこれ以上戦う事は無理だし、ナルゴルに帰ろう。 まずは空船の修理だ。どんな状況かな?」
そう言って落ちたクロキは空船を見る。
プチナの配下である小熊人の工兵が空船を修理しているのが見える。
普通の熊人よりも小柄だが、彼らはとても器用だ。
よほど、壊れていなければ修復は可能のはずである。
クロキはワルキアの空を見る。
少しだけ青空が見えた気がするのだった。
★★★★★★★★★★★★後書き★★★★★★★★★★★★
後はエピローグです。
終わりは駆け足でした。
クーナ対ザシャとの戦いは後日加筆するかどうか迷います。
ちなみにムシキ〇グをイメージしました。
新章に入るのが遅く申し訳なく思いますが、マイペースで行きます。
ごめんなさい。
眼下で黒薔薇の花園が広がっている。
巨大な黒薔薇の花弁の中にいるのは妖花乙女達だ。
妖花乙女は瘴気を養分として成長するが、養分が足りなくなると生き物を殺して養分を吸う事もある。
しかし、今は問題ない。
なぜなら、瘴気の塊が目の前にあるのだから。
黒薔薇がモードガルに纏わりつき、瘴気を吸い上げる。
「我が眷属よ! あの黒薔薇を断ち切れ!」
ザルキシスが叫ぶ。
アンデッドにとって瘴気は動力源でもある。
それが、少なくなればアンデッドは動けなくなる。
だから、ザルキシスの言葉で死の軍勢が黒薔薇を排除しようと向かってくる。
もちろんポレンとヘルカート、グゥノ達が迎え撃つ。 
敵の方が数は多い。
しかし、この魔道結界の中ではポレン達が優位であるので、負けはしない。 
「クーナ。良いかい?」
クロキが振り向いてクーナを見る。
これからクロキはザルキシスと戦うのだ。
そして、下には死の御子がいる。こちらが優位でも奴らは危険だ。
クーナも加勢に行かねばならない。
だから、クーナは頷いた。
「もちろんだ! クロキ! 存分に戦ってくれ! クーナは下の死の軍勢を叩く!」
そう言ってクーナはグロリアスから飛び降りる。
モードガルの体に飛び降りるとアルラウネと切り裂こうとする幽鬼の騎士達に向かう。
「消えろ! 屍ども!」
クーナは大鎌で幽鬼の騎士数体を倒す。
幽鬼程度なら、どれ程の数がいてもクーナなら勝てる。
問題は死の御子であった。
蝙蝠女ザファラーダと蛆蝿ザルビュートはポレンと戦っている。
どちらも手負いだ。
腹を満たしたポレンなら両者が万全でも勝てるだろう。
だから、クーナは他の死の御子を探す。
ザファラーダやザルビュート以外にも強い死の御子はいる。
そいつらの相手をするべきであった。
薔薇に覆われたモードガルでは戦いが繰り広げられている。
クーナはその中を歩き、様子を見る。
「ところで、なぜお前はクーナの背後に立つのだ?」
歩いているクーナの背後に蛙人の戦士が近づいて来る。
その様子がおかしい。
もっとも、その原因はクーナにはわかる。
突然、蛙人から数本の触手が腹を突き破って出てくる。
触手の先には口があり、クーナに吸い付こうと襲いかかる。
「背後からくるなら、もっと怪しまれないようにするのだな。お前の動きはバレバレだ」
クーナは蛙人が敵に操られているのはわかっていた。
だから、簡単に対処できる。
大鎌を回転させて、触手を斬ると、蛙人の頭を斬り落とす。
頭の無くなった蛙人は逃げるように後ろにさがる。
「さすがだね。ますます欲しくなったよ。その可愛いほっぺに僕のシルシをつけてあげたいな」
蛙人の体の頭のなくなったから箇所から何者かが出てくる。
紅玉の公子ザシャ。
その姿は人間の子どもと同じである。
しかし、その本当の姿はクーナには見ていた。
巨大な醜い赤い蛭。
それがザシャの正体である。
ザシャは蛙人の体から出てくるといやらしく笑う。
「馬鹿か? クーナに触れて良いのはクロキだけだ。お前のような不細工が触れて良いと思うなよ。そもそもザファラーダに劣る貴様が勝てると思っているのか?」
クーナはザシャに大鎌を向ける。
クーナの知る限りザシャは死の公子の中でも特に強くはないはずであった。
ザファラーダやザルビュートに比べれば小物である。
だから、クーナは負けるとは思えなかった。
しかし、ザシャは余裕の表情である。
「それはどうかな? 確かに僕は弱い。だけど、それを補うために強い生物を作っているんだ。そして、このモードガルには僕の取って置きがあるのさ! 暗黒騎士の時には出さなかったこいつの相手をしてもらうよ! 出でよ死命蟲王!」
ザシャがそう叫ぶとモードガルの体の中から巨大な甲虫が出てくる。
巨大な顎をカシャカシャとならしクーナを威嚇する。
「君も蟲を使うようだね、僕も同じなんだ。気が合うかもしれないね、僕達は。さあ蟲戦といこうじゃないか?」
ザシャは死命蟲王に乗り笑う。
この黒薔薇の庭園はアンデッドの力を削ぐが、生きている虫には効き目が薄い。
この場で1番危険な相手はザシャなのかもしれなかった。
ならば、クーナが相手をするべきだろう。
「お前なんかと気が合うわけがないぞ! だが、蟲戦というのなら乗ってやる! 出てこい魔虹彩鋏甲虫!」
クーナの呼び声に応えて巨大な虹色のクワガタが出てくる。
クーナが飼っている蟲の中でも戦闘に特化して、姿も虹色に輝く美しい蟲である。
ザシャの不気味な蟲ごときに負けるつもりはない。
ザシャはさらに蛾人にウデムシやゲジゲジに似た気持ち悪い蟲達を召喚する。
もちろん、クーナも新たに蟲を召喚する。
クーナは頭上でも戦闘が繰り広げられているのを感じる。
クーナの大切なクロキとザルキシスの戦いが始まったのだ。
クーナはクロキの勝利を確信している。だから、目の前のザシャに集中する。
「さあ行け死命蟲王!」
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「魔虹彩鋏甲虫! あんな不細工等捻りつぶしてしまえ!」
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クロキはモードガルの頭上でザルキシスと対峙する。
ザルキシスの周りにはモードガルから伸びた巨大な触手が蠢いている。
触手の口には巨大な牙が生え、その奥から悪霊の嘆きが聞こえる。
その触手の間でグロリアスが自分を乗せて空を飛ぶ。
触手がグロリアスを捕えようと向かう。
触手の口が開くと青い光を吐き出す。
「グロリアス!」
クロキが叫ぶとグロリアスは咆哮して、爆炎の吐息で青い光を吹き飛ばす。
上位竜であるグロリアスの力ならその程度の攻撃でやられはしない。
爆炎の吐息で次々と触手を吹っ飛ばす。
「防ぐか! 暗黒騎士! 次はこれだ! 出てこい炎の髑髏共よ!」
次にザルキシスは炎を纏った巨大な髑髏を呼び出す。
炎の髑髏はクロキ達を喰らおうと襲い掛かる。
クロキは黒い炎を出して髑髏を消しとばす。
「おのれ! 暗黒騎士! ならばこれならどうだ! 悪霊よ! 我が剣に集まれ!」
ザルキシスの罪の剣に蒼い霊魂が纏わりつく。
一見炎のようにみえるが、感じるのは冷気である。
人の顔が浮き出た蒼炎の剣が向けて振るわれる。
クロキも黒い炎を剣身に纏わせ向かえ撃つ。
空中で炎がぶつかる。
「うわっ!」
飛ばされたのはクロキ達であった。
ザルキシスの力は凄まじく、モードガルから溢れる魔力が注ぎ込まれているようであった。
モードガルから放たれた悪霊がザルキシスの体に吸い込まれていくのがクロキの目に見える。
「死ね! 暗黒騎士!」
ザルキシスは剣を次々と振るう。
その一つ一つが強力で、クロキは受け流すだけで精一杯だ。
しかし、その勢いが徐々に弱くなる。
理由は黒薔薇によりモードガルの瘴気が吸われ、ザルキシスに渡す力がなくなっているからだ。
それに対してクロキは瘴気を吸って成長した黒薔薇から、魔力を吸収して力を増している。
そのため、次第にクロキが優位になっていく。
「ぐううううううう! 何故だ!? 何故だ!? 世界を! 世界を死で満たす事が何故出来ないのだ!?」
ザルキシスは悔しそうに叫ぶ。
クロキはその言葉を聞きザルキシスに少しだけ心が痛くなる。
ザルキシスは世界に死を撒く存在として生まれたのだ。それが敵わない事はとても悔しいのだろうと推測する。
「ザルキシス。お前もモデスのように変われたら良かったのに……」
クロキは呟く。
モデスの力は破壊の力だ。ナルゴルによって世界を破壊するために生まれた。
しかし、自身の考えで行動して、その運命を変えた。
ザルキシスも運命を変える事が出来るはずである。
世界を死で満たす事はさせない。クロキもこの世界に愛着があるのだ。
「行くぞ! ザルキシス! 竜達よ! 力を貸してくれ!」
クロキは体の中の竜達が咆哮する。
全身に活力が漲り、クロキは魔力が高まるのを感じる。
そして、クロキは魔剣を構える。
「おのれ暗黒騎士! モードガル! その全ての力を貸せ!」
次の瞬間、ザルキシスの体はモードガルに食らいつかれた。
飲み込まれたような音が響くと、モードガルの口が限界まで開かれる。
巨大なモードガルの口の中。そこにあったのはザルキシスの顔だ。
悪霊が一つになり顔となったのだ。
モードガルが口を大きく広げクロキを飲み込もうと迫る。
「グロリアス!」
クロキが叫ぶとグロリアスは飛び、そのすぐ後をモードガルが追う。
「はあああああ!」
クロキは渾身の力を込めて魔剣を横に振るう。
剣身から赤い光を帯びた黒い炎が伸びる。
「オノレエエエエエエエ! 暗黒騎士イイイイイイイイイ!」
ザルキシスの叫び。
力を失ったモードガルではクロキの力には敵わない。
モードガルは上下に斬り裂かれる。
上半身が吹き飛び、残った体が膝を付く。
するとグゥノ達から歓声が上がる。
捕らわれていたモードガルの下半身を黒薔薇が覆っていく。
残った死の眷属達は吹き飛んだ上半身へと集まる。
完全に消し飛ばす事は出来なかった。残ったモードガルの体は動き逃げようとしている。
「おのれ! 暗黒騎士! いつか貴様を縊り殺してやる!」
モードガルの体から出たザルキシスが叫ぶと死の眷属達が睨む。
ザファラーダにザルビュートにザシャ。彼らも健在であった。ザルキシスと同じように睨んでいる。
モードガルの体が幽幻の霧に包まれると消えていく。
黒薔薇の花園は魔道結界として未完成だ。結界の綻びから逃げたようだ。
クロキはグロリアスと共に庭園に降りる。
下にはクーナがいる。その傍らには巨大な蟲の死骸が横たわっている。
どうやらクーナが倒したようであった。
「クロキ!」
クーナは嬉しそうに駆け寄るとクロキに抱き着く。
クロキは腕を広げてクーナを受け止めると、頭を撫でる。
「さすがクロキだ! 死神なんか敵じゃないぞ!」
クーナが頭をクロキの胸に擦り付ける。
そのクーナの後ろからポレン達が近づく。
「うう、お腹空きました~」
「殿下~。さっき、いっぱい食べたはずなのさ」
「でも~。ぷーちゃん。あんなに動いたらお腹が空くよ~」
ポレンとプチナは緊張感のないやり取りをする。
それを見てクロキは笑う。
「こちらが優位とはいえ、さすがに討たせてはくれないみたいだね。ゲロゲロゲロ」
「はい、ヘルカート殿。強敵でした……」
ポレンと共に来たヘルカートが言うとクロキは頷く。
ザルキシスも死の御子も最後の力を振り絞って戦っていた。討ち取るのは容易ではない。
グゥノ達もこちらに来る。
「閣下。死神は去りました。どうしますか?」
ザルキシスは去った。追う事も出来るが、黒薔薇の花園はこの場所からは動かせない。
黒薔薇の花園のない所では戦うのは得策ではない。
「そうだね……。さすがにこれ以上戦う事は無理だし、ナルゴルに帰ろう。 まずは空船の修理だ。どんな状況かな?」
そう言って落ちたクロキは空船を見る。
プチナの配下である小熊人の工兵が空船を修理しているのが見える。
普通の熊人よりも小柄だが、彼らはとても器用だ。
よほど、壊れていなければ修復は可能のはずである。
クロキはワルキアの空を見る。
少しだけ青空が見えた気がするのだった。
★★★★★★★★★★★★後書き★★★★★★★★★★★★
後はエピローグです。
終わりは駆け足でした。
クーナ対ザシャとの戦いは後日加筆するかどうか迷います。
ちなみにムシキ〇グをイメージしました。
新章に入るのが遅く申し訳なく思いますが、マイペースで行きます。
ごめんなさい。
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コメント
眠気覚ましが足りない
修正報告を追加します。
捕らわれていたモードガルの下半身を黒薔薇が覆う。
↓
捕らわれていたモードガルの下半身を黒薔薇が覆っていく。
or
捕らわれていたモードガルの下半身を黒薔薇が覆いきる。
自分で提示したものでしたが、前後の文を考えると、間もなく制圧が終わるか、前の文と同時くらいに制圧が終わったか、となる文末にした方が良いと読み直して思いました。
眠気覚ましが足りない
更新お疲れ様です。
作品としては暗めのシナリオだった8章もようやく終わりですね。
改めてお疲れ様でした。
修正報告です。
だから、ザルキシスの言葉で死の軍勢が黒薔薇を排除しようと向かう。
もちろんポレンとヘルカートとグゥノ達が立ち向かう。
↓
だから、ザルキシスの言葉で死の軍勢が黒薔薇を排除しようと仕掛けてくる。
もちろんポレンとヘルカート、グゥノ達が立ち向かう。
or
だから、ザルキシスの言葉で死の軍勢が黒薔薇を排除しようと向かってくる。
もちろんポレンとヘルカート、グゥノ達が迎え撃つ。
1文目は“向かう”だとこの文の視点は死の軍勢の誰かになってしまいますので“くる”を追加してクロキ視点に。
また、2文とも“向かう”で終わっているため、どちらかを同じ意味の違う言葉に変えた方が良いと思います。
しかし、この魔道結界の中ではクーナ達が優位であるので、負けはしない。
↓
しかし、この魔道結界の中ではポレン達が優位であるので、負けはしない。
この時点ではクーナは参戦してないので
だから、クーナは頷く。
下には死の御子がいる。こちらが優位でも奴らは危険だ。
クーナも加勢に行かねばならない。
↓
そして、下には死の御子がいる。こちらが優位でも奴らは危険だ。
クーナも加勢に行かねばならない。
だから、クーナは頷いた。
頷くのは最後で良いでしょう。
また、一文目に繰り上がった二文目はクロキとクーナが離れるクーナ側の理由になるので、“そして”を追加。
ザルキシスの体がモードガルの口へと飲み込まれる。
↓
ザルキシスがモードガルの口へと飛び込む。
ザルキシスが飲み込まれた次の瞬間、~
or
次の瞬間、ザルキシスの体はモードガルに食らいつかれた。
飲み込まれたような音が響くと、~
申し訳ありませんが、“飲み込まれる”だけだとザルキシスあるいはモードガルがどう動いたのか分かりにくいです。捉え方によってはモードガルの吸い込み攻撃に、ザルキシスがマヌケにも巻き込まれたようにも思えます。
モードガルの身体を乗っとるためにザルキシスから行ったのか、ザルキシスの指示としてモードガルが動いたのか、案を提示しますので、変更をお願いします。
それぞれの二文目は本来この後に来ている文の“すると”に変わって付けるのはいかがでしょうか。
モードガルの残った体を黒薔薇が覆う。
↓
捕らわれていたモードガルの下半身を黒薔薇が覆う。
残った体だけだと切られた上半身か下半身が分かりませんので、アルラウネがアルラウネによって黒薔薇がまとわりついていた下半身を指定しました。
これなら、死の眷属たちが回収したのが自動的に上半身になりますし。
さすがにこれ以上戦う事は無理かな。だから、ナルゴルに帰ろう。
↓
さすがにこれ以上戦う事は無理だし、ナルゴルに帰ろう。
or
さすがにこれ以上戦う事は無理かな。だから、ナルゴルに帰ろうと思う。
“帰ろう”で終わらせるのであれば、“無理”を“だ”と断定してしまう方がいいと思います。“し”は接続助詞です。
“だから”を残すなら“と思う”を最後に付けて提案な形にした方がいいかと。
ノベルバユーザー400029
早く続きが読みたいです…
根崎タケル
更新しました。
後1話で8章は終わりです。
長かったです……。