暗黒騎士物語

根崎タケル

おかしな城のおかしな戦い4

「はっ!!」

 白銀の魔女クーナの大鎌から繰り出される複数の魔法の刃がシロネを追ってくる。
 シロネは剣を振るいその刃を消していく。

「やるな、シロネ!! ならば、これならどうだ!!」

 今度は魔法の刃を転移させてくる。
 しかし、この技は空間に揺らぎが生じる時にタイムラグが生じるため注意すれば躱すのはたやすい。
 シロネは何とか魔法の刃を避ける。
 勝負は一進一退である。
 クーナは防御力は高いが攻撃手段に乏しく、シロネを倒すに至っていない。
 ただし、シロネの攻撃も相手に届かないので今の所勝負がつかない。

「フレイムブレード!!」

 シロネは剣を振るう。しかし、クーナの魔法盾の1つに阻まれる。
 魔法盾は術者の力量によって強度が変わってくる。
 レーナ程ではないが、クーナの魔法盾もかなりの強度であった。

「硬いわね……。レイジ君ならたぶん破れると思うけど、私じゃ無理かな」

 シロネは過去にレイジと模擬戦をした事を思い出す。
 レイジの剣は重くて速い。
 レーナの魔法盾でも1つや2つぐらいなら簡単に破る事ができる。
 だけど、レイジと違いシロネの攻撃は今の所、届いていない。
 シロネの剣は速さではレイジと同じくらいだけど、威力はかなり落ちる。
 そのため、魔法盾を破る事ができない。

「おまえの攻撃なんか効かないぞ、シロネ!!」

 クーナはそう言うと再び鎌を振るい、複数の魔法の刃を飛ばして来る。
 魔法の刃は私を影のように自動で追って来る。そのため躱す事ができない。
 私は魔法の刃を迎撃する。
 クーナはその迎撃する間に魔法の刃を転移させる。
 シロネは急いでその場を離れ、魔法の刃をやり過ごす。
 今の所、何とか避ける事ができている。
 だけど、少しずつだけどシロネは躱すのが難しくなっていた。

「徐々にだが追い詰めているのがわかるぞ、シロネ。クロキはクーナのものでなければならない。何となくだがお前の存在は邪魔なように感じる。だから、お前には消えてもらうぞ」

 クーナは鎌を振るいながら言う。

「クロキはあなたのものじゃない!!」

 シロネは鎌を剣で受けながら答える。
 人を物として扱って良いはずがなく、魔法の薬とかで人を操る事は最低な行為だとシロネは思っている。

「ではクロキはお前のものなのかっ!!」
「私のものでもない!!」
「それならば黙ってクロキの前から消え去れ、目障りだ!!」

 シロネとクーナは睨み合う。

「ふっ」

 シロネは笑う。

「何を笑っている?」
「なるほどね……。ようはあなた。クロキを完全に自分のものにできてないんでしょ?」

 シロネがそう言うと白銀の魔女が可愛らしくふくれっ面になる。

(どうやら図星みたいね)

 シロネは確信する。
 クロキはまだ完全に操られていない。ならば、まだチャンスはあるはずだった。

「確かにクロキはたまにリジェナのお尻を見てる時がある……」

 クーナはくやしそうに言う。
 そして、その言葉にシロネは飽きれる。

(あのむっつりスケベは何をやっているのだろう。後で矯正してやらねばなるまい!)

 シロネはクロキを連れ戻した後にするお仕置きリストを考える。

「だが!! 圧倒的に見ているのはクーナの胸とお尻だ!! それは間違いないぞ!!」

 そう言ってクーナは鎌を振るう。
 さっき、よりも速くなっているが攻撃が雑であった。

(雑になっている? 今ならいけるかも?)

 シロネは大鎌の一撃を避けると技を発動させる。

「千翼飛燕刃!!!」
「ふん!!」

 シロネは剣の連続攻撃を繰り出すが、全てクーナの九つの魔法盾に全て弾かれる。
 だけど魔法盾の発動が若干遅れたのか、クーナの動きが完全に止まる。

(今だ!!)

 シロネは態勢を無理やり立て直す。体が悲鳴を上げるのがわかるが、この一瞬を逃すわけにはいかなかった。
 シロネは剣を背中に担ぎ、剣にありったけの魔力を込める。
 千翼飛燕刃という大技を使った後に立て続けに技を繰り出す。
 本来ならかなり無理な動きだ。だけど、無理をしなければクーナは倒せない。

「はっ!!」

 シロネは掛け声と共に体を回転させるように剣を上段から振る。
 剣は魔法盾に防がれる。
 シロネはそれに構わず剣を振りぬく。

「なんだと!?」

 クーナは驚く声を出す。
 霧が晴れるように魔法盾の1つが砕ける。
 クーナは何とか鎌の柄で剣を防ぐが受け流す事ができず、そのまま倒れる。
 そして、倒れたクーナをシロネが上から覆いかぶさるような格好になる。

「さすがのあなたもこの体勢なら、魔法盾も魔法の刃も出せないでしょ!!」

 シロネは倒れたクーナに言い放つ。

(うまくいった。もし魔法盾を二重にしていたら破れなかったかもしれない。よし、この技は天翼斬魔剣と名付けよう。我ながらカッコ良いネーミングだ)

 クーナを押し倒した状態でシロネは技に名前をつける。

「く……」

 クーナはくやしそうな顔をして、受け止めた剣を大鎌で押し返そうとしている。
 そうはさせまいとシロネは剣に力を込める。

「ふふ、他では負けても腕力では私の方が上みたいね」

 シロネは笑ってクーナに言う。
 もっとも、それは女の子としてどうなんだとシロネは思うが、今は気にしている場合ではない。
 剣に力を込める。

「さあ、クロキを解放してもらうわよ!!」
「ぐぐぐ……な、何の事だ……」
「とぼけないで! 貴方がクロキを魔法で洗脳してるんでしょ!!」

 シロネは激昂する。

(そうでなければ、あの優しいクロキが悪逆非道な魔王なんかに従うわけがない。白を切るなら、このまま斬ってしまおう。もう、2つの技を連続で使うだけの力は残っていない。ここで倒さなきゃ、私の負けだ)

 シロネは剣に力を込めるが、押し切るだけの力が出ない。
 シロネとクーナはそのまま上と下で睨み合う。

「えっ!!」
「あっ!!」

 どれくらいの時間がたったのだろうか。
 突然、シロネはもの凄い力で後ろから引っ張られるとクーナから引きはがされる。
 引きはがされ、投げ飛ばされたシロネは広い部屋の端まで飛ばされ、入口の扉の所で着地する。
 シロネは前を見る。
 そこにはクーナの手を取って立ち上がらせている暗黒騎士の姿があった。

「クロキ!!」

 その暗黒騎士の姿を見た時、シロネは動けなくなる。
 クーナが何かを叫び。
 シロネの目の前で2人が何かを話している。
 2人が親しげに会話をしているのを見た時、シロネは金縛りにあってしまう。
 そして、クーナが一歩下がるとクロキがこちらへと歩いて来る。剣は抜いていない、戦う気はないようであった。

「えーっと、シロネ。城の外で話がしたいのだけど……。良いかな?」





 クロキが御菓子の城に駆け付けた時、シロネがクーナに覆いかぶさっていた。
 特に2人に外傷は見えない。

(間に合った、何とか最悪な事態は免れたようだ)

 クロキは急いで2人を引きはがす。
 そして、クーナを立ち上がらせた後、シロネの方を見る。

(やばい……絶対怒っているよね、あれ)

 シロネは思いっきりクロキを睨んでいる。
 クロキの背に冷や汗が出て来る。
 クーナが殺されそうになっていたから、思わずシロネを引き離したけど。この後どうするか考えていない。

「シロネ、これで2体1だぞ!!」

 クーナは遠くにいるシロネに大声でそう言うと鎌を構える。

(鎌だけに……、って何あほな事を考えているのだろう。もう考えがまとまらない。とにかく2人を戦わせては駄目だ)

 クロキはクーナに鎌を下させる。

「クーナ、自分が彼女の相手をする。その間にこの城をアルゴアから撤退させるんだ」
「むー。なぜだクロキ? 2人でかかれば確実に殺せるぞ!!」

 クーナのその言葉にクロキは首を振る。

(いや……、それをさせたくないから自分だけで相手をするのですよ……)

 クロキはそう思うが、大人しく聞くクーナではない。
 だから、説得する方法を考える。

「大丈夫だよ、彼女よりも自分の方が強い。だからクーナはナルゴルで待っていて」
「いやだ!!」

 クロキは驚いてクーナを見る。
 これほどまでにクーナが拒否するとは思わなかったからだ。

「クーナ……」
「その女とクロキを一緒にするわけにはいかない。その女は危険だ……。クロキを遠くへ連れ去る気がする……」

 クーナは敵意を込めた目でシロネを見ている。

「自分はどこにも行かないよ……クーナ。行くとしてもクーナと一緒だ。約束する」

 その言葉が何を意味するのかクロキもわかっている。
 だけどそう言わずにはいられなかった。
 クーナはクロキを見る。
 そのクーナの視線をクロキは受け止める。

「わかった……ナルゴルで待ってる」

 その言葉から何かを感じ取ったのかクーナはそう言って大鎌を降ろす。
 それを確認するとクロキはシロネの方へと歩いて行く。
 シロネは剣を構えたまま動いていない。

「えーっと、シロネ。城の外で話がしたいのだけど……。良いかな?」
「その前に顔を見せなさい、クロキ!!」

 シロネに言われてクロキは暗黒騎士の兜を取る。
 クロキの素顔をシロネはじっと見つめる。

「いいわ……。わかったわよ。逃げないでね、クロキ」

 そう言うとシロネは翼を出すと壁をぶち破って城の外へと出る。
 クロキは飛翔の魔法を使い、シロネの後へと続く。
 クロキ達が城の外へと出ると御菓子の城が動き始める。
 クーナがミュルミドンに命じて移動させているのだ。

(良い子だよ、クーナ)

 クーナが退いてくれたので、クロキはほっと胸をなでおろす。
 そして、空中でシロネと対峙する。

「この馬鹿たれー!!」

 突然、シロネがクロキに殴りかかる。

「ぶべっ!?」

 なぜか、クロキはその拳を避ける事ができず、正面から受けてしまう。

「ひゃ……ひゃにをするんだよ……」

 クロキは鼻を押さえる。

「バカバカバカ! クロキのバカ―――!!」

 しかし、シロネは攻撃をやめない。

「シロネ……。ちょ……やめ」

 クロキが抗議するとシロネは手を止める。

「どんだけ私が心配したと思っているのよ!!!」

 シロネは怒った顔で自分を見る。

「え……。心配してくれてたの?」
「当り前じゃない! 何でそう思うのよ!!」
「だって、いつも心配するのは自分の方だと思ってたから……」

 クロキは鼻を押えて言う。
 いつも心配するのは自分の方だったとクロキは思っている。
 シロネが自分の事を心配したりする事はない。
 シロネはなまじ腕が立ち、正義感が強い上に怖れを知らない。自分よりも体の大きい相手にも普通に立ち向かっていく。
 いつか危ない目に会うのではないかとクロキは気が気でなかった。

「なんで、クロキが私の心配するのよ!!」

 シロネはなおも怒る。

「だって……。シロネはいつも危ない事に首を突っ込んで行くから……。誰かを助けるためかもしれないけど、シロネが危ない目に会うんじゃないかっていつも心配してたんだ……」

 その言葉を聞くとシロネはきょとんとする。

「えっ? そうだったの?私の事を心配してたの?」

 クロキはそのシロネの言葉に頷く。

「いつも、危ない事はやめるべきだって言ってたんだけど……」

 クロキはシロネに言う。
 もっとも、シロネはクロキの言う事を聞く事はなく、言っても流されるだけだったりする。

「そういえばそんな事を言ってたっけ。ふーん、でも大丈夫よ。危ない目に会ってもきっとレイジ君が助けてくれるもの。クロキが私の心配する必要なんて何もないわよ」

 シロネは腰に手をあててさも当然のように答える。
 その言葉に何だよそれ、とクロキは思う。
 確かにレイジは強い。そして、なぜか可愛い女の子のピンチには駆けつける。
 シロネは幼馴染のクロキが見ても美人だ。シロネが危ない目に会ったら確実に助けるだろう。
 もしかすると、聖レナリアのでの一件もクロキが何かしなくてもレイジが何とかしていたのかもしれない。
 だからクロキがシロネの心配をする必要は全くないのかもしれない。
 だけど、クロキの中に納得できない何かがあった。

「だったら自分の心配もしなくても良いよ……。安心して良いよ」

 そもそも、何を心配される事があるのだろうとクロキは思う。
 モデスは良い奴で、クーナと言う仲間ができた。
 レーナの側にいるシロネ達よりもよっぽど心配される言われはない。

「何よ、それ! 魔王の側にいて安心なんかできるわけがないでしょーが!!!」

 シロネは怒る。

(確かに普通に考えたらそうなんだけど……。どう説明したものか)

 クロキは悩む。
 魔王モデスは凶悪な外見で性格が悪いように言われている。
 しかし、実際はそんな事はない。
 口下手なクロキはそれを説明する事が出来なかった。

「さあ、レイジ君の所に行くわよ、クロキ! ナルゴルなんかにいたら駄目よ!!」

 シロネはクロキに手を差し出すが自分は首を振る。

「それは行けない……。自分はナルゴルに戻る」

 クロキは頭を横に振る。
 クーナに約束したのだ、
 必ず戻ると。だから戻らなければならない。
 そもそもレイジが受け入れてくれるとはクロキには思えなかった。
 見る限り、レイジは女の子は受け入れるが男は受け入れたりしない。
 シロネは女の子だからそれに気付かないように見えた。
 それにクロキもあまり一緒にいたい相手ではない。だからレイジの所には行けなかった。

「何よ! あのクーナって子が理由なの!!」
「そうだけど……」

 クロキがそう言うとシロネはわなわなと震えだす。

「やっぱりそうなのね! チユキさんが推理した通りだわ! クロキはちょっぴりエッチだけど、いくら可愛い子の頼みでも酷い事なんかしない! それが人々を苦しめる魔王とその白銀の魔女に味方をしようとするなんて!!」

 シロネが叫ぶ。

「モデスはそこまで悪い奴じゃないよ……」
「そんなわけないでしょ! やっぱりクロキはおかしくなってる!!」

 クロキは誤解を解こうとするが、直ぐに否定されてしまう。
 その言葉を聞いてまたかとクロキは思う。
 シロネは言う事を聞いてはくれない。
 なぜかはわからないけどいつも信用してもらえないのだ。

(きっと、自分に人徳というものがないのだろうな……。誰かが言ってたけど、信用されない人にはそれなりの理由があるそうだ。だから、自分に悪い所があるのだろう)

 悪い所は直さなければならないとクロキは思う。しかし、それが何かわからない。
 だから、状況が悪い方に行ってしまう。

「剣を抜きなさい、クロキ! その目を覚まさせてあげる!!」

 そう言ってシロネは剣を抜く。
 やはり、そうなったかとクロキは溜息を吐く。

「悪いけど……。もうシロネには負けないよ」

 クロキは兜を被ると剣を抜く。

(自分にはこれで語る事しかできないみたいだ)

 クロキはうまく説得できない自分を不甲斐なく思うが、ここまで来たらどうしようもない。
 ゴズの動きが気になる以上は、急いで戻らねばならなかった。

「行くわよ、クロキ! 空中戦なら私の方に分があるんだから! 腕の一本ぐらいは覚悟しなさい!!」

 シロネは上空に上がると高速で飛び始める。そして、クロキの周りを円を描くように動く。
 クロキは空中で剣を構える。
 高速でクロキの後ろに回ったシロネが剣を振るう。
 それを回転して弾く。
 シロネはそのまま高速で離脱して、再びクロキに向かう。
 それをクロキは今度は横に跳びぎりぎりで躱す。
 その後、シロネは連続で高速で攻撃と離脱を繰り返しし、クロキはそれを何とか躱す。

(シロネは何もない広い空間では強い。だけど多分自分が勝つ……)

 すでにクロキはシロネの動きを見切っていた。
 シロネは速いが、単純な動きだ。
 だから、何処に来るか簡単に予測できた。
 そして、戦っている最中に黒き炎を空間に複数配置する事で、シロネの動き制限する。

「黒炎よ!!」

 クロキは魔法を発動させると黒い炎の塊を空に浮かべる。
 黒い炎は消える事なく、空中で燃え続ける。

「なっ!!」

 黒い炎にぶつかるまいとシロネの動きが変わる。
 飛べる範囲を狭くする事でクロキはシロネの動きを誘導する。
 クロキは体を回転させて剣を振るう。
 がきん!!
 そんな音を立ててクロキの剣とシロネの剣が合わさる。

「えっ!!」

 シロネが剣を落とす。
 クロキは単純に剣をぶつけたわけではない。
 剣を通して、シロネの体に直接衝撃波を放ったのだ。
 シロネは飛ぶことが出来なくなり、そのまま落ちる。

「グロリアス!!」

 クロキは声を出しグロリアスを呼ぶ。
 すると森から巨大な竜が飛び出し、落ちていくシロネを受け止める。
 グロリアスはシロネを受け止めると地面へと降り立つ。
 クロキもまたグロリアスが側へと降りる。

「大丈夫?シロネ?」

 クロキはグロリアスの背からシロネを降ろす。
 シロネは衝撃の影響のせいか頭を押さえながら降りる。
 しばらく、まともに動けないはずであった。

「何で私を助けるの?」
「別にシロネと敵対したいわけじゃない」
「なら、なんでナルゴルにいるの?」
「シロネ達がナルゴルに来なければ戦うつもりはないよ」
「魔王を守るの?」

 クロキはその言葉に頷く。

「ああ、もし勇者が魔王を倒すためにナルゴルに来るなら、自分は暗黒騎士となってその行く手を阻ませてもらう」

 シロネを真正面から見据えて言い放つ。

「なんで……。訳わかんないよ……」

 シロネは涙目だ。
 だけどクロキはシロネの言う事を聞けない。

「行かせてもらうよ……。リジェナに会わなくちゃいけないんだ」

 クロキがグロリアスに乗って行こうとするとマントが引っ張られる。
 振り返ると怒った顔でシロネが睨んでいる。

「なによ! 前は私が泣くと何でも言う事聞いてくれたでしょ!!」
「ちょっ! 嘘泣き!!」

 クロキは小さい頃のシロネを思い出す。
 小さい頃から、シロネはクロキが持っている物で欲しいのがあるとすぐに泣き落としにかかるのである。
 シロネの涙に弱いクロキは嘘泣きとわかっていても言う事を聞いてしまい。
 おかげで幼いクロキはおやつはほとんどシロネに取られてしまった。

「さすがにこればかりは聞けないよ」
「駄目よ、ナルゴルなんかに返さない! クロキは私とレイジ君の所に行くべきよ!!」

 シロネはマントの端を離さない。

「駄目だよ、行けないよ」

 クロキはマントをひっぱりシロネの手から離そうとする。しかし、シロネはしっかりとマントを握り離そうとしない。

「ぶー! クロキのケチー!!」

 シロネはふくれっ面になる。
 クロキとシロネはマントを引っ張り合う。そんなやり取りをしている時だった。

「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 突然、天に届くほどの大きな叫び声が聞こえる。
 クロキとシロネは叫び声がしたアルゴアの方を見る。

「何、あれ……?」

 シロネが驚きの声を出す。
 それは巨大な手の塊だった。
 巨大な手の塊はアルゴアの城壁よりも高く、クロキ達から距離がかなり離れているにも関わらず、はっきりと見る事が出来た。
 その巨大な手の集合体がアルゴアを襲っているようであった。

コメント

  • ノベルバユーザー562942

    ほんとにどうしてもシロネが好きになれない...

    2
  • ノベルバユーザー527106

    シロネがあいかわらずクズすぎるからさっさと物語から退場して欲しい

    3
  • Kyonix

    この男が何回あなたを救ったか知っていますか...そして、あなたは女の子なので、泣かないでください。

    0
  • 眠気覚ましが足りない

    更新お疲れ様です。
    クーナにとっての今後の課題は、カウンター技を増やすことでしょうね。


    あなたの物、お前の物
    “物”は人に対しては使わないのですが、この場合は道具扱いか人扱いかあやふやなので平仮名で良いと思います。

    口調がおかしいです。心中描写ですが。
    ここで倒さねば私の敗けだ→ここで倒さなきゃ私の敗けだ
    良い子だぞ、クーナ→良い子だよ、クーナ

    4
  • 根崎タケル

    3章続きを更新しました。
    ようやく、3章も終わりが見えてきました。

    4
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