暗黒騎士物語
炎の天使
クロキが甲板から外を見る、眼下に広がる雲はまるで海の様である。
空船はその雲海の上を浮かぶように進む。
「ほう、思ったより速いぞ、クロキ。後少しでワルキアに到着するみたいだぞ」
クロキの横にいるクーナは空船の進み具合を見て喜ぶ。
確かに速い。ナルゴルから出発してワルキアまであと少しだ。
そして、ワルキアはザルキシスが本拠地としていた死都モードガルがある土地でもある。
モードガルが発する瘴気のため、土地は痩せて、生き物は住みにくい。
中央大陸の北部に位置するワルキアは氷の島から流れる冷気の為、常に寒く、薄曇りの天気が多い。
そんなワルキアで死んだ生物はアンデッドになりやすく、日の光が弱いため、ザルキシスの眷属にとって住みやすい土地となっている。
今から向かうのはそんな土地だったりする。
「そうだね、クーナ。まさか、空船を貰えると思わなかったよ」
クロキは自身の乗る空船を見る。
乗っている空船はモデスから貰ったものだ。
クロキが死都モードガルへと行ってくれる事への餞別であった。
魔王の御座船である巨大空中戦艦ナグルファルに比べるとさすがに小さい。
しかし、ナグルファルに比べると小さいだけで、空船はかなり大きく、巨体であるグロリアスも乗る事ができた。
これならアルフォスの空船にも負けないだろう。
「さて、もうすぐワルキアだけど、どうするかね? 暗黒騎士? ゲロゲロゲロ」
同乗しているヘルカートはクロキに聞く。
今回のワルキア行きにはヘルカートも付いて来た。
クロキにワルキアに行くように言ったのは実質ヘルカートなので、責任を取って付いて来たのだ。
「そうですね。さすがに空船で入るのは無理でしょう。ですから途中で降りて徒歩で入ります。それに少人数で行かなければいけないでしょうね」
敵地に潜入するのだ。
空船で入ればすぐに気付かれる。
それは大勢で行っても同じ事であった。
少人数で入るしかない。
「そうか、もちろんクーナも行くぞ、」
クーナはさも当然のように言う。
「う~ん、クーナは目立ちすぎるから。出来れば残って欲しいのだけど……」
クロキは困った顔をしてクーナを見る。
クーナは隠密には向かない。
それはヘルカートにも言える。両者とも瘴気に耐える力を持っているが、目立つのである。
出来れば空船に残って欲しかった。
「それにこいつらも連れて行くぞ。役に立つはずだからな」
そう言ってクーナは道化とティベルを見る。
「なんだか。目立ちそうな気がするけど……」
クロキは疑問に思う。
姿隠しの魔法が使えるティベルはともかく道化は目立ちそうな気がしたからだ。
正直に言うと役に立たないのではとクロキは思う。
しかし、クーナを前にそれは言えなかった。
「連れて行くのだね。暗黒騎士。ゲロゲロ。こいつらは役に立つよ、白銀に心配をさせるつもりかえ?」
クロキの心中を察したヘルカートは不気味に笑う。
何か含む所がある様子であった。
「わかりました。ヘルカート殿」
クロキは頷く。
ヘルカートはルーガスに匹敵する頭脳を持つ大魔女である。
その言葉にクロキは従う事にする。
それに、クーナに心配をかけるなと言われて聞かないわけにはいかなかった。
「閣下。どうやら、偵察に出ていたインプが戻ったようです」
クーナ達と話をしている時だった、グゥノが報告する。
デイモン族の女騎士である彼女達も、今回は同行している。
本当は自分とグロリアスだけで行く予定だった。
しかし、モデスがそれは危険だと言って、結局大勢で行く事になったのである。
ジプシールの時は来なかったクーナも今回は同行している。
常に一緒にいる道化の人形とダークフェアリーのティベルもいるので、甲板はとても賑やかであった。
「お疲れ様。グゥノ卿。インプは何と?」
クロキはグゥノに尋ねる。
インプはデイモンが作り出す魔法生物である。
インプは体調10センチ程で、毛のない蝙蝠の羽を持つ子供のような姿をしている。 
主に使い魔として使われ、偵察や契約を結んだ人間に貸し出されたりする。
グゥノの使い魔であるインプは偵察のために空船の外に出ていたのである。
「それが、閣下。ワルキアの周囲には天使達がいるようです。このまま進めば発見されます」
「天使が? そう言えばエリオスの連中は、ザルキシスがモードガルに戻った事を知っているのだったな」
クロキはワルキアの方角を見ると、ヘイボス神の言葉を思い出す。
天使達がワルキア周辺にいてもおかしくなかった。
だけど、問題はそこではない。
空船の真上から敵意を感じる。
インプは付けられていたようであった。
「はああああああ!」
何者かがクロキの頭上から突っ込んで来る。
クロキは魔剣を呼び出し、上空に飛ぶ。
ガキン!
空中で剣と剣がぶつかる。
クロキは突っ込んで来た者を確認する。
クロキと違い兜はしていない、燃えるような赤い髪の天使であった。
赤い髪の天使はクロキの魔剣に弾かれるように飛び、回転すると空船から距離を取る。
そして、クロキはそのままクーナの横へと降りる。
「再び会ったな、暗黒騎士! この間の借りを返してやる!」
赤い髪の天使は怒鳴ると、その体から炎を吹き出す。
「前に会った事が有ったかな?」
クロキは首を傾げる。
はっきり言って目の前の天使の事を知らなかった。
クロキとは初対面のはずである。
「覚えてないだと! 貴様があの美しいレーナ様の地上の神殿を襲った帰り道、俺達はお前と戦っただろうが!」
赤い髪の天使は悔しそうに言う。
レーナの地上の神殿といえば聖レナリア共和国の神殿の事である。
クロキは、あの時の帰り道。天使達に遭遇して戦った覚えがある。
この赤い髪の天使はその中にいたのかもしれなかった。
クロキは赤い髪の天使の背後を見る。
すると、はるか先の方から天使とペガサスに乗った騎士の大群が近づいているのがわかる。
そして、その中には再会したくない奴もいた。
少しまずい状況であった。
「俺の名はアータル! 白麗の聖騎士アルフォス様の右腕にして、聖騎士団の副長だ! 暗黒騎士! 俺と戦ってもらうぞ!」
アータルと名乗った天使は叫ぶ。
しかし、クロキはこの天使とは戦いたくなかった。
なぜなら、この先ザルキシスを相手にしなければならないからだ。
天使達と争っている場合ではない。
この目の前の天使だって、ザルキシスに対応するために来ているはずであった。
クロキ達と戦っている場合ではないはずである。
しかし、アータルの様子を見る限り、争う様子である。
クロキは溜息が出そうになる。
「待ちたまえ! アータル!」
何者かがアータルを止める。
その者は白い竜に乗り、美しい純白の鎧に纏っている。
クロキは会うのは2度目であった。
「止めないで下さい、アルフォス様!」
アータルは振り返らずに答える。
アルフォスもこの地に来ていたのである。
ザルキシスに対抗できそうな、エリオスの神はアルフォスだけなので当然とも言える。
「君では勝てない! アータル! 彼は水晶庭園の中で僕と互角に戦ったのだよ! そんな相手に戦いを挑むつもりかい?」
アルフォスはそう言うとアータルが驚く顔をする。
そして、横でクーナが不満そうに「互角?」と呟くのがクロキに聞こえる。
「馬鹿な? アルフォス様の水晶庭園の中で互角に戦える者がいるなんて……。何か卑怯な手を使ったのではないのか、信じられない」
アータルは驚いた表情でクロキを見る。
見るからに戦意がなくなっている。
クロキはそれを見てほっとする。
これで天使達と争わなくても良さそうであった。
そして、アルフォスもまたクロキと戦うつもりはないようであった。
これで、ザルキシスに専念できるだろう。
「そう言う事だよ、アータル。それにザルキシスもいる。ここで彼らと争う暇はないよ。引きたまえ」
「はい、わかりましたアルフォス様。しかし、これだけは見せておきます」
そう言うとアータルは自らの髪の毛を取る。
出て来たのは禿げ頭だ。
「えっ? ヅラだったの!?」
クロキは驚く。
アータルの赤い髪は偽物であった。
しかし、それを見せる理由は分からなかった。
アータルの頭がキラリと光る。
「ふふふ。驚いたか暗黒騎士! そして知っているか? 光の勇者が元いた世界では失敗して反省する時に、髪の毛を全て剃り落す事を! これはお前に負けた決意の表明だ! 思い知れ!」
アータルは「ドヤッ」と笑いながら言う。
「えっ、まあ……。いや、本当に驚いたよ」
禿頭を見せられてクロキは何と言って良いかわからなくなる。
天使は美しい姿をした種族である。
目の前のアータルも美しく精悍な顔つきをしている。
しかし、色々と台なしであった。
「さて、暗黒騎士。また会ったね。どうやら君達もザルキシスが気になるようだね。だから、ここは休戦と行こうじゃないか? どうかな?」
戸惑うクロキをよそにアルフォスは休戦を申し出る。
「アルフォス様!」
アルフォスが提案するとアータルは抗議する。
しかし、アルフォスは首を振る。
「ザルキシスは危険だよ。アータル。暗黒騎士がザルキシスと戦ってくれるのなら、願ったりじゃないか」
アルフォスは笑う。
(自分とザルキシスを潰し合わせるつもりか?)
クロキはアルフォスを睨む。
しかし、それでもアルフォス達と戦わずに済むのなら、良かったと考えるべきかもしれなかった。
「わかった。その申し出を受けるよ。互いに手を出さない。それで良いかな」
「ああ、もちろんだとも暗黒騎士。アータルも良いね。これは命令だよ」
「……ぐっ。わかりましたアルフォス様」
アータルは不満そうだが、渋々了承する。
「さあ、みんな行こうじゃないか」
アルフォスはそう言うとアータルを含む天使達が撤退していく。
「まあ、何にせよ。奴らと争わなくて良いのなら助かるね。ゲロゲロ」
「はい、ヘルカート殿」
クロキとヘルカートは頷く。
「申し訳ございません。閣下。付けられていたようです」
アルフォス達が去るとグゥノはそう言って頭を下げる。
「仕方がないよ、天使達がいる以上は避けては通れない。それよりもインプを放って情報収集をお願いするよ」
クロキはそう言って、グゥノに頭を上げるように促す。
「何だか、暑苦しい奴だったな」
アータルのキラリと光る禿げ頭を見ながら、クーナは呟くのだった。
★★★★★★★★★★★★後書き★★★★★★★★★★★★
更新です。
ジュシオの話は少し加筆する予定なので別にしました。
そのため、ちょっと短くなります。
結局アータルはギャグキャラになりました。
そして、カクヨムとマグネットにて設定資料集トライデンとゲナを追加しました。
また、大賢者の蒼鱗の海竜王を紺碧の海竜王に変更しました。
白銀、漆黒、黄金とあって鱗があるのは変かなと思ったのです。
空船はその雲海の上を浮かぶように進む。
「ほう、思ったより速いぞ、クロキ。後少しでワルキアに到着するみたいだぞ」
クロキの横にいるクーナは空船の進み具合を見て喜ぶ。
確かに速い。ナルゴルから出発してワルキアまであと少しだ。
そして、ワルキアはザルキシスが本拠地としていた死都モードガルがある土地でもある。
モードガルが発する瘴気のため、土地は痩せて、生き物は住みにくい。
中央大陸の北部に位置するワルキアは氷の島から流れる冷気の為、常に寒く、薄曇りの天気が多い。
そんなワルキアで死んだ生物はアンデッドになりやすく、日の光が弱いため、ザルキシスの眷属にとって住みやすい土地となっている。
今から向かうのはそんな土地だったりする。
「そうだね、クーナ。まさか、空船を貰えると思わなかったよ」
クロキは自身の乗る空船を見る。
乗っている空船はモデスから貰ったものだ。
クロキが死都モードガルへと行ってくれる事への餞別であった。
魔王の御座船である巨大空中戦艦ナグルファルに比べるとさすがに小さい。
しかし、ナグルファルに比べると小さいだけで、空船はかなり大きく、巨体であるグロリアスも乗る事ができた。
これならアルフォスの空船にも負けないだろう。
「さて、もうすぐワルキアだけど、どうするかね? 暗黒騎士? ゲロゲロゲロ」
同乗しているヘルカートはクロキに聞く。
今回のワルキア行きにはヘルカートも付いて来た。
クロキにワルキアに行くように言ったのは実質ヘルカートなので、責任を取って付いて来たのだ。
「そうですね。さすがに空船で入るのは無理でしょう。ですから途中で降りて徒歩で入ります。それに少人数で行かなければいけないでしょうね」
敵地に潜入するのだ。
空船で入ればすぐに気付かれる。
それは大勢で行っても同じ事であった。
少人数で入るしかない。
「そうか、もちろんクーナも行くぞ、」
クーナはさも当然のように言う。
「う~ん、クーナは目立ちすぎるから。出来れば残って欲しいのだけど……」
クロキは困った顔をしてクーナを見る。
クーナは隠密には向かない。
それはヘルカートにも言える。両者とも瘴気に耐える力を持っているが、目立つのである。
出来れば空船に残って欲しかった。
「それにこいつらも連れて行くぞ。役に立つはずだからな」
そう言ってクーナは道化とティベルを見る。
「なんだか。目立ちそうな気がするけど……」
クロキは疑問に思う。
姿隠しの魔法が使えるティベルはともかく道化は目立ちそうな気がしたからだ。
正直に言うと役に立たないのではとクロキは思う。
しかし、クーナを前にそれは言えなかった。
「連れて行くのだね。暗黒騎士。ゲロゲロ。こいつらは役に立つよ、白銀に心配をさせるつもりかえ?」
クロキの心中を察したヘルカートは不気味に笑う。
何か含む所がある様子であった。
「わかりました。ヘルカート殿」
クロキは頷く。
ヘルカートはルーガスに匹敵する頭脳を持つ大魔女である。
その言葉にクロキは従う事にする。
それに、クーナに心配をかけるなと言われて聞かないわけにはいかなかった。
「閣下。どうやら、偵察に出ていたインプが戻ったようです」
クーナ達と話をしている時だった、グゥノが報告する。
デイモン族の女騎士である彼女達も、今回は同行している。
本当は自分とグロリアスだけで行く予定だった。
しかし、モデスがそれは危険だと言って、結局大勢で行く事になったのである。
ジプシールの時は来なかったクーナも今回は同行している。
常に一緒にいる道化の人形とダークフェアリーのティベルもいるので、甲板はとても賑やかであった。
「お疲れ様。グゥノ卿。インプは何と?」
クロキはグゥノに尋ねる。
インプはデイモンが作り出す魔法生物である。
インプは体調10センチ程で、毛のない蝙蝠の羽を持つ子供のような姿をしている。 
主に使い魔として使われ、偵察や契約を結んだ人間に貸し出されたりする。
グゥノの使い魔であるインプは偵察のために空船の外に出ていたのである。
「それが、閣下。ワルキアの周囲には天使達がいるようです。このまま進めば発見されます」
「天使が? そう言えばエリオスの連中は、ザルキシスがモードガルに戻った事を知っているのだったな」
クロキはワルキアの方角を見ると、ヘイボス神の言葉を思い出す。
天使達がワルキア周辺にいてもおかしくなかった。
だけど、問題はそこではない。
空船の真上から敵意を感じる。
インプは付けられていたようであった。
「はああああああ!」
何者かがクロキの頭上から突っ込んで来る。
クロキは魔剣を呼び出し、上空に飛ぶ。
ガキン!
空中で剣と剣がぶつかる。
クロキは突っ込んで来た者を確認する。
クロキと違い兜はしていない、燃えるような赤い髪の天使であった。
赤い髪の天使はクロキの魔剣に弾かれるように飛び、回転すると空船から距離を取る。
そして、クロキはそのままクーナの横へと降りる。
「再び会ったな、暗黒騎士! この間の借りを返してやる!」
赤い髪の天使は怒鳴ると、その体から炎を吹き出す。
「前に会った事が有ったかな?」
クロキは首を傾げる。
はっきり言って目の前の天使の事を知らなかった。
クロキとは初対面のはずである。
「覚えてないだと! 貴様があの美しいレーナ様の地上の神殿を襲った帰り道、俺達はお前と戦っただろうが!」
赤い髪の天使は悔しそうに言う。
レーナの地上の神殿といえば聖レナリア共和国の神殿の事である。
クロキは、あの時の帰り道。天使達に遭遇して戦った覚えがある。
この赤い髪の天使はその中にいたのかもしれなかった。
クロキは赤い髪の天使の背後を見る。
すると、はるか先の方から天使とペガサスに乗った騎士の大群が近づいているのがわかる。
そして、その中には再会したくない奴もいた。
少しまずい状況であった。
「俺の名はアータル! 白麗の聖騎士アルフォス様の右腕にして、聖騎士団の副長だ! 暗黒騎士! 俺と戦ってもらうぞ!」
アータルと名乗った天使は叫ぶ。
しかし、クロキはこの天使とは戦いたくなかった。
なぜなら、この先ザルキシスを相手にしなければならないからだ。
天使達と争っている場合ではない。
この目の前の天使だって、ザルキシスに対応するために来ているはずであった。
クロキ達と戦っている場合ではないはずである。
しかし、アータルの様子を見る限り、争う様子である。
クロキは溜息が出そうになる。
「待ちたまえ! アータル!」
何者かがアータルを止める。
その者は白い竜に乗り、美しい純白の鎧に纏っている。
クロキは会うのは2度目であった。
「止めないで下さい、アルフォス様!」
アータルは振り返らずに答える。
アルフォスもこの地に来ていたのである。
ザルキシスに対抗できそうな、エリオスの神はアルフォスだけなので当然とも言える。
「君では勝てない! アータル! 彼は水晶庭園の中で僕と互角に戦ったのだよ! そんな相手に戦いを挑むつもりかい?」
アルフォスはそう言うとアータルが驚く顔をする。
そして、横でクーナが不満そうに「互角?」と呟くのがクロキに聞こえる。
「馬鹿な? アルフォス様の水晶庭園の中で互角に戦える者がいるなんて……。何か卑怯な手を使ったのではないのか、信じられない」
アータルは驚いた表情でクロキを見る。
見るからに戦意がなくなっている。
クロキはそれを見てほっとする。
これで天使達と争わなくても良さそうであった。
そして、アルフォスもまたクロキと戦うつもりはないようであった。
これで、ザルキシスに専念できるだろう。
「そう言う事だよ、アータル。それにザルキシスもいる。ここで彼らと争う暇はないよ。引きたまえ」
「はい、わかりましたアルフォス様。しかし、これだけは見せておきます」
そう言うとアータルは自らの髪の毛を取る。
出て来たのは禿げ頭だ。
「えっ? ヅラだったの!?」
クロキは驚く。
アータルの赤い髪は偽物であった。
しかし、それを見せる理由は分からなかった。
アータルの頭がキラリと光る。
「ふふふ。驚いたか暗黒騎士! そして知っているか? 光の勇者が元いた世界では失敗して反省する時に、髪の毛を全て剃り落す事を! これはお前に負けた決意の表明だ! 思い知れ!」
アータルは「ドヤッ」と笑いながら言う。
「えっ、まあ……。いや、本当に驚いたよ」
禿頭を見せられてクロキは何と言って良いかわからなくなる。
天使は美しい姿をした種族である。
目の前のアータルも美しく精悍な顔つきをしている。
しかし、色々と台なしであった。
「さて、暗黒騎士。また会ったね。どうやら君達もザルキシスが気になるようだね。だから、ここは休戦と行こうじゃないか? どうかな?」
戸惑うクロキをよそにアルフォスは休戦を申し出る。
「アルフォス様!」
アルフォスが提案するとアータルは抗議する。
しかし、アルフォスは首を振る。
「ザルキシスは危険だよ。アータル。暗黒騎士がザルキシスと戦ってくれるのなら、願ったりじゃないか」
アルフォスは笑う。
(自分とザルキシスを潰し合わせるつもりか?)
クロキはアルフォスを睨む。
しかし、それでもアルフォス達と戦わずに済むのなら、良かったと考えるべきかもしれなかった。
「わかった。その申し出を受けるよ。互いに手を出さない。それで良いかな」
「ああ、もちろんだとも暗黒騎士。アータルも良いね。これは命令だよ」
「……ぐっ。わかりましたアルフォス様」
アータルは不満そうだが、渋々了承する。
「さあ、みんな行こうじゃないか」
アルフォスはそう言うとアータルを含む天使達が撤退していく。
「まあ、何にせよ。奴らと争わなくて良いのなら助かるね。ゲロゲロ」
「はい、ヘルカート殿」
クロキとヘルカートは頷く。
「申し訳ございません。閣下。付けられていたようです」
アルフォス達が去るとグゥノはそう言って頭を下げる。
「仕方がないよ、天使達がいる以上は避けては通れない。それよりもインプを放って情報収集をお願いするよ」
クロキはそう言って、グゥノに頭を上げるように促す。
「何だか、暑苦しい奴だったな」
アータルのキラリと光る禿げ頭を見ながら、クーナは呟くのだった。
★★★★★★★★★★★★後書き★★★★★★★★★★★★
更新です。
ジュシオの話は少し加筆する予定なので別にしました。
そのため、ちょっと短くなります。
結局アータルはギャグキャラになりました。
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コメント
眠気覚ましが足りない
炎の天使より修正報告です。
そうか、もちろんクーナも行くぞ、
↓
そうか、もちろんクーナも行くぞ!
このあと「」の閉じなので、句点は無いと思い“!”に。
cyber
黒木の戦いを際立たせて第8章を修正してください。実際、物語の最初から最後まで黒木が主人公であり、物語にまったく影響を与えることなく勝利し、常に心理学も悪い敗者です。
最後に、レイジは物語に何をもたらしましたか?これまでのところ、物語はレイジ派にとって有利すぎました。何も失うことなく負け、勝利は賞賛され、黒木の努力の一部はレイジ派によって受けられました。
レイジが何をしようとも、彼はそれを手放し、ヒーローに罰や悪い結果は起こらない。
あなたはレイジにあまりにも多くの利点を与え、黒木を押し下げ続けました。ストーリーは7、8チャプター以上で、大きな進歩はありませんでしたが、冒険のナンセンスに加えてほとんど進歩はありませんでした。
レイジグループは、彼らをより良い方向に変えるための苦難や絶望を実際に持っていません。黒木はすべての苦難を引き継いで、何も起こらなかったかのように家に帰りました。
黒木の人生には意味がなく、無意味な戦いに勝つと物語は行き詰まる。黒木はレースに出会うために冒険に出かけ、他の神は彼らとつながりを持ち、黒木は多くのレースから尊敬の念を得るために戦い、勝つべきです。後で問題に対処します。しかし、最初から黒木は何もできず、彼は何も勝ちませんでした。彼は何もしませんでした。
ギリシャやヨーロッパの英雄についての伝説を参照すると、黒木と同じくらい弱い英雄がいるのかわかりますか?物語の主人公である黒木が目立つことを難しくしましたか?
眠気覚ましが足りない
更新お疲れ様です。
おそらく、読者全員が“え?誰?”となる人物ですよね、アータル。
レーナと初めて会った後の戦いはプロローグという形でのダイジェストだったので仕方ないとは思いますが。
前回の感想の際になろう版未読の方への配慮でボカしたのですが、先生自らバラしていくとは。
まぁ、その加筆で遅れるジュシオ君のシーンはあとで割り込みで良いと思いますよ。
あれもプロローグみたいなものですし。
根崎タケル
更新しました。
魔戦士は不評じゃなくて良かったです。
そしてズラ天使アータル登場です。