俺の許嫁は幼女!?

白狼

133話 どうしてそこまで

 俺、優奈、静香、美優の4人が集まってから約1時間が過ぎた。
 優奈と美優はずっと笑顔で睨み合って怖い。静香は静香でなぜか時折その2人の間に入ってマウントを取ってるいて2人を挑発する。そのせいで2人はさらに怒りが増す。
 怖ぇよ。いや、本当に怖い。早く帰りたい。


「……あの、これいつ終わるんですか?」


 俺は、ずっとピリピリとした雰囲気がする中、そう切り出した。
 するとそれに1番に反応したのは美優だった。


「ん〜?お兄ちゃん、こうなったのは誰のせいですか?」


 美優がニッコリと笑顔でそう言ってきた。
 笑顔……なのだが、目が笑ってない。こういう時の笑顔は怒っているのと同じだ。


「え?俺のせいなの?」
「はい。」
「ええ!?」


 俺の問に美優は、笑顔を崩さず即答してきた。


「そもそもお兄ちゃんが私という許嫁がいるのに彼女なんかを作るから悪いんじゃないんですか?」
「うぐっ………」
「お兄ちゃん、確認しておきますけど許嫁とはお互い結婚を約束したもののことを言うんですよ。お兄ちゃんがしていることは私との約束を破って彼女を作る。二股と同じ事だと思うんですが彼女を作ったお兄ちゃんはどうお考えで?」
「……………」


 美優に笑顔でそこまで言われるとだいぶダメージを受けてしまう。
 まぁ、確かに美優の言っていることは正しいよな。許嫁という約束を破っているのは俺なんだから。


「確かに俺は美優との約束を破った。でも………」
「はい?でもってなんですか?私が聞いているのは言い訳ではありませんよ。私との約束を破っていることをお兄ちゃんはどう思っているのかってことですよ?」


 俺の言葉に重ねるように美優がすごい勢いで俺を責めたてた。


「………はい、すいませんでした。」


 俺は、それ以上何か言うのは悪いと思った。
 でも、それでも……


「悪いのは全面的に俺だ。それは本当に悪いと思ってる。でも、これだけは言っておく。優奈を彼女にしたことは絶対に悪いとは思わないし反省もしない。」
「………陽一くん……」


 俺の言葉に優奈は、嬉しそうな表情で俺を見てきた。


「………もう少し警戒しておくべきでした。私の判断ミスですね。」
「………あんたね……もう諦めたら?」
「嫌ですよ!」


 美優は、静香の言葉に強く反対した。
 美優の大きな声にこの場にいる全員が少し目を見開いて美優を見た。
 俺もこんな美優は久しぶり見た。確か、美優の運動会の時の俺と出た種目の時に今と同じような大声を出したんだ。


「ずっとお兄ちゃんのことを想っていたんです!それを今さら諦めるなんてことできません!」
「美優………」


 なぜ美優は、俺をそこまで想ってくれるのか。
 過去の幼い記憶を失っているからそれがよく分からない。
 美優にとって上ノ原陽一という人間はどんな存在なんだろうか。恐らくだが、きっと俺はまだ大事な記憶を取り戻してないんだろう。その記憶は美優にとって、そして俺にとってもとてつもなく大事なものになるはずだ。
 だが、今の現状じゃ思い出すことが出来ない。美優に直接聞くというのも一つの手だが今になっても言ってくれないというのは恐らく言いたくないんじゃないのか。


「………ねぇ、陽一。そろそろお昼の時間だし昼食にしましょ。」
「ん?あ、ああ、そうだな。」


 静香が気を使ったのか、俺にそう提案してきた。
 確かにちょうどお腹も空いてきたし俺はそれに賛成した。


「あっ、それなら私が作ってくるよ。」


 優奈が立ち上がり自分が作ると言った。
 ちなみにここは美優の家だ。


「優奈ちゃん、キッチンに入ってもいいかな?」
「え、ええ、構いませんよ。冷蔵庫の中にあるものならなんでも使って構いませんので。」
「ありがとう。」


 美優は、部屋の外ですぐ近くに待機していた園江さんに優奈をキッチンまで案内するように言った。
 優奈は、園江さんと一緒にキッチンの方へ向かった。
 そこで俺もひとつやらないといけないことがあったので美優にその話を振る。


「なぁ、美優。まだお義父さんとお義母さんに挨拶してないから挨拶してきていいか?」
「はい、お願いします。お父さんとお母さんも最近お兄ちゃんに会えてなかずに寂しいと言っていたので。」
「ははっ、そう言って貰えると嬉しいな。」
「2人とも、たぶんリビングにいるので。」
「分かった。それじゃ、行ってくる。」


 俺は、そう言って部屋を出てリビングへ向かう。美優の言っていた通りお義父さんとお義母さんはリビングでお茶を飲んでいた。


「あら、陽一くん、久しぶり〜。こっちにも顔を出してくれたのね。嬉しいわ。」
「最後に会ったのは美優の運動会かな?数週間会わないだけで陽一くん、随分とたくましい顔付きになったね。」
「ははっ、ありがとうございます。俺も久しぶりに会えて嬉しいです。」


 お義母さんは、俺に向かい合わせになるようにソファ座らせてお茶を出してくれた。


「お茶菓子もあるから遠慮しないでね。」
「は、はい、ありがとうございます。」
「今日はお客さんが多いようで私としても嬉しいよ。美優に友達ができるのは良い事だからね。」
「そうねぇ、美優が誰かを家に招くなんてしたのは陽一くんぐらいだからね。」
「美優ってあんまり遊んだりしないんですか?」
「あんまりっていうか陽一くんは除いて1度もしたことがないわね。まぁ、あの子自身あんまり友達を作ろうとは思ってもなかったみたいだし。」
「というよりもまずは陽一くんを見つけ出すことに全力を尽くしていたからね。」


 ………どうしてそこまでして………


「………あの、お話があります。」

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