暗黒騎士物語

根崎タケル

神々の空騒ぎ

 チユキの目と鼻の先をキンキラキンの豪華な空船が飛んでいる。
 その船首には半裸な爆乳女神。
 女神は体中に宝石が散りばめられた装飾品を身に付けているため、とても眩しい。
 何とも目に優しくない女神様であった。

「みんなーーー!! 美と愛の女神イシュティアちゃんが来てあげたわよ―――!!!!!」

 イシュティアと名乗った女神が邪神達に手を振る。
 すると巨大な胸がブルンブルンと揺れる。
 そのあまりの大きさにチユキは自身の胸と比べてしまう。

(こんちくしょう!! 私よりもはるかにでかい!!)

 チユキの胸は 明らかにイシュティアに比べて貧相であった。
 イシュティアが現れその胸を揺らすたびに邪神達が歓声を上げる。
 チユキは「お前らさっきまでレーナを巡って争っていただろうが」と言いたくなる。

「チユキさん。何だかすごいのが来たよ」

 リノはイシュティアを見てあっけにとられた表情で私に言う。
 その手が自身の胸に添えられている。
 リノもまた自身の胸とイシュティアの胸を比べてしまったようであった。
 チユキは「まだ、育つ可能性があるよ」と言ってあげたくなる。

「そうね。リノさん。でも、確かイシュティアって名乗っていたわね……。聞いたことがあるわ」

 チユキはイシュティアと言う名に聞き覚えがあった。

 愛と美の女神イシュティア。

 レーナと同じエリオスの神々の一柱である。
 チユキはなぜ、急にここに現れたのだろうかと首を傾げる。
 イシュティアが現れた事でレーナを巡る争いは中断している。
 邪神達はイシュティアに目が釘付けになり、争うどころではなくなったからだ。
 しかし、おかげでチユキ達は一息つける。
 レイジは邪神達から離れ、シロネとナオも蠍神ギルタルから離れている。

「ほう? イシュティアかい? お前が来るとはね。見学に来たのかい?」
「ええ。そうよ、ヘルカート。久しぶりね。こんな面白そうな事をするなら誘って欲しかったわ」

 イシュティアはヘルカートと邪神達を眺めながら言う。

「イシュティア様! 面白がらないで下さい!!」

 イシュティアの乗った船から抗議する声が聞こえる。
 抗議したのはいかにも魔術師といった格好の者である。
 恰好の者と表現せざるを得なかったのは魔術師の姿をした者の性別がチユキにはわからなかったからだ。
 魔術師は老人の模した仮面を身に付け、大きなつばの広い三角錐の帽子を被っている。
 つまり、顔が全くわからない。
 声も仮面の為か性別がわかりにくい。
 ただ、仮面と違ってチユキは若者のような気がした。

(イシュティアの船に乗っている所を見るとエリオスの関係者だろうか?)

 イシュティアは仮面を被った魔術師を見る。
 その仮面を被った魔術師はイシュティアとヘルカートに抗議をしている。

「ほう誰かと思えば。ルーガスの弟子のトトナかい? お前さんも来るとはね。さすがに兄が心配かい? ゲロゲロゲロ」
「はい。お久しぶりです。ヘルカート師。申し訳ございませんが兄を連れ帰させてもらいます。兄に何かあると後が面倒なので……」
「ちょっと待て? 妹よ! どういう意味だ、それは!!」

 黒獅子頭の神が叫ぶ。
 その言葉から、チユキは仮面を被った魔術師が女性である事に気付く。
 そして、チユキはトトナという名前にも聞き覚えがあった。

 知識と書物の女神トトナ。

 イシュティアと同じくエリオスの女神である。
 魔術師達に信仰されている女神であった。

「まあ構わないよ。もとより遊びのようなものだからね。ゲロゲロ。だけど、お前の兄は戦いをやめるつもりはないようだねえ」

 ヘルカートは不気味に笑う。
 チユキは彼女達のやり取りを見て疑問に思う。 
 彼女達はどこか親しげであったからだ。
 邪神達はエリオスの敵のはずであった。
 しかし、イシュティアはどこか邪神達と親しげである。
 それにエリオスの女神であるトトナが邪神を兄と呼ぶので、チユキは何か頭がごちゃごちゃしてきそうであった。

「そうだ! こんなポッと出の奴にレーナが奪われてたまるか! 邪魔をするな!!」

 黒獅子がそう言うと邪神達がそうだそうだと大声を上げる。
 それを聞いたトトナは抱える。

「ふふ、面白くなってきたじゃない。男がギラギラした目で女を巡って争うのって、見ていてゾクゾクするわ」

 トトナとは違ってイシュティアは楽しそうであった。
 そして、その目がレイジの所で止まる。
 その目はネコ科の肉食獣のように細くなる。

「貴方がレーナちゃんの勇者で良いのかしら?」

 イシュティアが聞くとレイジが頷く。

「ああ、そうだ。俺がレーナの勇者だ」
「あら、やっぱりそうなのね。噂通りの美男子ね。そして、強い。これだけの男達が束になっても敵わないのですもの。レーナちゃんが夢中になるわけね」
「ぐぬぬぬぬ!!!!」

 邪神達の悔しがる声が聞こえる。
 仲間割れをしていたとしても、これだけの数を相手にレイジは優勢に戦っていた。
 単身ではどの神もレイジに敵わないのは誰が見てもわかる事であった。

「ふふ。素敵だわ、貴方。戦いが終わったら。私とお話ししない? 何だったら寝所を共にしても良いわよ」
「はは。そいつは魅力的な提案だな」

 イシュティアが笑いかけるとレイジが笑って返す。

「母上! どういう事ですか!? 貴方には父上がいるではないですか?」

 レイジに最初に倒されたキラキラした神ハルセスがイシュティアの側に来る。

(母上って? 親子だったの!?)

 チユキはイシュティアとハルセスのやり取りを聞いていて驚く。

「あらハルちゃん? 貴方も来ていたの? そういえば前にレーナちゃんの映像を見た時に詳細を私に尋ねてたわね~。小さい頃は私にべったりだったのにお母さん哀しいわ~」
「母上!!」
「まあ、でも気持ちもわかるわ。このままだとレーナちゃんが取られちゃうものね~。だからみんなで恋敵を潰す。私はそういうの嫌いじゃないわ。もっともうまくいっていないみたいだけどね」

 イシュティアはレイジを見て妖艶に微笑む。

「お待ちなさい!! イシュティア!! 他の者はともかく!! この私がこの男に劣るとは聞き捨てなりませんね!! 良いでしょう!! 他の者達が敗れた後でゆっくりと相手にしてあげる予定でしたが!! ここで私がこの男を倒して差し上げましょう!!」

 猛烈に抗議をしたのはシロネ達の相手をしていたギルタルである。
 ギルタルだけは正面からレイジと戦っていなかった。
 ギルタルはシロネとナオと戦っても余裕だった。
 その実力はシロネと人に戻ったナオの顔が物語っている。
 ギルタルはシロネとナオを相手に手加減をして戦っていた。
 相当な実力者なのは間違いない。

「待て! 俺はまだ負けていない! 引っ込めギルタル! 俺が勇者の相手をする」

 しかし、黒獅子がレイジに剣を向けて叫ぶ。

「待って兄さん! もうやめて! 馬鹿な事はやめてエリオスに帰りましょう! お母さんが心配します!!」
「悪いがやめる事はできん! これは譲れない戦い……ぐっ!!」

 黒獅子が突然苦しみだす。

「油断しすぎですよ、トールズ。貴方と私は本来敵同志。私の毒で苦しみながら退場しなさい」

 それは一瞬だったギルタルの毒の尾が鞭のようにしなると黒獅子を刺したのである。

「貴様……。ギルタル……」

 黒獅子がギルタルを見て呟くとそのまま飛ぶ力を無くして落ちて行く。

「兄さん!!」

 落ちて行く黒獅子を見てトトナはイシュティアの船から慌てて飛び降りる。

「さあ、貴方達も消えなさい。邪魔です。有象無象は引っ込んでいなさい」
「何!! どういう意味だギルタル!!」
「なんだと!! この野郎!!」
「手前!! ギルタル!!」
「ちょっと強いからって良い気になりやがって!!」

 ギルタルはハルセスを含む邪神を邪魔者扱いすると当然他の邪神が怒り出す。
 レイジとって有利な展開であるが、場の収拾がつかなくなる。


「そこまでよ!! やめなさい!!!」


 その時だった突然声が響く。
 チユキが声のした方を見ると、そこにはレーナの空船が浮かんでいる。
 レーナは船縁に怒った表情で立っている。

「おおレーナちゃんだ―――!!!」
「おおレーナ!! 美しい天上の美姫よ!! このハルセスが元へ来てくれ!!」
「レーナちゃん!! レーナちゃん!!」
「レーナたんハァハァ!!」
「おお! これはこれは我が愛しき姫!! 私の勇姿を見に来てくれたのですね!!」
「レーナちゃん!! 待ってて今レーナちゃんを騙した悪い男を退治してあげるからね!!」

 レーナを見て邪神達が騒ぎ出す。
 その騒ぎ方はイシュティアが来た時よりも大きい。
 騒ぐ邪神達を見てレーナは溜息を吐く。
 その表情は心底嫌そうであった。

「あら、レーナちゃん今到着? 遅かったわね~」
「それはこちらの台詞です! イシュティア様! トトナは何をしているのです!!」

 レーナは周囲を見る。

「それはこちらの台詞よ! レーナ! 貴方の方こそ何をしてたの?! それにアルフォスも来ているのじゃなかったの?! 兄さんが大変な事になっちゃったじゃないですか!!」

 トトナは黒獅子を引き上げながら叫ぶ。
 トトナはレーナの船に乗り込む。
 レーナとトトナが睨みあう。
 かなり険悪な雰囲気であった。

「こちらにも事情があるのです!! アルフォスなら馬鹿をして大ケガをしたので帰還中です!」 
「えっ!!?」

 レーナがそう言うとチユキ達を除く者達から驚きの声が上がる。

「ちょっとレーナちゃん!! アルが大けがをしたってどういうことなの!!?」

 イシュティアはレーナに聞く。

「イシュティア様! アルフォス様はここに来ようとした暗黒騎士との戦いに敗れ、大けがを負ったのです! 我々も撤退すべきです!! あの怖ろしい暗黒騎士が来ます!!」

 レーナの代わりに横にいる戦乙女のニーアが答える。
 そして今度はチユキ達を含む全員が驚く。
 チユキが暗黒騎士と聞いて思いつく人物は1人だけだ。
 シロネの幼馴染のクロキに違いなかった。

「えっ、どういう事! 暗黒騎士ってクロキの事でしょ? クロキがこちらに来るの?」

 シロネがニーアの所に行く。

「あの男はとんでもなく怖ろしい男です!! シロネ!! あのアルフォス様に勝ったのですよ!! 先程は見逃してもらいましたが!! そう何度も見逃してもらえるとは思えません!! 撤退すべきです!!」

 ニーアが力説するが、チユキにはアルフォスを打倒す事がすごい事だとは思えない。
 そもそも、チユキにはアルフォスが強そうには見えなかった。
 しかし、チユキ達以外は違っていた。

「うそ……。あのアルフォスが負けるなんて……」

 トトナは首を振って信じられないと言う。
 それは他の邪神も同じである。

「驚きです……。私の最大の好敵手が負けるとは……」

 ギルタルも驚く。

「まさか俺の次に美男子のあいつが破れるとは」

 ブタとイボガエルを合わせて2で割ったような邪神がすごく図々しい事を言う。

「おいおい……。儂の次に良い男のあやつが敗れるとは……。何という……」
「ああ。全く信じられねえ。我が終生の好敵手が敗れるとはな。容姿では互角、そして強さでは奴は我を超えていた。それが負けるとは。信じられん」
「ちょっとポクチンおそろしいですぅ……」

 他の邪神達も口々に言い合う。

(顔では間違いなくアルフォスの方が100倍良いと思うのだけど。この邪神達は何を言っているのかしら?)

 チユキはすごくつっこみを入れたいけど我慢する。

「クロキはそんな恐ろしい奴なんかじゃないいよ……」

 シロネはニーアに抗議する。
 その時だった。
 シロネがレーナの空船の甲板に突然膝を付く。

「シロネ!? どうした!?」

 シロネが膝を付いたのを見て、レイジが急いで駆け寄るとチユキもリノもナオも後に続く。

「ちょっと!? どうしたのシロネさん!?」
「どうしたっすか!? シロネさん!?」
「大丈夫。ちょっと立ち眩みがしただけだから。ありがとう、レイジ君」

 シロネは支えてくれるレイジに礼を言う。

「大丈夫なわけがないでしょ! 顔が真っ青だわ! どうしたのよ!」

 チユキはシロネに駆け寄ってその顔を見ると真っ青であった。
 明らかに異常事態である。

「チユキの言う通りだ。急いで戻って、サホコに見てもらった方が良いだろう」
 
 レイジは真剣な顔をして言う。

「えっ!? でも、クロキが来るし」

 しかし、シロネは留まろうとする。

「駄目よ。シロネさん。明らかに顔色が悪いわ。一度戻るわよ。みんな良いわね?」

 チユキが聞くとリノとナオが頷く。

「逃げるのですか? 勇者よ!?」

 去ろうとするレイジをギルタルが引き留める。

「今はお前の相手をしている暇はない! そんなに戦いたいのなら。ここに来る暗黒騎士の相手でもするんだな!」

 レイジは叫ぶ。

「むう、アルフォスを破った暗黒騎士ですか……。相手にとって不足はないですが。今はそんな気分でもありません。まあ良いでしょう、勝負は次の機会までお預けです!!」

 ギルタルが反対方向へと飛び、この場から離れていく。
 すると何名かの邪神も後を追う。
 残った邪神も自分達だけでは分が悪いと思ったのかこの場から離れる。
 当然全員が捨て台詞を吐いている。
 アルフォスを負かした者が来るというだけで、この反応である。
 チユキは少しだけ驚く。

「くそっ! 勇者よ!! これで勝ったと思うな!!」

 最後にハルセスが消えて、この場にはチユキ達だけが残る。

「さて、俺たちも戻るか……」
「待ってレイジ君……。クロキに会おうよ……」

 レイジが戻ろうとするとシロネが止める。

「シロネ。良くわかりませんが、顔色が悪いですよ。ここは戻るべきです」

 レーナがチユキ達の方に来る。
 レーナはレイジ達と暗黒騎士を会わせたくない様子であった。
 


「がお―――――!!!!!!!!」


 突然、可愛らしい獣の鳴き声が聞こえる。

「しまった奴らが来たぞ!!!!」

 ニーアの叫び声にチユキ達は声がした方を見る。
 そして、チユキ達は見てしまう。でっかいテディベアが木々を掻き分けてこちらに来るのを。
 テディベアは10メートルぐらいの大きさで森の上に顔を出して進んで来ている。
 熊のようにも見えるが、どうみてもテディベアであった。

「何あれ!! すごい可愛い!!!!!」

 リノはテディベアを見て歓声を上げる。
 テディベアは樹が邪魔で中々進めないみたいだ。
 なかなかチユキ達の方に辿り着かない。

「がお――――!!!」

 大きなテディベアが咆哮する。
 可愛いので全く迫力がない。

「すごい、可愛いのが向かって来てるっすね……」

 人の姿に戻ったナオが呟く。

「本当に何あれ……。すごく可愛いのだけど」

 チユキも何と言って良いかわからなくなる。
 テディベアの足は遅くゆっくりとこちら来ている。
 その進む様子はとても可愛い。

「ねえ!! チユキさん!! しかもくまさん頭にピンクのブタさんが乗っているよ!! すごく可愛い!!!」

 リノの言う通り、テディベアの頭にはハンマーを持ったピンクのブタが仁王立ちをしている。

「何てファンシーな!!! 一体何が始まろうとしているよ!?」

 チユキは思わず声を出す。

「待て、リノ!! 奴らが後ろから来ている!!」

 レイジが指差すとテディベアの後ろには暗黒騎士を乗せた黒い竜が一緒に飛んでいるのが見える。
 その周りには飛竜に乗った悪魔達。
 間違いなくシロネの幼馴染であった。

「レイジ、良いですね。撤退しますよ」

 レーナが言うとレイジが頷く。

「わかったレーナ。撤退しよう」

 レイジがちゃっかりとレーナの船に乗り込む。
 慌てて私達もレーナの船に乗り込む。

「待…って……レイ…君。クロキ…から逃げ…必要……ない……」 

 シロネは止める。
 しかし、口を開くのもやっとであった。

「シロネさん。気持ちはわかるけど、顔が真っ青よ。戦いになるかもしれない。ここは撤退するわよ。戻るわよ、みんな」

 チユキがそう言うとリノは残念そうな顔をする。

「う~ん。折角、可愛いくまさんが来てるのに、仕方がないか」
「あら、レーナちゃんは帰っちゃうの? じゃあ私は残るわね。アルを破った暗黒騎士。興味があるわ!!」

 イシュティアがレーナの船に乗り込んでくると、舌で唇を舐める。

「それはダメです! イシュティア様! 兄さんが大変な状況なのですよ! 急いで戻るのです」 

 黒獅子を戦乙女に任せたトトナがイシュティアの側に来る。

「わかっています!! ニーア!! 急いで船を動かしなさい! 移動します!! トトナ! 反対側を押さえて!!」
「わかったレーナ……」
「ちょっとレーナちゃん!? 何をするの?! それにトトナちゃんまで何で私を押さえるの?!!」

 レーナとトトナがイシュティアの肩をがしっと掴み動かないようにする。
 すごく息の合った行動であった。
 先程まで仲が悪かったのが嘘のようであった。
 レーナの空船とイシュティアの空船が巨大テディベアとは反対方向へ移動を開始する。
 こうしてチユキ達は撤退するのだった。






 遅くなったがクロキ達は御菓子の城へとたどり着く。
 レイジと邪神達はクロキ達が来た事で撤退したので戦いにはならなかった。
 御菓子の城に残っていたダティエとヘルカートは無事である。

「オババ様!!大丈夫ですか!!」

 ポレンがヘルカートの所へと駆け寄る。

「ああ大丈夫だよゲロゲロ。まさか、あの泣き虫がこのババを助けにくるとはね。ちょっと遊びをするつもりだったのだがね。こんな嬉しい結果になるとは思わなかったよ」

 ヘルカートはポレンの頭を撫でる。
 その顔はとても嬉しそうであった。
 ヘルカートにとって、ポレンは孫のようなものである。
 何だかんだ言ってポレンを心配していたのだ。

「お前さんにも礼を言うよ。さすが最強の暗黒騎士だ。まさか、この泣き虫をこんなに成長させてくれたのだからね」
「いえ、ヘルカート殿。自分は特に何もしていません。殿下が自らの意志で頑張ったのです」

 クロキはそう答える。
 本当にクロキは自身が特に何かしたとは思っていない。
 ポレン自身が動かなければ、クロキ自身が何をしようとしても無駄だっただろう。

「閣下――――! 私を助けるために来て下さったのですね――――!!!!」

 突然叫び声がするとダティエが巨体を揺らしながら迫って来る。
 クロキはさっとクーナの後ろに隠れる。
 情けないと思われるかもしれないが、こうするしかない。
 ダティエはクーナの前で止まる。

「ダティエ……。クロキを困らせるな」
「はい……」

 クーナが言うとダティエがしょんぼりとした顔をする。
 ちょっと悪い事をしたかなとクロキは思う。

「はは、無事で良かったよダティエ殿。でもお礼は殿下に言って欲しい。殿下は貴方を心配していたのでね」

 そう言ってクロキはポレンを見る。
 ダティエがポレンの方へと向かう。

「ありがとうございます。殿下。件の品。エリオス美男子裸体咲き乱れ画集は必ず届け……むぐぐ!!」
「わー! わー!」

 ダティエがポレンにお礼を言おうとするとポレンが遮る。

(一体何を言おうとしたのだろう?)

 クロキは首を傾げる。
 ダティエがポレンの口を慌てて塞いだので全く聞こえなかったのである。

「殿下? どうしたのさ~?」

 頭上から大熊に変身したプチナが声をかける。
 クロキは変身したプチナの姿を見るのは初めてだが、どう見てもぬいぐるみであった。

(まさか、プチナ将軍がこんなに可愛く変身するとは思わなかった)

 クロキはもふもふしたくなるのを我慢する。

「まったく、この子はこういう所は変わらないねえ」

 ダティエの口を塞ぐポレンを見て、ヘルカートがやれやれと首を振る。

「本当に何をやっているのだ。あいつらは」

 クーナも呆れた顔をする。

「閣下。ヘルカート様も無事でした。そろそろ帰還しましょう。陛下が心配しております」
「ああ、わかったよグゥノ卿。君達も来てくれてありがとう。助かったよ」
「いえ、我々はこれが任務ですので」

 グゥノはクロキに褒められて嬉しそうな顔をする。
 御菓子の城の前は相変わらず騒がしい。

(でもまあ、これで目的は果たした。ナルゴルへ戻ろう )

 クロキはそう思いナルゴルの方を見るのだった。

★★★★★★★★★★★★後書き★★★★★★★★★★★★

金曜と土曜の午前は色々と忙しくて更新できず、結局第6章のエピローグは明日に持ち越しです。
本当に疲れました。何もできずに家に帰っても寝るだけの人生は嫌ですね……。

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コメント

  • ナットです。タイにいます。

    You can ride on the shoulder if it’s normal bear, but when it comes to teddy bear... the head’s just too big there’s no space on the shoulder you can ride ( ͡° ͜ʖ ͡°)

    And for Totona joining the harem, why not? Just go and read the old version to see what will happen... or wait for a few more chapters.

    Thank you for the chapter.

    0
  • Raven

    Thank you for the update. I still wonder what will happen to Totona from this point on, still think that she should be in Kuroki's harem.

    0
  • 眠気覚ましが足りない

    更新お疲れ様です。

    自分は相変わらずアプリからコメント出来ず……。評価は出来るようになったのですが……。

    なろう版から思っていたのですが、なぜポレンは獣化プチナの肩ではなく頭に乗っているのでしょう。
    威厳と存在のアピールのつもりにしてはかなり馬鹿っぽく感じるのですけど……。あ、それが狙い?

    シロネの異変、こちらに来たのですね。
    悪くないと思いますが、この後レーナがなろう版と同じ行動をするなら、彼女の自己中っぽさが強まるような気がします。


    神々の空騒ぎより修正報告を。

    「アルフォスは馬鹿をして大ケガをして帰還中です!こちらにも事情があるのです!!」

    「こちらにも事情があるのです!!アルフォスなら馬鹿をして大ケガをしたので帰還中です!」

    質問された順番に変えました。そのため、アルフォス“なら”、した“ので”に変更してます。


    邪神達が口々に言い合う。

    他の邪神達も口々に言い合う。

    ギルタルとブタガエルだけ独立させてあるので、“他の”を追加し、助詞も“が”から並列の“も”に。


    「待ってレイジ君。クロキから逃げる必要はないよ」

    「待…って……レイ…君。クロキ…から逃げ…必要……ない……」

    口を開くのがやっとな割には普通に話してます。これの前のシロネのセリフは多少ですが、話しづらそうになっていますので同様に。修正案のはちょっとやり過ぎな気もしてますが、前よりも話しづらそうにした方が良いでしょう。


    急いで戻ります

    急いで戻るのです」

    戻ります、だとトトなだけが戻るように思えるので。あと「」の閉じが消えてます。


    これで目的は果たしたナルゴルへ戻ろう

    これで目的は果たしたし、ナルゴルへ戻ろう
    or
    これで目的は果たした。ナルゴルへ戻ろう

    “果たした”と“ナルゴル”の間が消えてます。

    1
  • リトルサモナー

    なろう版を再読してきてひとつ思ったことが。ここに描くべきなのか迷った結果書き込みます失礼します。
    元の世界でのレイジは女友達は多くても、「男は時には自分の力で切り開くべきときがある」という考えもあってか、同性の男からは嫌われたりさけられたりしていたので、
    クロキとのタイマン勝負の回を読んだ結果、心のどこかではクロキのような時には喧嘩ができるような心許せる同性の友人が欲しかったのかなと感じました。
    レイジ、意外と同性に対してはツンデレ…?レイジも女癖は悪いけど同性に対しても、根は悪くない奴なのかなと思いました

    0
  • cyber

    更新いただきありがとうございます。 前のバージョンと比較して、第6章の終わりに大きな変更がありました。

    0
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