【Vease:Day】〜VRMMOだけして、稼ぎたい‼︎ 〜
《第一章》第4話 『火種』
〜西暦2045年10月1日AM9:43〜
《王城帝国 西方面》
〜大通り十字路〜
俺はあの後、宿屋の女将さんと一緒に武器の調達へと向かうため、大通り十字路と言う、王城帝国内一の繁華街を歩いていた。
「ここってすごい賑やかなんですね。すごい出店が並んでますよ!」
「あ〜なんせこの一本道は、西から東まで全てが店で埋まってるんだよ。その中でもここ西側は王城帝国イチの商店街だからね!」
女将はさも自分のことのように嬉々として語った。
「スゲェ!!端から端までずーっとお店が並んでるってことっすか!」
「まぁな!」
女将さんは胸をはり、得意げに自慢をした。
(うん……デカィ。さすが、異世界!……おっと、危ない、危ない。これじゃただの変態じゃないか!気をしっかり持て!俺!)
俺は気をとりなおし、王城帝国内の情報を聞き取ることにした。まずは西と東で何か違いがあるのかを女将に尋ねた。
「西側と東側で、なんか違いがあるんですか?例えばお店の種類が違うとか?」
「あぁ、あるよ。西は比較的に安全で人情がある昔ながらの店がほとんどで、主に酒や野菜類などの安価な食材がよく流通してるよ。東は鍛冶屋とか、防具屋、スキル屋とかの冒険者向けの、クッソ高い店しか並んでねぇ感じかな?本当に潰れてしまえばいいんだよ!」
(なるほど…、西は生活圏で、東は職場町って感じか。だけど、なんか…妙に嫌悪感こもってんな…)
俺は疑問に思い、東側の方がなぜ高いのか女将さんに質問を投げかけた。
「なんで東側の方が高いんですか?」
「そりゃぁ、なんでって…。そういやお前さんは王城帝国に来たばかりだったか。」
すると女将さんは王城帝国の現状について説明をした。
「ここ王城帝国はな王政国家を敷いてんだ。そんで、王城帝国の北東にはな、国王が住むお城が建っていて、そこを囲むように貴族達の家が連なってんだ。通称貴族領って言うんだけど、まぁそいつらがタチ悪くてな〜。」
「タチ悪いって…どんな感じの悪さなんですか?」
俺は考える素振りをしながら女将さんに質問をした。
「金に汚ねぇんだよ。あそこらへん一帯の土地代を高くして、税を徴収してんだ。当然それに伴って物価が高くなる。それが東側が高い理由の一つと、もう一つの理由が東側の門から出たとこにあるダンジョンのモンスターが弱い割に種類が多くて、数も多いんだよ。」
「えっと、一つ目の理由は分かるんですけど、二つ目の理由がよくわかんないんですけど…」
俺は控えめに手を挙げながら、女将さんに説明を求めた。
「あぁ悪りぃ悪りぃ。端的に言うとLvが上げやすくて、戦利品がいっぱいある狩場なんだよ。
そこで貴族達の子息達はちぃせぇ頃から護衛を連れて安全に楽してLvを上げるんだ。そんで倒したモンスターがドロップしたアイテムを、貴族が経営している店で加工して、売りさばくんだよ。たくっ、マジで腹が立つよ。」
「あー…そうなんすねー。」
(なるほど。嫌いって理由がわかった。にしてもこういった世界での貴族の立ち位置って変わんないもんなんだな。)
俺は女将さんにそこの狩場に行けるか質問をした。
「そこって弱いモンスターばっかりなんですよね?だったら、そこの狩場とか迷宮って俺とかでも行けるんですかね?」
この質問を聞いた女将さんは難しい表情をして、答えた。
「まぁあんたはまだ冒険者になりたてだから迷宮自体行くのはオススメしないね。それに行ける力があったとしても、東側にある狩場や迷宮は行けやしないよ。」
「えっなんでですか?」
俺は不思議に思い女将に問いかける。
「なんでって…、そりゃ貴族達の狩場だからさ。言わば独占してんだよ。東門は貴族か貴族の護衛として雇われたヤツしか行けないようになってんだ。」
「えっそれってズルくないっすか?」
俺がそう答えると女将さんは真剣な眼差しで、俺の目を見ながら言った。
「あぁ、ズルさ…。だがそれが貴族ってもんだ。自分さえ良けりゃ後はどうでもいいって連中だ。だから北東の貴族領には決して入っちゃいけないよ!ただでさえ鎧鱗族は珍しいんだ。とっ捕まって奴隷にされて飼われるのがオチだからね!」
「はっはい!気をつけます…。」
(か、かおがちかい!)
俺は顔を赤らめた。それを見た女将が、はっとなり、そっぽを向き顔を少し掻きながら話題を変えた。
「まっまぁ、近づかなけりゃどうってことはないさね!そういえば武器は何にするんだい?というか職業は何に就いたんだい?」
「えっと…、あ、あ〜そういえばまだ職業に関しては教えてなかったですね。」
俺はそう言うと記録石を捻って目の前に自分の簡易的なステータスを見せた。
名前『リュウ』種族『鎧鱗族』Lv6
職業『騎士』『支援者』
『鍛冶屋』『商人』『裁縫者』
「騎士と支援者かい?それにしたってあんた変わってるね〜。生産系が3つて。冒険者なら4〜5つ戦闘職業が当たり前だってのに。」
「まぁ確かにそうですね。でも、将来的には自分の店とか持ちたいんで、生産系を多く取得してるんです。だけど、やっぱり開店資金を稼ぐとなると冒険者の方が手っ取り早くって…。」
(まぁゲームの仕様で最初から冒険者としてプレイするんだけどね。)
俺は女将さんに嘘を言っているような気がしてちょっと後ろめたさを感じた。
(とは言え俺がゲームをしていますっていったら、「なめとんのか!ボケェ!」ってぶっ飛ばされそうだし、穏便に済ますために言わないでおこう。まぁお店を開店したいのは本当だしね。)
俺は心の中で折り合いをつけ女将さんと話しを続けた。
「はぁ〜そうかい。まぁがんばるこったね!」
「そうですね。ハハハッ…はぁ」
俺は少し気疲れをおこしたが、気を取り直し鍛冶屋へと向かった。
〜西暦2045年10月1日AM9:50〜
《王城帝国北西方面》
〜ドワーフ工房 武器売り場〜
「ここがあたいの顔見知りがやってる、ドワーフ工房って店だ。」
(ここが、武器屋もとい、鍛冶屋の店か…)
外観は一見、こじんまりとした店だが、奥の方からカンカンッと作業をしている音が聴こえてくる。どうやら奥の方へと長い建物で、作業場と店が繋がっている構造らしい。
「ていうか、西側に鍛冶屋なんてあったんですね。」
「まぁ、全部が東側に集まってるわけじゃないさね。西側にもちらほら色々な店があるよ。」
女将さんはそう言うと、店の大きな扉を開けた。
カランッコロンッカランッ
扉についてた鈴が鳴った。
「お〜い。来てやったぞ〜!」
女将さんがお店の中に入り大声で呼びかけた。すると奥の方から1人の小人が出てきた。
「おい!そんな大声出さんでも分かっとるわい!」
(お〜あれが小人!!服の上でも分かるガチムチの筋肉、そして武骨な髭。なんといっても身長の低さ。まさしく俺の思い描く小人だ!)
感動をしている俺をよそに、女将さんは小人に対して、馴れ馴れしい感じで接していた。
「まぁまぁそう言うなって、ほれ!酒持って来てやったぞ!」
女将さんがそう言うと担いでいた樽を差し出した。
(あの手土産って、酒樽のことだったのか。)
「ま〜た調子のいいことばかり言いおってからに。まぁ貰うけども…」
(いや貰うんかい!ツンデレか!)
俺は心の中でツッコミを入れた。すると小人がこちらを見てきた。
「ん?つーかこの坊主は何だ?まさか…お前のとこの娘の恋人か?」
小人はニヤニヤしながら、小指を立てて女将さんに聞いた。(てか娘さんいたんだ。)
「そんなんじゃないよ!ウチの客さ。なんでも、冒険者初心者でね。武器がまだ買えてないんだとよ。」
「ほぉ〜そうか、客だったか。これは失礼した。ワシの名はデルゼンだ。このドワーフ工房で工場長兼ここの責任者をしておる。長い付き合いになるかもしれんからよろしく頼むな。」
「あっ、はい!。どうも初めまして、リュウです。こちらこそよろしくお願いします。」
俺は少しぎこちないあいさつをした。それを見たデルゼンは豪快に笑い俺を労った。
「ガッハハハハッ。緊張せんでもええわい。ワシのことはデルゼンでええからの。で、単刀直入に聞くがどの武器をお探しだい?」
「えっと〜[ランス]なんですけど…」
「そうか[ランス]か。ふむ。…ならついて来な!奥にいっぱいあるからそこから選んでけ!」
そう言うとデンゼルは店の奥の方へと足を運んだ。俺もついてこうとすると後ろから肩をポンポンと叩かれた。振り向くと女将さんが申し訳なさそうな顔をしていた。
「すまんが、お店にそろそろ戻らないといけねぇから、ここでお暇させてもらうよ。」
「あっはい!ここまでありがとうございました!」
「いいってことよ!じゃあまた後でな!」
そう言うと女将さんはそそくさと出ていった。
(いい人だったな〜。)
「おい!坊主〜。遅れるなよ〜。」
「あっはい!今行きま〜す。」
俺はデンゼルに連れて行かれるまま、工房の奥へと向かった。
ーーそして時を同じくして、ある事件が起こっていた。
〜西暦2045年10月1日AM9:50〜
《冒険者ギルド会館》
「…ではこれにて説明を終了致します。ご利用ありがとうございます。」
「フンッ!どういたしまして!!」
ギルド会館の受付で冒険者登録を済ませた褐色の肌をした白髪の女獣人が1人、ふんぞり返っていた。
「全く、なんであんなにも無愛想で頭デッカチかな〜あの妖精族。」(全然質問しても業務外なのでと答えてくれなかった。)
イライラしてるのか女獣人の兎のような耳が小刻みに震えている。
「あっちの受付の人の方がまだいい対応してくれそうなのに…。ハズレ引いちゃったな〜。」
その獣人が見た先にはリュウの受付をしてくれた、リーファがいた。
「うわぁ、あんなにも笑顔で対応しとる!マジ神対応だなぁ。」
(それに比べてあっちは塩対応ときた。ハンッ、その差が胸にも現れとるわ。)
白髪の女獣人は受付のお姉さんを見比べながら鼻で笑い、その場を立ち去ろうとした。
「フッ。さーてとまずは鍛冶屋へ行きますか。武器がないことには、冒険できないしね〜。」
そう独り言を吐いていった直後、リーファの悲鳴が聞こえた。
「キャッ!?手を離してください!」
「なぁ別にいいだろう?食事くらいさ〜。俺とリーファの中だろう?」
そこにはリーファの腕を掴んだ完全防備の男の人間族がいた。
イラッ
(なんだ、あの男は?女の子をなんだと思ってやがる!!よし、…この手で粛正してやる。)
女獣人は迷わずリーファのところへ向かった。
「おい、その手を離しな!このゲス野郎!!」
その女獣人は男の手を払いのけ、リーファを庇うように横に割って入った。
「なんだよ、獣人風情が!!俺様に触んじゃねぇよ。」
静かな怒りを露わにした完全防備の男は、後ろに担いでいた[大剣]を手にとり睨みをきかせた。それに応じるように女獣人はファイティングポーズをとり、暴言を浴びせるように言い放った。
「あんたみてぇな愚図野郎の誘いなんか、下らなすぎて反吐がでるね!」
「あ"ぁ"ん!?下らないだと…。何ぬかしてんだ!!リーファが俺の婚約者になる約束をするための食事だぞ!!テメェに指図される筋合いはねぇよ!!」
(うわぁー完全に危ないストーカーだわこいつ。マァジキモッ。)
女達が引いている中、怒りのこもった女性の声がギルド会館に響き渡る。
「それ以上はやめなさい!!!」
すると女獣人の前にお堅い受付のお姉さんが[レイピア]を持ち、完全防備の男の前に立ちはだかった。その目は鋭くどこか凛々しくもある。
「その剣をしまいなさい!!これは警告です!!さもなくば冒険者ギルドの規定により、冒険者の資格、及び王城帝国の在住権を剥奪いたします!!」
今までのマニュアル妖精族?のような素振りはなく、なんならそれが本性と言わんばかりの怒気を発した声だった。
するとその声に呼応するかのように周りにいたギルドの係員が完全防備の男を囲む。
「!?グヌッ………ちっ…。分かったよ!!今回はこれで引いてやる!!おい!お前、次会ったら覚悟しとけ!」
その男は女獣人を指して、捨てゼリフを吐き、ギルド会館から出ていった。その後、その男を囲んでいた人達はそそくさと元居た位置に戻った。
(あれ?何かあっさりと戻ってったな。なんかのミニイベントとかじゃなかったのかな?)
女獣人は不思議に思い、顎に手をあてその場で少し考えはじめた。すると後ろから可愛らしい声が聞こえた。
「あの、ありがとうございます。」
被害にあったリーファが助けてくれたことを女獣人に感謝した。
「いや、いいさ!こんくらい。それよりも怪我はなかった?」
「はい。大丈夫です。いつか必ずお礼をさせて頂きます。えっと〜お名前は…?」
リーファが伺うとその女獣人は腰に手をあて片足を上げて、片手でVサインをつくり、そのVサインから覗きこむようにウィンクをしながら言い放った。
「フフンッ。私は『USA丸☆』だよ!気軽にうさまるたんって呼んでね!リーファたん♡」
〈第一章 第4話  完〉
《王城帝国 西方面》
〜大通り十字路〜
俺はあの後、宿屋の女将さんと一緒に武器の調達へと向かうため、大通り十字路と言う、王城帝国内一の繁華街を歩いていた。
「ここってすごい賑やかなんですね。すごい出店が並んでますよ!」
「あ〜なんせこの一本道は、西から東まで全てが店で埋まってるんだよ。その中でもここ西側は王城帝国イチの商店街だからね!」
女将はさも自分のことのように嬉々として語った。
「スゲェ!!端から端までずーっとお店が並んでるってことっすか!」
「まぁな!」
女将さんは胸をはり、得意げに自慢をした。
(うん……デカィ。さすが、異世界!……おっと、危ない、危ない。これじゃただの変態じゃないか!気をしっかり持て!俺!)
俺は気をとりなおし、王城帝国内の情報を聞き取ることにした。まずは西と東で何か違いがあるのかを女将に尋ねた。
「西側と東側で、なんか違いがあるんですか?例えばお店の種類が違うとか?」
「あぁ、あるよ。西は比較的に安全で人情がある昔ながらの店がほとんどで、主に酒や野菜類などの安価な食材がよく流通してるよ。東は鍛冶屋とか、防具屋、スキル屋とかの冒険者向けの、クッソ高い店しか並んでねぇ感じかな?本当に潰れてしまえばいいんだよ!」
(なるほど…、西は生活圏で、東は職場町って感じか。だけど、なんか…妙に嫌悪感こもってんな…)
俺は疑問に思い、東側の方がなぜ高いのか女将さんに質問を投げかけた。
「なんで東側の方が高いんですか?」
「そりゃぁ、なんでって…。そういやお前さんは王城帝国に来たばかりだったか。」
すると女将さんは王城帝国の現状について説明をした。
「ここ王城帝国はな王政国家を敷いてんだ。そんで、王城帝国の北東にはな、国王が住むお城が建っていて、そこを囲むように貴族達の家が連なってんだ。通称貴族領って言うんだけど、まぁそいつらがタチ悪くてな〜。」
「タチ悪いって…どんな感じの悪さなんですか?」
俺は考える素振りをしながら女将さんに質問をした。
「金に汚ねぇんだよ。あそこらへん一帯の土地代を高くして、税を徴収してんだ。当然それに伴って物価が高くなる。それが東側が高い理由の一つと、もう一つの理由が東側の門から出たとこにあるダンジョンのモンスターが弱い割に種類が多くて、数も多いんだよ。」
「えっと、一つ目の理由は分かるんですけど、二つ目の理由がよくわかんないんですけど…」
俺は控えめに手を挙げながら、女将さんに説明を求めた。
「あぁ悪りぃ悪りぃ。端的に言うとLvが上げやすくて、戦利品がいっぱいある狩場なんだよ。
そこで貴族達の子息達はちぃせぇ頃から護衛を連れて安全に楽してLvを上げるんだ。そんで倒したモンスターがドロップしたアイテムを、貴族が経営している店で加工して、売りさばくんだよ。たくっ、マジで腹が立つよ。」
「あー…そうなんすねー。」
(なるほど。嫌いって理由がわかった。にしてもこういった世界での貴族の立ち位置って変わんないもんなんだな。)
俺は女将さんにそこの狩場に行けるか質問をした。
「そこって弱いモンスターばっかりなんですよね?だったら、そこの狩場とか迷宮って俺とかでも行けるんですかね?」
この質問を聞いた女将さんは難しい表情をして、答えた。
「まぁあんたはまだ冒険者になりたてだから迷宮自体行くのはオススメしないね。それに行ける力があったとしても、東側にある狩場や迷宮は行けやしないよ。」
「えっなんでですか?」
俺は不思議に思い女将に問いかける。
「なんでって…、そりゃ貴族達の狩場だからさ。言わば独占してんだよ。東門は貴族か貴族の護衛として雇われたヤツしか行けないようになってんだ。」
「えっそれってズルくないっすか?」
俺がそう答えると女将さんは真剣な眼差しで、俺の目を見ながら言った。
「あぁ、ズルさ…。だがそれが貴族ってもんだ。自分さえ良けりゃ後はどうでもいいって連中だ。だから北東の貴族領には決して入っちゃいけないよ!ただでさえ鎧鱗族は珍しいんだ。とっ捕まって奴隷にされて飼われるのがオチだからね!」
「はっはい!気をつけます…。」
(か、かおがちかい!)
俺は顔を赤らめた。それを見た女将が、はっとなり、そっぽを向き顔を少し掻きながら話題を変えた。
「まっまぁ、近づかなけりゃどうってことはないさね!そういえば武器は何にするんだい?というか職業は何に就いたんだい?」
「えっと…、あ、あ〜そういえばまだ職業に関しては教えてなかったですね。」
俺はそう言うと記録石を捻って目の前に自分の簡易的なステータスを見せた。
名前『リュウ』種族『鎧鱗族』Lv6
職業『騎士』『支援者』
『鍛冶屋』『商人』『裁縫者』
「騎士と支援者かい?それにしたってあんた変わってるね〜。生産系が3つて。冒険者なら4〜5つ戦闘職業が当たり前だってのに。」
「まぁ確かにそうですね。でも、将来的には自分の店とか持ちたいんで、生産系を多く取得してるんです。だけど、やっぱり開店資金を稼ぐとなると冒険者の方が手っ取り早くって…。」
(まぁゲームの仕様で最初から冒険者としてプレイするんだけどね。)
俺は女将さんに嘘を言っているような気がしてちょっと後ろめたさを感じた。
(とは言え俺がゲームをしていますっていったら、「なめとんのか!ボケェ!」ってぶっ飛ばされそうだし、穏便に済ますために言わないでおこう。まぁお店を開店したいのは本当だしね。)
俺は心の中で折り合いをつけ女将さんと話しを続けた。
「はぁ〜そうかい。まぁがんばるこったね!」
「そうですね。ハハハッ…はぁ」
俺は少し気疲れをおこしたが、気を取り直し鍛冶屋へと向かった。
〜西暦2045年10月1日AM9:50〜
《王城帝国北西方面》
〜ドワーフ工房 武器売り場〜
「ここがあたいの顔見知りがやってる、ドワーフ工房って店だ。」
(ここが、武器屋もとい、鍛冶屋の店か…)
外観は一見、こじんまりとした店だが、奥の方からカンカンッと作業をしている音が聴こえてくる。どうやら奥の方へと長い建物で、作業場と店が繋がっている構造らしい。
「ていうか、西側に鍛冶屋なんてあったんですね。」
「まぁ、全部が東側に集まってるわけじゃないさね。西側にもちらほら色々な店があるよ。」
女将さんはそう言うと、店の大きな扉を開けた。
カランッコロンッカランッ
扉についてた鈴が鳴った。
「お〜い。来てやったぞ〜!」
女将さんがお店の中に入り大声で呼びかけた。すると奥の方から1人の小人が出てきた。
「おい!そんな大声出さんでも分かっとるわい!」
(お〜あれが小人!!服の上でも分かるガチムチの筋肉、そして武骨な髭。なんといっても身長の低さ。まさしく俺の思い描く小人だ!)
感動をしている俺をよそに、女将さんは小人に対して、馴れ馴れしい感じで接していた。
「まぁまぁそう言うなって、ほれ!酒持って来てやったぞ!」
女将さんがそう言うと担いでいた樽を差し出した。
(あの手土産って、酒樽のことだったのか。)
「ま〜た調子のいいことばかり言いおってからに。まぁ貰うけども…」
(いや貰うんかい!ツンデレか!)
俺は心の中でツッコミを入れた。すると小人がこちらを見てきた。
「ん?つーかこの坊主は何だ?まさか…お前のとこの娘の恋人か?」
小人はニヤニヤしながら、小指を立てて女将さんに聞いた。(てか娘さんいたんだ。)
「そんなんじゃないよ!ウチの客さ。なんでも、冒険者初心者でね。武器がまだ買えてないんだとよ。」
「ほぉ〜そうか、客だったか。これは失礼した。ワシの名はデルゼンだ。このドワーフ工房で工場長兼ここの責任者をしておる。長い付き合いになるかもしれんからよろしく頼むな。」
「あっ、はい!。どうも初めまして、リュウです。こちらこそよろしくお願いします。」
俺は少しぎこちないあいさつをした。それを見たデルゼンは豪快に笑い俺を労った。
「ガッハハハハッ。緊張せんでもええわい。ワシのことはデルゼンでええからの。で、単刀直入に聞くがどの武器をお探しだい?」
「えっと〜[ランス]なんですけど…」
「そうか[ランス]か。ふむ。…ならついて来な!奥にいっぱいあるからそこから選んでけ!」
そう言うとデンゼルは店の奥の方へと足を運んだ。俺もついてこうとすると後ろから肩をポンポンと叩かれた。振り向くと女将さんが申し訳なさそうな顔をしていた。
「すまんが、お店にそろそろ戻らないといけねぇから、ここでお暇させてもらうよ。」
「あっはい!ここまでありがとうございました!」
「いいってことよ!じゃあまた後でな!」
そう言うと女将さんはそそくさと出ていった。
(いい人だったな〜。)
「おい!坊主〜。遅れるなよ〜。」
「あっはい!今行きま〜す。」
俺はデンゼルに連れて行かれるまま、工房の奥へと向かった。
ーーそして時を同じくして、ある事件が起こっていた。
〜西暦2045年10月1日AM9:50〜
《冒険者ギルド会館》
「…ではこれにて説明を終了致します。ご利用ありがとうございます。」
「フンッ!どういたしまして!!」
ギルド会館の受付で冒険者登録を済ませた褐色の肌をした白髪の女獣人が1人、ふんぞり返っていた。
「全く、なんであんなにも無愛想で頭デッカチかな〜あの妖精族。」(全然質問しても業務外なのでと答えてくれなかった。)
イライラしてるのか女獣人の兎のような耳が小刻みに震えている。
「あっちの受付の人の方がまだいい対応してくれそうなのに…。ハズレ引いちゃったな〜。」
その獣人が見た先にはリュウの受付をしてくれた、リーファがいた。
「うわぁ、あんなにも笑顔で対応しとる!マジ神対応だなぁ。」
(それに比べてあっちは塩対応ときた。ハンッ、その差が胸にも現れとるわ。)
白髪の女獣人は受付のお姉さんを見比べながら鼻で笑い、その場を立ち去ろうとした。
「フッ。さーてとまずは鍛冶屋へ行きますか。武器がないことには、冒険できないしね〜。」
そう独り言を吐いていった直後、リーファの悲鳴が聞こえた。
「キャッ!?手を離してください!」
「なぁ別にいいだろう?食事くらいさ〜。俺とリーファの中だろう?」
そこにはリーファの腕を掴んだ完全防備の男の人間族がいた。
イラッ
(なんだ、あの男は?女の子をなんだと思ってやがる!!よし、…この手で粛正してやる。)
女獣人は迷わずリーファのところへ向かった。
「おい、その手を離しな!このゲス野郎!!」
その女獣人は男の手を払いのけ、リーファを庇うように横に割って入った。
「なんだよ、獣人風情が!!俺様に触んじゃねぇよ。」
静かな怒りを露わにした完全防備の男は、後ろに担いでいた[大剣]を手にとり睨みをきかせた。それに応じるように女獣人はファイティングポーズをとり、暴言を浴びせるように言い放った。
「あんたみてぇな愚図野郎の誘いなんか、下らなすぎて反吐がでるね!」
「あ"ぁ"ん!?下らないだと…。何ぬかしてんだ!!リーファが俺の婚約者になる約束をするための食事だぞ!!テメェに指図される筋合いはねぇよ!!」
(うわぁー完全に危ないストーカーだわこいつ。マァジキモッ。)
女達が引いている中、怒りのこもった女性の声がギルド会館に響き渡る。
「それ以上はやめなさい!!!」
すると女獣人の前にお堅い受付のお姉さんが[レイピア]を持ち、完全防備の男の前に立ちはだかった。その目は鋭くどこか凛々しくもある。
「その剣をしまいなさい!!これは警告です!!さもなくば冒険者ギルドの規定により、冒険者の資格、及び王城帝国の在住権を剥奪いたします!!」
今までのマニュアル妖精族?のような素振りはなく、なんならそれが本性と言わんばかりの怒気を発した声だった。
するとその声に呼応するかのように周りにいたギルドの係員が完全防備の男を囲む。
「!?グヌッ………ちっ…。分かったよ!!今回はこれで引いてやる!!おい!お前、次会ったら覚悟しとけ!」
その男は女獣人を指して、捨てゼリフを吐き、ギルド会館から出ていった。その後、その男を囲んでいた人達はそそくさと元居た位置に戻った。
(あれ?何かあっさりと戻ってったな。なんかのミニイベントとかじゃなかったのかな?)
女獣人は不思議に思い、顎に手をあてその場で少し考えはじめた。すると後ろから可愛らしい声が聞こえた。
「あの、ありがとうございます。」
被害にあったリーファが助けてくれたことを女獣人に感謝した。
「いや、いいさ!こんくらい。それよりも怪我はなかった?」
「はい。大丈夫です。いつか必ずお礼をさせて頂きます。えっと〜お名前は…?」
リーファが伺うとその女獣人は腰に手をあて片足を上げて、片手でVサインをつくり、そのVサインから覗きこむようにウィンクをしながら言い放った。
「フフンッ。私は『USA丸☆』だよ!気軽にうさまるたんって呼んでね!リーファたん♡」
〈第一章 第4話  完〉
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コメント
土谷優
ありがとうございます!
更新出来るよう頑張ります!
オルゴール♪
凄く面白いので更新がたのしみです!
頑張ってください。