俺の許嫁は幼女!?

白狼

78話 早朝の朝を妹と

 時はあっという間にすぎるもので美優とあの公園で出会ってから会うと約束した一週間後になった。
 俺は、何だか色々と考え込んでしまっていつもよりも早い時間に起きてしまった。


「喉乾いたな。」


 俺は、リビングへと行き水道の水コップに入れて飲んだ。
 外の景色を見てみると日がちょうど今出たところなのかまだ暗いけど少しだけ光も見える。
 いつもならもう一眠りといきたいところだが今日だけは眠気が全くなかった。
 テレビでも見るかと思っていると誰かの足音が廊下から聞こえた。
 父さんは今、出張でいないから父さんではないということは分かる。
 父さんとはあの昔の家出の件からずっと何も話していないので2人っきりで会うのはさすがに無理かな。
 そこでリビングの扉が開かれる。


「あれ?お兄ちゃん?……ど、どうしたの!?」
「おい、なんだ、その俺がこんなに早起きするなんてありえない、みたいな顔は。」
「仕方ないじゃん。いつもはもっと遅いんだから。」
「………ま、まぁ、俺だって、少しは早起きくらいできるわ。」
「ふ〜ん……それでお兄ちゃんは、なんでこんなに早起きなの?」
「いや、ただ目が覚めただけだ。」
「そっか。」
「逆になんで麗華は、こんなに早く起きてんの?」
「私は、いつもこの時間に起きてるよ。それで今から朝食を作るの。」
「え!?も、もう!?早過ぎないか?」


 今は、まだ朝の6時も回っていない。さすがに早すぎると思うのだが……


「お兄ちゃんだけならもう少し遅く作るけどお母さんは家出るの早いからね。」
「そ、そうか………なら、朝食作るの俺も手伝うよ。」
「ほんと?ありがとう。」


 麗華は、俺が手伝うと言うと嬉しそうに笑い俺用のエプロンを渡してくれた。
 それから手早く調理を開始していくのだが麗華の調理する速度が早すぎて何をしていいか分からない。


「お兄ちゃんは、味噌汁作って。これ、味噌ね。」
「お、おお、分かった。」


 麗華は、調理の手を止めることなく俺に指示をしてくれる。
 そしてそれから10分も掛からず調理は終わった。結局俺は、味噌汁しか作れなかった。
 いつもこんなに早く調理しているのか。しかもこんなに早いのに味はめちゃくちゃ美味い。


「お兄ちゃん、ありがとね、手伝ってくれて。」
「い、いや、結局俺、何も出来なかったし。」
「そんなことないよ。それに………お兄ちゃんと一緒に料理ができて嬉しかったよ。」
「っ!そ、そうか……」


 おっと、その上目遣いでのそんな言葉は反則だよ。妹でも少しドキッとしちゃったじゃないか。


「それじゃ、ご飯運ぼ、お兄ちゃん。」
「あ、ああ。」


 俺は、何をドキドキしてるんだ。相手は妹だぞ。落ち着け、俺の心臓。
 俺と麗華で朝食をテーブルに運び終わると同時に母さんがやって来た。


「あら、陽一がこんなに朝早いなんて珍しいわね。」
「そのやり取りはもうやったよ、母さん。」


 俺たちは、3人で朝食を囲み食べる。
 母さんとご飯を食べるなんて本当に久しぶりだな。
 それから20分ほどで朝食を食べ終わり母さんはあっという間に出掛けてしまった。


「母さんって本当に忙しそうだな。」
「お父さんも忙しそうだけどね〜。」
「確かにそうだな………あ、麗華、俺、今日の昼に出掛けるからな。」
「ん?そうなの?分かった。」


 麗華の俺が出掛けると言ってもどこに出掛けるのか聞かないところがありがたいな。今日の用事は、昔婚約している幼女に会いに行ってくるとか言えるわけがないし。それに俺が変に誤魔化してもすぐに麗華にはバレるんだよな。


「麗華は、今日用事とかないのか?」
「今日は、別に何も無いかな〜。本当はお兄ちゃんと買い物に行こうかなって思ってたけど……用事があるなる仕方ないね。」
「そ、そうだったのか。悪いな。」
「ううん、大丈夫だよ。」


 ああ、本当に俺の妹って可愛いな!いや、別に俺はシスコンなんかじゃないけど!だからってロリコンでもないからな!
 って、俺、誰に対して誤魔化してるんだろ……


「お兄ちゃん、買い物についてきてくれない代わりにお皿洗うの手伝ってね。」
「お、おお、分かった。」


 麗華は、申し訳ないと感じている俺に気を使ってくれたのか笑いながら食器を持って洗い物を手伝ってと言ってきた。
 可愛くて優しいとか完璧な女の子だな〜って思いながら俺は、麗華の隣で朝食で使った食器を洗う。
 その時、俺は、ふと麗華に聞いてみたいことが出来て聞いてみることにした。


「麗華って恋人とかいないのか?」
「っ!?な、なに!?きゅ、急に!?」
「いや、麗華みたいな子だったら学校でも絶対に人気が出ると思うんだけど……いないのか?」
「いないよ!恋人なんて!」
「でも、告白されたことくらいはあるだろ?」
「っ!………そ、それは……まぁ、1回くらいは……」


 この様子だと1回程度ではなさそうだな。もう少し多そうだな。


「……恋人を作ってもいいけどちゃんと相手は考えるんだぞ?何となくで付き合ってそのまま結婚なんてなったら悲しいだろ?」
「う、うん……で、でも、当分恋人なんていらないかな。」
「ふ〜ん、まぁ、いいけど……でも、変な男に付けられてるとかなったら俺に言えよ。その男、ぶん殴ってやる!」
「あ、あはは、さすがにそんなことにはならないでしょ。」
「いやいや、麗華は可愛いし優しいからな。絶対にないとは言いきれない。」
「………じゃあ、その時は頼りにしてるね、お兄ちゃん!」
「おうっ!任せろ!」


 俺たちは、そんな話をしながらくすくすと笑いあっていた。
 そして、俺が洗い物に集中していると麗華が少し下を向いてボソッと呟いた。


「…………好きな人はいるけどね。………私の隣に。」


 その声は、あまりにも小さくて水の音で掻き消され、さらに皿洗いに集中している俺の耳に届くわけがかなった。

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