【Vease:Day】〜VRMMOだけして、稼ぎたい‼︎ 〜

土谷優

《第一章》第8話『初めての冒険』

〜西暦2045年10月1日AM10:58〜

王城帝国キングダム郊外 西》
〜ヘーゲル草原〜


俺達はあの後、薬屋や商店で最低限のアイテムを買い、西側の門へ向かい、だだっ広い草原へと足を運んでいた。


「うわぁ、これがヘーゲル草原か〜。めちゃくちゃ広い草原だな〜。」


俺は辺りを見回し、その景色を堪能していた。すると、俺は「忘れるところだった」と言ってオプションを開いた。


「うーんっ、これだ!。まずはアラーム設定をしてっと…」


俺が何故、アラーム設定をするかというのも、このVease:Day世界では1日が、現実世界の4時間となっており、昼が2時間、夕方が30分、夜が1時間30分と区切られている。そして夜になるにつれて魔物モンスター達のlvレベルがあがり、強い魔物モンスター達が多くなるという。
ちなみに今このVease:Dayゲームはリリース日…つまり今日10月1日から1ヶ月間は昼の時間が多くなり、2時間から3時間になり、夕方が15分、夜が45分となっている。


(えーとっ、確か、朝の9:00にリリース開始したから、昼の時間帯がPM12:00までってことか。PM12:00にアラーム設定しといてっと…、これでOKだな。一応ウサ丸アイツにも伝えてるけど、職業ジョブ聞いたらガッチガチの戦闘狂だったからな〜、そのうち夜に戦闘したいとか言いだすんじゃないか?大丈夫かな〜…)


人の心配をよそにウサ丸は目を輝かせながら、辺りを見渡していた。


「ん〜〜!ひゃっほーぃ!!」

ズサァァァァ


ウサ丸は草原ここに来てから終始テンションが高く、走り回ったり、スライディングなどしていた。


(いや、子供か!大丈夫かよアイツ…はぁ……まぁ気持ちはわからなくもないけど…。それに実際、やりたい(スライディング)俺もいるし…)


俺は気持ち良さそうな草原に寝転がりたいと、体がウズウズしたが、バカっぽそうに見られるのは嫌なので、我慢した。するとウサ丸がそんな俺を見て、からかうように煽ってきた。


「おやおや、リュウさ〜ん、なぜそんなところで突っ立ってるんですか?」

ピクッ

「いや、、別に、お前が子供だな〜って思って見てただけだ。」


俺は少し目元がヒクついたが、ウサ丸にマウント気味に返事をした。だが、ウサ丸は珍しく、意にも返さずにまた煽ってきた。


「へぇ〜そうですか〜、私はまだコ・ド・モ、でぇすか〜!!でも…こーんな気持ちいぃぃぃーーーーフカフカの草原で寝転がらないなんてもったいないですよぉ〜〜」


ゴロゴロッゴロゴロッゴロゴロッゴロゴロッ

ウサ丸は俺の目の前でわざとらしく、ゴロゴロと草原で寝転がっている。(う、うらやましぃ)ウサ丸は、俺の方を見ながら、勝ち誇るように笑った。


「アハッアハハハハッ、アハハハハハハッ」

(チッ、なんてやつだ、ワザと見せびらかしやがって!!……ダメだっ、もう我慢できねぇ!!)


俺は誘惑に負け、フッカフカッの草原に向かってダイブした。


「クッ………クッソーーー!!どうとでも言いやがれ!!こんちくしょうがぁぁぁぁ!」


後日ウサ丸はその時、俺のダイブがスローモーションに見えたと言う。


ズサァァァ


俺は見事に、ヘッドスライディング決め、寝転がった。


ゴロゴロッゴロゴロッゴロゴロッゴロゴロッ

「あっは〜気持ちいぃ〜、まるで高級ベッドのような感触やで〜〜!」

ニヤッ

「ハッァ?!」


ウサ丸は俺に向けてニタァと笑って見せた。俺はその時、人生で初めて敗北というのを味あわされた…。(※過剰に演出しております)


「クッ、俺の負けだ!煮るなり焼くなり好きにしてくれ!!」


俺は草原の上でoTLの体制になり、ウサ丸に対し負けを認めた。そしてウサ丸は、そんな俺を慰めるように、肩にポンッと手を置いた。


「フッ、そんなことしないさ、だって…こんな草原見たら、人間誰しもゴロゴロしたくなるよぉ、なるお、るぉ、ぉぅ。(※エコーです)」

「はぁっ、はぁ、ぁ。(※これもエコーです)」


俺はその言葉に共感し、一緒にゴロゴロしまくった。


「アハハッ〜、やっぱりこんなに気持ちのいい自然のベッドがあれば、誰でもゴロゴロしたくなるよ〜」


ウサ丸は気持ちよさそうにゴロゴロしながら、言った。俺も同調するようにゴロゴロしながら言い放つ。


「そうだな〜…どうでもよくなる気持ちよさだな〜。」

「あぁ!分かるかも〜。一歩も動きたくないって感じ〜」

「「はぁ〜幸せだなぁ〜」」


俺達は草原で寝転がり続けた。だが、突如草原の草むらから、地面を抉るほどの衝撃が走った。


バキバキバキバキッドゴーン

「「えっ」」


俺達は衝撃が起こった方向を見ると、そこには雑木林の方から出たと思われる緑の魔物モンスター達、つまり『緑鬼ゴブリン』軍団が俺達めがけて向かって来た。

「ギゴッギヒャーッ!!!」


「なんだ?!早速、魔物モンスターが現れやがった!」


俺は驚きながらも、体を即座に起こした。するとウサ丸は、すでに戦闘態勢へと入っており、『緑鬼ゴブリン』達を見る目はまるでゲームを楽しむ子供のように輝かせていた。


「はぁ〜☆やっっっとモンスターが来たー!!よっしゃぁ!!1人残らず斬り裂いてやるから覚悟しろぉい!!」


ウサ丸は、掛け声と共に、背負っていた斧を持った。


(うわー、楽しんでんな〜こいつ…。まぁ…でも、気持ちは分からなくはないな!)


俺もランスを手に取りウサ丸と一緒に魔物モンスターを狩っていく。


「ハハッ♪」

ズバンッ

「ギッ」 パリンッ


ウサ丸は先頭にいた『緑鬼ゴブリン』に一撃をいれ、見事に倒していく。だが、そのすぐ後方にいた3匹の『緑鬼ゴブリン』が一斉に飛びかかる。


バッ

「「「ギィッ」」」


すると、ウサ丸はニヤッと笑いながら、斧を横一閃に薙ぎ払った。


ブォンッ


その斧の一撃は、同時に『緑鬼ゴブリン』達を襲った。

「ギヒャッ」「キッ」「キギョッ」

パリンッ パリンッ パリンッ

「アハッ☆」

ウサ丸は圧倒的な物理攻撃力による斧の一振りで、『緑鬼ゴブリン』達を一撃で倒した。すると、ウサ丸は脱兎のごとく、戦場を駆け回り次々に攻撃を仕掛けていった。


(うわぁ、スゲェな〜あいつ。あの斧、もう使いこなしてるよ。ハハッ…俺も負けてらんないなぁ!)

「【属性付与エンチャント】、ヨウ!!」

ボゥッ


俺はランスの攻撃力をカサ増しするため、スキル【属性付与エンチャント】を陽属性でランスにほどこす。そのランスは太陽のように燃えさかった。


「ギギギーッ」

「?!」


突如、1体の『中緑鬼ホブゴブリン』が俺めがけて襲いかかってきた。


「フンッ」

ガキンッ

「ギギッ!?」


俺は襲いかかってきた『中緑鬼ホブゴブリン』の攻撃を、軽くいなしてランスで反撃をする。


「オラッ!」

ズリュッ

「ギヒャッ?!」


ランスの一撃が『中緑鬼ホブゴブリン』の胸を貫いた。だが、威力が足りないのかまだゴブリンは息をしていた。俺はそれを見て、『中緑鬼ホブゴブリン』を刺したまま魔法を放った。


「【火球ファイアボール】!×4」

ボボボボゥ


ランスの側面にある4つの穴から火球が現れ、そのまま『中緑鬼ホブゴブリン』に放たれる。


ボンッボンッボンッボンッ

「……キィ…ヒ…ャッ」パリンッ

「よっしゃ!上手くいったぞ!」


俺は『中緑鬼ホブゴブリン』を仕留めることに成功し、俺はその余韻よいんでガッツポーズをとった。だがその瞬間に、後方から『巨躯緑鬼ギガントゴブリン』が棍棒で襲いかかってきた。


「ギゴォッーー」

ブンッ

(あっ、ヤベッ?!油断した!)


俺は咄嗟とっさに防御体制に入った。するとウサ丸が『巨躯緑鬼ギガントゴブリン』の背後から勢いよく斧で攻撃する。

「【岩破斬ブレイクチェスト】オォー!」
 
ズバンッ


すると『巨躯緑鬼ギガントゴブリン』が雄叫びをあげて、片ひざをつかせた。


「ゴギャァー」

ズシィィンッ


その衝撃で地面がえぐれて、『巨躯緑鬼ギガントゴブリン』の体制が崩れた。そして、ウサ丸は「今だ!」と言わんばかりに空高く跳び、体を縦方向にひねり、一回転するとそのまま回りだし、もう一度技能アーツを繰り出した。


「【岩破斬ブレイクチェスト】オォォー!」

ズバッ

「えっ?!」


だが、『巨躯緑鬼ギガントゴブリン』は振り向き様にその攻撃を左腕で受けきり、さらには、右手に持っていた棍棒を横から薙ぐように攻撃をしてきた。


「ギゴゥッ」

ブンッ

「ヤバッ!!」


ウサ丸は攻撃をなるべく受けない様に体を丸め、防御体制に入った。


バコーンッ

「ッ?!」


ウサ丸は攻撃をもろに受け、地面に叩きつけられた。


ドゴーンッ

「…イテテテッ、モロに入っちゃったな…。」


ウサ丸は頭を抑えながら、ムクッと上半身を起き上がらせた。だが、その隙を見逃すまいと『巨躯緑鬼ギガントゴブリン』が攻撃を仕掛ける。


「ゴゴッーー!!」

「げっ。」


巨躯緑鬼ギガントゴブリン』がウサ丸を追撃するために、棍棒を振り下ろす。


ズリュッ

「ゴガッ?!」


俺はウサ丸のピンチを察して、『巨躯緑鬼ギガントゴブリン』の背後をランスで貫いた。


「【火球ファイアボール】!x4」

ボンッボンッボンッボンッ


俺は『巨躯緑鬼ギガントゴブリン』に【火球ファイアボール】を浴びせた。だが、まだ『巨躯緑鬼ギガントゴブリン』が倒される様子はない。


「ゴッ!」

ブンッブンッ


巨躯緑鬼ギガントゴブリン』は俺を振り落とすように振り向き、棍棒を振り回した。俺は刺していたランスを抜き、離れるように着地する。


シュタッ

「クソッ。まだ倒れねぇのかよ。HP体力ありすぎるだろ、アイツ!」

「ギゴゴウゥッ」


巨躯緑鬼ギガントゴブリン』は心なしか、俺の方を睨んでいるように見えた。すると、『巨躯緑鬼ギガントゴブリン』は雄叫びをあげた。


「ギゴゥッーーーーー!!」

「っ?!」

ビリビリッ


その雄叫びは辺りの大気を震わせるのを感じるほど、響いた。するとその雄叫びに呼応するように『緑鬼ゴブリン』達が俺に襲いかかってきた。


「ギギッ!!」

「なっ?!」

ガキンッ


俺は咄嗟にランスで攻撃を受け、蹴りをいれて『緑鬼ゴブリン』を離し、ランスで攻撃をする。


「おりゃっ!」

ズリュッ

「ギィッ?!」


だがウサ丸のように一撃で倒すことは出来ず、『緑鬼ゴブリン』は刺されたランスを自分で抜き、俺から離れた。


「キィッ!!」

ズッ

「なっ?!クソッ、威力が足りなかったか。」


だが、この数瞬の内に俺を『緑鬼ゴブリン』達が取り囲んでいた。


(まずい…コイツらは、2〜3体で一斉に襲いかかってくる。1体を一撃で倒さないと対応が遅れて、攻撃を受けてしまう。こりゃ、常に【属性付与エンチャント】かけて威力をカサ増ししないとダメだ。)

「【属性付与エンチャント】、くう!!」

ビュゥンッ


俺は即座に対応すべく、吹っ飛ばす効果がある空属性をランスに付与した。すると、『緑鬼ゴブリン』達が俺に一斉に襲いかかってきた。


「ギィ!!」「ギヤッ!!」「キィッ!!」

(クソッ、早速仕掛けてきやがった。)

ガキンッ カンッ ズリュッ


俺は、必死になって四方からくる攻撃をさばきつつ、隙を見てはランスで吹っ飛ばしその場をしのいだ。


(にしても、こりゃ分が悪い!!…まさかあの雄叫びは、他の『緑鬼ゴブリン』達に命令する咆哮的なヤツなのか?)


俺はそんなことを頭に巡らせながら、戦闘をしていると不意打ち気味に『緑鬼ゴブリン』の攻撃をくらう。


ズシャッ

「っ?!クソッ!うっとおしいなぁ!!」

ブサッ

「【風玉ウィンドボール】!」

ズザザンッ

「ギャッ」 パリンッ

「ハァハァ、キリねぇなこりゃ。」


数匹の『緑鬼ゴブリン』は倒したが、まだたくさんの『緑鬼ゴブリン』が俺を取り囲むように攻撃を仕掛けようとする。


(クッ!こりゃキツイなぁ。『緑鬼ゴブリン』達の連携自体はそんなできてないことがまだ救いだな…。つうか、これウサ丸アイツの方がうまく捌けんだろ…何してんだ、ウサ丸アイツは?)


俺はそう思い、ウサ丸のいた『巨躯緑鬼ギガントゴブリン』の方へと目を向けた。すると、ウサ丸はまだ『巨躯緑鬼ギガントゴブリン』と戦闘をおこなっていた。


「つうか、『巨躯緑鬼ギガントゴブリン』2体になってねぇか?こりゃヤベェな…。マジ笑えない状況になってきたよ…」


俺は弱音を吐きながらも、『緑鬼ゴブリン』達との戦闘を終わらそうと必死に戦った。だが、次から次へと『緑鬼ゴブリン』達が補充されてきており、倒しても倒しても減らない状況になった。


(こりゃ、ヤバイ。このままズルズルと時間が過ぎて、夜になっちまう。この状況下では確実に死ぬ!)


俺はそう思い、アイテム屋で買った煙玉を取り出し、ウサ丸に合図を送った。


「おい!!ウサ丸ー!!このままじゃ夜になっちまう!一旦退却だっ!!」

「へっ?!まだ『巨躯緑鬼デカブツ』倒せてないんだけど!!」

「ゴチャゴチャ言うなっ!!今は引くことを優先しろ!!このままだと、コイツらに足止めくらってジリ貧になっていくのは見え見えだ!!分かったら、お前も煙玉出せっ!!」

「……分かったわよ!!」


ウサ丸はアイテムの入った鞄から煙玉を取り出し、俺の掛け声と共に煙玉を地面に投げつけた。


「いくぞっ!!せーのっ!!」

ボワンッ

「ギィ?!」「ギゴッ?」


緑鬼ゴブリン』達は煙玉のおかげで、鼻と目が効かなくなり俺達を見失った。その隙に俺達は戦線を離脱した。



     〈第一章 第8話 完〉

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